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ようやくパソコンのリカバリがおわりました。リカバリは初体験で す。忙しい合間を見つけての自転車操業ですから、ままならぬこと 、一安心です。 気ままにブログを楽しみますよ。 ??????@crest.ocn.ne.jp 田中忠美、ペンネーム(田中ミミ)、可愛いペンネームでしょ!
2008.06.22
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斎場に桃の花が咲いていたあの人、この人棺まで交互に足を動かした その足の裏がしめっていたっけ!あの一歩、一歩に……その場限りの涙があった上の空で聞いていた僧の読経いずれは塩を振られる身であることを……薄ぼんやりと、斎場の桃の花を眺めていたっけ!死を遠ざけるため、神妙に塩を振ったが……清めの塩も、塩振る遊びだったのか?縁起かつぎだったのか?桃の花が散ってもう、忘れているあの人たちの死桃の花が咲いていたっけ!また巡ってきたよ、桃の花が咲く頃があの人、この人の棺まで交互に動かした足の裏が、もう乾いている桃の花が咲く頃になると乾いているはずの足裏の水虫が痒い
2007.10.08
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花子はこの春、百歳になった。「百歳の記念になにか始めようと思うが、どうじゃ?」この夏八十歳になったばかりの息子に持ちかけた。「そうだな、そこの、ほら、月下美人に花を咲かせてみたら、 どうじゃ。随分邪険にしてきたからな」「そうか、この弱っているヤツに花を咲かせるか」「もし、花が咲けば、お母も花になる」「え?ワシが花になる」「そうだ、月下美人の花の命は四時間だそうだ。 秋の夜長、美しい花が咲いたとき、お母の顔も 花になる」「お前、うまいことを言うな。ワシが花になれるか」「やってみなされ、花子という名は伊達じゃない」葉っぱに小さな突起が現れたのは、夏の末だった。花芽なのか、まだ判断できなかった。秋になると、ぐんぐん伸びて花芽になった。花芽に勢いがつくと、開花の予想ができる。「はあ、もうすぐだ。ワクワクするな。無事咲いてくれよ」花子は月下美人の傍から離れない。「オーイ、オーイ、始まったぞ」息を凝らし、目を研ぎ澄まして、老眼鏡をずり上げた。このとき、花子は花弁が一枚一枚、反り返る開花の、雄叫びを聴いた。ゲーカー、ビー、ジー、ンンン………とな。花子は、遂に百歳の月下美人になったそうだ!
2007.09.12
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みどりごの手にそっくりな、さくらの小枝のつぼみ、今にも開きそう。サクラさん、サクラさん、睨めっこしましょ。笑うたら駄目よ。メッ! やっぱり、駄目だね。 だって可愛いんだもん。笑っちゃうよ。 「嬰」がニッと微笑んだ。仰ぎ見るこのサクラ、もう開きかけている。元気いっぱいの、天を突き破るみどりごの雄叫びの声に、サクラ木はゆれている。 (ボクは、みどりごから元気をもらう。 八十歳のわたしが「僕」と言うんだよ)満開近い梢の下に立つと、花はみどりごの肌。清澄な実りを祈られて、花心は薄紅に染まる。その奧に潜むつぶらな瞳に、もう葉桜が映っている。サクラの下で記念写真を撮る、若い夫婦とその子たち。 イチ、ニイと声を出して、 ニイのとき笑って下さいヨ。 ハイ、レンズを見て!みんな華やいでいる。曾孫のサクラちゃんは、もう葉ざくらだよ。
2007.09.08
