書くことの意味

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2005年12月10日
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 ひとつ、仕事がひと段落して、ほっと、一息をついた。

 ここ3ヶ月ほど、ひとりで飲みに行く気になれず、Barから足が遠のいていたのだけれど、繊細なカクテルが飲みたくなった。久しぶりに、近所の店を訪れたら、マスターが何か言いたげに口を動かした。「昨夜、メールを送ろうと思ったんです。・・来週の土曜日で、閉店します」

 店の扉を開けた瞬間、6人のお客さんが見えたのだった。土曜日の閉店間際の時間、こんなに沢山ひとがいるなんて、変だと、瞬間的に思った。テーブルを見たら、出前の鮨桶やピザが置いてある。ああ、みんな、別れを告げに来ていたのだ。

 その店は、20年間ぐらい、別のオーナーがジャズ喫茶を開いていたのを居ぬきで借り受けたもので、内装の古びた様子がとても気に入っている。井伏鱒二の「手水鉢」という短編をいつも、思い出したものだ。手水鉢にこびりついたコケを長年、愛でていたのに、1週間の留守を預かった女性が、好意からコケを無残にも、洗い流してしまい、井伏鱒二ががっくりする話だ。長い時間を経て初めて得られる重厚感。どこか煤けた、黒光りする木製のカウンターと棚。レコードのターンテーブル。イギリス製の古いスピーカー。ここで、ビートルズのレコードを何度も、聴かせてもらった。そして、マスターの作るカクテルはいつも、お手前のような、厳かで柔らなふくらみを感じさせた。

 行きつけのお店を失うのはこれで、2店目だ。最初は、札幌はすすきのだった。あそこも確か、20年は経っていたはず。ビルの老朽化で取り壊されることになって、オーナーも泣く泣く、移転したのだった。2店とも、あのスモーキーな空気が似通っていた気がする。

 時間だけは、お金で買えない。だから、長い時間を経て作られたものに対しては、限りない愛惜を覚える。今回も、しっかりと、脳裏に刻もう。今日はひたすら、カウンターを手で撫でさすっていた。まず、手に記憶を染み込ませる。次に行った時は、店のにおいを、鼻に仕舞いこもう。そして最後は、店の内部を、目に焼き付ける。

 すすきののお店は、今も、目を閉じればすぐに、蘇る。だから、今回は比較的、冷静に閉店を受け止められる。しかし。お金持ちの知り合いがいれば良いのになァ・・と、思ってしまった。この雰囲気が取り壊されるのは、本当にもったいない。





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最終更新日  2005年12月11日 01時12分55秒
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