WILDハンター(仮)

WILDハンター(仮)

ガンロード・サガ


これはどこかに埋もれた物語
人と精霊がまだ共に在ったセカイの御伽噺
幕をあげるのは一人の少年と一丁の拳銃
彼らに共通していたのは「名前が無かった」こと
彼らが名前を得た瞬間(とき)からこの物語は始まる
発展しているセカイ
今とそれほど変わらない匂いをもつセカイ
けれども都会の風に土が薫(かお)る中途半端なセカイ
幻想(おもい)も現(うつつ)となるセカイで
さぁはじめよう
このでたらめな物語の開幕劇を

 真夜中の倉庫街を黒いジャケットをはおり、紺のジーンズと赤いカラーシャツを着た18歳ほどの少年が歩いている。こんな時間にこんなところを歩いている時点でこの少年がいい子ちゃんでないことはたしかだろう。
「今日こそはいいものを手に入れてやるぜ」
 そう少年を言うと、伸び放題の黒髪をかきあげ、前もって目をつけていた倉庫にひそかに作っておいた合鍵を使って中に忍び込んだ。この日の彼の目当ては“銃”だった。
 銃にかぎらないが、力がものをいうこの世界で自分に合った力を彼は直感的に“銃”だと思っていた。彼は銃を求め、銃は彼を求めていたのだろうか。恐らく彼らが出会うのは必然だったのだろう。その日、彼はこの倉庫で一丁の銃と出会った。
「へぇ…ここにこんな銃があったのか」
 片手でも扱えるリボルバータイプのハンドガン。6インチのバレルと大型の6連装シリンダーを持っているが不思議と手になじむ。完成度の高い傑作のようだ。
「こいつがいいな、でも銘がはいってないのか…」
 普通はバレルなり台尻に銘をいれるのが習わしになっているのだが、この銃にはそれがない。作者が銘をいれる前に亡くなったのか、実は欠陥品なのか、それとも…、
「お前も捨てられた口か?」
 彼が憐れむようにそう呟くと、彼以外誰もいないはずの倉庫に声が響いた。
「そういう汝(なんじ)も捨てられた口か?」
「誰だ!?」
 彼は反射的に手にした銃を構えて倉庫の中を見渡した。しかし、誰もいない。念のため倉庫の扉を確認しにいったが、唯一の入り口は内側からしっかりかんぬき錠がかけられている。彼が不思議そうに首をかしげると、また声が響いた。
「ふむ、まず入り口を確認しにいったのは褒めてやるがまだまだ動きに無駄が多いな」
「くそッ!どこにいる!?」
 扉を背に銃を構えたがやはり誰もいない。すると、
「あまり振り回すな、汝よりは頑丈だが目が回る」
「はぁ!?」
 その言葉に彼は手にした銃を凝視した。まさかと思いながら、彼は銃に話しかけた。
「お前が喋っていたのか?」
「他に誰がいる」
 当たり前のように銃が答えた。彼は驚いて危うく銃を放り投げるところだったが、ある言葉が脳裏に浮かび、銃に聞いた。
「お前、“魔銃”なのか?」
「いかにも」
 当然のように銃は答えたが、少し間をおいて言葉を続けた。
「だが“魔銃”とは少し違う」
「はぁ?勝手に喋る銃が普通の銃ってわけじゃないだろうな?」
 少年はもっともなツッコミをいれた。その瞬間、銃が淡く輝き光る何かが飛び出してきた。それは少年の目の前にくるとさっきと同じ声が響いた。
「我(われ)が汝と話していたモノだ」
 そう言われても、と困惑した表情で少年は空いている右手で頭をかくと、光はあきれた口調で説明をはじめた。
「要するにだ、我はその普通の銃に間借りしている精霊だ」
「はぁ!?まず精霊が間借りしてる銃と魔銃がどう違うんだよ!」
 少年はわけがわからんという口調で光に向かって怒鳴った。光はほとほと手のかかる奴だと言わんばかりにため息をついてまた説明をしてやった。
「銃そのものが変化したのが魔銃だ、我は精霊でその銃自体は普通の銃ということだ」
「……ぁ~、なるほど」
「汝、ちゃんと理解しておるのか?」
 光に聞かれ少年は腕組みをして答えた。
「要するにお前が抜けたこの銃はただの銃ってことだろ?」
 そう言って左手に持ったハンドガンをぶらつかせた。
「うむ、その通りだ、して汝はなぜその銃を欲したのだ?」
