Accel

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January 24, 2014
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  ほほほ
  ととのったな

  そう

  ととのった

  すべては



 ごおごおと
 うずまくかぜ


 驚愕の顔
 男
 女
 動物
 子供

 驚愕の魂
 怒り
 苦しみ
 悲しみ
 諦め

 それらかたちなきもの

 いりみだれ
 ぶつかりあい

 せつせつと
 ごおごおと

 ぐるぐると
 驚愕のいぶきのかぜ



 くろのなかに
 さらにさらなるくろがありて

 すぶり 
 ざらり
 するり
 だらりと
 くろのうねり

 ごお・・・
 をを
 ごお
 くろがくろをのんで

 くろなのか?
 いろがあるか?

 うねるなみなみは
 のたうち咆哮し

 そのさけびは
 どこへむかうか

 なにをもとむか


 ちらちらと
 あかの、ともしび


   きき

   ほほほ・・・・

   すべては
   わがものなれば・・・
   わがものより・・・


 ごおごおと
 あかが、くろで

 くろに、あかのなみがおおいかぶさり
 あかに、くろがなだれおち

 どこまで、つづくか・・・
 これらのうねり・・・・

   さあ
   ときはみちたり

   わがちから
   わがものなれば

   すべては・・・・・





 吹き渡る風は、既に寒かった。
 焼かれてボロボロの、茶色い服を着た少年と、緑の服を着て帽子を被った少年が、道を歩いていた。
 彼らの歩く道は、馬車が何度も通った痕跡のある、大きめの道だ。

 道は、上り坂になっており、道の上になにがあるかは見えなかった。
 道の両側は樹が並んで生えている。
 どうやら、この道は森を開拓したらしい。
 樹の上から、鳥の声がして・・・
 風が吹くと、木々がざわざわとした。

 歩いている少年・・・
 少し寒そうに両腕を手で擦り合わせているのは、セルヴィシュテ。
 茶色の髪はやや巻き毛で、少し伸びたから自分で切った。
 ちょっと変な髪形である。
 茶色の眉毛は綺麗な弧を描いている。
 その下に、これまた茶色の瞳。
 闊達そうで、朗らかな印象である。

 そのセルヴィシュテの隣にいる少年は、ラトセィス。
 皮でできた茶色の帽子を目深に被っている。
 帽子の下に、輝く金髪の髪が揺れている。
 同じ色の眉は、美しい曲線をなぞっている。
 青い瞳は、爽やかな色であるが・・・
 その瞳は、伏目がちであった。


 ラトセィスには、実は・・・
 この坂を上りきると、どのような光景になるかは、わかっていた。
 その風景を、隣のセルヴィシュテは知らない。

 ”それ”を見たら、きっと、セルヴィシュテは”そこ”に行く、と言うだろう・・・

 と、ラトセィスは思っていた。


 昨日の夜泊めてくれた人が教えてくれたのは、ラマダノン王国。
 この国の隣である。

 なぜ、あの背の高い少年がわざわざ隣国を教えたのかは、だいたい想像がついていた。
 それは、自分達がルヘルンに入れないから、と言ったからだ。
 ルヘルンは、ナイーザッツ王国の首都だ。
 そこに入れないなら、ナイーザッツの城にも勿論入れない身分になった、と、そう、あの少年は思ったに違いがない。


 それほど時間がかからずとも・・・
 ナイーザッツ城が、見える・・・


 ラトセィスの両手が、自然に握られ、唇は硬く閉ざされ、眉毛が釣りあがってきた。

 彼の鼓動は彼の意思に反して早くなっていた。
 城が、見えてくる・・・

 ラトセィスは、高鳴る胸、早まる呼吸、色々な想いに、我を忘れていた。


 そのころ、セルヴィシュテの方は、馬が数匹やってくる音を聞きつけていた。
 どうやら、あの坂の向こうから来るようである。
 今、自分達はゴロゴロした岩質の道端を歩いている。
 道を譲る程でもないであろう。

 小石が多いその道の坂のてっぺんを、興味ありげに・・・
 セルヴィシュテは見続けた。
 そして、ちらり、ほらりと馬の影が現れる。
 馬は、素晴らしい速度で走っているようだった。
 勿論のこと、そのままの速さで少年達の脇を通り過ぎるであろう、と思いたかったが・・・
 少年達に近づくにつれ、馬は速度を落とし・・・

 ブルルッ、
 とうとう、5匹の馬が、少年達の前で停まった。
 五匹の馬の上には、甲冑を着た大人の男がそれぞれに一人ずつ乗っている。

 茶色の髪の少年、セルヴィシュテは、僅かにラトセィスの前に出ると、にっこりと大人に笑いかけた。
「こんにちは。
 なにか、ご用ですか?」

 男の一人が、右手に持った槍を見せびらかすように天に構えた。
「ガキども。
 どなたのお許しで、ここを歩いている?
 なにも知らないのなら、特別に許してやろう・・・
 ここからは、城の領域だ。
 早々に立ち去れ!」

 男の太い声に、思わずセルヴィシュテが軽く汗をかいた。
 あの、ニルロゼが、王国が西にある、と言っていた。
 城がある?
 城があるというのなら、その王国が、こんなに、近くに?


