《櫻井ジャーナル》

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2017.11.02
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カテゴリ: カテゴリ未分類
2001年9月4日から13年9月4日にかけてFBI長官を務めたロバート・ミューラーが特別検察官に任命されたのは今年(17年)5月17日のこと。FBI就任から1週間後の2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省の本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたが、この攻撃に関する捜査を妨害したと批判されている人物でもある。

特別検察官が任命された目的は、2016年のアメリカ大統領選挙にロシアが介入したのかどうかを捜査することにあったが、その疑惑自体が証拠も根拠もないもの。今年3月に報告書らしきものが公表されたが、それを作成したクリストファー・スティールはイギリスの対外情報機関MI6のオフィサーだった人物。匿名の情報源に聞いた話をまとめたものにすぎず、根拠薄弱だということは本人も認めている。そのスティールが作成した報告書を元に、ロシア疑惑劇の開幕を下院情報委員会で告げたのがアダム・シッフ下院議員だ。

この報告書が公表される前、その前のバージョンを持っていて、ジェームズ・コミーFBI長官(当時)へ渡した人物がいる。シリアへ密入国してダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)のトップと会ったり、クーデターが成功する前のウクライナに乗り込んでネオ・ナチの幹部と会談、体制転覆を煽っていたことでも知られている​ ジョン・マケイン上院議員 ​である。今年1月にバズフィードというインターネットメディアが報告書を明らかにしている。この上院議員がこのメディアへ渡したのではないかという疑惑が囁かれたが、マケイン本人はこの話を否定している。

シッフ議員もそうだが、当初、「ロシア疑惑」を叫んでいる勢力が最大のターゲットにしていたのが国家安全保障補佐官だったマイケル・フリン中将。2012年7月24日から14年8月7日にかけてDIA(国防情報局)の長官を務めた軍人だ。

ネオコンをはじめとするアメリカの好戦派は1992年2月に世界制覇戦略、いわゆる​ ウォルフォウィッツ・ドクトリン ​を作成しているが、その中心になったポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は1991年の段階でイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官は2007年に語っている。(​ 3月 ​、​ 10月 ​)

3月5日付けニューヨーカー誌 ​で、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始した書いている。

その記事の中で、ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院のディーンで外交問題評議会の終身メンバーでもあるバリ・ナスルはサウジアラビアが「ムスリム同胞団やサラフ主義者と深い関係がある」と指摘、その「イスラム過激派」が手先だとしている。その工作が侵略戦争という形で浮上したのは2011年3月のことだった。その前の月にはアフリカを自立させ、ドルからの離脱を目論んでいたリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制打倒を目指す戦争も始まっていた。

バラク・オバマ大統領はシリアのバシャール・アル・アサド政権を「独裁体制」だと主張し、「穏健派」を支援すると称して軍事介入を始めたのだが、20128月にDIAはシリアに「穏健派」の反政府勢力は存在しないとホワイトハウスに報告している。そのときの局長がマイケル・フリン中将にほかならない。報告書の中で、オバマ政権のシリア侵略政策を変更しないと東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があると警告している。その警告は2014年、ダーイッシュという形で現実となったわけだ。

フリンを攻撃する材料としてトルコとのビジネス上の関係が問題にされている。指名手配になっている「テロリスト」やイスラム過激派だとされているフェトフッラー・ギュレンとそのネットワークに関する調査を依頼され、その代償を受け取ったこともミューラーは捜査の対象にしている。ミューラーはFBI長官時代、ギュレンのネットワークに関する報告を隠蔽した張本人だと​ FBIの内部告発者であるシベル・エドモンズ ​は主張している。エドモンズは9/11の後、FBIの翻訳に問題があることを指摘し、解雇された。今年3月、​ ギュレンがアメリカでネットワークを構築 ​していることを有力メディアも報道している。

アメリカ、イスラエル、サウジアラビアを中心とする勢力が始めたシリアの戦争は長引き、トルコは経済的に苦しくなる。そこで2016年6月にはロシアとの関係改善に乗り出し、7月にはシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆している。トルコで武装蜂起があったのはその直後だ。

そのクーデター計画の背後にはアメリカへ亡命、CIAの保護下にあるフェトフッラー・ギュレンがいるとトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン政権は主張している。エルドアンはアメリカ中央軍のジョセフ・ボーテル司令官やジョン・キャンベルISAF司令官がクーデター計画の黒幕だとしてる。ギュレンに関する調査はCIAやFBIをはじめとするアメリカの政府機関にとっても不都合な事実を明るみに出しかねない。

アル・カイダ系武装集団やダーイッシュなどのタグをつけた武装集団やネオ・ナチを使って軍事侵略、体制転覆を目論んでいるアメリカ支配層の権益を守ることがミューラーの役割だと言えるだろう。





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最終更新日  2017.11.02 05:09:52


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