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小説/コミック2月25日『花見小路北日記(2)』 桃缶 4月7日『魔法使いの嫁(22)』 ヤマザキコレBD4月16日『舞台「刀剣乱舞」蔵出し映像集ー心伝ー』 5月28日『ミュージカル「刀剣乱舞」 三騎出陣ー八百八町膝栗毛ー』
Feb 1, 2025
行きつけの古書店が閉店してしまうのを惜しみ、脱サラして古書店を始めた男。店は、本が好きな人が訪れ、本を売る人が訪れ、時に何も買わず出ていく人もある。本は、集まり、旅立ち、時に売れ残りを処分する事もある。小さな古書店から、様々な人のそれぞれの本事情を垣間見る…自分が、当たり前のように常に本が目の前に積まれている人間なので、この一冊に描かれたどの物語も他人ごとではないものがある。これまで様々な本と出会い、夢中になって読み耽ってきた蓄積が、部屋を埋め尽くしている。そろそろ取捨選択の、捨を重点的に考えねばならない年齢になった。老眼は手強く、持続力は減退するばかり、ライトノベルに何日も掛かり、コミックス一冊を一気に読めなくなった。積読状態のままで置かれる本に申し訳なく、本を買う事を控えるようになった。そんな高齢者にも、まだ出会いはあって、実際この作品と出会えた。連載は続いているようなので、この後もどんな物語を読めるのか、楽しみでならない。
Jan 17, 2025
敗戦処理の「神様、案ずるの巻」、試行錯誤の「神様、発起するの巻」。神様総出で出陣したものの、大きな被害を出して撤退するしかなかった事実は、深い傷と混乱と疑惑を与え、まずそこからの回復から始めるしかない。日常を取り戻し、平穏な暮らしを整えていく中にも、影は広がり、災難が起こる。お馴染みの面々の日常の様子を楽しみながらも、いろいろ気になってならない21巻、22巻。敵の正体が、さほど神格の高くないものだった事が、かえって厄介なのかもしれない。悲しみと憎しみで凝り固まった執念が、闇雲に手あたり次第吸収した力が、真っ黒に淀んで暴走した術だったから、神様には解析が困難なのかもしれない。流石の白狐様も悩みは深く、方々に指示を出して試みさせるものの、突破口が見つからない。なかなかクセ強なキャラが登場して、トンデモパワーが暴発するくらい、本宮も大変な事になっている。で、とうとう、最終兵器の召喚らしい…と、いうところで、待て次巻。本編がザワザワと落ち着かないから、陽ちゃんの愛らしさが尚更に癒し。番外編を楽しみながら、とにかく待つしかない…
Jan 14, 2025
小説/コミック1月15日『本なら売るほど(1)』 児島青 2月25日『花見小路北日記(2)』 桃缶 4月7日『魔法使いの嫁(22)』 ヤマザキコレBD4月16日『舞台「刀剣乱舞」蔵出し映像集ー心伝ー』
Jan 2, 2025
Jan 1, 2025
楽しみに待っていた3巻も、可愛くて個性いろいろな恐竜たちと、恐竜と一緒の生活を大切に暮らす人々との、暖かな物語で満ちている。表紙には、スーパー白亜のニコちゃんと、カボスのぼっさんが登場。ニコちゃんは晩白柚を磨いてて、そんな健気なところが堪らない。被り物を愛するぼっさんは、スーパーの販促に大活躍。金柑が、ふたりのお陰で爆売れして、白亜町は甘露煮のいい香りで満ちたんだろうなぁ。金柑コスプレの恐竜たちと、そのご家族の集合写真、幸せでいっぱい。新登場の恐竜たちも、みんな可愛い。シバちゃんのいる葉々亭のごはん、食べたいなぁ。毎巻、描き下ろしが楽しみなのだけど、今回も感動でぐっときた。そうだったのかぁ…思う心が時空を超えて、一緒になれたんだね…他の恐竜のおうちでも、もしかしたらいろんな存在がこっそり見守っているのかなぁ。みんな、みんな、これからも、ずっと幸せでありますように。
