新米おんな社長の奮闘記(古米になりつつある)

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会えないときに・まりえ


バレンタインには、タイムリーでこそなかったけれど、お気に入りのゴディバの
チョコレートを渡すことができた。

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 「ああ、もうあしたはホワイトディだっていうのに・・。」

 残業をして会社を出ると、一杯のんで帰りたいという気分だったが、なんだか外で
一人でという気分にもなれなかった。まりえは、電車を降りると、コンビニで缶ビールを1本買った。

 「いや、もう1本買っちゃえ」

 3階までの階段を昇り、玄関のカギをあけようとするとドアポケットになにか入っている。

 「ん?なんだろ」

 電気をつけた部屋で、見てみると、それは彼からのメール便だった。
コートも脱がずに、まりえは封をあけた。小型のクッション入りの封筒に、しっか
りとガムテープがはってある。

 「ロッド・スチュワート?」

 CDが1枚、ロッドの「ベストバラードコレクション」だ。

 まりえは、急いでCDプレイヤーの電源を入れた。
そうだ、しばらく音楽も聴いていない。ここに引っ越してくるときに、彼が
「ここに来たら自分も聴くから」と、波動スピーカーをプレゼントしてくれた。
ゆっくりとした休日をふたりで過ごせるときには、よく音楽をかけていたっけ。
暖かい日差しの中で、彼は本を読み、私はコーヒーをいれる。音楽は、だいたい彼が好きなジャズ。
波動スピーカーは、ふたりをそっくりそのまま、豊かな時間というヴェールで包んで
いるようだった。

 「そういえば、一人で音楽を聴くなんて、ここのところなかったかも」

 彼がいれば、音楽がかかっていた。そうだ、音楽の存在も忘れていた。
ロッドの声が流れ始めた。曲目ってどこに書いてあるのかしら、とCDケースを裏返すと
カードが無造作に貼ってあった。

 「しばらく会えなくてゴメン。でも、いつも忘れてないから。」
 「まりえも仕事大変だろうけど、たまにはオレの顔思い出しながら一息つけよ。」

 「ありがと」

 ロッドの声が、自分を優しく包んでくれる。目の前で歌ってくれているようだ。
コートを脱いで寝室のクローゼットにかける。ここでもロッドが歌っている。
着替えて、リビングに戻った。ロッドが、まりえに缶ビールを手渡してくれた。
ソファに座ってビールを飲む。「疲れた?」となりでロッドが尋ねている。

 「うん、少しね」

 「ムリするなよ」ロッドの声は、彼の声にかわっていた。

 「うん」

 ロッドは、「セイリング」をまりえのために歌いはじめた。時計はすでに0時をすぎていた。

 「まりえ、ホワイトディに心をこめて」とカードの裏に書かれていた。






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会いたいよ、まりえ☆






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