アイヌモシリの春夏秋冬～Beautiful Seasons of Hokkaido～

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June 14, 2018

『一枚の絵』

テーマ：生活しよう！(613)

カテゴリ：北海道生活

自分は、今、ある文化施設に来ている。

この施設の壁には、十数枚の絵画がかけられていて、ちょっとしたアートギャラリーのようだ。

ふと、一枚の絵の前で、足が止まった。

…油絵で、力強く描かれた、大雪の山並み…

そして、ネームプレートには、見覚えのある名前が…

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今から、三十余年前。

中３の自分は、通知表をもらって、ため息をついていた。

なにせ、他の教科はオール「５」なのに、美術だけが「２」なのだ。

自分の絵の才能のなさは、壊滅的だもんなぁ…

例えば、油絵の授業で、円筒形の花瓶を描いたはずなのに…

「…誰が、サントリー角瓶を描けって言った？」

黒縁メガネにあごひげをたくわえた、いかにも芸術家です、って感じの美術教師が、ぎょろっとした目で、その眼鏡の奥から、自分をにらみつけたのは、ひと月くらい前のことだったか…

別に、ふざけてるワケじゃないのに、絵の才能のある人には、見たとおりに描けない人間もいるってことが、分からないんだろうなぁ…

と、回想している自分の後ろで、バタン！　と、荒々しく座席を立つ音がした。

びっくりして振り返ると、一人の女子生徒が、教室を飛び出していくのが見えた…

その日の帰り道…

自分は、さっき教室を飛び出していった女子生徒と歩いていた。

「…で、直談判に行ったんだ？　あの黒縁メガネのとこに。」

「だって、何でアタシが、美術「４」なのよっ！！」

普段は、おっとりしてる彼女が、こんなに荒れてるのを…

彼女は、同じ小学校から上がってきた幼馴染。

家がものすごく近所で、何回か遊びに行ったこともある。

絵がとても上手で、自分もその繊細なタッチの絵を見せてもらったことがある。

コンクール等でも、何度も入賞しているらしい。

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今、目の前のネームプレートには、あの美術教師の名前が…

…有名な画伯だもんな。

そして、その名前とともに浮かび上がってきた、この力強い絵とは対照的な、繊細な絵を描く彼女の記憶…

まぶしい、夏の陽射し…

怒った彼女の横顔…

…今も、元気にしているのかな？