ある都市で行われた、「心のあり方」セミナーに講師としてお呼ばれしたときの話です。
講師控え室に、入っていくと、今日、一緒に講演をする、70代の、お坊さんが先に来て座っておられました。
私は名刺を出して挨拶をしました。
「市川といいます。今日は先生の前座を務めさせていただきます。」
「いやいや私は先生などと言われるようなものではありません。
どうぞ、坊主とでも呼んでやってください。」
「先生は、恵まれない、お子さんたちの、
お世話を無償の愛でされている立派な方と主催者からお聴きしましたが?」
「いやいや、御仏に助けていただいて、当たり前のことをさせて頂いているだけですよ。
ところで貴方様は、今日は、どのようなお話をされるのですか?」
「はい。私は実母を知らず、14歳の時に、父に捨てられ、
育ての母にも死なれましたので、一人で生きて生きて生き抜いてきました。
詐欺の被害を受けたことも、父の大借金の尻拭い、
さらには、最愛の娘の死にも立会いました。
正直、神も仏もないのだと天を恨んだ時期もありました。
でも最愛の娘が死んで私に愛の心の大切さを教えてくれたのです。
天が有難い修行をさせてくれたのだ。
とようやく感謝することができるようになりました。
普段はビジネス講演が主体なのですが、
今日は愛の心の大切さを、一所懸命に話させて頂くつもりです。」
「ああ。それは有難いお話ですね。
御仏の道は、苦難の道を歩んだ人が語らなければなりません。
決して学問から体得できるものではありませんから。」
私は、先生の講演を会場の隅で聴かせて頂いたのです。
このようなお話でした。
私は若い頃、人様を救わんと念じて、四国88箇所を遍路させて頂いたことがあります。
ある峠を息を弾ませて、登っているときに、道の片隅に、みすぼらしい姿をした親子が座っておりました。
通る人は、みなその親子を避けて通っています。
私は、なにげなくその親子の顔を見て、後ずさりしました。
本当に失礼ながら、そのお顔は、無残なものでありました。
ハンセン病の患者さんだったのかも知れません。
私は言葉を失い、そのまま行きすぎようとしました。
その時、この親子は、私に両手を合わせて、拝まれたのです。
「お坊さま。ありがとうございます。」と。
私は涙が溢れました。
私は人様を救わんと念じて、この遍路をさせて頂いている。
なのになんで、このような恥ずかしき行為をしてしまったのか。
後悔の念は渦巻くばかりでした。
私がこの親子にできることは、ありったけのお金をこの親子に寄進させて頂くことだけ。
己のふがいなさに涙が溢れました。
私は、この親子が、仏様であったと今も信じています。
人の道は、愛の道であると思うのです。
ご商売も、家庭でも学校でも、同じことだと私は、思うのです。

☆ この、お坊様の話のように、人々の幸福を願うなら、まず自分自身の心を幸福にしてください。
幸福のなんたるかを知らずに、どうして人にその幸福をわかち与えることができましょう。
幸せを求めたいならば、まず悪の想念から離れることです。
悪を想えば悪が、善を想えば善がもどってきます。これが天の摂理なのです。
☆ 完璧な人は有史以来タダの一人も地球上に生まれたことはありません。たとえ悪に染まっている人でも、今から更生して良心に恥じない生活をすればいいのです。
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