1886年、ベルリンに生まれる。指揮者としての名声はまさに 伝説
というにふさわしく、モノーラル録音しかないのにいまだに新譜が続々と発売されている。ベートーヴェン、ブラームスの解釈においては余人の追随を許さず、彼の録音をベストとする評論家が圧倒的に多い。ナチス政権下のドイツにあえて残り、 命を懸けてナチス政権と闘い
、ユダヤ人音楽家達を庇護したことでも有名。
自身は 「指揮をする作曲家」
であると常々表明し、交響曲、ピアノ協奏曲、室内楽曲、序曲、宗教曲等数多くの作品を作曲(一説には全部で19曲とされる)。しかし現在、指揮した録音の膨大さに比べると、自身の作品で録音されCD化されている作品は残念ながらごく僅かだ。没後50年が経ち、今後はこれらの作品にもっと光が当たることを期待したい。
このコーナーでは現在手に入るフルトヴェングラー作品のCDを紹介する。鑑賞の参考にしていただければ幸いである。
1938年から41年にかけて作曲。1908年の未完の交響曲のラルゴ楽章を手直しし、第一楽章に据えている。すでにナチス政権が全欧州を相手に戦争を引き起こし、殆どのユダヤ人音楽家達がドイツを去っている中で作曲されている為、暗く沈鬱な気分に覆われた作風となっているのは仕方ないことなのだろう。第一楽章と第二楽章のつながりが弱く、第三楽章のアダージョもまとまりに欠けているが、第四楽章はドイツロマン派の定石どおり、力強く肯定的に終わる。
アルブレヒトは全交響曲を録音しているが、あまりにも分析的で音楽の流れが今ひとつの感がある。第一番は同じく全曲を録音したワルター盤の方がいいのだが、ジャケットがどこかに紛れ込んでしまい紹介できないのが残念。なお、同曲の日本初演はこのアルブレヒト/ワイマール響により2002年6月に行われた。

1944年から45年にかけて作曲。フルヴェンは友人に、 「この作品は私の魂の遺書である」
と述べたそうだ。彼はこの作品には自信を持っていたようで、各地で自演し、かつ7種もの録音を残している。(現在CD化されているものは5点)。
演奏時間70分以上の大作だが、第一楽章冒頭のファゴット、クラリネット、ヴァイオリンによるもの悲しげな旋律は、一度聴いたら頭を離れない。時代を反映した色濃い悲劇性が全曲を支配しており、ブルックナー的な総休止も繰り返される。しかし、終楽章はその悲劇的な旋律に対して力強い勝利の凱歌が打ち勝ち、全曲を結ぶ。恐らくロマン派交響曲の歴史の最後を飾る、偉大な作品だと思う。
この曲の日本初演は1984年、朝比奈隆指揮、大阪フィルハーモニー交響楽団によって行われた。
自作自演録音中唯一のスタジオ録音。それだけに音も比較的良く、演奏もじっくりと練られた感がある。フルヴェンの特質としてライヴ録音の方が、より燃え上がる演奏が多いが、このスタジオ録音は、自身の作品を後世に残すという使命感のためか、ライヴのような高揚感を感じさせてくれる。

51年のBPOとのスタジオ録音のあと、フルヴェンとしては自分にとってもう片方の恋人であるWPOにもこの曲を披露したくなったのだろう。その2年後のその思いは結実し、このライヴ録音として後世に残った。演奏はBPOのスタジオ録音には及ばないものの、フルヴェンに対するWPOの誠実で寄り添うような姿勢が感じられて感動的。デジタルリマスターされた音質は非常に鮮明。
フルヴェン生前最後の録音。本人に自覚があったかどうか知る由も無いが、自己の残り時間の少なさを自覚しているような、蒼白く燃え上がる迫力を感じさせる演奏。自作自演盤の総演奏時間には殆ど差は無いが、何故かこの録音の終楽章が一番濃密に感じられる。