 満足そうな声で光は答え、いきなり少年に問いかけた。
「なんでそれを?」
「いいから答えぬか」
その唐突な問いに少年は戸惑ったが、はっきりと言い切った。
「力が欲しかったから」
「なにゆえに?」
 それを聞き光がまた静かに問う。少年はしばらく考えていたが、こう答えた。
「金と名声を手に入れるために、だ」
「汝の答え、それは嘘だな」
「なんで分かるんだ!?」
 光がはっきりと言ったことに少年は驚いて叫んだ。
「精霊に人の真偽を見抜けぬはずがなかろう」
「なるほど」
 光の答えに少年が納得していると、光は厳しい声で言った。
「次からは自分に正直に答えよ」
「お…おう」
 少年は光の意外な厳しい態度に驚きながら答えた。
「では再び問おう、汝はなぜ力を欲する?」
 少年は一息ついて静かに答えた。
「誰かに必要とされたかったから」
「汝が求めるは壊すための力か?」
「いいや」
「汝は力を何と考える?」
「目的を達成するための手段だ」
 光の問いに少年はすらすらと答えていく。少し間をおいて光はまた少年に問うた。
「我は汝が求める力を与えられるが汝はそれを望むか?」
「いいや」
 意外だったのか光は少し感心した声で問いを続ける。
「それはなぜ?」
しばらく考えて少年は答えた。
「力は誰かに与えられるのではなく自分で育てるものだから」
「しかし汝は先ほど他の存在から力を得ようとしたではないか?」
 その問いに少年はぐっと答えに詰まってしまった。永い沈黙が続く。少年はようやく口をひらいた。
「たしかにそうだ、矛盾していることだ」
 光はそれを黙って聞いている。少年は静かな口調で続ける。
「それでも俺が手に入れることを望み、相手もそれを望んでくれた力は俺の力だ」
 少年はきっぱりと言い切った。一点の曇りも無い瞳に信じるともし火を燃やして、光はそれを聞くと少し考えて次の問いをした。
「それでは汝はその銃が汝を求めていたというのか?」
「それは分からない、普通は喋らないからな」
 少年は皮肉を込めた笑みをうかべて答えた。
「ならばなぜだ?」
 少年はう~んと唸って考えているとあることを思い出した。
「たぶん、似たもの同士と感じたからだと思う」
「ほう」
 左手に持ったハンドガンをそっと目の前にもってきて話を続けた。
「こいつには銘がない」
「うむ」
「俺にも名はない」
 それを聞くと光は頷くように上下に動いた。少年はかまわずに話し続ける。
「名無しの俺が銘無しの銃に出会った、何か不思議な感じがしたから俺はこいつを選んだ」
 そこまで言って少年はハンドガンを見つめた。そして少し寂しげな口調でつけくわえた。
「まぁ、お前が言うとおりこいつが俺を求めているかは分からないがね」
 少年が話し終わっても光はずっと黙っている。少年はいたたまれなくなり、さっきからずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
「なんでこんなことを聞くんだ?」
 光はそれでも黙っている。少年はこの場の微妙な空気に耐えかねる様子だったが、どうすることもできずにただ頭をかいている。それからしばらく経って、ようやく光が答えた。
「なぜと問われれば、それは我が暇であるからだ」
 光のふざけたとしか思えない答えに少年は怒って叩き落そうと銃を握っている左手を振り上げた。しかしそれにかまわず光は話し続けている。だが少年の左手は止まらない。
「そして永い刻の狭間を共に歩む者を探していたからだ…がはっ!?」
 思い切りよく振り落とされた銃の台尻で光は床に叩き落されてしまった。そして少年はものすごい形相で怒りまかせに叫んだ。
「たかがてめぇの暇つぶしにあんなに頭を使わせるんじゃねぇぇえっ!!!!」
 それを聞きながら光はふらふらとまた少年の目の前まで浮かんできて尋ねた。
「う…くっ…たしかにその点は謝るが…汝は我が今言ったことを聞いていたか?」
「あ?何か言ってたのか?」
 光の指摘を受けて少年はすまなそうな声をだした。
「うむ、しかしさっきのは我の失態だ、それほど気に病むことはない」
