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2005年11月07日
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ジョン・レノンがニューヨークの自宅ダコダハウスの前で、熱狂的なファンによって射殺されるというショッキングな事件が起こったのでした。
享年40歳、不良少年から成り上がった正真正銘ホンモノのアーティストの死でした。

確かこの日は霙がちの寒い日だったと記憶しています。
このニュースを委員長は新宿歌舞伎町で知りました。
その日は久しぶりにジュリーに会うため、新宿歌舞伎町の古巣である東宝会館を訪れていた委員長は偶然にも、ここでブラザー・ジョーと再会したのです。
久しぶりに会ったジョーは寒さに震えていたせいか、少し元気がなかったように見えました。

「We lost the great musician today」と話しかけるとジョーは「No, the great artist」と返してきました。
今日、世界は偉大なアーティストを失った、そう言い直したジョーは悲しそうな目で空を見上げました。


そんな話をしているところにジュリーが現れ、久しぶりにジョーを交え旧同僚三人でお茶を飲むことになりました。
そこで、ジョーが自分のバンドのデモをジュリーに届けに来たことを知りました。
トゥモローUSA崩壊後、ジョーは日本人ミュージシャン数名を引き連れてLAへ渡りオリジナルバンドのデモ録りをしてきたそうで、ジョーはジュリーと委員長に身振り手振りも加えた相変わらずのオーバーアクションで一生懸命自分達のバンドの売り込みを始めたのでした。
しかし、一方的に散々喋った後はコーヒーを啜ってさっさと立ち去るジョーは、やっぱり典型的なアメリカ人でしたね。

「どんなバンドなの?」

ひょっとしたら自分も入っていたかもしれないジョーのバンドに委員長は大変興味がありました。

「さあ、オレもよく知らないんだ」

意外と素っ気無いジュリー。

「ところでロニー、六本木はどうなの」

彼の関心は六本木マジックの方が強いようでした。

「それがさ、ちょっとやり難いんだよね。例の金ちゃんがさ、やっぱエスメラルダのこと根に持ってるみたいだし」



「ああ、ここ(東宝会館4階ですね)のハコ取られてるだろ」

「じゃあこれ以上DJは増やせないかな」

「金ちゃんにはKっていう副店長が付いてて、これが菊○店長とコトあるごとにヤリ合っちゃってさあ、ひょっとすると一戦交えることになるかも知れないよ」

「ふーん、結構捩れてんだな」

この時こんな会話が二人の間で交わされたのですが、さすがに不良育ちの委員長の勘の良さは見事先行きを見越していたようでした。


最終工事、仕上げの段階で数回のミーティングが現場で行われたことがあったのですが、この時委員長の靴が誰かに盗まれたり、同席していた菊○店長の上着にペンキが塗られたりと非常に陰険な悪さを幾度か味わいました。
水戸から帰ってきたばかりの委員長は気分的な余裕もあったので、これも今までエスメラルダがやってきたツケが委員長のところに回って来たのだろうと戒めるようにして、誰に文句を言うでもなく自分の中で推し留めていました。

不良の勘というヤツは往々にして的を得ていることが多く、委員長の読みでは渋○というおっさんが金○君を利用して絵図を描いていると睨んでいました。
この話の取っ掛かりは金○君がK氏との筋で繋がったものですから、ハコに取り入るにはまず金○君にくっつかなければなりません。
さらに自分を売り込むには六本木で顔のあるところを見せる必要があり、ここでニックを引っ張ったというようなところでしょう。
いずれは自分がハコ取りして金○君も追い出す、といったところが彼の描いた絵図ではないかと閃いた委員長でした。
同じようなことをしてきた人間だからこそ、別段この渋○のおっさんの浅知恵にさほど腹は立ちませんでしたが、ただ陰険なやり口がどうも委員長の性格には堪えました。
根がストレートですから、ゴチャゴチャやってネェで直球で勝負しろよ、みたいなね。

まあ、それでも一応委員長はエスメラルダの幹部ですから、耐えるトコは耐え忍び、六本木進出作戦の斬り込み隊長としての責任は果たそうと頑張ったわけです。
ただ、だてに業界で長生きしていたわけじゃありませんから、ロニー六本木に動くのニュースが新宿の遊び人連中に知れ渡ると同時に、皆が大挙しておしかけてきたものですから菊○店長やK氏もこれには多少驚いたようでした。
不良の兄貴の委員長ですから、昔からの取り巻きや後輩、新宿時代にご縁のあったおねーちゃんたちが次々やって来てはフロントで委員長を呼び出します。
これは正直言って結構嬉しかったですね。
時には人知れずやってきて、レミーの置かれたボックステーブルに呼び出してくれたりする方々もいて、菊○店長の手前多少は恰好が付きました。
(この方々にも後々結局は義理を返さなきゃならないことになるんですけどね)

しかし、この中にとんでもない珍客が現れたのには腰を抜かすほど驚きました。
いつものように店に入るために階段を降りていくと、フロントに妙に派手な恰好をしたカップルがおりました。
男の方は学生っぽい感じのサーファー、小柄な女は白のフリルドレスなんぞを着込んだ妙な取り合わせのアベックでした。
どうも彼氏の財布にお金が入ってないのか、彼女が財布を出して言い合っているようでした。
なんだ、しょうがねぇなぁ、あんな小娘の尻に敷かれやがってこのあんちゃんは、ってな感じでほいほいっと横をすり抜けようとした委員長、はてさてこの小娘はどんな顔してるんだかいっぺん拝んでやろうと振り向いた途端、一気に血の気が引きました。

なんとそこに立っている少女もどきは、あの恐怖のミキ嬢ではありませんか。
目と目が合った委員長、まさに絶句です。
もちろんミキだってびっくりして立ち尽くしています。

「あら、○○ちゃん」ミキは委員長の名前を呼びました。

「知り合いですか?」フロントのスタッフが委員長に尋ねました。

「うん、まあ、知り合いっつーか。取りあえず入れてやってくれる」

そう言って店内に案内した委員長でしたが、頭は真っ白、ヤバイって気持ちと懐かしいって気持ちが複雑に入り混じって緊張感で言葉が出てきません。

「○○ちゃん、こんなところで会えるなんて驚いちゃった」

「そうだな」

連れの彼氏もこの成り行きに戸惑っている様子でした。

「こんなところで働いていたんだぁ」

「ああ、まだオープンしたばかりだけどね」

突然ミキが擦り寄って耳元でさ囁きました。

「ねぇ、後で会えない。こっち(彼氏のことですね)は捲いちゃうからさぁ」

(おいおい、お前昔となんも変わっとらんやないけ)

「えっ?」

「だって久しぶりに会えたんだもん、○○ちゃんがどう変わったかも知りたいし」

おー、デンジャラス。危ない危ない。

「まだ仕事始めたばっかりだから何時に終わるかわかんねぇから・・」

そう委員長が答えると、ミキは小さなメモに電話番号を書いて委員長の手に握らせました。

「じゃ、明日電話して。お願い。約束だよ」

「あ、ああ」

数年ぶりに再会したミキ嬢ですが、何の感情も湧いてきませんでした。
逆に、なんでこんな時期に自分の目の前に現れたのか、その方が不思議と言うか疑問に思った委員長でした。





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最終更新日  2005年11月07日 07時37分55秒 コメントを書く
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