ラッコの映画生活

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2008.05.05
XML
カテゴリ: フランス映画
MADE IN U.S.A

82min
(所有DVD)

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ゴダールの『勝手にしやがれ』『女は女である』『小さな兵隊』『カラビニエ』『軽蔑』『気狂いピエロ』やメルヴィル、ヴァルダ、シャブロル等の作品を製作してきたプロデューサーのジョルジュ・ド・ボールガールは、1966年に製作したジャック・リヴェットの『修道女』が公開禁止の処置を受け、資金繰りに困っていた。そこでゴダールが安い製作費で売れる作品を1本撮ったのがこの映画だ。ちょうど撮影中の『彼女について私が知っている二、三の事柄』と平行して非常に短期間で撮られた。そういう意味で最初から商業映画だと言える。だからゴダールの人気作『気狂いピエロ』に似せた路線の作品。ゴダールはたいてい自作映画の予告編も作っているが、サイレントという恐らくこの予告編だけではないかと思われる、なかなか優れものの予告編がある。

 Un fiim po...
 Un film poetique
 Un film po...
 Un film policier

 Un film politique de Jean-Luc Godard

と手書きの文字が画面に表われるように、公称はゴダールの詩的(poetique)、探偵(policier)、政治(politique)映画というわけだ。(余談だけれど予告編と言えば、ロベール・ブレッソンの『少女ムシェット』の予告編もゴダール作らしい。どんな予告編だったかな?、見たことあったかな?)。

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さてと、そういうわけで友人プロデューサーの経済的救済が目的で作られたわけだけれど(実はリヴェットの作ったディドロ原作の『修道女』はゴダール自身その前に舞台に乗せてみるなどの関わりを持っていた作品)、ゴダールという人の映画作家としての能力からすれば、この映画よりももっともっとキャッチーな作品は作れたはずだから、商業目的と言っても、そこはやはりゴダールのゴダール的映画だ。好意的に深読みする批評は2年後の五月革命を先取りする作品とかと、賞賛する向きもある。その当否は問わないとして、製作された1966年のフランスの時代の雰囲気、あるいは心性が反映されていることだけは事実かも知れない。

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ところが問題はその時代的雰囲気や心性だ。それを知らない人が、この映画を観ることによって、その時代を知ったり、感じたりすることは、たぶんあまり出来ないだろう。それを既に知っている人にとって感じられるということだ。だから今日2008年の日本の普通の観客にとっては、1930年代生まれでフランスの事情にも詳しい人、例えば渡邊守章氏とか蓮實重彦氏がこの映画を観るのとは、根本的に意味が違ってくる。五月革命の1968年に15才だった人は1953年生まれということになるから、現在2008年には55才ということだ。55才以上でフランスの事情に詳しいという条件からは、ボク自身も外れてしまう。

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L'EXPRESS 誌表紙
私はベン・バルカが殺されるのを見た ある目撃者の証言


大体が、最初は誰が間違ったのか、この映画の基本プロット(アンナ・カリーナの恋人リシャール・ポ・・・が政治的に暗殺されたらしいこと)が、ベン・ ルカ事件を連想させるものであるのだけれど、日本の解説では「ベン・ ルカ事件」となっていて、大手ポータルサイトの映画ページでも、ブログ等の個人のレビューも、堂々と「ベン・メルカ事件」と書いているのだから、フランスでは政治的陰謀暗殺事件の代名詞であり、またマスコミ報道の無機能性の象徴でもあるこの ベン・バルカ事件 を知らずに日本の観客はこの映画を観たり、語ったりしているのだ。

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そう言えば、映画のタイトルロールの文字は、ゴダール作品お得意の、黒のバックに白抜き等の大きな活字なのだけれど、ここでは青と白と赤抜きになっている。映画は "MADE IN USA" なのだから、これは当然の話としてアメリカ国旗の3色だ。結果としてはフランスの三色旗の色でもイギリス国旗の色でもある(イギリス空軍のマークは青い丸の中に白い丸で、そのまた中が赤い丸という青白赤の三色同心円)が、まずはアメリカ色だろう。これをも「フランス三色旗の色」と多くの方が書いておられる。映画の解釈に要する知識というのは難しいものだ。フランス映画であっても、それを日本人として観ることに色々と意味はあるわけだけれど、まずは直接の対象観客がどう観るか、あるいは監督自身にどういう意識があるかということを、なるべく捉えるようにしなければならないと思う。

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さてそこで、そういう困難な前提のもとで、今日2008年の日本人観客としてこの作品を見るとどうなるか。そうすると、内容は希薄なのだけれど、意外とただ楽しめる。要は解ろうとか、解釈しようとか、批評しようとかしないことだ。時期的にはゴダールがアンナ・カリーナと別れてアンヌ・ヴィアゼムスキーと結婚しようという頃で、アンナ・カリーナは少し疲れたようなけだるい感じではあるけれど(彼女はまだ25才)、ここでもやはり映画に撮られているのはアンナ・カリーナが演ずるポーラ・ネルソンではなく、ポーラ・ネルソンを演じるアンナ・カリーナだ。(余談だけれどゴダールの伴侶は アンナ ・カリーナ→ アンヌ アンヌ =マリー・ミエヴィルで、3人とも同じ名前を持っている!!)。ジャン=ピエール・レオもレオだし、「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」を歌う若きマリアンヌ・フェイスフルもいいし、ラウル・クータールのカメラを見ているのも気持ちが良いし・・・。

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と言うわけで、ストーリーも何も書かなかったけれど、上に紹介した公称の3つの形容詞の内で、最初の「詩的」という映画として見ると、なかなか楽しい。ゴダール作品は1回だけ見ても簡単に解らなかったりするのでDVDを買ったわけだけれど、そういうことではなく、楽しみとして何度も気軽に見られそうな作品だ。

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Last updated  2008.05.13 04:09:44
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