 それを聞いて少年はほっと胸をなでおろした。そして光は改めて話を始めた。
「我ら精霊にも色んなモノがおる」
「ふむふむ」
 相槌を打ちながら少年は光の話を熱心に聞いている。
「ひとつ処に在るを好むモノ、気ままに飛び回ることを好むモノ、血と争いを好むモノ、人と共に歩むことを好むモノ」
「お前はどれなんだ?」
 少年がいぶかしがって聞くと、光は苦笑したような声で答えた。
「我は我が“認めた者”と歩むことを好む」
 その答えを聞いて少年は思わず笑いだした。光はそれを不思議そうに見ている。
「ははははは、要するに気に入ったヤツ以外とはつるまないってことか」
「うむ、そのとおりだ」
 少年の言葉に満足そうに光は答えた。少年も愉快そうにまた聞いた。
「んで、さっきの質問はそれを見つけるための手段ってわけか?」
「然(しか)り」
 そして少年は最も気になることを聞いた。
「俺はどうだったんだい?」
 その問いに光はすぐ答えた。
「なかなか面白い人間だと思わされた」
 その言葉に少年ははっきりと好意を感じた。光はさらに言葉を続けた。
「叶うならば我は汝と共に歩んでいきたいのだが汝の返答はいかに?」
 その申し出に少年は柔らかな笑みをうかべて答えた。その言葉はもちろん、
「求めよされば与えられんってね、これからよろしく頼むよ」
 そこまで言って少年はあることに気づいた。
「ところであんたの名前は?」
 もし光に表情があったとしたら、このときはきっと悪戯に成功した子どものような笑顔をしていただろう。なぜなら光はこう答えたのだ。
「我にも名は無い」
 数瞬の沈黙、先に笑いだしたのはどっちかわからないが、それからしばらく二人はずっと笑いあっていた。まるで懐かしい旧友との再会を喜ぶように。
――それから数週間後――
 東アルディアの首都プロディアスにあの夜と変わらない格好をした少年の姿があった。“力”を手に入れた彼はそこでハンターズギルドという組織に所属している。所属といっても名前を登録しているだけで、たまに入っている依頼を自由にとってこなす何でも屋だ。その仕事は色々あるが、依頼人がいて相応の報酬があれば誰も文句は言わない。しかし駆け出しには危険な、または重要な依頼は回されない。せいぜい近所の引越しの手伝いや荷物の運搬、たまに害獣のハントもあるが、それも危険度の低いものだ。少年は日々の食い扶持を稼ぐためにそれらの依頼をこなしている。この日も依頼が貼られているボードを眺めていたがろくなものが見つからず、少年は頭をかきながらギルドを出ようと扉に手をかけたそのとき、ホワイトシャツの男性職員から声をかけられた。
「おい!ちょっと待て、“名無し”」
 “名無し”、それがギルドに登録した少年の名だ。何かと思い振り返ると、窓口にいる職員は依頼状らしきものをひらひらと見せびらかしてこっちに来い、と手招きした。
「なんだいレンさん」
窓口に少年がくるなりレンと呼ばれた職員は話を始めた。
「お前もこのギルドに来てそれなりの実績をあげてるんでな、お偉方から一段階、依頼の難度を上げてもいいという通達がきた」
 それを聞いて少年の瞳は輝いた。
「本当かよ!?よっしゃ!これで少しはマシな生活ができるぜ!」
 そう言うと大げさなガッツポーズを決めて少年はひとりで悦にはいっている。それを見て、レンはやれやれと首をふってから話を続けた。
「盛り上がってるところ悪いが、まだお前のランクを上げると決まったわけじゃない」
 それを聞いて少年はレンの方に当惑した顔をむけた。
「そんな目で見るな、この依頼をこなせたらちゃんと昇級させてやるから」
 そう言ってレンは先ほど見せた依頼状を少年に渡した。そこに書かれていた内容は、
「『村の周辺に出没する怪物の退治』…?」
 少年が声にだして言ったことにレンは補足的に説明を付け足した。
「そう、プロディアスからあまり遠くないところにある農村からの依頼なのだが、最近そこの畑が鬼に荒らされているという話だ」
「鬼?」
 それを聞いて少年は思わず聞き返した。それにレンはさらに説明をしてやった。
