専業トレーダー DaTsU

16ブロック



主人公たちの目的はただひとつ。

「2時間以内(午前10時まで)に16ブロック先の裁判所に行く」ということだけだ。この単純明快な目的を達成するのが、いかに困難で複雑な事態を招いてしまうのか。絶体絶命の難関をいくつも設けて、主人公たちがそれをいかに突破していくかを描く脚本の面白さ。
裁判所に向かおうとする主人公たちも、それを阻止しようとする警官たちも、知恵と体力を振り絞って火花の散る戦いを続ける。この1キロ半、2時間たらずの攻防の中に、それぞれの人生が、それぞれの生きてきた道筋が、そしてこれからの人生の有り様が、ギュッと凝縮されているのだ。

NYの非番明けの老刑事ブルース・ウィリスに突然の指令だった。今日もあとは、家に帰って
酒を飲んで・・・終わるはずだった。まさに悪夢。
それにしてもハリウッドと言う規模はいつ見ても驚かされる。なによりNYの1ブロックの
人の多さがものすごい。ここまでブロックを移動する術がBUSYの名の下の恒例渋滞とは・・・

ブルース・ウィリスは常に、疲れた悲しい目で、タフガイの地位から降りてしまった男を好演。敵役を演じるデヴィッド・モースも重量感のある芝居を見せる。しかしこの映画で最大の収穫は、エディ役のモス・デフだろう。最初から最後までとにかく喋りっぱなし。のべつ幕なしに喋りに喋っているこの男が、不機嫌そうに黙りこくっているウィリスと好対照なのだ。

若い窃盗常習犯の彼は、この裁判所の証人宣誓が終わったら、西海岸へ行って、妹と
ケーキ屋をやりたいとの夢を描く。ほんの少し先の夢のためにこの老刑事は人生の
最後とも言える賭けをかけて身内の刑事より彼を庇うという選択をこの16ブロックの
逃走劇の中おこなう。

 映画のテーマは「人は変わることができる」ということ。これは古今東西あらゆる映画の共通テーマでもある。映画の中ではいつだって、主人公がある境遇や心持ちから、別の境遇と心持ちに変化するものだ。この映画では、主人公たちの「変わりたい」という願いが実現するところに感動がある。





ニューヨーク市警の刑事、ジャック・モーズリーは、エディという証人を16ブロック(区画)先にある裁判所まで連れて行くよう命じられる。夜勤明けを理由に断りたいジャックだが、さほど難しい任務ではない。しかし、護送途中に、何者かがエディを襲撃したことから事態は一転。実は、エディは警察内部の不正を知る重要証人だったのだ。彼を助けた結果、ニューヨーク市警全体を敵に回してしまったジャックの運命は?

またも不運な刑事役?! ブルース・ウィリスの新たな魅力が光るサスペンス・アクション


ちょっと意外かもしれないが、このところ、いい仕事をしている俳優といえば、ブルース・ウィリスである。『ダイ・ハード』などアクションスターとして確固たる地位を築きながら、一時期は低迷を余儀なくされた彼が、近年、『ホステージ』、『シン・シティ』といった作品で、渋みの増した存在感を放っている。

今回、彼が演じるジャックは、完全無欠(ダイ・ハード)なヒーローとは程遠く、酒を飲むことだけが生きがいという落ちぶれ刑事。かつて捜査中に負傷した足を、今もひきずる姿はどこか痛々しい。そんな彼の日常は、「人間は変わることができる」が口癖のエディと出会ったことで大きな転機を迎える。巨大権力にして身内であるニューヨーク市警が、エディを闇に葬り去ろうとした瞬間、長年くすぶっていた正義感が突如目覚めるのだ。

こうして始まった逃走劇は、一瞬もじっとしていられない。同僚たちの執拗な追跡はもとより、16ブロック(約1.6キロ)先の裁判所に、閉廷までの118分以内にたどり着かなければならないというタイムリミットが刻一刻と迫っているからだ。この緊張感を、観客もリアルタイムで体感できる。また、複雑に入り組んだ逃走ルートからは、あらゆる人種がひしめくニューヨークの多層性が浮かび上がる。幾重ものサプライズを畳み掛けるクライマックスも、見事の一言。骨太のサスペンス・アクションとして、非常に見応えある作品だ。

そんな今作の最大の見せ場は、図らずもトラブルに巻き込まれてしまったジャックとエディが築き上げる“友情”である。前科がありながら、更生し、社会復帰を目指すエディのひたむきな姿に、後ろ向きの人生を歩んでいたジャックも次第に感化されていく。冒頭、ジャックが身内を敵に回してでも、エディを助けたのは、偶然ではない。誰にでも人生をやり直すポテンシャルがあることを証明しているのだ。「人間は変わることができる」。それを体現するジャックに、紆余曲折を経たブルース・ウィリスの演技が説得力を与えているのは言うまでもない。



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