いつかのうた



見上げる僕
太陽が目を突き刺す。確かに遠い雲。

この前走りぬけた小高い丘から見えた青空。青空がすごく深いと思った空。
今日はもっと遠く、深い。
夏が近いからかな。

視線を戻すと、君は居ない。
周りを見渡しても君は見つからない。

しばらく探した。やっぱり居ない。

「ああ、きっと思い出だ。空と雲と、遠い・・・。」
僕は一人で家に帰る。


聞こえてきたメロディは少し悲しげで、胸を締め付ける。
テレビに映る、深夜の道路。どこだろうここは。
伸びのある声は、無機質な光に照らされた、ビルの隙間を跳ね回る。

「もう少し一緒に居たかった。」
一人の部屋で声に出してつぶやいてみる。
本当は忘れていたくせに。本当は少しうとましく思ってたくせに。
「もっと一緒に居たかった。」
胸に込み上げる苦い味。

親にしかられて、拾った猫をまた捨てる時の痛みに似た。

あの時の僕にはあれが精一杯だったんだ。
ずっと一緒に居ても、僕にはどうしようもなかった。
そう思おうとして。

溢れるものは君を愛しく思うから?自分の無力を嘆くから?

今日も空が遠い。
遠い雲は君を連れて行った。

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