「恐らくオーガ系の魔獣だろう、今回はいつものリボルバーだときついんじゃないか?」
 心配そうにレンは言ったが、少年はいつもの調子で返した。
「大丈夫っすよ、いざとなったら奥の手もありますからね」
「そうか、だったら早いとこ向かってくれ、あそこの小麦が入らないと俺のいきつけのパン屋が営業できなくなっちまうんだ」
「あそこのパン屋はうまいからね、俺もよくいくから他人事じゃないな」
  そうジョークを言い合って少年はギルドをあとにした。少年がむかったその村の名は「パレス村」、良質の小麦を産出していてここで採れる小麦は「パレス麦」と呼ばれ、一大ブランドになっている。この時期は黄金色の稲穂が夕日に美しく波打つ風景がこの村に訪れる人々を出迎える。少年もこの風景には感動を隠せずに思わず、
「きれいだなぁ」
 ともらしてしまった。すると左腰のホルスターにさしたリボルバーから声が響いた。
「うむ、今汝が目にしているもの全てに精霊が宿っている、命とはかくも美しいものだ」
「そうだな、さて、村に入るか」
 村に入り村長から聞かされた状況は大体次のようなことであった。今年の刈り入れ時期になって夜な夜な鬼が収穫した小麦をいれる倉庫を襲い、中に蓄えられている稲穂を食い荒らしているのだそうだ。最初は村の男たちが農具を使って追い返そうとしたのだが、鬼のものすごい臭い息でみんなバタバタと昏倒してしまったらしい。
「ものすごく臭い息ですか?」
 少年は思わず聞き返してしまった。それに村長の爺様は大きく頷いて答えた。
「そうですじゃ、わしは家の中にいたのですが外に出たところ、この世のものとは思えないにおいがしましたじゃ」
 それを聞いて少年は今回の依頼がかなりきつくなることを想像した。そんな少年の表情を見て村長は家の奥からガスマスクのようなものを持ってきて少年に渡した。
「これは肥溜めに肥料を足すときに村の衆が使ってるものじゃが、気休めくらいにはなるじゃろうて」
「いえ、だいぶ助かります」
 そこまで強烈なにおいを放つ肥溜めがあるのか少年は疑問に思ったが、とにかく夜になるまで村長の家で待つことになった。そして日が落ち、星が燦然と輝く夜空が現れる頃にソレはやってきた。
――ズゥン…ズゥン…――
鈍い地響きを感じた少年はドアを開けて外に出た。村の北東にある森からその地響きは少しずつ近づいてくる。森からすぐの村とのあいだに広がっている野原で少年は相手が現れるのを仁王立ちで待っていると、すぐに森の中に動く影が見え低い唸り声が聞こえた。それと同時に嫌なにおいが辺りに漂い始めた。あらゆるものが腐ってそれに発酵が加わったような悪臭。少年はあまりの臭さに村長から渡されたガスマスクをつけた。それでも完全にろ過されなかったがさっきと比べれば全然違う。一息ついてほっとしたのもつかの間、ソレが月明かりの下に出てきた。少年はソレを見て目を背けたくなった。目の前に出てきたのはたしかにオーガと呼ばれる人間の成人男性よりも二回りほど大きな体格をもつ鬼に似た魔獣なのだが、
「腐ってやがる」
そう通常オーガは赤い赤銅のような肌をしているが、今目の前にいるやつの肌は紫色に変色しところどころ緑色のコケのようなものが生えている。さらによく見ると体のいたるところから濁った液体が滴り落ちている。この異形なオーガに吐き捨てるように少年は言うと、腰のホルスターからリボルバーを抜き、撃ち放った。
――ドンッ――
 放たれた弾丸は見事にオーガの胸に当たったが、相手は微動だにしない。それどころか弾丸は押し返されて地面に落ちた。さすがに少年もこれには驚いた。とオーガは息を吸い込む動作をした。少年は反射的に横に跳ぶとオーガはさっきまで少年がいた辺りに息を吐いた。すると濃い紫色をした霧がオーガの口から出て、草原にさらにひどい異臭が漂った。少年は吐き気を抑えてさっきまでいたところに目をやると霧がかかった場所の草は黄色く枯れている。
「うわぁ、強烈ぅ」
 思わず呟くと、銃の中から光が飛び出してきた。
「汝にアレは少々荷が勝ちすぎるな」
「へっ、まだ分からないぜ!」
