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詩人YOSHIKI
ART OF LIFE YOSHIKI+市川哲史より
詩人YOSHIKI
I: インタビュー側のコメント
Y: YOSHIKIさんのコメント
I:とりあえず確認しときたいんですが、Xの作詞者は3名存在するわけだよねぇ。
Y:YOSHIKIでしょ、白鳥瞳、五十嵐美由姫。
I:白鳥麗という人間も存在してたと思うんだけど。
Y:あの人は、パンク系のバンドでドラムを叩く人ですね。
I:彼の姉にあたるのが白鳥瞳?
Y:一応お兄さんなんだけど。まぁでもこの辺の人たちは性別関係ないか ら、とにかく上の人が白鳥瞳っていう人。
I:自分でキャラクター作りすぎて、YOSHIKI自身もはや明確な差別化 が出来ていないような気がするんですけれども。もはや。
Y:(笑)そんなことないです。全員、実在の人物なんですよ。
I:自分で詩を書いて作詞クレジットを書く際に、ペンネームを使い分 けてるだけじゃないんですか?
Y:いやいやいや。例えば「STANDING SEX」が出来上がるまでは、作詞者ってYOSHIKIと白鳥瞳しかいなかったわけでしょ?
ちょっとその2人の イメージに当てはまらない詩が、いや、そういう当てはまらない詩を持ってきた人がいたんですよ五十嵐美由姫っていう。白鳥瞳もYOSHIKI も書かないような詩だったんで、採用したという。
I:ちなみに三者三様の詩の作風を解説してほしいんだけど、まず白鳥さんの書く詩ってのはどんなイメージなんですか?
Y:あの人、どの曲書いてるんだっけ?
I俺に訊くな。
Y:(笑)「X」や「オルガスム」ってあの人が書いてるんだよね?基本的に凄いポジティブなんですよ。
最後絶対プラスの方向に向かって終わってるという。
I:じゃあ白鳥瞳がポジティブならば、YOSHIKI自身の作風はどう定義づけられますか?
Y:基本的にネガティブというわけじゃないですけど混乱ですね、大混乱みたいな。
I:閉ざされた愛に向かい叫びつづけたり、何処に行けば苦しみを愛せると嘆いたり、鏡を見つめながらふるえる体に流れ始めた透
き通る血を青白いおまえの心に絡ませ厳格に消えていく最後の涙を拾い集めて血にまどろむとカオスしちゃう、所謂18番ね。
Y:そうなんですねぇ。
I:すると五十嵐美由姫嬢の世界はポジティブでもネガティブでもなく。
Y:基本的に破壊なんですけど、混乱にもポジティブにも当てはまらないと。もっと意味のない部分の世界で。
I:というと、要は単なる破壊衝動というかその場限りの爆発的なものなわけね、アナーキーっぽい。
Y:そう。彼はねぇ刺激だけを求めてるっていう。だから詩の言葉の意味はあまり関係ないです。
多少は持たせてるかもしれないけど、あまり感じ取れませんね。「STANDING SEX」はもう、単なる衝動の暴発状態ですから。
I:確かに三者三様ではあるけれど、そもそも最初に詩を書いたのはい
つ頃になるんですか?
Y:えー、俺ですかぁ?・・・・・・高校生かな。
I:その最初に書いた詩を覚えてますか。
Y:(笑)覚えてます。
Iどういう詩ですか。
Y:「I'LL KILL YOU」です(笑)
I:(笑)インディーズ盤の『VANISHING VISION』に入ってる、あの・・・
I:「I'LL KILL YOU」?
