親仁の意見-50男の素朴な想い

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January 14, 2006
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「男たちの大和/YAMATO」 を観て来ました。僕自身は、旧帝国陸海軍のことにつき人一倍関心が高く、「戦艦大和の最後」も知り尽くしていましたから、映画自体に然程の期待はありませんでした。ところが、予想を遥かに超えた秀作であり、最初から最後まで感動の涙でハンカチはグショグショでした。周囲からもすすり泣く声や、肩を震わせている気配が伝わって来ました。

今回、特に良かったのは主役が将校でなく、帝国海軍を支えた下士官の方々だったからだと思います。そして、素晴らしいセットが構築され、艦内の様子がリアルに伝わって来たことです。反町隆史演じる森脇庄八二主曹は烹炊所班長であり、従来の戦争映画ではまず描かれなかった主計科の様子が巧みに描かれておりました。(注:烹炊所(ほうすいじょ)とは艦内の炊事場のこと)

そして、何より素晴らしかったのは、20歳前後の若い俳優さん達が、帝国海軍の水兵さんを見事に演じていたことです。我々の世代ですら想像できなかった、壮絶な鉄拳制裁の場面など、今の若者に何処まで演じられるか大いに疑問でしたが、60年の時空を超えて彼等は立派な水兵になり切っておりました。

さて、前置きが長くなりましたが、僕がこの映画を観に行ったのは、「臼淵巌(うすぶちいわお)」という海軍大尉との対面を望んでいたからです。臼淵大尉とは、 吉田満氏 の傑作『戦艦大和ノ最期』に登場し、特攻出撃を前に海軍兵学校出と学徒出身の士官の間で「死ぬことの意味」を巡って壮絶な議論が戦わされ、それを見事に治めた人物なのです。以下、参考文献の 一つ から引用します。

沖縄への決死行が、ゆきて帰らぬ特攻作戦だと知った士官たちは、死と向き合い苦悩する。死の意味づけをめぐって起きた若者たちの激論を、吉田満は描いた。

 潔く散ることを美学とする兵学校出身者が叫ぶ。

 「国のため、君のために死ぬ、それ以外に何が必要か。もって瞑(めい)すべきじゃないか」

 不本意な出征で未来を失うことに学徒出身者は抵抗する。

 「それだけでは嫌だ、自分の死、日本の敗北を普遍的な、何か価値というものに結びつけたい」

 「そういう腐った根性をたたき直してやる」 乱闘寸前となった艦内で、臼淵大尉がつぶやいた言葉が論争を鎮める。

 -進歩ノナイ者ハ決シテ勝タナイ 負ケテ目覚メルコトガ最上ノ道ダ 日本ハ進歩トイフコトヲ軽ンジ過ギタ 私的ナ潔癖ヤ徳義ニコダハツテ、本当ノ進歩ヲ忘レテヰタ 敗レテ目覚メル、ソレ以外ニドウシテ日本ガ救ハレルカ 今目覚メズシテイツ救ハレルカ 俺タチハソノ先導ニナルノダ 日本ノ新生ニサキガケテ散ル マサニ本望ヂヤナイカ(「戦艦大和ノ最期」) 

若き大尉は、特攻のむなしい結末を見通しながら、その職務を放棄することを潔しとしなかった。絶望も、怒りもすべて戦後日本の「進歩」に託し、特攻死を受け入れた。


この素晴らしい人物も、私人としてのリベラルで文学・哲学・芸術の造詣の深さと同時に、職業軍人としての厳しさを持って、学徒出身の吉田少尉に鉄拳を振るうのです。これも 別の参考文献 から引用します。

吉田少尉が大和に乗艦の初日、通信科の少年兵が十数m先の通路で欠礼した。本来なら鉄拳五発の制裁である。少尉は、少年兵を諭した。「敬礼を欠いただけで、気持ちに嫌な後味を残す。こんなつまらん事はない。これからは、上官の後ろ姿を見ても敬礼してみろ。たいした努力は要らん。そして、気持ちがいつも楽だぞ。どうだ。分かったら、そこで思い切り敬礼してみろ」制裁に怯えて肩をふるわせていた少年兵は、力一杯に挙手の礼を繰り返し、小躍りせんばかりに立ち去った。

その直後、少尉は臼淵大尉(兵71期)から、鉄拳を受ける。大尉は言う。「貴様の言うことにも一理ある。しかし、あの上官はいい人だ、だから砲弾の雨の中を突っ走れとは言うまい。そう兵隊は貴様を、なめてかからんか。俺の兵隊と貴様の兵隊と、どちらが強いか。軍人の真価は、戦場でしか分からんのだ」