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私は仰向く、しずかに合掌する。死のとき、私のすべての絆は捨てられる。鋭利なハサミで!絆は素知らぬ顔。死のとき、この罰当たりめが! と、懲らしめられたのだと、納得する。死のとき、頑丈な靴底で頭が踏みつぶされた。これでようやく、私は本物の人間になった。死のとき、私はみた。白く乾いた砂の、不思議とだれもいない、ひっそりと、どこかへ通じている一本の道~~~死のとき、私は、誰かに祈られている。死のとき、私は迷って、一粒の米となった。一粒の魂が一つ一つ立ち上がって、私を取り囲み、黄金色の田圃道へといざなう。死のとき、私は生まれた。いのちの尊厳を知るために。死のとき、私は仰向き、すべてがはじまった。
2007.08.08
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心臓血管外科の待合いで、幼児二人連れのママが、マンガに夢中。三歳ぐらいの男の子が、空席を遊び場にして飛び跳ねている。体調の悪いボクは、イライラした。ママが独り言のように、…隣のおじさんに叱られるよ…隣のおじさん、とは八十歳のぼくのことか?(おい、おい、ボクの責任にするなよ)その子はママにアカンベーをして止めようとしない。…コラ、ママがおじさんに叱って欲しいって……おじさん本当に叱るよ…ボクの声が荒くなった。こういう状況になると、必ず亡きお袋が現れる。 可愛い子に邪険なことをするな。 母親にやさしく言え。…ママが自分の言葉で、きびしく躾をしなさい、と…ボクはもぞもぞと、…お母さん、子供の躾、おながいしますね…途端に、お袋の顔が崩れるような笑顔で、…坊や、良い子だね。お利口さん…(何と、その坊やは、昔のボクだった)白衣のお姉さんに呼ばれて、ママは坊やの手を引いて、診察室へ~入室の直前、ママは振り返って、ボクに笑顔で会釈!(何と、ママは昔のお袋だった)
2007.08.07
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光を失った星が剃髪の柿の木に宿った。見ろよ あの柿の木を幹周りが一メートルもあろうか巨体であるが 筋肉りゅうりゅうの幹をクジャクの羽のように大きく広げた枝は雲竜型のせり上がりか!この秋こぼれ落ちんばかりに実をつけた。柿の実は暮れなずむ空に光り輝く星になった希望の星になって華麗な星座をひろげるほんのひと時の小宇宙。希望の星なんてこの世にあるもんかその星を一夜のうちに鳥が食い尽くしたんだよ。残骸の蔕だけが冬空の逆光のなかに不気味な花を咲かせている季節外れの花をね。見上げる柿の木の天辺に残しておきたかった希望の星
2007.07.25
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参拝人の気まぐれな季節。秋のお寺の祭りが終わった、極上の秋日和だった。しかし、その夜を境にして、明け方から強い風に雨が混じった。菩薩は知り給う。今、起きていることを。衆生のエゴな祈りを。黒子たちが、雅な手つきで、人間への警告に、遊び戯れている。天がざわめく。そこに私は不思議な光景を見た。とつぜん、風が弱まる。と、鳥居をくぐり抜け、また戻ってくる木の葉蝶、時計の振り子のように、山門の空間を我がもの顔に舞い狂う。参道は落ち葉の乱暴狼藉。べったり足にまとわりつく。私にからむ一枚の木の葉蝶の奇声、ひらひらら、らひらひ、ひらっ、つらつ、ぱっ、つっぱ。―なんじゃ、こりゃ、魔法がかかっているのか、 お前―見えたぞ!きらっと光る透明な糸!―お前、糸にしがみついているんだな。 蜘蛛の糸の亡者か、お前は―すかさず返事が返ってくる。―不、不、不、あんたこそ、 下を覗いてみるんだな―トツゼン、強風が吹き荒れた。糸がプツンと切れ、私の口元に張り付いた。―何をするんじゃ―出かかった言葉を塞き止められ、息が詰まった。途端、意味不明の絶叫が耳をつんざく。お~ん!お~ん!
