深秘の華苑

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黒左右衛門

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2005.06.26
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「約束したやん。『ずっと一緒や』って。あれ嘘やったん?」
顔と云わず身体と云わず、ありとあらゆる所にキスの雨を降らせつつ何度も繰り返された。
其れを云われると迚も辛い。所詮セックスの途中での根拠も無い言葉での遊びだとあたしは思いたかったのに、彼はあれを本気で云っていたらしい。
「嘘やないけど、あたしはずっと一緒に居たいけど、無理やん」
「何で?俺、黒ちゃんに迷惑掛けた?掛けてへんやろ?」
「掛けてないですよ。でも、今後きっとあたしが某さんに迷惑を掛けてしまう。其れは厭なんです」
「俺、黒ちゃんに迷惑掛けられてないよ? 寧ろずっと傍に居て欲しいし」
「やっぱり駄目。某さんは『お父さん』やん。お子さんに悪いとか思わないの?」
遂に云ってしまった。此れを云うと困るだろうなぁと思ったのだが。

「・・・(そう来たか、と正直思っている」
「大体、子供かて出来る予定も無かったし作るつもりも無かったのにいつの間にかに出来てもうたんやもん」
・・・。そう云う事、云えるのですか。
云わせているのはあたしですか。
途轍も無く悲しくなった。
此の時、今回の別れ話の中で初めて泣けてきた。
此所で泣いたら狡いと思う。狡いと思うが涙腺が緩み、解放する方へ不可逆的に進行をしてしまった。
「でも、某さんは『お父さん』やないですか」
こう云う事を云っている人に『貴方お父さんやないの』と云う現実を突き付けるのは酷いよなとは思ったが、其れは紛れも無い事実であり、目を背ける訳には行かないと思う。
「黒ちゃんと居る時だけ、俺は俺で居られる。其れも駄目なん?」
泣いているのを見られるのは屈辱だったので彼に背を向けると、背後からそう云われた。

其れは社会人として如何かと思うけど、彼の云っている事は良く理解できる。
其れでも、駄目な物は駄目だと思う。
「黒ちゃんはそうやなかったの?もう俺は要らないの?」
「・・・そう云う事、云わんといて下さい」
色々な方向へ揺さぶられてしまうではないですか。


人間的に駄目な事を繰り広げて迄あたしと一緒に居たいのか。
此の人を駄目な人だと痛感し、其れでも好きだと思えた。

あたしは、何故こんなにブッサイクで弱くて駄目な人を迚も好きだと思えるのだろう。

等とおセンチモードに入って「やっぱり終わるの止めましょ★」と云ってしまうと、元の木阿弥なので云わない。
「こっち向いて」
何度か云われて、漸く彼と向き合った。泣いているのがばれて恥ずかしい。
「俺の事、嫌いになったの?」
「嫌いになっていたら泣きません。あたしは某さんの事、好きなんですから」
そう云えば、捻くれて素直ではないあたしが、彼には好きだの何だのと素直に自分の感情を伝えられる。何故だろう。
彼があたしより随分大人だからだろうか。頼っても、素直に感情を吐露しても良いと思えるのだろうか。
解らない。
「ほんまに?」
「はい」
「ならキスしてよ」
一瞬の躊躇の後、彼にキスした。其の儘抱きしめられる。
矢張り、玄関の扉は開けるべきではなかった。こうなるのは容易に予想出来たのに。
「なあ。一緒に居よ?迷惑掛けへんから」
「無理です」
「無理やない」
キスの嵐。窒息しそうになる。
其の儘快楽へ堕ちた。

完敗だった。

「ほんまに、頼むからもう二度と離れやんといて」
「二度と別れ話せぇへんって約束して」
繰り返される呪詛。
そんなものに同意できる筈が無い。


結局何度か交わって、巧く丸め込まれて我に返ったら夜中の3時を回っていた。
何も考えずにルームウェアでうちに来ていた彼は、「此れじゃあ流石に会社行かれへんで帰るわ」と云い、帰り支度をした。
其の姿を見乍ら、何故か「変な事言い出して済みません」と謝ってしまった。すると
「うぅん。でも頼むで悲しくさせやんといて。俺ほんまで黒ちゃんが俺の事好きとか、ずっと傍に居てくれるって云うてたの信じてたから、『終わろ』云われてショックで倒れそうやったんだから」
「済みません」
・・・いや、其れ謝る所やないやろ。
ちゅうか、此の男何云うてるやろ。

そう思ったが口には出来ないまま、彼を送り出した。


当然独りになってからテンションは突き抜けてダウナ―シフトだったので、トランスを聴いたりして自分を盛り上げてみた。が、叶わず。

多分、彼が好きなのには変わりは無い。
でも、今迄以上に寂しさとか虚無感を抱えたまま彼と接する事になるのだろうな。

別に、そのような関係は望んではいないのに。



相変わらず馬鹿で厭になった。













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Last updated  2005.06.29 00:24:04
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