この時、臼淵大尉は弱冠21歳の若者でした。その倍以上も年を食ったものの、自分には到底真似の出来ない「人格、統率、思慮の深さ」です。丁度10年前、大和沈没50周年(昨年は60周年)で色々な記念番組があり、作家立花隆氏が「戦艦大和ノ最期」から「 進歩ノナイ者ハ決シテ勝タナイ

また、この時期に中井貴一主演(吉田少尉役)で「戦艦大和ノ最期」がテレビドラマ化されましたが、この時の臼淵大尉、誰が演じたのか忘れましたが、は最高でした。今回は長島一茂が演じていましたが、一茂氏の茫洋とした雰囲気は、臼淵大尉が持っていたであろう明敏さとは異質ではあるものの、新たな大尉像が膨らみました。

「戦艦大和の哨戒長(注:正しくは副砲分隊長)、臼淵磐(うすぶち・いわお)大尉は、ノートに詩をつづり、夕暮れの艦上で潮風に吹かれながら一人ハーモニカを吹くのが好きだった。海軍兵学校出のエリート士官でありながら、文学と音楽と芝居をこよなく愛するロマンチストの涼やかな横顔が印象深い」 という、この傑出した人物は21歳7ヶ月でこの世を去りました。大和に命中した最初の爆弾により、彼の身体は跡形もなく散華したのです。

本編には出て来ませんでしたが、最後に流れるキャスティング等の字幕のバックとして、一茂扮する臼淵大尉が「夕暮れの艦上で潮風に吹かれながら一人ハーモニカを吹く」ワンシーンが映し出され、僕は一人この人を偲んだのでありました。

この他の参考文献 その1 その2





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Last updated  January 15, 2006 02:20:20 AM
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見てきました。  
mori0309 さん
午後半休をとって丸の内東映に見にいきましたが、満席でした。平日の昼なのに。映画が終わってエンディングロールになっても、幕が完全に下りるまで、誰ひとりとして席を立たないんです。感動して涙ボロボロで、皆、動けなくなっていたんでしょうね。

「予想を遥かに超えた秀作」 まさにそのとおりと、私も思いました。事前インプットされた二つの言葉に邪魔されて、素直に鑑賞できないなどということはありませんでした。

若い俳優も、文句なく、迫真の演技をしていました。自分だけ生きて帰ってきたことを、戦友の母に激しくにわびるシーンなどに、私は完全にまいってしまいました。 (January 19, 2006 04:18:08 PM)

鑑賞者のコメント  
mori0309 さん
もうひとつだけ書かせてください。
http://blogs.yahoo.co.jp/yucchin_yamato/20533454.html#23123843
ここにいいコメントがいっぱい、ついていますね。1/6(金) 午前 11:49 [ fwkd8892 ] の若者の言葉なども、特にいいです。映画の力というのは凄いと、改めて思います。 (January 19, 2006 05:34:12 PM)

Re:見てきました。(01/14)  
mori0309さんへ
-----
分家のブログまでようこそ。半休を取って御覧になったとは凄いですね。こちらのページの客層は、お母様方なので、このテーマに対しては書き込みがありませんでしたが、やはり「おじさん」クラスからは手応えのある反応がありました。

日本の戦争映画は、何処か安っぽいものが多かったのですが、今回は久し振りに「秀作」だったとい思います。観た人達が皆感動の涙に咽び、「エンディングロールになっても、幕が完全に下りるまで、誰ひとりとして席を立たない」という状況が全てを物語っています。これが分からない人は悲しいですね。 (January 19, 2006 11:18:31 PM)

はじめまして!  
Kunojun さん
ネットサーフィンしておりまして拝見致しました。

> また、この時期に中井貴一主演(吉田少尉役)で「戦艦大和ノ最期」がテレビドラマ化されましたが、この時の臼淵大尉、誰が演じたのか忘れましたが、は最高でした。

 市川崑の『戦艦大和』でしょうか、あれは私は小学校4年生の時に初めて観たのですが確かに衝撃的な作品です。中井貴一は吉岡少尉という名で出ていましたね、臼淵大尉らしき人物は「ウスミ大尉」という名で川野太郎が演じていました。仲代達矢がこちらでは伊藤整一第二艦隊司令長官ですね。

 小さい頃からこういった映画をよく観ておりました事は、今の研究テーマと無縁では御座いません。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

http://blog.livedoor.jp/kunojun/ (June 12, 2006 12:00:24 PM)

Re:はじめまして!(01/14)  
Kunojunさんへ
-----
先程まで日豪戦を観ており、意気消沈の中でお返事致します。悪しからずお許し下さい。

ところで、TVの「戦艦大和」は市川崑監督の作品だったのでしょうか。あの時の臼淵大尉は最高でした。川野太郎氏だろうということですが、別人だったような気がします。あなたのブログも拝見させて戴きましたが、コメントは後日させて戴きます。御来訪ありがとう御座いました。 (June 13, 2006 12:40:06 AM)

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