私が初めてこの曲を聴いたのがこの録音。当時フルヴェンの交響曲については書物で知っている程度だったし、DGの録音も絶版状態だったのでこの録音が非常に有り難かった。ワルターは同じMARCO POLOレーベルで全交響曲、管弦楽曲の録音も行っている。96年の来日時に楽屋裏にお邪魔し、このCDを持っていったときには非常に喜ばれたことを思い出す。共感に溢れた、エネルギッシュな演奏で、この曲の真価を世に問おうとする意気込みを感じさせてくれる。
第一番でも書いたが、アルブレヒトの演奏は克明過ぎるというか、丁寧すぎて、曲の持つ自然な流れを寸断しているような気がしてならない。ワルターや朝比奈の録音では決して聞こえない楽器の音がして、はっとさせられる箇所もあるにはあるが、全曲通して聴き終えた後、今ひとつ盛り上がれないのが残念。

フルトヴェングラー没後30周年の1984年に収録された記念碑的録音。同時に大阪と東京で日本初演がなされた。朝比奈は1953年にフルヴェンの演奏会に出向き、また個人的にも面識があり、彼を崇拝していた。しかし、晩年の彼のブルックナー演奏はフルヴェンとはかなり方向を異にしている。朝比奈は最初にフルヴェン崇拝から入り、長い間の修練を経てフルヴェンを超えたのだ。 この演奏はむせ返るほどの共感に溢れ、すでに手兵となっていた大フィルの高い演奏能力に支えられて、驚くほど感動的な名演となっている。極東の島国で、しかも没後30周年を記念してこれほどの演奏が繰り広げられようとは、フルヴェンも夢にも思わなかったに違いない。同じ日本人として本当に誇りに思う。
上記の朝比奈と同じように、バレンボイムもフルヴェンを崇拝しているというのは結構有名な話。その彼が手兵のシカゴ響を振ってこの録音を行ったのが2002年。崇拝者を自認するわりには若干遅いような気もするし、他の曲ももっとやって欲しいが、この録音は凄い。恐らくは現在出ている全ての演奏を凌駕しているし、本人の自作自演盤をも超えてしまったのではないかと思わせるほど、丹念に緻密に練り上げられ、それでいて流れも十分に流麗な素晴らしい演奏になっている。私はバレンボイムの他の演奏は皆今ひとつ好きではなく、この指揮者の実力が理解できないでいたのだが、この録音でその懐疑は吹っ飛んでしまった。シカゴ響の能力、それに録音もとにかく秀逸。

1947年から1954年にかけて作曲されたフルヴェン最後の交響曲。彼はこの曲の最終楽章を声楽付きにしたいと考えていたようだが、その夢を果たすことは出来なかった。全4楽章の作品ながら、3楽章のみでの演奏がされていたが、その後補筆完成され、このワルター盤が世界初の全曲録音盤となった。
写譜の第一楽章冒頭には作曲者自身により「Verhangnis」(宿命)、第二楽章には「Leben」(人生)、第三楽章には「Jenseits」(彼岸)と書かれているとの事である。その副題が示すように、交響曲第二番よりさらに悲劇的な雰囲気に包まれてはいるが、第三楽章では人生を肯定する諦観が姿を現す。が、驚くなかれ、終楽章では再び勝利に向かって雄々しく前進しようとするのだ。すごい生命力だ! 作曲者の健康状態の悪化を反映して残念ながら構成力は弱くなるものの、フルヴェンの白鳥の歌を是非聴いてみてほしい。ちなみに第四楽章は「Der Kampf geht weiter」 (闘いは続く)
という副題が付いているらしいが、本当だろうか・・・
前述のワルター盤に続く全四楽章版。このアルブレヒトは「フルトヴェングラー全集協会」という団体の総裁であるらしいので、今後もフルヴェン作品の録音があるかもしれないが、どうにもあまり期待できないような・・・指揮者もイマイチだがオケの能力もちょっと足りないような・・・確かに全四楽章の作品を世に知らしめてくれるのは有難いのだが、これだと難解なだけの作品だと思われてしまうのでは・・・

フルトヴェングラー没後25年記念演奏会としてミュンヘンで行われた演奏会のライヴ録音。当時はまだ四楽章の補筆完成版がなかったので、三楽章までの演奏となっている。第三楽章を終楽章に見立てた演奏で、これはこれで感動的な演奏になっている。

1936年作曲。要はピアノ協奏曲なのだが、構成が巨大。どうもブラームスのピアノ協奏曲のようながっしりとした様式を模したようなのだが、残念ながら力及ばなかった、というところか。管弦楽のために割いている部分がかなり大きく、しかも終楽章はかなり取りとめのない音楽になっているため、殆ど演奏されることが無い。このCDは偶然手に入れたが、フルヴェンとフィッシャーの記録もこれ一回限りだと記憶している。

