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March 10, 2007
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カテゴリ: そのほか
以前書いたとおり 、小説仕立てにしてみました。
とは言いつつも…
まぁ、読んで見てください。

「50円玉20枚の謎」を読む男



一日の仕事が終わるとほっとする。その仕事がたとえ途中で投げ出したものでも、会社を出れば終わった気分になるし、家に帰ればどっと疲れも出る。
玄関に入ると、すぐに正面のドアが開き、妻の明美が出迎えてくれる。鍵を開ける音に気づいて出てくるようだ。
いつもならここで、「お帰りなさい、あ・な・た。ごはんにすr」と言う昭和の香りがぷんぷんするような出迎えがあるはずなのだが、なぜか今日は一言も言わず、私のかばんを持ってさっさとドアの向こうに引き返していった。
リビングに入ると、明美は白いレザーのソファに寝転んで本を読んでいる。持っていったはずのかばんは中央にある丸いテーブルの上に鎮座している。普段、私がテーブルにかばんを置けば怒鳴られるものなのだが……
「おい、どうした?なんかあったか?」
「今本読んでるの、後1話で読み終わるから、黙ってて!」

何か情報をつかもうと思い表紙を覗いてみるが、残念ながら茶色い紙で「紀伊国屋書店」と書かれた、カバーがかけられている。大きさから文庫本なのは分かるが、タイトルまでは分からない。しょうがない。怒鳴られるのを覚悟して……
「なぁ、なんて本を読んでるんだ?」
「50円20枚の謎」
「50円?」
「50円玉20枚の謎!2度も言わすな!」
また怒鳴られてしまった。
予想はしていたが、やはり気分は良くない。もっとも、本を読み始めると機嫌が悪くなるのは分かっているから -なぜ悪くなるのかは知らないが- 、これ以上は触れないようにしよう。後1話と言うことは、短編集か。
私は一人でリビングへ移動した。私の分の晩御飯がきちんと用意されていた。
青いペーズリー模様のクロスがかけられたテーブルに向かい着席。悪趣味にもほどがあるどぎついクロスなのだが、もらい物なので仕方がない。このテーブルクロスを前にすると色と模様のコンボで食欲がなくなってダイエットには効果的だ。

黙々と晩御飯を食べる。奥では、明美が黙々と本を呼んでいる。「50円玉20枚の謎」……
50円玉……
20枚……

「邪魔するな!!」
怒られた。
しかし、私は思い出した。今から20年近く前、「50円玉」「20枚」のキーワードに引っかかる、淡く、腹黒い想い出が……
これ以上怒られることもないだろう。思い出したことはすぐに伝えないときがすまない私は、突進してみた。
「なぁ、明美。俺、昔さぁ」


約20年前の正月。私がまだ小学生だったころ。そのときの私の頭の中TOP2は、ノストラダムス、テレホンカード。


ただただ人の不安をあおり、不安の内容はぼんやりと、しかし確実に近づいていることを伝える。最後は必ず、「ノストラダムスはこれを予言しているのかもしれない」で終わる。克明に終局が近づいていると脅し続け、最後に「かもしれない」などと曖昧にされたところで、小学生に行間を読むことなど不可能だ。私は「まだ1999年なんて当分先だよね!」と懇願に近い悲鳴を上げていた。

テレホンカード。これは、当時流行りだしたものだ。特に年末年始になると、どんな漫画雑誌でもテレカプレゼントや、応募者全員サービス(と言う名の物販)が行われ、私を含めた子供たちのお年玉を奪っていった。好きな漫画キャラクターのテレカが手に入る。それだけでワクワクしていた。今となっては使える場所も少なくなってしまったが、まだ数百枚は持っている。