Y:・・・・・・そうです(笑)
I:高校生の分際でぶっ殺してやる!なんて歌詞を書いてたのか? どんな高校生だよ、一体。
Y:『ぶっ殺すぜって英語で何て書けばいいんだ?』みたいな。
I:(笑)よくわかんないけれども、当時の自分の状況をそのまま表現してるわけだ。
Y:でも実はラブソングなんですよ。
I:でもそもそも、詩を書くのって最初は結構難しい作業じゃん。形式とか様式とか体裁とか。
Y:何も気にしなかったですね。何にも気にしないし、ソニーとの契約してデビューする頃に、会社から少し言われたんですよ
『詩とはどうのこうのどうのこうの』って、『韻を踏んでどうの』とかね・・・関係ないッスね、
全然。ずぅっとやってきて今も思うけど僕、人の詩を読むのが好きで、CD買うと日本の作品であろうと外国の作品であろうと大体、一通り読むんだけど、あんまりねぇ、関係ない。
そんな小さい業現方法とか気にするのって、歌謡曲ぐらいなんじゃないの?韻を踏んでどうのこうのとか、流れがどうのこうのとか。
だから全然気にしない。逆に気にするのなんて馬鹿みたい。
I:しかしそうやって他人の作品を細かくチェックしてるということは詩のスタイルを一応気にしてる証明みたいなもんじゃない?
Y:うん。
I:そうやって比較検討してみた結果、YOSHIKIの中で書いた詩とかはこんな作風なんだ的なものは見えましたか?
Y:んー、最近の『JEALOUSY』の中で書いた詩とかは、凄い好きです。最初に言っておくけど。
まずねぇ、直接的に言いたいものは直接的な言葉でいってしまうんだけど、例えば『愛』って言葉があるでしょ。
みんなそれを言おうとするでしょ?でも絶対、僕の『愛』は普通に言われる『愛』じゃないんですよね。
例えば『好きだ』って言おうとするでしょ?
『アイラブユー』と言うとしたならば、俺の場合それは『キルミーラブ、僕を殺してくれ』ってなっちゃうんですよね。
『好きだ』と言うかわりに『立ち去る前に殺してくれ』とかって表現になるんですよね。
Iそうした表現スタイルというか表現アプローチの違いに、凄くネガティブな印象をうけるんだけれども。姿勢自体が。
Y:うん。ネガティブな表現の方が僕は怖いし、ぐっとくるし、そのほうが強い愛って思えちゃう。
I:がけっぷちじゃないけれど、自分がギリギリの状況まで追い込まれないと、自分の価値観は伝えられない的な発想なんですかねぇ。
Y:んー、そうですねぇ。でもまぁ、『愛』っていうもの自体が俺には分からないしね。どこまでが愛と呼ばれるかもわからないし、結婚にし てもそうだけどね。
何故結婚するんだろうっていう。だってさぁ、まぁ僕はあまりそういう経験ないですけど、今一般的にね、まず男女が交際しはじめると月何回か映画に行ったりとか
食事に行ったりとかしてデートを重ねると、結果的にそういうことを繰り返して別れたりとか、『結婚しよう』って籍入れたりとかするわけですよ。
それが愛なんですかねぇ?俺には分からない。何か一般的に言われるシナリオがあるでしょう、もう社会の中で。
I:じゃあYOSHIKIの考える愛ってどういうものになるんですかねぇ。
Y:ちょっとわかんないんだけど、皆でも結局、その2人の愛というよりも周りがあっての、周りの中での2人の愛っていうですか?第3者達の存在があって、彼らに認めさせた上での2人の愛っていうか。だから結婚してもその手続きに過ぎないというかね。
I:ここ3年間、ドラマは恋愛とか純愛のキーワードになってて。例えば漫画だと『同級生』や『東京ラブストーリー』の紫門ふみであり
音楽で言うとユーミン。松任谷由実の純愛3部作ですっかりすれきった若者の間で純愛に対する憧れが膨れ上がって。でも純愛とは何かって皆わからないわけよ。
わかんないから、とりあえず純愛のスタイルだけを真似る、みたいなさ、さっきの手続きに似てるんだけれども、そうした実の伴わないスタイルを重宝するのが、今の主流なんだよね。
そこで立ち去る前に殺してくれなんぞと、真っ向から全く違う破天荒なものを出してるのが不気味な個性ですな。
Y:僕の詩の世界みたいな愛が流行ってしまったら、それこそ世の中怖いですけどね。
I:世の中死人だらけ、ですな。
Y:(笑)そっちで自殺したぞ!こっちじゃ刺された!みたいな。
I:自分の詩にそうした恋愛観はかなり出てると思いますか。
Y:結局僕は、そこに生き方を求めてしまうんですよね。だから愛っていうのは、結構僕の中ではあまり見えないで。
ただ、“愛”って言葉に人は引っかかるから、自分でも引っかかるんで使ってるけど愛の中にやっぱり
恋愛だけじゃなくて自分の生き方とか友情とかも全部含まれてるからなぁ。
I:じゃあ詩を書く際に、俺はこれを一番書き込みたいっていう素材になるのはなんですか?
