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2002.12.15
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カテゴリ: 60年代米国音楽
“Be My Baby”by the Ronettes 1963

 今日のタイトルを見て、「あ、この曲なら知ってる」「これなら感想書けそうだ」と思った人も多いのではないだろうか。はい、いいですよ。どんどん感想書いて下さいよ。もちろんこの曲に関する思い出なんかあったら、大歓迎ですよ。お待ちしてますよ。
 実は11/10 の日記に「どんどこももんちゃん」さんがレスをつけてくれて、その中で「もし、よかったら「be my baby」の解説もして下さいませ」と書いてくれました。僕としても、この曲のことはいずれ書かなければと思っていたので、いつか必ず書くと約束したのです。おーい、約束果たしたぞ~、ハマショー・フリークの「どんどこももんちゃん」さ~ん。とか言ってこのまま終わってはいけない。(笑)

 “Be My Baby”を初めて聴いたときの印象までは記憶にないが、当時中学生だった僕は、たぶん弘田三枝子の日本語バージョンとロネッツのオリジナルをほぼ同時に聴いているはずだ。その時は「どっちもいいなあ」と思っていた。何しろ僕はとりあえず日本語で覚えたからね。
 「♪ 忘れられない ひーとみー 離れられない そのみりょーくー」ってさ。ただ、何度か聴いているうちに、バックコーラスの歌詞の違いが気になりだしたんだよね、これが。
 サビの部分のコーラスは "♪ Be my be my baby, my one and only baby" って言ってると思うんだけど、日本語バージョンは、後ろの "♪...my one and only baby" を無視して "♪ Be my be my little baby,..." を繰り返すだけ(littleは余計だし...)。オリジナルを聴いてからこの日本語バージョンを聴くと、どうしてもそこの部分だけは違和感があって気になってしまう。いっそのこと "♪...my one and only baby" の部分も日本語にしてしまった方がよかったんじゃないの。「♪...わたーしだけのものー」とかさ。
 「どうせわかりゃしないんだから」と手を抜くと、あとで後悔することになるんだ。などと今さら怒ってみたところで、どうにもならないが、弘田三枝子のバージョンは、訳詞もいいし(またまた漣健児!)、彼女の声と歌い方にとても合った曲なだけに、残念だ。もっとも、アレンジについては比較するのもかわいそうなくらい、初めから勝負にならないけどね。予算の関係とかもあっただろうしね。

 プロデューサー、フィル・スペクターが日本でも注目され始めたのは、おそらくこの曲のヒットからだろう。彼の作り上げた厚みのある独特の音の世界は、"Wall of Sound" と呼ばれ、この曲にもそれは遺憾なく発揮されている。
 まず、誰もが1発でこの曲だと言い当ててしまうあのイントロのドラム2小節。単純なバスドラとスネアだけの組み合わせだが、これが無いと当然この曲は始まらない。そして、これがないとこの曲は終わらない。なぜなら、エンディングに行く前にもう1度全く同じパターンが入るからだ。この辺の作りは本当に感心してしまう。「ドッ、ドドッ、タン! ドッ、ドドッ、タン! 」

 このドラムに続いてさらに2小節の厚みのある前奏が続くが、ここで聞こえてくるあの楽器の音色には、思わず耳を奪われてしまう。この楽器はエンディングまで響き続けて、実にうまい隠し味になっているのだ。(突然ですが文中クイズです:この楽器とはなんでしょう? ヒント:マラカス[シェーカーかな?]も聞こえるけど...)
 とはいえ、いつまでも耳を奪われているわけにもゆかない。このあとすぐにあの魅惑にあふれたロニーの声が続くからだ。リードボーカルの彼女の声は、決して澄んだ美しい声ではない。かと言って、ソウルやブルースの黒人歌手にあるようなドスの利いた迫力のある声というのでもない。ちょっとハスキーがかって、あまり大人っぽくないけれど、何とも引き込まれてしまいそうな、実に不思議な魅力を備えた声だ。ロニーの声は誰の声に似ているか考えてみた。そしたら思いついたね。デビュー当時の梓みちよだ。もしもう少し低い声だったら、ロニーにそっくりなように思うけど...。見当違いだったらごめんなさい。
 歌は途中からコーラスが絡み、間奏ではストリングスが強調されてますます厚みが加わって、あとは一気に最後まで行ってしまう。ただし、エンディングの前にさっきも書いたあのドラムソロが入るのが、実ににくいアクセントになっている。

 歌詞はといえば、タイトルからも想像できるように、例によって「他愛もない愛の歌」なのです。「初めて逢った夜、わたしには分かったの。とってもあなたが必要なんだっていうことがね...」ってな具合に始まりまして、「...だから、わたしを愛してると言って。あなたがわたしを自慢できるようにしてあげる。どこへ行っても、みんなを振り向かせてみせるわ...」という感じ。この最後の "♪ We’ll make them turn their head, every place we go" は、この詞で一番好きかな。あと2番の "♪ For every kiss you give me I’ll give you three(あなたが1回キスしてくれたら、わたしは3回お返しするわ)" っていうのも気に入ってます。 

 『ビー・マイ・ベイビー』は実に名曲だが、ロネッツのバージョンを越えるのはかなり難しいと思う。それでも後にこれをカヴァーしている勇気ある人がいた。その名はカーマイン・アピス。バニラファッジのドラマー。その後、ベック・ボガード&アピスのあのカーマイン・アピスだ(因みに今日12/15は彼の誕生日!)。彼のバージョンは聴いたことがある人も多いと思う。結構いい味出してはいるが、オリジナルは越えていない。だがこれは無理もない話だ。オリジナルは越えなくていいのだ。問題は、彼がなぜこの曲をあえて取り上げたのかということだと思う。きっと大好きな曲で、いつかは自分でも歌ってみたいと思っていたに違いないんだ。
 もう一人、日本でも男性歌手でこの曲を取り上げているのが、浜田省吾だ。しかし困った。僕はまだ彼の歌う『ビー・マイ・ベイビー』を聴いたことがない。しかしこれに関しては「どんどこももんちゃん」さん初め、きっといろんな方が「感想」で書いてくれると思うので、皆さん期待して待ちましょうね。
 ところでこの二人とも男性ですよね。でも心配はいりません。タイトルも歌詞も男性女性どちら側からでもおかしくない内容だから、変ではないんだよね。ただし弘田三枝子の日本語盤は、語尾の「・・・のよ」が完全に女性です。

 最後に一言。ビーチボーイズの超名曲 "Don’t Worry Baby" が、"Be My Baby" のアンサーソングだという説もあるようだが、確認は取れていない。だが、"Be My Baby" が後に与えた多大な影響を思うとき、この話もまんざら眉唾物だとも思えない気がしてくるのだ。
 ああ、長かった。(笑) 
                     (文中訳は穴沢です)





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Last updated  2009.05.15 09:44:15
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