ユウとの日々

もし二人が結婚していなかったら



一見幸せそうな家庭に見えただろうけど、

アタシの家庭は、そんなふうだった。




夫婦関係は、冷えきっているというよりは、

むしろそれが自然体であった。



寝室も、海が生まれる前からずっと別だった。


海を妊娠するきっかけとなった、あの結婚記念日の夜が、

夫と寝た最後の夜だった。 

それも、苦痛に耐えた、数分の出来事。


アタシの中には、記憶の欠片すら無かった。





アタシの体は、もはやユウの体を受け入れるためだけに存在していた。


ユウと触れ合い、一つになることは、当たり前のような、

挨拶みたいな、自然な行為となっていた。




ユウのために、今よりキレイになりたかった。


産後、すぐにアタシの体重は、妊娠前の体重に戻ったけれど、


アタシは、毎晩、夫が仕事から帰って夕飯が終わったら、

ウォーキングに出かけるようになった。


アタシがスニーカーに履き替えて、ユウに、

「今から出るから。」

とメールをすると、ユウも同時に家を飛び出した。


そして、二人で、一緒に歩いた。


正確に言えば、一緒に、というよりは、同じ時間帯に、

別々の場所を歩いていた。





歩きながら、二人でメールしたり、時には電話で話したりもしながら・・・。


1時間くらいだったかな? 約6キロを、毎晩歩いていた。



ユウはダンベルを持って出たり、足に錘をつけたりして歩いていた。


あ、そうそう、その当時、通販で流行っていた、

アブトロニックとか言うのも、確かユウは巻いてたっけ(笑)。


そんなに太ってたわけじゃなかったけど、やっぱり、

ちょっとおなか気にしてたんだね、ユウ。




毎日、そんなふうにして、

何かしらユウと共有できる時間を見出していた。


ユウがいなきゃ、ここまで頑張ろうと思わなかったと思う。


見る見るうちに、ユウの体も、アタシの体も、変わっていった。



そうすることで、お互いに、相手の体を、

より愛しく感じるようになっていった。



ユウとの付き合いは、本当に楽しくて、

お互いに家庭がなければ、

ごくフツーの恋人同士のような、そんな関係だった。




ユウは、後に、アタシたちが別れ話をしていた際に言っていた。



「もし、俺たちが結婚してなかったら、Reiはどうした?

俺は絶対に、迷わずReiと結婚してたと思うよ。」



アタシは、ユウとの2年の付き合いの中で、

そりゃ何度も何度も泣いたけれど、

この言葉を聞いたときが一番泣いたように思う。



別れを目前にしていたときだったけど、

別れたくなかった二人を別とうとしていたのは、

紛れもなく、二人の「家庭」だった。




アタシたちがそれぞれに結婚していなければ、

アタシたちにはきっと、別の未来があっただろうに。



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