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椿三十郎




リメイク椿三十郎、織田祐二は、和服が似合う。

角川春樹総指揮

森田芳光監督  

この2人なら邦画ファンは、期待が膨らむだろう。

黒澤作品を、リメイク。現代風に仕上げた。

三船敏郎から織田祐二へと、着々と時代は受け継がれる。

取り立てて派手な演出はないが、主演一人舞台といった感じだ。

すべてが織田の演技力に通じてくる。助演を勤めるベテラン役者の
中村玉緒さんや、藤田まことさんなど渋い演技を見せるが、
織田の大物役者への更なる布石となる一本のような気がした。

ところどころで、でてくるツバキの色の美しさを見ながらゆったりとした
気分で見ることができた。


真夜中の森の中。朽ちた社殿に人目を避けるように若侍たちが集まり密談をしている。一人の若者が仲間に語りかける。「次席家老の汚職を城代家老の睦田に告げたが意見書を破られ相手にされなかった」。失望の色を浮かべる青年たち。だが「大目付の菊井さんに話してみると『共に立とう』と答えてくれた」と続けると一転して場は喜びに沸く。この脳天気に気勢を上げる若者たちの前に奥の部屋からアクビをしながら流れ者の浪人が現れる。謀議を聞かれたと緊張する一同にどこ吹く風のこの男はニヤニヤしながら「岡目八目、菊井のほうこそ危ない」と独りごちる。やはり菊井は悪者の仲間であり、その手勢に社殿が取り囲まれるもこの浪人の機転により若者たちは虎口を脱する。自分たちの甘さを後悔する一同だが、あくまで信念を曲げず命がけで巨悪にたち向かおうとする。

頭の固い連中に一旦は匙を投げた男だが「死ぬも生きるも九人一緒だ」の悲壮の声を聞くと思わず「十人だっ。お前たちはどうもあぶなっかしくていけねえ」と怒鳴りあげ城下へ一緒に乗り込むが、一枚上手の悪党たちが藩政を掌握し世論を味方につけてしまっていた。悪党一派との戦いの末に救出した城代家老の奥方と娘によるとご本尊の城代は敵の人質になっている。浪人と若者たちに助けてもらった睦田婦人はお礼を述べた上で、容赦なく人を斬るこの風来坊の心に人間同士が作り合う社会への希望が無い点をたしなめ、希望を持てば必ずよい結果になると優しく語りかける。眩しそうに目を逸らしていた男だが、改めて婦人から名前を聞かれると困った様子となり「私の名前ですか。・・・つばき、椿三十郎。いや、もうそろそろ四十郎ですが」と冗談とも本気ともつかない返事で日なたの空を見上げている。つられて奥方、娘、若者たちも外を見上げると屋敷の塀越しに真っ赤なツバキが咲いていた・・・。

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