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March 17, 2007
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カテゴリ: そのほか


問題編が未読の方は こちら をお読みください。




「誰に話してるの?」
「いや、なんとなく。話したくなっただけ」
「で、何でやめたの?」
「あぁ。ちょうど一年たったころにさ、日本中が暗いニュースに襲われたんだよ。そのときに、 そのニュースのために 新しいものを宝物にしようと思ってさ。」
「頭おかしい?」

「あぁ、そうか。それで……」
「そう、昭和64年。7日しかなかったけど、貨幣発行は前年から始まっていて、その年の8月ころには出回り始めた。年号が代わった時にはもう昭和64年の貨幣を集めることにシフトしてたんだ」
「じゃぁ、その前に追っかけていた50円玉って言うのは?」
「昭和62年発行の50円玉」
「何、その普通な回答。そんなのどこにでもあるんじゃないの。まだギザ10のほうが珍しそうじゃない?」
「違うんだよ。そのときには数が少ないと言うことしか知らなかったけど、昭和62年の50円玉はミントセット、プルーフセットにしか入っていないんだ。俺が見たそのときの広告には『昭和62年 50円玉 12万円』て書かれてた。」
「12万!?50円玉に?てか、何そのなんだかセットって。」
「プルーフセットかい?大体毎年造幣局が作成している硬貨を一纏めにして発売するんだよ。ミントセットはそのままだけど、プルーフセットはさらに表面を鏡状にしたものなんだ。これくらい技術あるぞ、って宣伝なのかな。」
「へぇ。」
「テレカを扱うような店は元々古銭屋だったところが多くて、そのデパートの中にあった店も必ず立ち寄るようにしていた。たまにタッチのテレカを700円くらいで売っていたり、良心的な店だったんだよ。で、買取価格表をくれて見ていたら12万って。そりゃぁ興奮したなぁ」

明美が白い目で見ていた。どうも突っ走リ過ぎたようだ。

「この小説、若竹七海さんて言う作家さんが、昔実際に会った謎を元にいろんな作家さんに競作を頼んだものなのよ」
「そうなんだ。」
「それに、凄く途中まであっているんだけどさ。一箇所だけ。違うところがあるの。」
「へぇ、どこが違う?」
「その行為を行っていたのは、中年のおっさんなのよ」

「いや、そもそもそんな大人であれば、そのなんだかセットを買えばよいじゃない。」
「それはそうもいかないんだ。人気が高くてさ。平日の朝から銀行にいけるようならまだしも、抽選販売するくらい人気のものだから」
「そんなの、街中で手に入るはずないじゃない」
「それがそうでもないんだよ。実際、普通におつりでもらったって話も出ているようだし、俺だって最近、500円玉のお釣りに長野オリンピックの記念硬貨もらったし。知らない人にとってはただのお金だからね。」
「それもそうか」

「ねぇ、その本いつころ読み終わる?」
「後1本だから多分30分くらいで」
「じゃぁ、読み終わったら貸してね。着替えてくるわ。」
「あ~い」
また寝転んで小説の世界に心を通わせる明美。30分あるなら……と思い、書斎に戻る。着ていたスーツをハンガーにかけ、机に向かいPCに電源を入れる。
10年ぶりかなぁこれ開くの、なんて考えながら、PCが起動するまでの間に袖机の引き出しの奥から1冊の分厚いアルバム(ぽいもの)を取り出す。中にはたくさんのポケットがついていて、1つ1つにコインが入れられるようになっている。コインの横にはコイン代の短冊型の紙が挟めるようになっていて、簡単な注釈を書いた紙がコインとともに残せるようになっている。
年代順に並んでいて、穴のない5円玉、ギザ10(昭和26~31年まで1枚ずつ)、でかい50円玉なんかが並んでいる。次々と記念硬貨ページを手繰り、やっと登場した。


「懐かしいなぁ」


昭和62年の50円玉と500円玉。2枚で10万で買ったものだ。たまたま、よく言っていたテレカも扱う古銭屋で、別々に入荷したものを揃えて売っていたのだ。
愛でるように眺める。完全に自己満足の世界だ。それこそ明美に見つかってしまえば、全て額面どおりの金額で使われてしまう。ここに挟めてある1000円札だって、傍目に見ればそのままだろうけど、番号の下五桁が全て7と言う、2000円くらいの価値はあるものだ。
自己満足の世界は閉じているに限る。とは理解していたが……
「今いくらくらいなんだろうなぁ」
軽い気持ちでSleipnirを起動する。google検索バーを使って入力「昭和62年 50円玉」。ENTER。




色々見た。約52000件の検索結果の1000件ほど見てやめてしまったが。平均買い取り価格。8000円。今まで一度も考えたことも、感じたこともない。ニュースや、テレビの中だけの話と思っていたものを、初めて、実感し、愕然とした。
当時はバブルだったんだ。







ということで、ほぼノンフィクションなフィクションです。
当時のプルーフセットなどの情報は新聞広告(もちろん全面広告のわけはなく、下のほうにちょこっと出てくるだけ)なので、見逃してしまうと発売日すら分かりません。そんな時代ですから、チラシを見たときの衝撃も表現し切れません。今より情報は貴重だったんだなぁ、と変に納得しました。
まぁ、それ以上に1/10以下に落ちていた50円玉の値段を見た衝撃のほうが大きいですが。

と言うことで、全2回の「「50円玉20枚の謎」を読む男」、終了です。
ただいま「フリッカー式」読書中





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Last updated  March 17, 2007 03:46:08 PM コメントを書く
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