2007.07.23
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みどりごの手にそっくりな、さくらの小枝のつぼみ、今にも開きそう。サクラさん、サクラさん、睨めっこしましょ。笑うたら駄目よ。メッ! やっぱり駄目だね。 だって可愛いんだもん。笑っちゃうよ。 「嬰」がニッと微笑むんだ。仰ぎ見るこのさくら、もう開きかけている。元気いっぱいの、天を突き破るみどりごの雄叫びの声に、(ボクは、みどりごから元気をもらう。 八十歳のわたしがボクと言うんだよ)満開近い梢の下に立つと、花はみどりごの肌。清澄な実りを祈られて、花芯は薄紅に染まる。その奥に潜むつぶらな瞳に、もう葉ざくらが映っている。さくらの下で記念写真を撮る、若い夫婦とその子たち。 イチ、ニーと声を出して、 ニーのとき笑ってくださいヨ。ハイ、レンズを見て!みんな華やいでいる。若さが輝いている。曾孫のさくらちゃんは、もう葉ざくらだよ。
2007.06.30
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くわえタバコの、厚底ブーツの女が転んだ。金髪の長い髪の毛が顔にまとわりついて、瞳の表情はみえない。ブ-ツのつま先が、片方は地面を、もう一方は天を突き刺している。こんな無様な歩き方をどこで教わってきたのだ。「それみろ、いわぬこっちゃない。愚かな女だ」ファッション文化への嫌悪がはしなくも声になる。転ぶこともファッションなのか?馬鹿馬鹿しい!ショートスカートからはみ出した大股が、折からの夕日に燃えている。周囲の目を気にしながら、女の両脇に腕を差し入れ、抱き起こそうとした。「ね、もっと強く抱えてよ」女の切羽詰まった乾いた声が跳ね返ってくる。 ボクは、こんな女を一度でいいから、ぶん殴りたい。だけど、殴れないのだ。ボクは、あんたがやっていることが、いけないなんて、一言も言ってないよ。でも………。
2007.06.24
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子らが私の膝を座布団にして、取り合う。……ラアラア、これがまた楽しくて、大正、昭和の時代がありまして、……カスカス、薄いモンペの膝頭、ジャージーのスボンに粘り着く涎の跡も生々しく、半世紀を経て、少し座り心地が悪くなったが、破れもせず、……ナアナア、へたりもしなかった私の膝座布団。子らの汗と体重が染みこみ、……チッスチッス、いつの間にか、擦り切れてしまった。トツゼン、鈍い音がして骨が壊れた。大腿骨と腰椎の接続が、 なんの因果か?……デンナデンナ、救急車のなかで考えた。入院、手術、リハビリの一連を投げ出しもせず、……スーラスーラ、心静かに、日面仏(ニチメンブツ)、 月面仏(ガツメンブツ)と口ごもる。大切な一生、生かされてきただけ、……ムイムイ、五十年以上も耐えた膝座布団なんて無いわね。車椅子になった八十四歳の「きらら保育園」の名誉園長が、……アハアハ、見舞客に、羞じらうばかり(血色豊か) ※日面仏→太陽の顔をした仏。一千八百歳の寿命。 月面仏→月の顔をした仏。わずか一昼夜の寿命。 いずれも禅語で、一生の長さを表す言葉。
2007.06.22
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ココロという、厄介なものを背負い込んで、80年が過ぎた。もう、どうにも手に負えなくなった。オレは壊死しそうだ。ココロよ!せめて寝るときぐらい、オレから離れてくれ、な、頼むよ。陽がかげってきた。夕顔の花はとっくにお休みだ。花のココロは人を癒すというが、オレは到底花にはなれそうにない。でも、できることなら、荒れ野に咲き残った花になりたい。もしも、そうなったら……おや、お前、くっすと笑ったな。やっかいなココロよ!やっぱり、オレから離れないと言うのか。馬鹿な!オレは壊死しそうだ。
2007.06.22
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参拝人の気まぐれな季節。秋のお寺の季節が終わった。極上の秋日和だった。しかし、その夜を境にして、明け方から強い風に雨が混じった。菩薩は知り給う。今、起きていることを。衆生のエゴな祈りを。黒子たちが、雅な手つきで、人間への警告に、遊び戯れている。天がざわめく。そこに私は不思議な光景を見た。突如風が弱まる。と、鳥居をくぐり抜け、また戻ってくる木の葉蝶、時計の振り子のように、山門の空間を我がもの顔に舞い狂う。参道は落ち葉の乱暴狼藉。べったり足にまとわりつく。私にからむ一枚の木の葉蝶――の奇声、ヒラヒララ、ラヒラヒ、ヒラッ、ツラッ、パッツ、ツッツパ。――なんじゃ、こりゃ、魔法がかかっているのか、お前――見えたぞ!きらっと光る透明な糸を。――お前、糸にしがみついているだな。 蜘蛛の糸の亡者か、お前は――すかさず返事が返ってきた。――不、不、不、あんたこそ、下を覗いてみるんだな――突然、強風が吹き荒れた。糸がぷっつんと切れ、私の口元に張り付いた。―何をするんじゃ―出かかった言葉をせき止められ、息が止まった。途端、意味不明の絶叫が続く。お~ん、お~ん!