 光の冷静な言葉を威勢よくはねのけて少年はオーガめがけて走りだした。それにオーガは両手をゆっくりと振り上げ、十分に狙いをつけてから叩きつけた。しかし、少年は前に跳びこんでかわすと至近距離からオーガの顔にありったけの弾丸を撃ち込み、股下を抜けて後ろをとった。これで決まったと少年は余裕ぶって後ろを振り返ると、目の前に巨大な拳が迫ってきた。
「…なっ!?」
 もろにオーガの右ストレートをくらい少年は数m先まで吹き飛ばされた。顔に五つの銃創がつき、額の銃創からは脳漿のようなものまでたれているのにオーガはまだ動いている。邪魔者が消えてオーガはまたゆっくりと村に向かっていった。光はやれやれという口調で苦痛に呻いている少年に声をかけた。
「汝の武器はあやつと相性が悪いのだ、剣士であれば四肢を切り離し赤子の手をひねるようなものであろう」
「はぁ、はぁ、だったらどうしろってんだよ?」
 腹を押さえながら少年は光に聞いた。すると光は当然のように言い放った。
「そのための我であろう?」
 それに苦笑ともとれる笑みを浮かべながら少年は答えた。
「そうだったな」
 右手で腹を押さえながら少年は立ち上がり、
「待ちなデカブツ!」
 叫んだが、それにオーガは反応せずにひたすら倉庫に向かって歩き続けている。少年はリボルバーのシリンダーを外し薬莢を抜くと腰のホルダーにつけていたローダーを差し込んで弾をいれ再びシリンダーをはめた。すると光が銃に入り銃そのものが淡く輝きはじめた。息を吐いて意識を集中させ少年は銃を構え、そしてオーガの背中に狙いをつけると引鉄を引いた。その瞬間、銃口から衝撃波のような光が飛び出しオーガの胴に大きな風穴をあけた。しかし、オーガは何も感じないのかそのまま前進をやめない。あまりのタフさに少年は呆れてしまった。
「動けないよう真っ二つにすればよかろうが」
「なるほどな!」
 輝いている銃からの助言に少年は威勢よく答えると一気に駆けた。オーガのすぐ後ろまで来ると少年は跳びあがり、さらにオーガの肩を足場にして頭上に躍り出ると、
「こいつでジ・エンド!」
 そう叫び、真上から弾丸を撃ち込んだ。弾丸はオーガの体を縦に撃ちぬき完全に左右を別々に吹き飛ばした。反動で跳ね上がった少年はふわりと月明かりをバックに華麗に着地した。数瞬遅れてオーガが文字通り崩れ落ちる音が響く。なんとか終わらせたと少年は天を仰いで息をついた。輝いていた銃から光が出てきてさっそく小言を始めた。
「汝は順応性は高いが相手の特性を見抜くことがまだまだ未熟、これから気をつけよ」
 少し疲れた声だったが、それは少年も同じ。
「はいはい、とりあえず村長に知らせよう」
「ときに汝あの変な仮面はどうしたのだ?」
 光の言葉に少年は何を言ってるのかと思い顔に触れて驚いた。ガスマスクが無かったのだ。さっき殴り飛ばされた衝撃で外れたことに痛みで気づかなかったのだろう。気づいた瞬間、彼の鼻に強烈なにおいが突き刺さる。必死に耐えて数歩歩いたが、
「…これ以上は無理」
 そう呟いて少年はばったりと倒れてしまった。翌日、彼は無事村人に発見された。彼が目を覚ましたのはそれから二日後のことだった。少年は目を覚ましたその日にプロディアスのギルドに戻った。そして彼は帰ってくるなり驚愕の事実を知る。それは、
「名無し!よく帰ってきたな、あれはAランク相当の依頼だったのに」
「は?」
 レンのその言葉に少年は耳を疑った。
「いや~とにかくBランク昇級おめでとう、Bランクの依頼はCランクと違って危険度が段違い…ってどうした?怖い顔して」
「…あんたはBランクに昇級させる依頼にAランクの依頼もってきたって言うのかよ!」
 すまし顔でレンは聞き流していたが、少年の怒りは収まらない。けっきょくいつも通りレンがウィンチェス亭のパンをおごることで決着がついた。

そしてまた平穏な時が流れる
次は本当の幕開けを
彼らが真の名を思い出すその刻を紡ごう


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