周回遅れのトップランナー

■周回遅れのトップランナー

『周回遅れのトップランナー』 アテネオリンピックが開催された。
 108年ぶりの五輪、故郷へのお里帰りである。
 オープンセレモニーは、ひときわ派手やかに演出され、聖火は感動的に聖火台に着火された。
参加した選手の中からは、その光景に思わず鳥肌たつほどの感動を覚えたというコメントがあった。 各国の選手団入場式も盛大であった。色鮮やかなコスチュームに身を纏ったアスリートエリート達。
世界には、こんなに大勢の運動大秀才たちがいるのだ。
ここに至るまで、どれだけの競争を勝ち進んできたことだろう。
どれだけ、自身の刻苦勉励に支えられてきたことだろう。
そして、どれだけ多くの悔しいファロワー達の血と汗と涙が、彼らの背中に乗っかってることだろう。競技の世界では栄光と敗残を、神の思し召しか悪魔の罠か、闇の中の一条の光が酷薄に分かつ。
一条の光に浴する勝者は、紙一重の差で異なる世界に踏み込む。
だから観衆の感動を呼び起こす。
紙一重の怖さを知れば、逃げたくなるに違いない。
しかしそれでも一条の光を求めて彼らは、チャレンジをひた続ける。チャレンジャーとは、自らそれを選択する人を言う。
強いてやらされる人をチャレンジャーとは呼ばない。
チャレンジャーとは、あきらめないで続ける人を言う。
一過性の勝者をチャレンジャーとは呼ばない。
チャレンジャーとは、闇の怖さを知る人を言う。
怖さを知らず、闇雲に戦う人をチャレンジャーとは呼ばない。名前を初めて聞くような、そんな小さな国の選手団の入場行進を見た。
出場選手は片手で数えられる数。
それでも、にこやかに、晴れやかに、この舞台の脚光を浴びている。
名も知らない国のちっぽけな選手団が、世界中の観衆の視線を集めている。
心の中でわたしは叫ぶ。
「頑張れ、負けるな、勝て! 必ず祖国に錦を飾れよ」中長距離の陸上競技では、必ず周回遅れのランナーを見届けることになる。
わたしは、そこに自分の姿を重ね合わせる。
あなたはチャレンジャーだ。
先陣のランナー達は、既にテープを切った。
でもあなたのレースはまだ終らない。
ここが勝負だ。
あきらめるな、最後の最後まであきらめるな。
あなたは、あなたのレースを戦っているのだ。
観衆は、あなたの戦いのプロセスを注視している。
フェアに戦い、結果で敗れたあなた、それでも最後まで自分の戦いを放棄しないあなた。
その足取りは、まるでライバルの数倍走ったかのように萎えている。
その上体は、幽界をさ迷う亡者のように揺らめいている。
しかし、その姿の悪さをわたしは嫌わない。「負けるな、勝て、自分の戦いに勝て!」
 いつの間にか声になってしまったその言葉は、
周回遅れのランナーの姿をした自分自身へ向けられた言葉だと気づく。
あなたは、いつしか幾人もの社会のチャレンジャーを背負っているのだ。
社会の色んな場面でのチャレンジャー達が見ているのだ。
ボクら、彼ら、社会のチャレンジャーには、ほんとはゴールはひとつではない。
一律のゴールで戦う戦いをボクらは、自ら選ばない。
自ら選ぶのは、自分の夢が決めた自分のゴールだけだ。

だから一律のゴールで勝ったように見えても、
自分のゴールに達さなければ、未だチャレンジャーであり続ける。
一律のゴールで負けたように見えても、自分のゴールテープを切ったならば、
それは トップランナー なのだ。目指すのはオンリー・ワンなのだ。 チャレンジャーであるボクらは、あなたに自分の姿をなぞらえ、また敬意をこめて呼びかける。走れ、走りつづけよ、
『周回遅れのトップランナー』

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