2007.06.20
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数人連れだって新宿の最高層の喫茶展望室からバードアイを楽しんだ。そこに広がるのはまちがいなくビルの林立同行の女の子が感嘆の声を上げる「あら、凄い、墓石みたい、これ墓場よね」隣テーブルの男がぶすっと吐き出すように呟く「あれは人間最後の風景だ。あんたらは天界に迷い込んだ死者だね」(沈黙……)ボクは腰を浮かしてビルの林立風景を見直した(ボクの想いは土のある風景に暗転)テーブの中央に福寿草が一鉢触ってみると造花の類無愛想に黙り込んでいる。この場の雰囲気に何の結末もないいま生きている生活にどんな結末が待ち受けているか何も分からない なのに?突然、また歓声があがった。ウワー、凄い!
2007.06.18
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甲がすっかり磨り減って 背骨が透けて見えるほどにやせ細り流し台の隅に置き去りにさてたのは いつのころか記憶にないこれほどまでに酷使され 置き去りとは使えばまだ使えるのに オレのなれの果てだなだから オレは死んだふりをして 虫けらのように首をすくめて人間を恐れているのさいつしか口をふさぎ目をつむり耳をふさいで人の世を考えないことにしてきたがここからみえる摩天楼の周辺を見ろよなにやら闇にかすんで汚れているじゃないかまして地上の血なまぐさい殺人や自殺汚れを落とすことに苦労してきたオレにははっきり見えるんだおぞましい人間が右往左往 損か? 得か? 好きか? 嫌いか? 攻めるか? 守るか? ごまかすか? 隠すか?その人影がチラチラ 目が痛むだから オレは首をすくめて人間を恐れているのさ!
2007.06.14
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〈幾十年かがありまして〉「いいひと」やってて、つかれていく「いいこと」やってて、つかれていく「なにもしないで」つかれていく ゆくゆくはわが名も消えて秋の星街道の道しるべも草の丈に埋もれてわたしの声、聞いてますやる…やりたい…やらない!
2007.06.13
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行く手で、生ゴミを奪い合って、カラスが壮絶な闘いを演じている。羽が千切れる乱闘が続いていた。勝者の独白を聞いてみたいナ。角を曲がって、石につまずいて転んだ。たしかに、小さな石が頭を出していた。何の役にも立たない小石のくせにと、今、オレは、こうやって石を見下している。腹立ちまぎれに石のセイにするなんて~~! (たかが転んだぐらいで!)愚かなオレを振り切るつもりで、上を仰ぐと、電柱から、羽の乱れを誇示して、カラスが、オレを見下している。小石の独白を聞いてみたいナ。
2007.06.12
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何か面白いことはないか?都会に倦み果てた身体で、バス、電車を乗り継いでこの山里にやって来た。たった一軒の「なんでも屋」、買うものはなにもなかった。一雨が、さっと走り去ると、明るく熟れた枇杷の実に、雨滴がキラキラと輝く。カラスがその輝きを盗りにくる。うらうらとした果てしなく長い時間を、かき乱すのはネコ一匹。 カラス二羽ネコ襲う気や昼の秋こんな見物ができるとは、都会なら見物料を払うところだ。 何か面白いことはないか?あーあ、この抜けるような空に雲一つ。この空お貸ししましょう。(こりゃ面白い)レンタル料千円。壊れないように持ち帰りください。(この新商売、もうかりまっせ!)ついでに、カラスとネコもお貸ししましょう。レンタル料百円。(これも悪くないな)ここの小川は、ナチュラルウオーター。ボトル一本、百円。ウイスキーの水割りにいかがですか?それに、人間の柔らかい心もお貸ししましょう。こちらはちょっと、お高いですよ。レンタル料、千円なり。ここでは、エンタテインメントの企画は何もございません。せいぜいお金を出して、山の実を食べていってください。
2007.06.10
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和菓子店の自動扉が開いて、北風を連れて客が入ってきた。妻が品えらびをしている間、所在なく店内を隅から隅まで、目を転がす。おや? ショーケースの上の水仙の一輪挿しが、客に背を向けているではないか。北風に背を向けたらしい。花の後ろ姿がそこにあった。水仙の風情がまるでない。そっと手を伸ばして、こちらに向きを戻してやった。 ふっと、今朝、仏前に供えた水仙が、脳裏をかすめた。 仏花はどちらに向けて供えるべきか? 一輪挿しがアカンべ-をしている。