Y:まず自分の混乱ですね。市川さん『アートオブライフ』の詩はよく知ってるでしょ?結局あれで言いたいのは、いろんなことを振り返ったり
自分をいろんな風に叩き潰してみたり、また逃げ出したりとか。そんな感じで自分を追及してるんだけど、結局わかんないで終わっちゃうんですよね。
『ふん、結局また何もわかんないままで終わったか、この馬鹿は』って思ったでしょ?詩を読んで(笑)
結局いろんな風に考えてみる。壁を作ってみたり壊してみたり逃げたり立ち向かったり。
I:要は、自分を痛めつけてる歴史みたいなもんじゃん、アートオブライフに限らずYOSHIKIの詩というのは。
Y:そうですねぇ。『アートオブライフ』の中には『全てが夢なら俺を起こして/全てが現実なら俺を殺して』という被害妄想の自分がいて
それを客観的に眺めてる自分もいて、また被害妄想に向かってる彼に破壊を薦める自分もいて、
更に狂気状態と化した被害妄想の自分をビビりながら見つめてる自分もいるわけですよ。
I:分裂を通り越して、異常繁殖してますなぁ。赤潮みたく(笑)
Y:(笑)でもねぇ、それだけ混乱と破壊と狂気が同居していながら、それでも『俺はずっと生き続けたい』と客観的な自分は根本的に願ってるわけです。
I:つまり死に急ぐ自分と生き続けたい自分が同居してるわけじゃない?その対比が一番分かりやすいと思うんだけどね。
Y:そうですね。でもそんな程度じゃ割り切れない混沌状態ですから。とりあえずの『アートオブライフ』の定義としては、『永遠に血を流しつづける心の旅』みたいな。
それは決して終わらないけど、っていうそんな感じなんですよ。
I:今のアートオブライフの超概略を聞いて思うのは、YOSHIKIなり五十嵐美由姫なり白鳥瞳なりの三者が、各々1人1人の自分として登場してる観があるんですが。
Y:そうですね、ありえるかもしれないですね。
I:その場限りのぶち壊し破壊衝動の自分が五十嵐美由姫であり、もっと壊しちゃえばいいんだと煽動する自分が白鳥瞳であったりする?
Y:そうですねぇ。でもこの詩って、1人を主人公に置いて読むときっと理解できないと思います。おまえとか彼とか人称代名詞がいっぱい出てくるし。
でも実は、彼もおまえも俺も全部自分なんですよね。だけど自分の中では、あなたとか彼になっていっちゃうんですよね。
I:しかしそうしたキャラクターが、今までは作品別にバラバラに出てたわけで。それが実は根元は1本だったことを今回のアートオブライフが実証した観もあるなぁ。
Y:あり得ますね。でも、分離するでしょ?その分離した同士でここまで言い合うか、みたいなのありますけどね。喧嘩が始まっちゃいますよね、本当に。
昔は核なる自分がいて、その中にいろいろな自分が同居してた感じだったんだけど、各々が存在感を持ち始めたし、各々が大きくなって対等になってきたっていう。
I:以前はそこまで完全に分かれてなかった?
Y:分かれてなかった。『こういう面も持ってるんだな』程度はあったけど、確実に何人か別人がいるっていうか、絶対違うもん、自分でも不思議だと思う。
I:別人格を意識し始めたのはいつ頃からになるの?
Y:んー、デビューしてからですね。デビュー前も混乱はずっとしてたし、昔から『何の為に生きるの?何故生きてるの?』が口癖だったんだけど。
友達に訊いても『YOSHIKIちょっとヤバいんじゃないの?』って言われて、『いや、ちょっと疑問に思ってさ』と喋ってたんだけど。
I:でもね、基本的にYOSHIKIの分裂現象の核となってるのは何の為に生きるのかだと思うね。やっぱりそれが未だに最大の命題でさぁ。
Y:そうですね。わかんないです未だに。お金が欲しいのか?そうでもない。名声が欲しいのか?そうでもない。何が欲しいんだ?みたいな。
I:その答えが欲しい、が表現衝動の核じゃない?