とにかく、こんなことを考えていた正月に、私は札幌市にいた。
年始やお盆くらい長い休暇にならなければ、札幌まで出てくることもできなかったので、このときばかりは見たいものが色々あった。その中でも一番いきたかったのは、おもちゃ屋。ファミコンが買いたかったのだ。もちろんお年玉を握り締めて。まだまだおもちゃを手軽に買ってもらえるわけではないので、自腹である。
中心部のいろんなディスカウントショップが入った雑居ビル(と言うほど粗雑ではないが)。エスカレータで上る途中にその店はあった。小さな小さな店だったが、私にとって憧れの商品が所狭しと並んでいた。ファミコンを目指しているはずの足を、私はその店で家族に怒られながらも30分かじりついた。
結局その店では、チラシを1枚もらっただけで何も買うことはなかった。できなかったと言うほうが正確か。この後買うはずのおもちゃに、いくらかかるかが分かってなかったからだ。今のようにインターネットで何でも調べられることがないので、店まで行かなければいくらで販売しているのかは分からない。もし安く買えれば、一緒に買うソフトを増やそうと思っていたのだ。

無事にファミコンを買い、揚々と車に乗って実家に向かう。車の中ではカセットの説明書を読んだり……したかったのだが、車酔いがひどい私はすぐに寝てしまい、起こされるときにはもう家についている。この時も目が覚めたらすでに家についていた。

家に着いたらすぐにテレビに迎えるわけではない。チャンネルの選択権は父親にあるのだ。結局、初めてゲームができるのは翌日の早朝、まだ、父親が起きてくる前になる。
買ったすべてのものを持って、奥の部屋に入り、説明書を黙々と読み続ける。ところが説明書もそれほどの情報はなく、すぐに読み終えてしまう。今でも家電品を使うときのほとんど説明書を読まない私のことだ、多分、半分も読んでいなかっただろう。

全部の箱をひっくり返したとき、紙袋の一番下に入っていたチラシに目がいった。おもちゃ屋に行く途中にあったあの店のものだ。なんとなくそのチラシをもって、布団にもぐりこむ。自分には縁のない内容が並ぶ中運命の1行が私の目に留まる。

「これだ!」

その日から、私の宝探しが始まった。


宝探しにも、問題はあった。そもそもそのことはみんな知らないのか。一体、その宝はどうやったら見つかるのか。
私は居間に行き、両親に聞いてみる。興奮しながらか話したので、正確に伝わったかどうかも分からないが、答えはNO。両親はそのことを知らなかった。「よし!これは宝になる」。心の中で確信して計画を練る。
まず、50円玉を手に入れること。このこと自体は簡単だった。町の中に数件あったゲームセンターの一軒が、入り口に両替機があった。店員もずっと奥に引っ込んでいて、客もまばら。実行には最適な店だ。今では100円1ゲームや、200円かかるゲームもあるが、当時は2ゲーム100円か、1ゲーム50円が多く、その店は全ゲームが1回50円。当然、両替機も50円への両替。

実行は翌週の土曜日。毎週土曜日は午後から家族で町に出てきて買い物をすることになっている。私は買い物の際にちょっと抜け出し、この計画を実行した。
ゲームセンターは、店の前から中をうかがう。客はまばらで、予想通り店員もいない。いくら冬休み中とはいえ、小学生がゲームセンターに入っていくのを見つかると、さすがにとがめられるだろう。
私は音を立てないように、と言っても自動ドアではどうしようもないし、店の中は音が溢れている。周りにばれないように急いで入り、両替機に向かう。ポケットに剥き出しで入れていた1000円札の差込口に突っ込む。ジャラジャラジャラジャラ。50円玉20枚。すべてをもぎ取って、急いでポケットに入れて店を出る。

よし!