2007.06.09
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春の日が暮れようとしている静かな海 空は 小さなちぎれ雲がゆっくり西へと……渚では豆のような波がポン裏返っては消えていくぼくは こんな一日を過ごしたいと思うある日はすごい嵐で翌日は遠い空から晴れてくることもあった夏の美しい日の暮れ遠くまで続く渚を白い馬が駆けていくこともある(父はかち侍に徹した一生だったが)白い馬の背に父の姿を重ね合わせてぼくは いつも背中に海を感じ父を感じていた自分というものが見えなくなったとき目に見えないものに背中に手を当てられあっちにいくようにと押されているのをはっきりと自覚できるのは渚の白い馬を想うときであるいつも美しい海でありますように! ※かち侍…歩いて主君の供をする侍
2007.06.06
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霧のような雨のなか学校帰りのランドセルを背負った女の子が舗道にしゃがみ込んで蝸牛を描いているいじめっ子の名前も書き添えた流れる涙が雨に溶けて蝸牛はたっぷり生気を吸い取るやがて蝸牛はムックと浮き上がり思い切り伸びをすると透き通った体がねっとりとその痕跡を残していく あらら、そんなに伸びると 舗道に擦れて、お腹が傷むでしょう それにしても こんなところであなたに会うなんて わたしいじめられているの ごめんなさいその透き通った体をのぞき込む女の子の赤いラドセルが今にもずり落ちそうだ
2007.06.05
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冴へ返る太陽四角と北便り 桃雲 (北海道別海村尾岱沼より)きたのはての よあけに しかくい しかくいたいようが あらわれたかげろうのように あかくもえあがっているおっ! レンズのなかを おおはくちょうのむれがよこぎっていくけなげに はばたく とりのかげ はねのおとあやしくもえる おおきな ほしのかげはねにさしこんで いろいろ はなしかけてくるあかいぬの いちめんに ひとぬり ひとぬりくろいいろを かさねていく おおはくちょうたいかくせんに すいへいの ほうこうにかたちが くずれるころしらみはじめたそらに ふたつ みっつしろいほし やまのりょうせんおおはくちょうの めがみずいろに そまってきた
2007.06.03
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おお、風が立っている! 狂っている。目にゴミが刺さって、風が吹き抜けていった。 ゴミになるな! と風が言ったが、NON、 異物がゴロゴロと居座って不快だ。まぶたをめくると、毛細血管が鮮やかな桃色に塗れている。そこへ、ぴったりくっついている、したたかなゴミ。とってくれる者は、いないのか、NON, 乳児のころ、目の中に入れても痛くないと、 言われただろう、NON, 父親も、母親も、オレをNON,親にゴミ扱いされるようなった、のは三歳からだ。以来、つねられ、蹴られ、殴られ、オレが完全なゴミなったのは、幼稚園児のころだ。独り遊びで、 オレは、赤ちゃんの人形を膝で押さえ、 木の棒を首に押しつけて、わめいた。 あんたなんか、いらない、 あんたなんか、いらない、と。以後、親と離され、親という人と飯を食ったことはない。オレは、成人して立派なゴミになった。ゴミ収集車にも相手にされない本当のゴミにな!NON,と言える日、をもとめて、オレは風になる。おお、風が立っている!泣いている。こんなゴミガ目に飛び込んできた人はいないか!と、風が探している。 あんたなんか、いらない、 あんたなんか、いらない、と。
2007.06.02
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目覚めてすぐブラインドを上げる道路一本、向かいのお宅の玄関が開いた主人の出勤の時刻だ主人が車に乗り込む女房が弁当を手渡す夫婦は二言、三言、にっこりする車にエンジンがかかった ボクは窓越しに、いってらっしゃい、小さく手を振る車が見えなくなるまで女房は立ち尽くしているやがて、玄関からランドセルの小学生が二人賑やかに、手をつないで飛び出してきたイッテキマース、いってきまーすママに手を振って駆け出す 学校が楽しいんだな ボクは窓越しに、いっていらっしゃい、と小さく手を振る奥さんは、窓越しのボクの視線を察知してにっこり、目で挨拶して、玄関に向かう ボクは奥さんの後ろ姿に、お幸せに、 と小さく手を振った奥さんは振り向いて、恥ずかしそうに、もう一度会釈を返した
