TRICK PARTY

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distance night 6



「ぽん!」

あたしがチョキ、ナストがパー。

「えーっと、オレの勝ち……か?」

「ちっがーう!パーはチョキに負けるの!」

何でも知ってそうなその態度によらず、ナストはおそろしく学習能力がなかった。

「もう15回目!早く覚える!」

「おいおいまなみん……。キャラが違うぞ、キャラが……。オレはおしとやかな女がタイプなんだ……」

「覚えなさすぎ!どんだけ説明させなきゃなんないのよ!」

「そう言われてもぉ……」

「次から間違えたらデコピン一回ね」

「……デコピン?」

「あ、そうか……」

デコピン知らないんだ。

「そうね、なにごとも経験。やってみましょう」

「??」

「はい、前髪押さえて後ろにやって」

「何するんだ?」

と、言いつつ素直に前髪を上げるナスト。

「じゃ、一応目つむって」

「なんか怖いんですけど……」

と、言いつつ素直に目をつむるナスト。

実はどんなのかってわくわくしてるんじゃないかしらん?

なんてことを考えつつ、あたしは右の親指で、右の中指をひっかけた。

「……」

ふと思い直して、右の親指と人指し指で、 左 の中指をつまむ。

そして、思いっきり中指を引いて、それをナストの顔前に持っていき……


どごすっ!!


すごい音がした。

もってその反応は顕著だった。

「のぐわっ!?うわっだだだだ!なんだこれ!?うーわ痛っ!!痛いって、ヤバイって、うーわ死ぬ、これはヤバイ!あがあぁぁ!いでええぇぇっ!」

まああたしの こっちの デコピンは「神の指(ごおるどふぃんがあ)」と呼ばれて恐れられてるほどに痛い。うん、わかっちゃいたけどね。

「ちょっ!痛い!てか熱い!絶対赤くなってる!これ!」

「うん、赤いね」

「冷静に言うな!これはマジでヤバイだろ!あ~脳みそがゆれるぅ~」

ホントに辛そうだ。くらりくらりと揺れている。

「あ~あ~だめだあ~し~ぬ~」

「大丈夫!あたしの指で死んだ人はいない」

「じゃあオレが第一号になる~いやだ~そんなの~なさけなさすぎる~」

「確かに」

「だめ、死ぬ前に寝る。おやすみ」

ナストは逃げるように(かつ額はおだえたままで)仮設ベッドにもぐりこんだ。

「あの~?ナストさん?大丈夫?」

「むり~しぬう~」

これは本格的にヤバそうだ。

でもナストが寝たらあたしは何をしろと?

「ねえ~ナスト~。謝るから起きてよ~!ヒマぁ~」

「謝ってもオレの傷は癒せない……痛いぃ……」

意外とこういうのに弱いんだ……

「ちょっと~。オトメを一人にしとくなんてありえないぞ~」

「無理だ~。乙女なんてどこにもいねえし……」

「もう一回おみまいしましょうか?」

「うわー!やめてくれ!」

ナストは毛布にもぐりこんでしまった。

「もお……」

と……


ぐぅ~


空気の読めない音がした。

「あっ……」

「あはは、情けなっ!」

「うるさぁい!」

そういえば夜中来たからなあ……

「下行ってメシ食ってくれば?」

「そんなとこあるの?」

「食堂がある」

「マジで?」

「おう。行ったらすぐに右だ。んじゃ」

そう言ってナストは眠りに入ってしまった。

「ありゃま……」

また寝ちゃったよ。

ま、する事もないし腹ごしらえと行きますか。

あたしは牢を後にして、階下へと向かった。


「えーっと……右、よね?」

なにせ人の気配がない。食堂ある場所に音があるわけで、普通教わらなくてもだいたい位置は掴める。

んが、ここでは全く無理だ。人の騒ぎなんか微塵も聞こえない。間違いなく教わらなかったら無理だったろう、うん。

「うーん、ここか?」

それっぽいところの入り口を入ってみる。


しーん……


どうやら当たりだったようだ。うちの学校にある学食みたいな感じ。しかし繰り返すが、着いてもなお食堂に来た気がしない……

「だって会話ないし……」

自己納得しときつつ、料理を頼めそうなところに近寄った。

「もしもーし、ご飯頼めますかぁ~?」

と、中から無愛想なおばさんの顔が現れた。

「メニューは?」

「えーっとぉ……」

上を見る。

前を見る。

右を見

左を見る。

「……メニューどこ?」

つーかメニューないじゃん。

「だいたい言えば揃う」

「あぁ……そう。それじゃあラーメン」

「は?」

「ラーメン。知らない?」

「言ってる意味がわからない」

「あ、そ。じゃあカレー」

「は?」

「ないのね。じゃあ妥協して炒飯」

「はい?」

「あーもう!何があるのよ!」

「あんたの言ってるメニューがわからないから仕方がない」

「じゃあもうパンでいいわ。パンだったらなんでもいい。これならあるでしょ?」

「承知した。35ラクス」

「は?」

今度はあたしが首をかしげる番だった。

「35ラクス!」

「……えーっと?」

「まさかお金ないの?」

「え?ええぇっ!?」

お金いるの??マジすか!?

あたしはポケットを探る。

「これじゃ……だめよね?」

ためしに財布の500円玉を出す。

「無理」

「やっぱり、ね……」

もちろんあたしはこの国のお金を持ってないし、換金するような場所も知らない。

おばさんがイライラしたように顔をしかめる。

「あー、えー……うーん」

どうしよ?ナストの所に戻ろうか?でも囚人扱いの彼がお金を持っているようには思えない。てか何で教えてくれなかったのよ!ナスト!

「どうしよ……」

何か救いを求めるように目が泳ぐ。

とりあえずここを出たほうがいいか?

視線が入り口に向けられた時


視界に入って、気付いた。


この世界でナスト以外で唯一の知り合いの存在に。

パンを片手に、本をもう片手に持って食事をとっている人。


……ルシャだ


「む……」

なんか彼に頼るのは本能が禁じてる気がする。

「むむ……」

でも理性はさっさと奴に金を借りろと言っている。

「むむむ……」

自分の中で天使と悪魔が抗争を始める。困ったことは、どっちが天使でどっちが悪魔なのかわからないことだ。

「むむむむ……」

天使と悪魔の戦いヒートアップ!戦いは煙に包まれ……。

「……!」

じゃじゃん!

煙が飛び、勝者が拳を挙げた。


……理性が、勝っていた。



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