これで計画の半分が終了だ。近くのデパートのトイレに駆け込む。白いドアを勢いよく閉め、鍵をかけ、やっと一息ついた。水タンクの奥に棚があったので、私はそこに50円玉を広げる。ない、ない、ない、ない……
なかった。
しょうがない。さすがにいきなり見つかったら宝でもなんでもない。探してやっと見つかるからそれが宝になるのだ。次に行こう。次……考えてなかった。さて。これを1000円札に戻さなければまた50円にすることができない。これが問題だ。今ならば、コンビニにでも行けば済むがそんなものがないときだ。
一体どうやって戻そう。今いるデパートはこっぱずかしい。田舎者なので、でぱぁとと言うものが苦手なのだ。かといって、この近所には気軽にいける店が、本屋くらいしかない。

本屋か。

ここからいける本屋は2箇所。1件は良く行く店。漫画の類はすべてこの店で買っている。元々品揃えも漫画に特化していて、ほしい漫画ならたいていそろっている。実に小学生の心を分かっている本屋だ。いつも良く使っているからこそ、その店はやめよう。変な覚えられ方はしたくない。よし、もう一件のほうにしよう。こっちの本屋は事典やら文房具やらと先生や親には人気の出そうな品揃えの店で、もちろん利用するのは4月の学年が変わる時期くらいだ。ノートの線幅が変わる時期くらいしか、こんなところには来ない。
僕はそぉっと、目をつけた本屋に入っていく。一直線にカウンターに向かう。この本屋はカウンターが見せの奥にあるのだ。このころはまだ万引きなどが少ない、平和な時代だったのだろう。カウンターにいた凄く、すごく綺麗なお姉さんにポケットの中の50円玉をすべて渡す。僕は渡したつもりだったのだが、実際には投げつけたようになってしまったようだ。いくつかがカウンターの向こうに落ちた。

「このお金、1000円札にしてください!」

投げつけといて言うせりふでもないのだが、僕はそのとき、帰りたくて帰りたくて仕方がなかった。物も買わないのに店にいるのがたまらなくいやだった。かといって、50円玉を1枚でも使ってしまうと、両替機に入れるときに100円玉9枚とか、面倒くさいことこの上なくなってしまう。おまけに練り消しを20円で買ったり、そんな余裕がなかったのだ。

困った顔をしながらも、お姉さんはすべての50円玉を拾い、丁寧に数を数えて「20枚あるね」と、自分に確認するようにつぶやいてキャッシャーから1000円札一枚取り出す。
ここで笑顔に代わったお姉さん。

「はい、1000円」
「ありがとう」とも言えずに奪い取って走り去る。これで、やっと最初の1000円に戻った。
こんな緊張することを繰り返してやっと手に入れる。やっと宝探しって感じがしてきた。よし、がんばるぞ!




「てなことを1年くらいやってたんだ。懐かしいなぁ」
「で?」
「え?」
「で?」
「あ、いや、ごめん、それだけなんだけど……」
「じゃなくて!で、なんでそんなことやってたの?」
「え?あぁ、そうか。わかんないか。」
「分かるわけないじゃない!核心に至る所を綺麗に全部そらして話してたでしょ」
「いや、推理小説って言ってたから、僕もそんな感じにしようかな、って。ここで<読者への挑戦状>って出しても良いくらいにすべての」


<読者への挑戦状>
すべてのヒントは出揃いました。後は、皆さんの ググリ力 で答えを見つけてください。

問題:
・私は小学生のころ、なぜ50円玉を両替しては1000円札に戻すと言う行為を繰り返していたのでしょう?
謎と言うより、知っているかどうかの問題になります。
ですので、推理力ではなく、ググリ力をためさせていただきます。
私がどんな少年で、何をしようとしていたか。
最初に書きましたが、半分くらいノンフィクションなので、私は実際にこの行為を行っていました。



解答編は1週間後に。

「誰に話してるの?」
「いや、なんとなく。話したくなっただけ」
「で、何でやめたの?」
「あぁ。ちょうど一年たったころにさ、日本中が暗いニュースに襲われたんだよ。そのときに、 そのニュースのために 新しいものを宝物にしようと思ってさ。」





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Last updated  March 17, 2007 09:24:24 PM コメントを書く
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