「・・・城の王様には、お目通り叶わないでし・・・!?」 
 茶色の髪の少年がそこまで言うと、ラトセィスが、後ろから肘でドン!とセルヴィシュテを小突いた!

「ほほう?王にお目通りだと?」
 だが、男は、少年の半分言った言葉に、興味を持ってしまったようである。


「小童の分際で、王にね!」
 ワッハッハッハ!
 男たちの哄笑がおこった!
「おい、小僧、王様にお目どおりだなんて、頭でもいかれたか?
 お前らのようなヤツラが、行けるところだと思っているのか?
 城に?」
 ハハハハ!
 また、笑いが上がった!

 セルヴィシュテは、キリキリと唇を噛んだ。
 チューレンド王のところでは、このような扱いをうけなかったのに・・・・
「俺は・・・」
 セルヴィシュテが食ってかかろうとすると、ラトセィスがまた肘で小突いてきた。


 な、なんだよ、ラトス、さっきから・・・

 目線でラトセィスに訴えたが、ラトスの表情はよく見えない。

「さあさあ、ガキども。
 少し南に下がる道でも行くんだな!」
 男たちが、剣や槍で、追い払うように少年を急き立てた。
 ラトセィスの手が、セルヴィシュテの左肘を掴んで来た。
「行きましょう、セルヴィ」
 ラトセィスは、冷たいような、無表情な声を出し、セルヴィシュテを引っ張った。
「ラトス・・・・」
 セルヴィシュテは、苦い視線を大人とラトセィスとに何度も送り・・・
 そしてとうとう、瞳を伏せると、ラトセィスの引っ張る方向へと足を向けた。


 これまでずっと・・・
 俺が、前に進んできた。
 その進む方向に、ラトスが反対したことはなかった。
 ただ、だまって、静かに・・・
 ラトスはついて来た。

 なにを考えているんだろう? 
 どうしてなにも言わないんだ?

 そう思ったことも、何度もあった。

 けれど、嫌いにはなれなかった。
 このラトスの、苦しみつつも、なにかを求める姿に・・・
 俺の姿が重なった。

 やっと、やっと、少しずつ、見えてきている。
 ラトスの、気持ちが・・・

 その見えてきたラトスが・・・
 初めて、俺を。
 俺の行こうとする方向から、足を遠のけてさせている。


 セルヴィシュテは、もう大人の方を振り返らなかった。
 だまって、ラトセィスに付いて行った。
 いままで、ラトセィスがそうしてきたように。

 と。
 突如、セルヴィシュテは、ラトセィスの手を振り解き、素早く剣を抜いて、大きく振り返った!
 ガツッ!
 セルヴィシュテは、振り向きざまに槍を剣で受けていた!

「くっ・・」
 馬に、囲まれていた。
 その馬の上の大人の一人が、面白くてたまらない、といった顔つきで、ニヤリ、と口から歯をこぼしている。
 馬の上から槍を繰り出され、これまでにない戦いになった、と素早く感じたはいいが、相手は5人もいる!
 しかも、みな、馬に乗っている。
「ラトス!?」
 セルヴィシュテは、ラトセィスを左手で引き寄せた。


 また、あんな魔法使うなよ?

 そう思いたかったが、これほど人数が多く、早く走る馬からの攻撃に、太刀打ちなどできそうにない・・・
 形勢は明らかに不利だった。

 ラトセィスも剣を抜いていた。
 どうやら、魔法ではなく剣で闘うつもりのようだ。
 一応ほっとしながら、セルヴィシュテは剣を構えた。
 ぶん、とうねりをあげながら投げたされるかのような槍を、受け流し、かいくぐって、セルヴィシュテは馬の手綱を切った!
「ヒヒーーン!!!!」
 馬がのけぞり、棹立ちになる!
 騎手は慌てて体制を立て直すのに懸命になった。
 この男は今まで、左手だけで手綱を持ち、右手に槍を持っていた。まあ当たり前だろう。

 右で切り込んだその隙を付き、右の手綱を切るとは・・・
「小僧っ・・・」
 手綱を切られた男は、残りの手綱を握りなおし、茶色の髪の少年を睨んだ。


 面白半分で追いかけてきて遊んでみるつもりが、自尊心を傷つかれてしまった。
 仲間にも、この姿を見られ、もはやただではおかれない・・・
 ぎらぎらと、彼の胃のあたりが煮えたぎってきた。

 反対に、セルヴィシュテはあくまで冷静であった。
 ニルロゼが斬り込みを教えてくれたのが、役にたっていた。
 あの背の高い少年が、斬るときの角度をしつこく何度もなおしてくれた。
 その角度の通りに切り出しただけだ。
 たしかに、違った、手ごたえが・・・・

「俺ら・・・
 きちんと、おっしゃられたとおりに、通る道を変えました。
 なにか、不都合がございましたか」
 茶色の髪の少年は、キッ、と瞳を吊り上げた。
 ひゅう、剣を回してみる。
 逆手の剣を順手に。
 構えた。




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Last updated  January 24, 2014 07:55:25 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
オスン6757 @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) おはようございます。 いつもありがとう…

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