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雅人くんの父親の転職と雅人くんの転校
あれは内川雅人くんが高校一年生三学期の頃のことだと思います。雅人くんの父親が家に帰って来てすぐに彼の母親に大きな声で言いました。
「今の勤務先の大学を辞めて民間会社に入らないかという話がある。給与はいまの倍になるし、専門も活かせる。」
当時、雅人くんの父親は奈良の学芸大学の教育学部職業学科で教えていました。父親の本来の専門は農業土木でスプリンクラーの研究をしていました。転職先の民間会社は畑地灌漑のためにスプリンクラーを販売施工する企業でし
なお、この民間企業は大阪府茨木市にあるとのことで、いま住んでいる奈良市から通勤に五、六時間は掛かるとのことでした。この企業に父親が転職するためには、いまの住居は転居し、雅人君の母親はいまの職場を辞めねばならず、雅人くんも転校しなければなりません。
身体の弱かった母親は自分の教師生活に疲れ切っており、共稼ぎ生活を辞めて自分が専業主婦になることを大喜びしました。では息子の雅人君は高校転校話が話題に上がったとき、どのように思ったでしょうか。悲しんだでしょうか、それとも喜んだでしょうか。そのとき雅人くんはなんともいえぬ解放感を味わいました。
雅人くんは幼稚園から小学校、中学校、高等学校と同一の大学の附属にずっと籍を置いていましたから、とても息苦しい思いをしていました。それが別の府県の全く異なる高校に転籍できる可能性が生じたのですから、こんな嬉しいことはありません。
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