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2006.01.27
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カテゴリ: the world
『源氏物語』といえば

光源氏の物語として、第一部と第二部があるのをご存じだろうか。

第一部は第三十三帖「藤裏葉(ふじのうらば)」で終了する。
源氏は准太上天皇という、一臣下としては最高の位に上りつめ
息子の夕霧は結婚。娘の明石の姫君は帝に入内する。
源氏の屋敷を、帝と上皇(朱雀院)がそろって訪れる(行幸する)場面で終わるこの巻は
一族の安泰と更なる栄華を予感させる要素が次々に語られる。

次の「若菜上(わかなのじょう)」より、第二部が始まる。

出家後の心配の種である年若い娘、女三宮を源氏に降嫁させようと決心するところから始まる。



この「ありし行幸」とは「藤裏葉」にて語られていたものだが
あの巻の華やかな行幸の場面からうって変わって唐突に
朱雀院の病について語り起こされるこの一文は
第二部の重い世界にふさわしい。

第二部では、この女三宮の降嫁が源氏の晩年に暗い影を落とす。
女三宮は源氏の友人(昔“頭の中将”と呼ばれた人物である)の息子、柏木と密通し、不義の子、薫を出産する。
源氏は、若かりし頃の自らの過ち(父帝の女御であった継母、藤壺との密通)に思いを至らせながら、薫を抱くことになる。
女三宮という、位高い正妻の存在は
源氏の最愛の恋人、紫の上を苦しめ、やがて病に至らせる。

紫の上は残念に思うが、自分が出家した後の源氏の嘆きを思うと、強硬に主張することができない。

この第二部の物語は、どこかおとぎ話めいていた第一部の世界と大きく様相を異にする。
登場人物の多くがそれぞれの苦悩を抱え
それと同時に愛情ゆえの葛藤に悩まされる。
しかし、源氏を取り巻く表面的な状況は、第一部を継承し、またそれを越えてさらに華やかになっていく。高貴な姫皇女の降嫁と彼女の出産がそれだ。


そして紫の上の、源氏を思う心の深さ。
ただ我が身の悲しみを思って紫の上を出家を許さない源氏と対照的に
紫の上の苦悩が綿々と綴られる。

第二部の終わり、結局紫の上は出家することなく死んでしまう。
その一年後、いまだ失意の中にある源氏は、紫の上からの文を焼き、出家の準備をする(「幻」の巻)。

続く「匂宮」の巻では源氏はすでに亡く、物語を担うのは薫の世代となっている。
「幻」と「匂宮」の間に、「雲隠」という巻があり、そこでは源氏の出家なり死去なりが描かれたとされているが、本文はない。もともとあったのかどうかも定かではないが、少なくとも現存しない。
巻の存在さえ、紫式部自身の意図によるものか、後世の人の挿入か、諸説あるようだ。
後世挿入説が有力だったかと思うが、
いずれにせよ、長く語りつづけられた光源氏の一生と
その陰影に満ちた終わりに思いをはせる時
その空白の巻の存在が、読後に広がる余韻に深みを与え沈静化させる。
光源氏とその物語はもう終わりを告げた。
ゆっくりとひと呼吸おいて
読者は「匂宮」に始まる「宇治十帖」の世界に入って行くことができるのだと思う。






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Last updated  2006.01.28 02:34:51
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