漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

2008.08.27
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カテゴリ: 紫煙のゆらぎ



                 僕たち地蔵尊




               紫煙のゆらぎ・地蔵盆





昔々楽しい仲間がたくさん地元にたむろしていた。

リーダーは写真屋のおやぢ。
新幹線の、車内での逮捕権限を持った専務車掌さん。
彼の上司で国鉄のえらいさん。
幼稚園の保母になりそこないつつあった大酒呑みのお嬢。
天婦羅屋のたいしょう。
建築業のおじさん。

高野山権大僧正の甥の結婚式の司会は僕が勤めた。
ガソリンスタンドの兄ちゃん。
重症の糖尿病患者で、この地域からの転勤がイヤで昇進試験を受けない老警官。
弁慶と称される背中にいっぱい背負い込む印刷屋の課長。

ハッセルブラド・リンホフテヒニカ・トヨフィールド45A・ジナーP
・ハセミ8x10・ハセミ45FT・ホースマン6x9とイマゴンまで持っていた。

イマゴンの300mmはユリアティとビダニ姉妹の為だけに、
ローデンシュトック社が世界発売した球であると僕は今も確信している。
僕の理論をみんな分かっていなかった。

なんだんねんこの頭のおかしい連中はという集まりだった。

仏蘭西の砲台会社ジッッオの三脚の上には人が立ち上がれた。

僕の4m50cmに伸びる三脚に人がぶら下がったら足が1ポン折れた。
むちゃくちゃでござりまするわ。

ニコンの800mmに、2倍テレプラスを2個つけて3200mmに化かし、
月面を覗くと、下 1 / 5 ぐらいが画面いっぱいになっていた。

皆既月食は夜中に大騒ぎ。

皆既月食の赤み掛かった満月は 1 / 8 sec .
120secごとにシャッタァーをきってゆく。

8x10なら300mmで斜めいっぱいにフィルムを使用すれば、
連続で30個ほどの、満月から欠け始めと、皆既月食の赤い月と、
赤い月に白月が出てくるまでを撮影する事が出来た。
この場合はイマゴンは使えない。
ジンマァーsを使用するしかない。


奈良若草山の山焼きでは、朝7時に、20kgほどの機材を担いで、
階段を8Fまで駆け上がりほぼ全員が場所取りをする。
開始まで10時間以上のウエイティング。
レンズはA・フジノンの600mm。

東大寺二月堂のお水取りの、一番良く映り込む屋根の裏側に、
伸ばしきった1脚で一万円札を貼り付ける変人。

飲みすぎて寝てしまう人。
こっそり缶ジユースを飲む重症の人。
でろでろになってうれしそうに寝る女性。

いいかげんにしなさい。




そのお店のすぐ前でイケナイ事が起こった。
幸運ではない少女と乱暴な自動車。

誰が言い出すでもなく、京都の壬生寺から地蔵尊を背負ってくる人、僕は設計図を書く、
建設用のコンクリートブロックを大工さんが慎重に砕く、
道路で雑巾賭けのように、このブロック片を削りだす人々は変人集団だった。

家族立会いの下、ボンサンの読経もあった。

この地蔵尊は北を向いている。
西方浄土はあえて外してあるのが不思議な由来である。

しかし、建立当初から、どこでどう下の地面の傾斜を間違えたのか、
向かって右側が4度ほど傾いていた。

このさい1杯飲んで気にしない事にしよう。
なにしろ出来上がったのだから。
いいかげんであった。


夏はそうめん。
冬はうどんスキ。

なんだかんだといってはのびてしまう酒飲み。
僕は人知れず逃げ出していた。

大の字になって寝ている、ほぼ保母になれにくかったお嬢は重かった。


みんなでちょうちんを買い、地蔵盆も始めた。
僕は無神論者だが3人の子供の名前の入ったちょうちんをぶらさげていた。
亡くなった母も般若心経を唄っていた。

最初は裸だった地蔵尊も、いつのまにか屋根が付き、賽銭箱に鎖まで付いて、
色が塗られ、いつの間にか僕たちの手を離れて町内会が地蔵盆を継承していった。

途中、大阪市から立ち退き勧告もあったが無視し続けた。
どうせ大阪市だから。

とうとう地域の信仰の対象となってしまった。
信仰には抵抗があるが、設計者としてほぼ満足である。

孫を連れて地蔵盆にゆく。
地蔵さんよかったね。






社団法人日本漫画家協会会員・参与

                              玉地 俊雄


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最終更新日  2008.08.27 22:16:50


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