
広がるのは耕作放棄されて草ぼうぼうに生えた田と、文字がかすれて判読不能な看板。
私はもしや、地形図を読み間違えて、違う道をずっと歩いてきたのではないかと不安になり、さらに進み、現在地が正しいかどうか確かめることにした。ライトで地形図を照らし確信する。
今来た道の突き当たりを左に進めば、50メートルと行かぬうちに右に曲がる道路があるはずである。
私は歩いた。そして右に曲がる道がない。
ない!!!!!!! ないだと。
そんな馬鹿なことがあってたまるものか。
私は後悔した。というか、一人でびくびく歩いてる間、ずっと後悔し続けてるのだけども。なぜ、こんな夜中に暗く、不確かな道を歩んできたのだろうか。別に駅周辺で野宿でもし、早朝の明るい時間に発てばよかったではないか。そうすれば、道を間違え、わけのわからぬところで孤独に迷い歩くこともなかっただろうに。私は馬鹿だ。
なんて馬鹿なんだろうと思いながら来た道を戻ってたら、さっき見つけられなかった右に曲がる道が普通にあった。どうやらテンパッてて道路の存在に気付かなかったようだ。確かに私は馬鹿だ。
やや冷静さを取り戻す私。とりあえず、目的通りの場所にはいるらしく、現在地も正しく確認することができた。もっとも問題はまだ残る。宿泊予定のキャンプ場が見当たらない。最悪、そこらへんで寝転がればいいやとは思うが、どうにも気にくわない。
私はもう少し周囲を探索することにした。それでなければ、来た道をずっと引き返して、草水登山口でで泊ろうと。
近くに人間の明かりが見えたので行くことにした。
やや歩いて明かりにたどりついた。どうやらここは温泉らしい。宝珠温泉。
人口のぬくもりを享受し、脅え、縮みこんでいた僕の心がやや回復する。
たしかここら辺からも、地形図にはのってないが、登山道にアクセスできたはず。というか、そんなあいまいな記憶にたどって行動していいものだろうか。もはや知ってる道に引き返した方が賢明なのではないだろうかと、その場で自問自答したが、別に危険なことがあるわけでもないから、ここら辺から登山口を探すことにした。
あるいは、寝心地がよさそうなところがあればそこで泊ろうと。
探索してたら、温泉のすぐ近くに看板があった。キャンプ場の看板。
超分かりにくい看板。いい加減な看板。とりあえず、近くにキャンプ場があるのに間違いはないらしい。
それっぽい道を進むと、明らかな登り道で、山へ伸びていくような道路であることに気づいた。
山登っちゃダメだろという気持ちと、こんな木が鬱蒼と生えた薄気味悪い道は嫌だ!!という思いから私は引き返す。
というかもう面倒だから、このまま草水登山口まで歩こう。一時間くらいかかるし、またあの道を歩かなきゃいけないけども、ずっとここで神経すり減らすよりマシだ。それにもう寝たい。疲れた。
と思い、来た道を戻ってると、山の上に人工の光があることに気づいた。
私が先ほど引き返した道を登りきったあたりにである。
もしや、先ほどの道は確かにキャンプ場へ続く道なのかしら。
よし、先ほどの道を登ろう。怖いけども登ろう。それでだめなら今度こそ引き返せばいいじゃないか!!
そして、私はついにキャンプ場へ至った。
ようやくたどり着いた。
キャンプ場は人気がない。まぁ当たり前と言えば当たり前だが。
もう人工の光から離れるのが怖いので、電灯がある駐車場で一夜を明かすことにした。寝る準備を整え、私はようやく安堵のため息をついた。時間にして日付が変わった頃。私はようやく床についた。
が、眠れない。
外の風がうるさくて全く眠れない。本当にうるさくて怖い。怖いのである。
びゅぅー・・
ぅぅ うう
!! ぐぅ
ぉぉ
お
お
ぉぉ
ぉ お
お お
お
お
お!!
大きな風が吹く度に私は目をさました。風以外の音、木がし鳴る音か、枯葉が鳴る音か、私には判断ができない。もしやすると俗にいうラップ音か。
恐怖は際限なく積もる。
私は思考を遮断する。
まどろみ、気づくと夜が明けていた。


