漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

2008.04.21
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カテゴリ: 紫煙のゆらぎ





                紫煙のゆらぎ・巨星落つ 2







手塚治虫先生が亡くなられた。

とうとう関西支部のイベントに参加していただけないままお亡くなりになられた。

東京の漫画家協会事務局から片山雅博氏の2度目の電話が入る。

「玉地さん支部長に花出してもらうように言って貰えませんか」
「なんで僕からやねん あんたから言うたらどないやの」
「いゃぁ そこはこれ 玉地さんから言ったほうが」

何故か変なやり取りになってくる。

それには訳があった。


トキワ荘の壁とか、
なんちゃらかんちゃら寄せ鍋の闇なべがでんぐりがえったような状況で、最終日を迎えた。

北星さんを理事から引きずり落とす事を交換条件に、
支部長を引き受けた大坂ときをさんは、毎日放送に好意的な目では見られなかった。

終演の挨拶でも壇上では数人の不規則な言い訳やら個人攻撃があり、
いまひとつ盛り上がらないままのバイナラとなった。

僕が始めたまんがAIDが歪曲して諸先生方に迷惑をかけたのかもしれない。

新支部長も活版刷りの支部ニュースを1枚みんなのところへ送ってきて、
泣かず飛ばずであった。

それまでの利権パイプも行き場を失い旨味の在る職ではなかった。

だんだん嫌気が差してきて皆の所へ往復葉書を1枚送ってきた。



テンで話にならないようなまか不可思議な葉書だった。

勿論僕はNOにOを付け返送したが、
投票結果の発表もないまま近藤利三郎という人に支部長を代わってもらっていた。

要するにイヤ気がさしていたようだ。

東京は何だねこのやり方は、とぶーたれていたが当時はどちらも同じ藪の中だった。



一軒のラブホテルの中で微にいり細にわたりイロイロな説明と、乱交の様子とか、
参加しませんかとか、自分の掻いていた大衆夕刊紙の、
東海林さんを卑しめたような画風そのままの実に変な人だった。

僕は手塚先生との約束を果たすべくこの2人の支部長を何度も尋ね、
イロイロな提言をしてみたが、前者は何とはなしにコーヒーの出前を取ってはぐらかされ、
後者は面倒くさそうに対応し、最後にはもう来ないでくれないかと拒絶宣言までもらった。

蛙の耳に念仏・溶岩流に立ちしょんべんであった。

忘年会も何一つ無い現在の篠原ユキオ関西支部とまったく同じシロモノになってしまった。

まあ、事が事だけに久しぶりに電話してみるか。対応は意味不明だった。

「手塚さんは玉地君にまんが博で紹介してもらって覚えてるが僕とは畑が違うから」

要するに花代2万円が惜しいのだろう。

彼はまた、僕は1日5万円稼ぎ出す事を目標にしてるとも言っていたのは嘘か。

そんな馬鹿みたいな話を片山氏に報告するのは気が重い。

関西支部長名での塔婆つき花束が宙に浮いているのだ。

また電話が鳴る。片山氏からだ。

「玉地さん 支部長花出すの嫌だってって言ってますよ」

すこし考えてもう一度だけ電話をする。


これに失敗したら、関西支部は大恥をかくことを余儀なくされるのだから、
慎重に言葉を選び低姿勢で話す。

「近藤先生 今回のことは僕にとってとても哀しい出来事でした
 手塚治虫先生とは22年間のいろいろな思い出が僕に有ます
 漫画家への道を開いて、僕がここまで来れたのは、
 手塚先生や関西支部の諸先生のおかげだと感謝しています
 個人として、漫画家協会会員と関西支部の名前なしで、
 玉地個人名で花を出すことをお許し願えないでしょうか」

あまりの馬鹿馬鹿しさに腹も立っていたが、
最大限の譲歩の途はこれしかないとの決断だった。

手塚プロダクションも納得するだろうし、
東京も僕の譲歩案を否とは言うまいとの考えだった。

事務局の片山氏もOK。
手塚プロダクションに電話を入れ、松谷社長は居なかったが誰かに伝えてOK。

こんな醜態見たことも聞いたことも食べたくも無いが、
妖獣がのたうってるようなブザマな様子であった。

赤塚さんは顔を真っ赤にしておお泣きしていた。

僕は虚脱感でぼ~っとしていた。

弔問におとづれる人々を誘導する為に、寒風吹き抜ける中を手塚邸の庭に立っていた。

息子の真ちゃんが小さい三脚に乗せた8mmムービーを僕のところへ持ってきた。

「時間ごとにシャッタァーが落ちるようにセットして在るからカメラ番をしていてくれ」

彼の意図には納得できず、棺が出てきたところから、
僕は強制的に1ショット2ショット3ショット4ショットと
合計15ショットほどのカットを撮影した。

棺は僕の前を通り、カメラの事などほったらかして後を追っていた。

玉地さんも斎場へとの松谷氏の言葉には僕は応じる勇気も気力も無かった。

さぶいなかを邸宅の中にも入らず、唯ぽつねんとその帰りを待ち続けていた。


頭の中を冷たく痛い風が吹き抜けて心は真っ白だった。







社団法人日本漫画家協会会員・参与           

                                   玉地 俊雄



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                   個人名玉地としをの花








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最終更新日  2008.09.24 18:20:27


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