2007.06.01
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赤い月月が泣き出した。雲はもらい泣きし、月が翔ける。伏見川に鮭の遡上だ。地鳴りのごとき産卵よ!裸形の激しさよ!そして、ほっちゃれる。風に明かりがともった。 ※ほっちゃれ……産卵して半死状態になること 赤い兎黄泉平坂の坂下で、朝日を浴び、不幸を吐瀉する。眠りのなかで兎を、さらっていく、仏陀の足音が聞こえた。 赤い目の老人月から離れて月柱が立った。この幻月に梯子をかけて、なかを覗くと、赤い目の老人が、聖火をかかげて、五十六億七千万年の未来へ、しっかりした足取りで走っていた。 ※五十六億七千万年は阿弥陀如来がこの世に現れるという未来 真っ赤なリンゴさむくなったら、あそびにきてください。がっこうへあがるまえ、リンゴ山で遊んだ、こどものころ、ボクのほっぺたは真っ赤っか。あれから八十年かかってみがいた、真っ赤なリンゴ。さむくなったら、あそびにきてください。
2007.05.30
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三月三十日、八十歳の誕生日。特別の感慨はない。いつものように神棚のローソクに灯をともす。一本のローソクがもったいなくて、昨夜、半分ほどで、吹き消しておいたが、芯がへなへなと腰を曲げている。マッチを擦って、いずれ、また、吹き消される宿命に灯を入れた。火が移ると一瞬、気丈に燃え上がった。 フフフ、フフフ……ローソクの笑いが絡みついてくる。オレもつられて、 フフフ……。だが、間をおいて、スーッと萎えていく。もうだめかと絶望するほど萎えて、ホタルになった。ややあって、ホタルは元気を取りもどす。その背後に不動明王の目! この火でなにもかも焼き捨ててしまおう。 それが果たせるなら、今夜のローソクは、 燃え尽きるにまかせよう。沈黙するオレの気持ちをからかうように、小さな点が、脳の視界の中央に、しだいに……形をなして、見えてきたのは、 それはね、 ごろんと転がっているヘレネのトルソに似ている、 女のお尻さ!あわてて吹き消そうとしたが、どこから吹いてきたのか、生暖かい風が、燃え尽きそうなローソクの灯を、吹き消してしまった。 注 ヘレネ……ギリシャ神話の美女。ゼウスとレダの子。トロイ王子パリスに 誘拐されたのがもとでトロイ戦争が起こった。
2007.05.29
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どうしてなんだろう、 目、 鼻、 口、 足、みんな前を向いている。不思議だな、神様は……。なのに、 耳、は横についている。どうして、神様は耳を横にもってきたのだろうか?不思議だな、神様は……。いや、もっと不思議な現象がある。人々の背中には、「後ろ姿」という、耳障りな、不思議なものがあるらしい。後ろ姿には耳がついているという。だが、ピカソの抽象画そっくりの、二十一世紀のオレの世界。オレの価値観は五体不満足。崩れかかっている価値の世界。下向きの目、横向きの鼻、ひん曲がった口、左足は後ろ向き、右足は前向き、ミュールは足元にご用心。あんたの耳はどっち向いてんの? ねえ、ゴルゴ、 なによ? え? なんだよ。 もう、いいよ。 いいって? いいんだよ、もう! 注 ゴルゴ……超A級の狙撃の腕前をもつ殺し屋を描いた、さいとう・たかおの漫画 「ゴルゴ13」。 注 ミュール…若い女性の間に流行していたサンダルの一種。階段から落ちて捻挫や 骨折する事故が多発した。
2007.05.28
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ケンちゃんが半分泣きべそ 服が泥だらけ 左手に血がにじんでいる ボタンがとれそう、だ左手に唾つけ ママの呪文「チチンプイプイ、痛いの飛んでけ!」あら、ボタンとれそう、つけかえようね(窓の外に鳥の影 ビーツツビーツツビー ヤマガラだ)ママはヤマガラの呪文「脱ぐぞ脱ぐぞ、万歳!」ケンちゃんは素直に万歳ジャケットがケンちゃんの顔をこすってスポッと脱げた。ママのお針がきらり(おや、小鳥だ ツーピーツピーツピー シジュウガラだ)ママはシジュウガラの呪文「きーらり、きーら、きーら、着けろ、着けろ」(ママがにっこり ハイ、できあがり)こんなに汚れて 転んだの? だれとケンカしたん?あ、そう さあ、涙拭いてねあら、小鳥さんよ(チーチーキュルキュル、メジロだ)ママがメジロの呪文「仲~直~り、仲直り、ねね」ケンちゃん、にっこりこの服洗濯しましょうね洗濯機にポイしてきて!ハーイ。いつものケンちゃんに戻りました裏山から老いたウグイスがホーホケキョまた一声!ケンちゃんも、ウグイスの呪文でマーマ、抱っこ!
