ライフキャリア総研★主筆の部屋

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2004年05月12日
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「このまま続けても赤字が増えるだけ。決断したほうがいい」と税理士に言われ、魚屋を営む父は廃業を決めた。早ければ5月末には店を閉じる。

 このあたりは閑静な住宅街で、商店街までも閑静だ。昼間はほとんど人通りがない。バスに10分も乗れば渋谷へ出られるため、勤め帰りにデパ地下でできあいのものを買う人が多いのだろう。自転車で15分以内のところに、「オオゼキ」「マルフジ」「サミット」といった安売りスーパーもある。

 魚は肉や野菜と違い、付加価値が高いので、値段だけで勝負するわけではない。しかし、悲しいかな、魚を食べる食文化そのものが廃れてしまった。

 スーパーで何時間も前に作られ、ラップの中で窒息している刺身と、できたての刺身では全然味が違うし、また、同じまぐろでも生と冷凍では天と地ほどに違う。しかし、その味の違いをききわける舌がない。

「骨の多い魚は主人が嫌がるの」と、四十代の主婦が言う。「娘もね」だそうだ。

 まだしも彼女にはご贔屓いただいている。サバの塩焼き、カレイや金目鯛の煮付け、まぐろの角煮は、当店のちょっとした名物で、作れば完売である。ぶりかま塩焼き、鯛の頭の塩焼き、冬はブリカマ大根だな♪。遠赤外線効果のある、専用の魚焼きバーナーで焼く魚のウマさといったら! サンマなんて悶えるほどの美味。私はニシンとか鮎といった、小骨の多い魚が大好きだけど。

 さくさくと同時にふくよかな香りのする衣のフライも大好評だった。身びいきかもしれないが、うちの牡蠣フライよりもおいしいものを食べた記憶はない。安芸の宮島の料理屋で食べた牡蠣フライが二番目だな。

 そう。尾頭付きのマルの魚なんてめったに売れないし、切り身だってそこそこ。調理・加工部門のみ黒字であった。それが現実。

 もっとも打撃が大きかったのは、近くの福祉施設の給食部門からの注文が半減したこと。公的機関では公平性を期し、複数の業者から均等に注文する方針に変えたのだというが、地域に根ざすには地元業者を大切にすべきではないか。



 残っているのは、繁華街などの地の利を得たところぐらいだ。それにしても、昔ながらの対面販売は影をひそめ、スーパーの鮮魚売り場さながらにパック詰めの製品をセルフで選んでもらう方式の店が多くなった。

 旬の食べごろ、脂の乗り、魚それぞれの個性を生かす調理法、安いアラの使い方……対面販売ならでは伝わる「魚の命」が伝わらなくなってしまった。

 お金のある人は、一流の料理店で匠の味を堪能できるだろうが、庶民の台所は質的に、文化的に、ますますひもじくなる一方ではないか。

 商いとは全く異質の仕事をしている私は、力になれなくて残念でたまらない。

 でも、潮時かもしれない。父は今年の12月で71歳になる。ご苦労様。いままで立派に働いてくれて、感謝しています。これからは私が頑張って、楽をさせてあげないといけないね。

 何もせずボケるのは嫌だから、知り合いの魚屋へバイトに行くという。国民年金だけでは、不安でたまらないのだそうだ。まあ、無理のない範囲で、能力を生かしてほしい。

 父は、人の和をまとめるのが得意な人だ。魚商組合、地元商店街、町内会の役員を兼任し、イベントの企画などに才覚を発揮してきた。地元の祭を再興するため、提灯神輿を成功させ、ガードレールに「祭」と染め抜いた幕をずらりと張り巡らす企画を思いついたのも父だった。

 これからは、壊れつつあるコミュニティの再生のために活動して、地域に財産を残してほしいと思う。

 まずは私がパソコンを教えて、地元再生のためのHPでも立ち上げさせますか。





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最終更新日  2004年05月13日 08時43分30秒


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