Y:凄い欲望が強い人間なのかもしれないです。だから、普通のものを与えられて、『ああ、幸せだ』って思わないですよね。もし思ったとしたら、
人間なんだから当然その幸せをキープしようとするんだろうけど、未だに『これが幸せなんだ、生きてるんだ』ってことを本当に感じたことは無い。
一瞬感じても、すぐ過去のものになってしまって。
I:詩の韻を踏むのが嫌なのも、全て同次元で語れますなぁ。
Y:うん。だってさぁ、だから俺はね、やっぱり作曲者でもあるからメロディーを重視するでしょ?でまぁ、言葉の響きは凄い気にするわけ。
1コーラス目と2コーラス目で例えば韻を踏んだとしても、それによって同じように聴こえるのが絶対嫌なのね。
どっかちょっと違わないと嫌なのね。で、これは譜面上の話だけど、7~8分以上の長い曲はダルセーニョなりコーダなりを使わないと、譜面って凄く長くなっちゃうんですよ
だけど俺の場合、必ずそんな単なる繰り返しで終わらせないで、ドラムソロでも何でも全部書くんですよ。
I:同じパートでもあえてもう一回書くみたいな?
Y:そう、書くんですよ。それはドラムのフレーズにも現れてるんだけど、基本的には似てるんだけど同じサビが出てきても僕の場合全部違うんですよ。
同じオカズは叩かないんですよ。何故なのか理由はわからないんだけど、絶対繰り返さない。
I:だから詩の韻にしてもさ、韻を踏むと違う言葉でも同じに聴こえちゃうから、その言葉を使う意味がない。
パッと聴いて印象が違えば療法の言葉とも聴いてもらえるから的な欲の発露なんじゃないですかねぇ。
Y:あるなぁ。あとねぇ、例えば『立ち去る前に殺して』みたいな危険な詩、心にザクっと来るような詩を明るいメロディーに乗せるのが好きなんですよ。
明るい詩は狂気を見せるメロディーに乗せてみたりとか。
I:あえて逆を行くみたいな。
Y:が好き。それはまあ、美しいメロディーを破壊的なドラムで演ってるのと共通する部分があるかもしれないけど。
I:逆に悲惨な詩に悲惨なメロディーをくっつける臭さが照れくさくもあったりするんじゃないの?
Y:そうそう。俺はその臭さが嫌なんですよ。でもねぇ、白鳥瞳は『臭くて何が悪い』みたいな、『青春だ!』みたいなことも言える奴なんですよね。
凄いストレートで俺に無い面を持ってる。俺はあんな臭いのは嫌なの。
Y:誰が読んでもわかるような詩は書きたくない。
I:自分の詩はわかりにくい的な自覚はありますか。
Y:うん、詩によるんだけど。分かりやすい表面は持ってると思うんですよね。でも、肌はわかるけど心臓はわからないだろうっていう。
『何処に行けば苦しみを愛せる』という詩に、インタビュアーの人が『つまり苦しみが好きなんですか?』って訊くけど、そうじゃないじゃない?
最近はその表面すら混乱してるけど、昔はもっとわかりやすい表面で、内側でニヤニヤしてたみたいな(笑)
I:確かに紅エンドレスレインウィークエンドと最初3枚のシングルとかは分かりやすかったよねえ。完結したドラマしてて。
Y:分かりやすいですね。でも『ざわめきを殺し続けて』とか急に出て来ると、結局もがいてる状態を意味してるんだけどなかなかわからないみたいで。
I:そうしたYOSHIKI特有の屈折表現に代表される詩人YOSHIKIを自分で客観的に見るとどうですか。能力的にとか。
Y:んー、自己評価ってできない人ですから。結局自分で自分を評価するときには、いつもけなしてしまうからわかんないですね。
結構煮詰める方で、日本語の可能性も調べたし、僕はそういう辞典を自分で作って持ってるんですよ。自分のための辞典なんだけど。
外来語を全て書き出したバインダー、フランス語で響きのいい言葉を書き出したバインダー、英語のスラングのバインダー、日本語の古い言い回しのバインダー
本読んで心に残ったフレーズのバインダー、いろんな詩を読むだけあって、実は凄い研究家で。
I:そのバインダー群を詩を書くときに参照にしてるわけですか。
Y:まああくまでも参考であって、ぜったい同じ表現は使いたくない。自分なりに絶対アレンジする。今やりたいのは、英語の詩を書くときに、ただ単純に日本語から英語に転換するんじゃなくて
英語でもっといろんな意味を出したいっていう。
I:英語で先に書く、みたいな?
