イスラエル軍は5月26日に ラファを空爆、 UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)がラファで設置した10カ所以上の避難場所を破壊し、 約45名を殺害した。ラファには100万人とも150万人とも言われる人びとが避難民として生活している。
凄惨な状況を撮影した映像は世界に発信されているが、その中には少なからぬ子どもが含まれ、首がなかったり、頭蓋骨が大きく欠けて脳がなくなっている死体をおとなが抱いているところを撮影した映像もある。当然、イスラエル政府に対する怒りの声は世界中で高まった。
しかし、アメリカ政府はイスラエル政府に対して「寛容」だ。 ホワイトハウスのジョン・カービー報道官はイスラエル軍の攻撃が空爆だけであり、大規模な地上作戦は実施されなかったとして5月26日の虐殺を容認、イスラエルを支援するという政策を変更するつもりはないとし、国防総省のサブリナ・シン副報道官はラファでの虐殺を「限定的」と表現している。 ジョー・バイデン政権はガザでの虐殺を止めるつもりはないのだ。
イスラエル軍はハマスに勝てないまま、ガザで
こうした惨状であるため 、ICJ(国際司法裁判所)でさえ5月24日にはイスラエルに対し、ラファでの軍事作戦を停止するようにという判決を出している 。 ICC(国際刑事裁判所)の主任検察官のカリム・カーンは5月20日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ギャラント国防相、ハマスのヤヒヤ・シンワル、モハメド・ディアブ・イブラヒム・アル・マスリ(デイフ)、イスマイル・ハニヤに対する逮捕状を国際刑事裁判所第一予審部に申請した。
ICCの逮捕状申請に激怒したネタニヤフは英語とヘブライ語、2種類の声明を出した。 いずれもICCの主任検察官をナチスの裁判官になぞらえているが、ヘブライ語版ではさらに「イスラエルの永遠の神は嘘をつかない」という「サムエル記上15章3節」からとられたフレーズがついている。
そこには「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切、滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も、牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。ネタニヤフは「われわれは光の民であり、彼らは闇の民だ」としたうえで、イザヤの預言を理解しなければならないと主張している。この部分をネタニヤフは昨年10月28日の声明でも触れていた。
サムエル記にはサウルという王が登場するが、アマレクの王アガグ、そして羊と牛の最上のものなどは惜しんで残した。そこでサムエルは完全に滅ぼさなかったとしてサウルを戒め、「イスラエルの永遠の神は偽りを言ったり、考えを変えたりしない」と語ったとされている。ネタニヤフはこのフレーズをヘブライ語の声明で使ったのだ。つまり、パレスチナ人を皆殺しにし、シオニストの意向に沿わない「王」は挿げ替えるという宣言だ。バイデン政権もこのことに気づいているだろう。