『ローマの休日』といえば、オードリー・ヘプバーン。
オードリー・ヘプバーンといえば、『ローマの休日』・・・。
いつ観ても、何度観ても、みずみずしく、哀愁を帯びた暖かさに包まれる。ほろ苦く甘い香りを漂わせながら・・・。
モノクロの映画なのに、どんな色彩よりも新鮮に輝いて見える。
それでいて、すぐさま懐かしさが追いかけてくるのだ。
それにしても、この作品ほど観ることの快楽をストレートに堪能させてくれる映画も珍しいだろう。
ヨーロッパの親善旅行、最後の都市ローマ。
王女としての公務に辟易し、大使館を抜け出すアン王女(オードリ・ヘプバーン)。
舞踏会でのティアラと白のドレスを身に纏ったオードリー・ヘプバーンの気品溢れる美しさに陶然としたばかりなのに、白いシャツとフレアースカート姿でトラックの荷台に乗り込む彼女の愛くるしい可愛さに、もう胸を躍らせているのだ。
男なら、誰もが、彼女の魅惑に秒殺だ。
それなのに、一人だけ無粋な男がいる。暗い通りのベンチに横たわり意識朦朧のオードリー・ヘプバーンを邪険に扱う新聞記者のグレコリー・ベッグである。
だが、彼女の魅惑の前にやすやすと陥落しないグレコリー・ベッグの無骨な振る舞いが、この作品を上品な大人のメルヘンに仕立て上げてくれているのだ。
グレコリー・ベッグは、オードリー・ヘプバーンとは打って変わって、いっちょうら(?)のスーツで全編を通しているが、その飾り気の無いいでたちに、彼の誠実で寛容な人柄が垣間見える。
「トレヴィの泉」のすぐそばにある理髪店に入り、一日かぎりの自由を謳歌するために、長い髪をバッサリ切り、ヘプバーンカットに変身した彼女の妖精のような可愛らしさを表現するのに、どんな言葉が必要だろうか?
スペイン広場の階段で、髪を切ったオードリー・ヘプバーンが、愉しげにジェラードを頬張るときの、あの、あどけない笑顔にどんな形容が必要だろうか?
ローマ市内をグレコリー・ベッグとスクーターを乗り回すときのオードリー・ヘプバーンの無邪気なはしゃぎよう。
「真実の口」で見せた、怯えて首をすくめたときの表情・・・。
船上パーティーでの大格闘から逃れ、グレコリー・ベッグの部屋で寒さに打ち震えているときの、オードリー・ヘプバーンの、あの弱々しい小動物のような瞳・・・・・・。
彼女の立ち居振る舞い、その何もかもが、清らかで、美しく、可憐で、爽やかで、そのしぐさを眺めているだけで、観る者をあたたかい幸福感で包んでくれる。
ローマでの、一日だけの思い出を胸に焼き付け、大使館へ戻ったオードリー・ヘプバーンは、冒頭で侍従たちを困らせたアン王女では、もはやなく、プリンセスとしての高貴な威厳に輝いている。
少女が、女へと成長するように、妖精から天使へと変身を遂げたのだ。
クライマックスの記者会見で、「・・・ローマです!」と答えた、アン王女の凛とした瞳を見つめるグレコリー・ベッグと見詰め返すオードリー・ヘプバーン。
深い余韻に酔いしれながら、我々もまた、この、「一億光年の恋」を心に刻むのである
。
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