Accel

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May 4, 2010
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 肩も、震えていた。
 すらり
 カンが、剣を抜いた。
「ニルロゼ。
 外へ」
 短く言った。

 無駄のない動きで足を進め、剣を繰り出した。
 卓上の赤い蝋燭を、切り落とす。


 ふふふふ

 奥から赤い笑い声が聞こえた。


「カン」
 少年の声がカンを追いかけて来た。
「馬鹿野郎!
 外に出ろ!」
 振り返らずに叫ぶカンに、ニルロゼは突拍子もない事を言った。
「いや、少し肩を貸してくれ」
「な、なに?」
「いいから、そのままじっとしていてくれ」

 カンが、マンサガや赤を見据えながら、剣を構えていると、突然肩に衝撃が走った!

 いや、飛び乗ったのではなく・・・・
 カンはニルロゼに踏み台にされた!

「でえええあ!」
 飛び上がると、気合を入れ、ニルロゼは天井に剣を叩き付けた!

「が、があああああ??」

 その顔色を見て、ニルロゼが最高の笑みを見せた!
「けっ・・・
 もしかとは思ったけどココだったか」
 ニルロゼは、天井に刺した剣でぶら下がっていた。

 天井から、どろりと・・・
 赤いモノが、流れてきた。


 ビキ
 ビキビキ

 天井が音を立てて割れて来る。

 どお、と・・赤いモノが、大量に落ちた。
 ニルロゼも、天井から落ちた。

「カン!
 マンサガを斬れ!」
 少年が叫んだ!

 カンが同時に動いた!
 ニルロゼは、カンの方はそれ以上見なかった。
 蜂蜜色の瞳は、メルサに向けられた。
 赤き衣装のメルサ。

 少年は東の鍛冶の剣を、構えた。
「みんなの命、すすってここまでなったのだろうな、メルサ・・・
 並みの剣では斬れないだろうが、それでも俺はやる・・・!
 東の方から頂いた剣でっ!
 そして・・・
 この剣はンサージの魂だ!!!!!!!!!!」


 少年の瞳が、細くなった。
 そう、ンサージの魂よ・・・・
 ンサージ!
 力をかしてくれ!!!!
 赤を斬る!
 このハーギーを斬る力を!!!!!


 剣が上段に構えられた。
 メルサは、ぼんやりと突っ立っていた。
 少年は、剣を回転させ、さらりと左に移動した。
「!?」

 ニルロゼが向かった先を見たメルサの雰囲気が変わった。
 少年ニルロゼは、天井から落ちてきた赤いモノに・・
 わき目も振らず、剣を立てた。

「や、や・め・・ろ」
 メルサが、ひび割れた声で言った。
「やめるわけ、ないだろ」
 少年は恐ろしい表情で返した。

「貴様の正体、ここにありってやつか?」
 ぶすり!
 少年は再度、赤いモノを、刺した。


「を、を、を・・・」
 メルサは、わなわなと頭を抱え、段々体が小さくなってきたようだった。
 少年は、粘っこい”赤”を何度も何度も斬った。
 斬っていた赤が、やっと、色を失ってきた・・・

 そんな少年の肩に手を置いた男が居た。
 カンである。
 眉間に皺を寄せ、やや疲れていたようだが、ふわりとした笑みを見せてきた。



 絶命した”赤”を見届け、ニルロゼはメルサに向き直った。
「貴様の魂、どこに”使われる”んだろうな・・・」
 言い終えると、少年は、”メルサ”を斬った。

 ”赤”がなくなって、メルサもまた、”力がなくなった”のだ。
 ずさり・・・
 あっけなく、メルサは、倒れ、赤い煙のように消えて行った。

 カンは、小さな瓶を取り出し、その場に油を撒き始めた。
「さあ、ニルロゼ、ここから出ろ」
「あんたも一緒にだ」
 カンは青い瞳を笑わせた。
「フッ・・・
 お前はそう言うと思ったぜ」



 轟々と火の上がるハーギーから、少年と大人が出てきた。
 彼らは、切ない表情をしていた。
 また、大事な人を失って・・・
 そうして生きていかねばならない。

 カンは、とうとう、友が”友でない”事を確認できぬまま、
 その男をなくしてしまった。

「メンーーー!!!!!!」
 カンが、一度だけ、ハーギーを振り返り、高く叫んだ!


 共に同じ部屋で育った友よ・・・
 共に同じ女性の元で育った友よ・・・


 もしかしてあんた、俺の兄貴だったんじゃなかったのか・・・?
niru-khan1.jpg


 燃えあがるハーギーの炎の光に照らされたカンの頬に涙が伝った。
 友が、兄弟かもしれない・・・
 ずっと、確かめてみたいと思っていたのに、叶わぬ事となった。
 だが、確かめてどうなるというのだ。
 このハーギーでは皆が兄弟のようなものではないか・・・


 でも、それでも・・・



 首を伏せると、カンは瞳を拭いもせず、肩をいつまでも震わせていた。


 かくして、最後にハーギーから出て来た少年と大人の二人を出迎えた仲間に、彼らは吸い込まれて行った。
 あたりは既に夕闇に包まれていて、近くの森の中に人影が入って行くと、森はなにごともなかったように木々が風に揺れるだけだった。


 だが、この一帯の最も大きな建造物・・・
 ハーギーは、大きな炎で包まれていた。
 この形で壊そうと望んだ人々の心を象徴するように、熱く燃えていた。
 燃えはぜる音と光は、闇夜を割き、時々鳥を驚かせるのだった。

 ハーギーから出た者たちは、誰もが、その音と光から逃れたいと思うほどだった。
 選んで掴んだこの結果に、皆が疲れ、空しささえも感じられた。
 あの炎の音と光はいつまで続くのだろうか・・・

 皆が、思いもしていなかったのだ。
 考えなくてはならなかったのに、考えていなかったのだ。
 ハーギーを燃やせばどうなるかという結果を・・・・


 どんな闘いや制裁、懲罰であっても耐えて来た、ハーギー内の面々は、憑かれた様子でひたすらに、燃えるハーギーから一歩でも遠くへ行こうと、足を引きずるように闇夜を移動して行った。




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猫より☆
メンは、カンの後で考えたキャラなので、名前が超手抜きです・・
カンに似た名前と考えたらメンになったんですが、「乾麺」なんて、あんまり笑えない名前・・・

メンは最初「赤」の方につかせる設定が、なぜかカンの親友になるあたり、物書きしている人じゃないと判らないブラックホール(ww

それから、ニルロゼが赤の部屋の天井を刺す設定が・・・
この小説これで3回書いていて、ちゃんとこの理由というかつじつまを提示しようと思っていたのに、それをしないまま結局こうなりました(汗

いいんです。
あんまりつじつまを描くと、長くなってオモシロミがなくなることもあるんです(本当)
全然今まで一回も話が出てきていない天井の設定がなんでいきなり出てくるんだ~と突っ込んでやって下さい。
いいんですこれで(きっぱり)←開き直り(爆

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最近のイラストは pixiv にのっけてます。よろしければ。





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Last updated  May 4, 2010 08:35:50 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
オスン6757 @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) おはようございます。 いつもありがとう…

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