2007.05.24
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南の、一枚張りの全面ガラス、百八十度の眺望に夏の陽が踊っていた。甍の波と、豊かな山の稜線。四階のコーヒーラウンジから眺めた馴染みの、あの景色が消えた。超高層ビルの出現だ。こうして、この小さなビルは眺望を失った。隣接する小公園は、瓶の底のように落ち込んでいる。その一角に父子の遊びを見つけた。幼児を両手で高く持ち上げ、タカーイ、タカーイを繰り返している。幼児はその度に空を仰いで、両手で、もっとウエ、もっとウエ!の身振り。(小さな空、瓶の口のような空)ビル群に切り取られた細切れの空。亡父が、巨人にみえていた幼児のころ、父のタカーイ、タカーイは、大波小波だった。遠くが見えるか、ホーラ、今度は大波だぞ……。父はご機嫌だった。四階のコーヒーラウンジから奈落に沈み、ベンチに腰をおろす。どこのビルも無言!どの窓にもブラインドがおろされ、人の動きすら窺うことができない。押しつぶされそうだ。背伸びをして、誰かに話しかけたくなった。通行人の表情は死人の顔だ。超高層ビルの最上階行きのエレベーターの、ボタンを押した。すーっと、扉が開く。亡父が手招きをしていた……!
2007.05.19
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時計を意識しないでで過ごすことが多くなった時間など気にしないでやり残したことをやる日が暮れたら飲む疲れたら寝るこんな一日なのに「おーい、あと時間はどれほどだ」寝しなに呪文のように唱えるどうしたことだ誰かが耳許でささやく「お前さんの時間、グズグズしていると盗まれるぞ」俺は素直にハイと答えている(もう 俺には盗まれる時間なんかないのに)ある朝夢で目が覚めた見たことのない節だらけの樹にサビだらけの目覚まし時計がぶら下がっている俺の顔によく似た時計だ時計 時計 時計 またしても時計どの時計も正確な時刻を刻んでいる大欠伸をして時計を確かめた 四時四分か?外は薄明かり
2007.05.15
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山静かな寺院風の奥座敷一幅の掛け軸に飛脚の後ろ姿添えられた文字は「碁は臆することなかれ。一政治家に告ぐ」派手に墨の流れた書体政治の二字が薄汚れている正面に馬鹿でかい金の額縁が傾いてい今にも落ちそう金箔が剥げ落ち漆の地塗りがが生々しい自信ありげな男が唇をゆがめて納まっている (落ちかけた大額縁を元に戻そうと、 取り巻きたちが、慌てふためいたが、 うまくいかなかった)深まっていく秋式台にネズミが一匹、権力者の顔つき(人の訪れがめっきり少なくなった)どこからともなくどっと押し寄せてくる影法師に虚を突かれ額縁から男が転落した、その男は誰?、
2007.05.14
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涼しげな川の流れに引き寄せられ護岸の階段を水際まで降りて腰を下ろした澄んだ川面に向かいの景色が逆立ちしているカラスが一羽 手が届きそうな距離に舞い降りてきた大胆な行動にこちらの方が緊張するヤツはボクと同じように川面にじっと視線を落とすと首をかしげる水鏡に映っている自分の姿に考え込んでいる風突然 ステップを踏んで踊り出した軽快にくるっとボクを振り返ると嘴で水面を指す「あの影はオレのコピーか?」不思議だという表情に愛嬌があふれているそうだ とボクは大きく頷いたやおら ヤツは嘴を水面に突っ込んで コピーを消しはじめたその格好はカラスがカラスであることを自嘲しているようで おぞましいボクは因縁が一つ間違えば カラス同然だこれも他生の縁かと ヤツが可愛くなってきた「オレみたいなコピーはご免だね じゃまた会おう」カラスは意気揚々と羽をひろげ 羽音も軽やかに去っていった
2007.05.07
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〈幾十年かがありまして〉「いい人」やってて、疲れていく「いいこと」やってて、つかれていく「なにもしないで」つかれていく 《ゆくゆくはわが名も消えて春の暮れ 藤田湘子》……やっぱり、つかれている街道の道しるべも草の丈に埋もれて(わたしの声きいている)やる…やらない…やりたい!(道しるべにきいてみよう)