CDの表紙のサインはA.ワルターのもの。「この曲のピアノパートは本当に難しい。ピアニストが二人必要だよ」と仰っていた。多分それは第三楽章を指しているのだと思うが、緩急の差が激しく、劇的で起伏の激しい音楽になっている。もう少し大衆受けする造りになっていればと思うのだが・・・惜しい。「フルヴェンの曲ならなんでも聴いてみたい」という方以外にはちょっと聞きづらい音楽かもしれないが、ピアノを弾かれる方のご意見も是非聞いてみたい。

序曲(1899年作曲)、交響曲ニ長調(1903年作曲)、交響曲(未完、ラルゴ楽章のみ、1908年作曲。後に交響曲第1番第一楽章の土台となる)の三曲を収めたアルバム。おそらく三曲をまとめて聴けるのはこのアルバムだけで、これは大変貴重だと思う。 フルヴェンの曲はその殆どが悲劇的動機で始まることが多いのだが、ここに収められている「序曲」は若書きのため例外で、非常に明るくすがすがしい導入で開始される。またあとの二曲の交響曲は、後の交響曲1番から3番、ピアノ協奏曲などに引用されている。それでもまだ、後の悲劇的な時代の空気を感じさせない力強い作風なので、一聴に値する作品群だと思う。

テ・デウムと小歌曲集。このような作品を探しだし、かつ録音するワルターの熱意には脱帽する。私は歌曲や宗教曲には全く詳しくないので論評は避けるが、資料的価値は非常に高い録音だと思う。それにしても、ブルックナー指揮者であると、やはり自分でもテ・デウムを作曲したくなるものなのだろうか。
| ■■■ | フルトヴェングラーを知るための8冊 | ■■■ |
| |
|---|
| 丸山真男音楽の対話
戦後最大の評論家、丸山真男もフルヴェンの信者だった!確信に満ちた評論を是非読んでみて下さい |
| |
|---|
| フルトヴェングラー グレート・レコーディングズ
★生涯、録音、証言により、フルヴェンを多角的に検証しています |
| |
|---|
| フルトヴェングラー
没後50周年記念出版。多くの評論家がそれぞれフルヴェンの魅力を熱く語っています |
| |
|---|
| フルトヴェングラーとハーケンクロイツ
フルヴェンとナチスドイツの暗闘を小説風に描いています |
| |
|---|
| フルトヴェングラー幻の東京公演
フルヴェン来日計画が存在した!?驚愕の歴史的事実を是非どうぞ! |
| |
|---|
| 指揮台の神々
黄金期の巨匠達13人を、元ウイーンフィルのチェリストが熱く語ります |
| |
|---|
| ウィーン・フィル音と響きの秘密
WPOの音色を造り上げた巨匠達の紹介。フルヴェン、カラヤンから小澤征爾まで |
| |
|---|
| 音と言葉新装版
もはや伝説ともいえるフルヴェン自身による評論集。必読です |
| ■■■ | さらにフルトヴェングラーを知るための資料を! | ■■■ |
| |
|---|
| 情熱のロマンティスト/フルトヴェングラー(ウィルヘルム)[DVD]
フルヴェン夫人のインタビューが興味深いです |
| |
|---|
| 証言・フルトヴェングラーかカラヤンか
新旧BPOメンバーによる2人の評価は非常に興味深いです! |
| |
|---|
| カラヤン帝国興亡史
前半はフルヴェンとの確執が語られています |
| |
|---|
| フルトヴェングラー(上巻)
非常に詳細なフルヴェン研究書です。ナチスとの関わりも大変詳しいです。 |
| |
|---|
| フルトヴェングラー新装版
ジャーナリストによる特にナチス時代にスポットをあてた伝記。インタビューもあります。 |
| |
|---|
| カラヤンとフルトヴェングラー
チェリビダッケも加わった三つ巴の権力闘争の歴史が明かされます! |
| |
|---|
| フルトヴェングラーの手紙新装復刊
青年期から死の直前まで、300通に及ぶ魂の記録! |
| |
|---|
| フルトヴェングラーと独墺マエストロの黄金時代
フルヴェンやクナ、R.シュトラウスら「神々」の映像が詰まっています |

![]()