Y:スタンディングセックスはそうです。あれは英語だけでイメージして書いちゃったから、日本語の訳はつけようないと思うし、誰かが下手は訳をつけたら怒るぞ、みたいな(笑)
I:あれを訳すと滅茶苦茶な内容だぜ(笑)。
Y:(笑)そうでしょ?単なるドラッグの詩になっちゃうでしょ?セックス・ドラッグ・ロックンロールみたいな感じだけど・・・
それでいいんですよね、五十嵐美由姫の詩は。でも本当は少しは意味が引っかかる言葉があるの、“ライフ”なんですけど。
するとやっぱり歌入れのときにTOSHIも分かりにくいわけですよ、何歌ってるのか。
で、『実はこのライフって言葉に一つ意味があるんだ・・・でも気にしなくていい、これは五十嵐美由姫の詩なんだから』といったりするんですよ。
I:その持って回ったアドバイスが余計、TOSHIを混乱させてないか?
Y:(笑)たまに可哀相だけど、でも「サイレントジェラシー」のときもねぇ、詩を読んで彼は『狂気っぽく歌えばいいんだ』と思って、凄く狂気っぽく歌うわけですよ。
そのとき俺が言うのは、『違うんだ、30%だけ狂気を入れてくれ』と。
だから、狂気的な詩なりメロディーを狂気っぽく歌ったら本当の怖さは出ないんですよ。例えば、『人に殺してくれぇ!』と言っても怖くないでしょ?
普通に『殺して』と何気なくポッと言われたらビクッとするでしょ?そういうニュアンスなんですよね。
Y:いつもねぇ・・・・・・TOSHIはTOSHIなりの素晴らしい魅力があるから結構妥協があったんだけど、50%の妥協と50%のOKできたんだけど 『JEALOUSY』のときは70、80までこだわってみようと思ったんですよ。でも難しいですねぇ。やっぱり喉って生きてるものだし、そのために殺しちゃうわけにはいかないし。
だから歌録りのときとか僕のほうがエキサイトしちゃいますよね。コンソール・ルームで凄いエキサイトしちゃってる、『違うんだぁー!』とかって(笑)
I:しかしそれだけ言葉にこだわっていながら、曲の全編英詩という日本人にとっては不利な表現手段が目立つんですけれども。
Y:たまたま『JEALOUSY』のレコーディングでLAにいて気付いたことなんだけど、日本語の素晴らしさを、「サイレントジェラシー」なんて最初Aメロ全部英語だったんですよ。
実際全部英語でイメージして作ったわけですよ、最初に。で、英詩でやってみたんだけど、日本詩の素晴らしさに気付いてしまったんですよね。
日本語じゃなきゃ言えない言葉っていうのが、まだ英語勉強中だからそんな偉そうに言えないけど・・・ 日本語って細かいんですよ。
細分化というか、一つのことに対していろんな表現の方法があるし。まぁ、26ぐらいの音節と50音じゃ全然違いますからね。
I:それもあるし、真の意味での表音文字だしね。だから日本語って世界で一番、感情から何から全てを表現できる言葉だもんね。
Y:うん、素晴らしい。だからそれで途中からどんどん日本語を取り入れていったんですよ。本当に素晴らしいですよね、英語勉強してて気付きました。
I:例えば紅はインディーズ盤収録バージョンだと英詩だったのに、『BLUE BLOOD』では日本詩に改作されてたけれども、あれも似たような動機だったのかしら。
Y:やっぱりねぇ、『紅に染まったこの俺を』って部分は日本語で言いたいと思ってしまったんですよね。
I:これは確認なんだけれど、高校時代に詩を書き始めたときから元々英語で書いてたんですか。
Y:その時期はまだ英語は片言しかわかんなかったですけどね。
I:でも『VANISHING VISION』は、英詩の曲が滅茶苦茶多いじゃない?