2007.05.07
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能登半島地震の被害現場に急行した友人が、能登は、あんたの脳梗塞と同じやな、と言う。平成八年、ボクは不覚にも脳梗塞で倒れ、入院の身となった。脳幹からわずか二ミリメートル直近の血管がつまったからだ。脳幹なら即死だね、と主治医は笑った。ボクは命拾いをした。今のボクは後遺症を抱えることもなく、発症前の健康体に戻っている。多分、友人はこのことを言いたかったのだろう。能登有料道路も全線復旧した。入院当時の日記を探してみた。「春一番」という題で短い詩があった。 入院生活の日常。 九時消灯、六時起床だ。歩行がずいぶん楽になった。 起き抜けの退屈、外来の正面玄関へ降りてみた。 すごい風だ。突風に植え込みの山茶花が体を曲げて、 お辞儀をしている。お早うございますと……。 人影がないのに、自動ドアがすーっと開く。風のお客さんだね。 肩をすぼめて春一番が入ってきた。 ボクの首筋から耳元でささやく。 「もう春ですよ。退院も間近、あなたの人生はこれからです」 ボクは、はっとして主治医のことばを反芻した。 「昔風に言えば中風、不治の病だった。しかし、今は違うよ」 またドアが開いて、春一番のやさしい声。 ボクの心に灯をともしてくれた。
2007.05.06
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書店の店員に詩のコーナーはどこかと尋ねた。えっ? 一瞬戸惑ったようだが、すぐ奥の方を指さした。そのコーナーでは数人お客が立ち読みをしていた。新刊の詩集はないかと、背文字を目で追っていく。だが並んでいるのは、安楽死、尊厳死、ホスピス、自殺、大往生等々……。あの店員は相当のジョークを解する者だと、改めて店員の顔をみた。彼の頭の中は、詩を超える者は死であったのかもしれない。隣の客はどんなことを考えているのか? 時折薄笑いをしたり、うなずいたり、立ち読みのページはだいぶん進んでいる。私も、そのうちの一冊を引き抜き、ページをパラパラやった。このとき、新聞の文芸欄で読んだ川柳がふっと頭をよぎった。…人生は紙おむつから紙おむつ…フフフフ……。
2007.05.05
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身いっぱい荷を積んで売りさばいてきたのは魚か野菜か月影を踏んで女がリヤカーを曳く商いの小銭が合切袋のなかで音を立てる夕方、谷間に青い靄がかかる頃街へ延びる国道をピカピカの車とすれ違ったが若者たちがリヤカーを指して手を振った昔はガタ馬車の御者がラッパを吹いてのんびりしたもんだった若葉台団地の知り合いの宅で最後の商いを終えるとめずらしく本が読めそうな月明かり萩が白く咲いている木槿が塀に白く咲いている白い百日紅が咲き残っている街明かりの中で、息子たちは達者かなふと聞き覚えのある声を感じて思わず月を仰ぎ「アイ」と返事をしました
2007.05.04
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なぜ詩を書くか? 真面目に問われると返答に困ることが度々です。20年も詩を書いてきて、この有様です。いい加減に答えて、その場をしのぐこともありました。何とか、納得できる返答ができないものかと、まだ悩んでいます。 ある日、こんな言葉に出会いました。「不安定なことばを杖に、不可視の世界にふれあいたいから」 詩人・山本太郎さんの「詩の作法」というエッセイの一文です。 これだ! ちょっぴり興奮しました。詩を書くことで見えないものが、見えてくるよと、山本太郎さんは言うのです。 例えば、移り変わる草花や木々、時候や天文などの確かな現象、ある瞬間の人間の表情にひそむものが、私たちの心に不思議な感情を引き起こしますよね。 この小さな不思議な感情は、確かに小さな美と快感に移っていきます。この例えばの話は、私の経験からでたため息のようなささやきです。
2007.04.30
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