クラシック音楽は素敵だ!!

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2006年1月のお勧め盤

<2006年1月のお勧め盤>





大植英次/大阪フィルの新録音がフォンテックから相次いで出ているが、その中から初代音楽監督故朝比奈隆の誕生日に行われた演奏会録音を聴いた。

 朝比奈/大フィルのブルックナーといえば日本国内ではまるで聖典のように崇められている録音が多いので、さしもの日の出の勢いの大植も熟慮を要しただろう。

 正直言って私はまだ大植の演奏を云々出来るほど彼の演奏を聴いていない。今までは決してアルバムも多いほうではなかった。(先月、マーラー6番・ショスタコ7番と相次いで大曲がリリースされた)ただ、昨年のバイロイトへの登場からしてみても、欧米での評価は非常に高いようだ。

 この8番は、朝比奈指揮の大フィルとは明確に違った音がする。朝比奈の時はとにかく骨太、がっしりとした音響を響かせていたが、大植になって(当然ながら)もう少し細部にこだわり、アンサンブルのきめの細かい演奏が聴こえていた。こうした点は、中間楽章の演奏においてより美しい音を生じさせて好感が持てた。

 演奏時間は、第一楽章から第三楽章までは両者ともそんなに変わらない。第三楽章アダージョも、十分に祈りの美しさを表現していた。

 不満だったのは最終楽章。大植の演奏時間21分52秒は朝比奈の2001年録音よりも2分近く早い。朝比奈と比較して早いからどうだ、というのではなく、それまでの三楽章を悠々と構築したわりに、最後を走り急いだ感じに聴こえてしまうのだ。

 ブルックナーの7番は、最終楽章の短さをよく指摘される。8番はその点を考慮に入れ、長大な物語をがっしりとした終楽章が支えている。この部分の造りがあっさり短く聴こえてしまうと、折角の巨大構造物の足元が揺らぐような気がしてどうにも心もとない。今回の録音ではどうしてもその部分が気になった。

 しかし、あの朝比奈の後では、どんな録音をしたところでなんやかや云われるのは仕方のないところだろう。今回の演奏は、全体としては堂々として美しい、十分及第点のブルックナーだと思う。最終楽章は、(私には分からなかったが)敢えて朝比奈との差異を表出しようとした大植の深謀が働いているのかもしれない。今後の彼の演奏に期待していきたい。



こちらです!
Bruckner8Ooue
大植英次/ブルックナー:交響曲第8番


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