ミズーリ州セントルイス出身のコリ・ブッシュ下院議員が民主党の予備選でライバルで親イスラエルの検察官、ウェズリー・ベルに敗れた。ブッシュを落選させるため、AIPACは民主党の予備選でライバルでベルに資金面で圧倒されたのだ。ベルはAIPACから900万ドル、DMFI(イスラエル民主党多数派)から50万ドルを受け取っている。
アメリカは財力によって政策が決まる国である。財力を持つ私的権力が支配しているのだ。フランクリン・ルーズベルトの定義によると、アメリカはファシズム国家にほかならない。
AIPACがブッシュを落選させようと必死になったのは彼女の政治姿勢にあった。彼女は貧困、医療、住宅などの問題、女性の権利に取り組んできた政治家で、イスラエルに弾圧されているパレスチナを支える発言を続けてきた。
昨年10月7日、ハマスをはじめとするパレスチナの武装勢力は イスラエルを陸海空から奇襲攻撃した。数百人の戦闘員がイスラエル領へ侵入したほか、ガザからイスラエルに向かって5000発以上のロケット弾でテルアビブの北まで攻撃されている。「アル・アクサの洪水」だ。
この作戦名になったアル・アクサ・モスクは「神殿の丘」にあるイスラムの聖地なのだが、昨年4月5日にはイスラエルの警官隊がモスク内へ突入、起こったパレスチナ人はガザからロケット弾を発射し、イスラエルが報復としてガザを空爆するという事態に発展。「ラマダーン」を狙っての襲撃だったことから、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は新たな戦争を目論んでいるのではないかと言われていた。
ユダヤ教の「仮庵の祭り」に合わせて832人のイスラエル人が10月3日、イスラエル軍に保護されながらアル・アクサ・モスクに押し入っている。イスラエル軍は60歳未満のイスラム礼拝者がモスクへ入ることを禁じた。こうしたイスラエルのモスク冒涜に対する報復だということをハマスは作戦名で示したと言えるだろう。 その攻撃の際、約1200名のイスラエル人が殺されたのだが、その大半がイスラエル軍に殺されたことを イスラエルのハーレツ紙が明らかにしている 。敵に人質になる可能性があるイスラエル人は殺して構わないという「ハンニバル指令」が出されたのだという。
その後、イスラエル軍はガザの住民を虐殺し始める。殺された住民は4万人に達したと報告されている。その約4割が子ども、女性を含めると約7割に達し、瓦礫の下には数千人、あるいはそれ以上の死体があると推測されている。しかもハマスなどの武装グループを制圧できないでいる。そうした状況を見た コリ・ブッシュは声を上げたのだ。
戦闘が始まった9日後に下院で停戦決議を提出した彼女は、イスラエル支持決議に反対した9人の下院議員のひとりで、ネタニヤフ首相の議会における演説をボイコット、彼を「戦争犯罪者」と呼んでいる。
パレスチナを支援し、イスラエルを批判する政治家を許さない団体がアメリカには存在している。イスラエルのために活動しているロビー団体のAIPACだ。外国のために働いているのだが、アメリカの当局監視対象にしていない。
このAIPACで2017年に講演したカマラ・ハリスは2004年1月から11年1月までサンフランシスコ第27地区検事を、また11年1月から17年1月までカリフォルニア州司法長官を務めている。州司法長官時代のカマラは人びとを刑務所へ入れることに熱心で、不登校の子どもの親も刑務所へ送り込んでいた。
それ以上に批判されているのはケビン・クーパーという死刑囚に対する姿勢。クーバーは1983年に引き起こされた殺人事件で有罪となり、2004年2月10日に死刑が執行されることになっていた。逮捕されたときから彼は無罪を主張、DNAの検査をするように嘆願していたが、検事時代も州司法長官時代もカマラは拒否している。カマラはエリート一家の出身で、社会的な弱者には厳しい。クーパーに対する姿勢を変えたのは大統領選挙が視野に入り始めた2018年である。
イスラエルの ベンヤミン・ネタニヤフ首相は7月24日にアメリカの上下両院合同会議で演説したが、その際、議員たちは58回のスタンディング・オベーションで讃えた。ガザで住民を大量虐殺させている人物をアメリカの「選良」はほめたたえたのである。
その後、7月31日にイスラエルはハマスの幹部でイスラエルとの首席交渉官を務めていたイスマイル・ハニエ、そしてヒズボラの最高幹部のひとりであるフア・シュクルを暗殺している。
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