ユウとの日々

出産



アタシが産休に入ると、比較的簡単にユウとの時間を作ることが出来た。



夫が会社に出かけている間、陸は保育園だったし、

アタシは夕方の、陸のお迎えまでフリー。



そんなアタシに、ユウは、少しでも時間があると、逢おうと言ってくれた。




結局、出産の前々日まで、アタシはユウと逢っていた。



アタシは、出産の日がくることを、別の意味、恐れていた。


出産と同時に、ユウと逢えなくなることが、何より不安だった。



ユウは、そんなアタシに、いつも語りかけた。




「俺は、Reiとの関係を少しも焦ってないよ。

Reiは安心して出産に臨めばいい。


俺は、Reiが出産した後、

外に出てこられるようになるまで、何ヶ月でも待つよ。

一年でも待つよ。 ゆっくりいこう、ゆっくり。


逢えなくても、Reiと俺とは、つながってるよ。」










そして迎えた出産の日。


アタシは、入院の準備をしてから病院へ入った。


そして、ユウにメールした。



「今から分娩室にいってきます。」



一言だけメールを残して、ケータイをロックし、

分娩室へと入っていった。




今だからこそ思うことがある。


ユウはどんな気持ちで、このアタシの出産に臨んだんだろう。


夫の子を宿した女を、どんな思いで見つめていたんだろう。




後に、ユウが、アタシと別れるとき言っていたことがある。




Reiが出産したときの、俺の気持ちを、考えたことがあったか?


って・・・







無かった。


ユウの気持ちを考えたことなんて一度も無かった。




いつも、苦しいのはアタシ。


アタシは、ユウの奥さんに嫉妬ばかりして、毎晩泣いてるんだよ。


ユウはアタシのことだけ考えてて。


アタシしか見ちゃダメ。





そんなふうにしか思ってなかった。





ユウはユウで、苦しかったんだろうなって、今だから思える。


そんな素振りを、ユウは全然見せてくれなかったけどね。




きっとユウは、苦しさ以上にアタシを想ってくれていたんだろうし、

アタシを待っていてくれてたんだろうと思う。





「Rei、ゆっくりいこう、ゆっくり。」



その意味は、とっても深かった。




ユウへメールを送ってから5時間後、


アタシは無事に、男の子を出産した。




夫は、来ていなかった。



彼は、妊娠中も、アタシの体を労わることもなければ。

おなかをさすることも無く、

出産の日でさえ、腰をさすることも無かった。





分娩室で、アタシが子どもに授乳をしていると、夫が入ってきた。



そして、子どもを両手の平に抱き上げて、少しだけうれしそうだった。



ユウに出産の報告をしたのは、その日の夜、夫が帰った後だった。


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