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僕の話を頷きながら聞いた後、
当時の僕には到底できなかったであろう、
周りを包み込むような表情で、お母さんは答えました。
先生の仰ること、すごく良く分かり、
私の息子を想ってくださるお気持ちに、
大変、感謝しております。 ですから、今から私が言うことは、
先生が間違っているということじゃないですからね。
この子には、兄と妹がおります。
兄の高校受験のときも、 公立1本で受験させました。
この子にも、妹にも、 ずっと前から、高校受験に関しては、
父親と私とで、言い聞かせております。
『高校に行きたいのなら、自分の好きな高校を自由に選びなさい。
だから、その高校に進学するために必要な内申、学力は、
自分の責任において、手に入れなさい。
もし、手に入れられなければ、自分の責任において、
その自分の能力で進学可能な高校を選びなさい。
それが本当の「選ぶ」という意味。』
こう言い聞かせてありますから。
いや、しかし・・・・・・・・
ええ、先生の仰りたいこと、私も親ですので、
痛いほどよく分かります。
ただね、先生、世の中に「絶対」ということはありませんよね。
その厳しい社会で、楽しく、幸せに生きていくためには、
逃げ道を用意していてはダメだと思うのです。
腹を括って、立ち向かっていかなければ!
もちろん、私はこの子の親であり、子どもが公立高校1本で、
もし、不合格になったらと、考えると、たまらなく辛いです。
でもね、普通に行けば、私と父親は、
この子よりも先に人生を終えます。
この子の人生の中で、親である父親と私が いなくなるときが
必ず、やって来るのです。
だから親として、生きている間に、この世の中の厳しさに負けず、
それに立ち向かい、むしろ、
その厳しさを楽しむことのできる人間に育てたいのです。
私たちは子どもを冷たく突き放しているのではありません。
子どもが、社会の厳しさに立ち向かうのであれば、
親である私たちも、その結果がどうなるかという心配に立ち向かい、
子どもが出した結果を全て受け入れる覚悟をしなければなりません。
子どもに大切な何かを、親として教えたいのであれば、
親もそれに対して、腹を括ることこそ、私は教育だと思っております。
先生だって、毎年、何十人もの受験生を抱え、
その進路指導をし、「絶対」など有り得ない受験に
生徒を送り出してるじゃありませんか?
先生の立場をお察しすると、不合格者が塾から出ると、
塾としての評判は悪くなる可能性がある。
それに毎年、立ち向かっておられるじゃないですか?
また、生徒さんが、もし合格しなかったら、
その子に何て言葉をかけたらいいのかと心配しながらでも、
必死で授業を行い、頑張っておられるじゃないですか?
世の中の厳しさに、立ち向かっておられるじゃないですか?
子どもの将来のために、腹を括ってらっしゃるじゃないですか?
少なくとも、がっきー先生は、そういう先生だと思うから、
私はこの子を小学6年生のときから、この塾に通わせているのです。
お分かりいただけたでしょうか?
僕を諭してくれるように話すお母さんの横で、
息子は、うんうんと頷きながら、お母さんと同じような顔をしていた。
つづく・・・。
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