Y:まぁ、だから、友達に手伝ってもらって訳したり、ある程度の知識で訳したりみたいなところで。だから詩自体は日本語で考えてたんですね。
で、そのときは響きばかり気にしてたんですよね。でも僕は、英詩でも結構わかりにくいものは使ってないというか、なんとなく日本人でも響いてきちゃうような・・・
日本人って半分英語教育受けてるしね。ドリームって言えば夢だってわかるし、ライフって言えば生活だってわかるし。だからそういう言葉たちをメインに使ってるけど。
I:何故そこまで日本語の重要性がわかってるのに、自らの半生を表現した大切なアートオブライフが全編英詩になっちゃったんですかね。
Y:だってインタビューですら話せないんだよ?日本語にしちゃうと直接的過ぎて逆に自分が耐えられないんですよ、絶対。
I:自己防御本能による英詩ですか、要は。
Y:その通りですね。
I:でも日本のロックって部分使用にせよ全編完全使用にせよ、昔から安直な英語の導入というのが取り沙汰されてて。そうした誤解を気にしたことはない?
Y:でも「スタンディングセックス」とかは、さっきも言ったけど日本語では逆に表現できないですよね。英語でスラング盛り込んで、あれはあれで面白いと思うんですよ。
だから日本語で言うと、『馬鹿野郎!ふざけるんじゃねぇ!』みたいなことを、英語で表現してるみたいな。
でも英語だとそれなりに聴けるってことですよね。
I:確かに日本語にしちゃったら、レコ倫や会社の教育的指導で10ヶ所は訂正させられる気がするなぁ。
Y:ああ。もうそうですね。
I:しかしこうして改めて詩人YOSHIKIの話を聞いてみると、世間では誤解されてるけれども、YOSHIKIにとって詩とは非常に重要な表現手段だってことを再確認したねぇ。
Y:結構皆が僕を捉えてくれるのって、メロディーとか作曲のことばかりで、あまり作詞のこと訊いてくれないんですよ。
質問されないから喋らないだけで、実はデカイんですよね(笑)デカイし、作曲と同じ、もしくはそれ以上の時間を僕は割いてるっていうか。
ポリシー持ってますからね。
I:自分の人生を具体的に語ることを完全拒否してる以上は、詩で出すしかないって気もするんだけど(笑)。
Y:はははは。そうですよね。詩はデカイな。詩から作品が出来ちゃう場合もあるしなぁ。“ウィークエンド”の詩なんて好きだなぁ。
I:突然自分に酔っております。
Y:(笑)やめてよー。でも詩を書いて、それにメロディーつけちゃっこともあるんですよ。その“ウィークエンド”で。
I:あれは詩が先なんだ?
Y:サビのね、『手首を流れる血をおまえの体に/絡みつけると一瞬のうちに更みがえる記憶に視界を/閉ざされ笑いながら逃げていくおまえの姿を/見つめる傷ついた俺が立っている』って部分。
I:詩が先にあってつけるメロディーと、メロディーが先で詩がくる場合とでメロディーに差とか出る?
Y:うん、出るんですよ。だから「セイエニシング」もそうだけど、もっと単純なメロディーだったのに詩でちょっとメロディーが動いたりすることとかあるから。
I:メロディーに詩を無理矢理当てはめてりしない、と。
Y:そう。『傷つけ合う言葉でも~』のとことかそうですね。
I:それだけ詩を重視して、大切にしてるわけだ。
Y:そうです。さっきの『手首を流れる血を~』なんて、あんなの一瞬詩だけ見たら暗いメロディーが浮かんでくるでしょ?でも実は結構明るめなノリなんですよね。
I:前向きなメロディーだから変なんだよなぁ。
Y:そうですよね。それがでも刺さってくるんだなぁと思うけどね。
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