Dec 30, 2024
23日の第三部にて、今年の芝居納め。個人的には、追い掛けた一年だった。初日に観て、中日の15日に観て、そして23日と三度拝見して、「天守物語」が練れて深まり昇華していく様を目の当たりにした。芝居がこなれ、台詞が深まり、舞台上の密度が濃くなり、受け取る情報が膨大となり、観るべきもの聴くべきもの感じ取るべきものに圧倒され、何とか食らいついていこうと懸命になる経験をした。観客として何と幸福な事だろう。全ての出演者が、この濃密な世界を描き出している。お一人お一人が、舞台上に活きて、細やかに表して、世界を形作っている。過去にもこの演目を観ているが、今回は台詞の一つ一つが耳に達し心に響く。泉鏡花の戯曲が流麗に響き心に届いた時、言葉が描いた景色が脳裏に広がる経験をした。玉三郎丈の相手役…つまり指導を受けるという事は、やはり話題であるのだろう。様々なインタビュー記事が掲載され、読み応えのある記事がいくつかあった。初日から発声が変わり、台詞を発する気持ちが深まり、舞台での佇まいが磨かれて目を見張ったが、上演毎に変化し続け更なる上を目指し続けている事が見て取れた。團子の、ひたすらに真っ直ぐ在る潔さが、姫川図書之助に良く合った。変化は、玉三郎丈にもあった。中日に観て、更に23日に観た際の、若々しさに驚き、愛らしさを感じ、恋の切なさに胸を打たれた。亀姫と戯れる富姫の涼やかに君臨する様、亀姫を見送ってからの孤高の姿、そして姫川図書之助を見てからの恋心が、初日より更に瑞々しく艶やかに匂い立つ。もしかしたら、初日はまだ、演出家であり指導者としての在り方が勝っていたのかもしれない。もしかしたら、日を経て舞台全体が落ち着き深まりを得た時、演者としての在り方が第一になったのかもしれない。そして、もしかしたら、團子は相手役として存在する事が出来たのかもしれない…そんな想像をしてしまった。照明が落とされ闇となった舞台に上がってくる姫川図書之助を待つ、劇場中がしんとなりピンと張りつめた空気を、私はこの後忘れる事はない。その空気の中に在れた事を、幸福に思う。それくらい一観客として、大変に得難いものを拝見させて頂いた。
Dec 25, 2024
竜王とその伴侶の、代々続く愛の物語の完結。地球に彗星が衝突して、日本は壊滅的な被害を受ける。日本人の滅亡を回避するべく、地下にまたは月に人々は退避して、何とか命を繋ぐ。竜王もまた、竜族の為、伴侶を探して時空を跳び、人々を救助する。そしてこの19巻は、竜王とその伴侶が、更なる未来の為に大きな愛を紡ぐ。歴代の竜王とその伴侶の中でも、最も純粋で素直で明るいふたりだから、最終巻の物語は未来へ向けての希望に満ちている。既に前巻で大きな危機を乗り越えているので、読み手に取っても不安はなく、物語の終わりを喜びと共に読み終える事が出来る。この物語との出会いは、2010年12月発売のドラマCDだった。ネットで公開されていた物語を読み、同人誌を取り寄せ読み耽った事を、懐かしく思い出す。商業誌としての出版は、2016年5月に始まった。歴代の竜王と伴侶の個性と魅力に惹かれ、骨太な物語に引き付けられてきた。そこから全19巻、堂々の完結となって、読者としても感慨深い。物語は完結してこそ、永遠の存在になる。だからこの物語も、読者にとっても永遠になった。残念な事だが、完結に至らず宙に彷徨い続ける作品は少なくなく、それは読者にとっても永遠の無念になる。この物語を永遠の存在に成し遂げて下さった作者さんには、祝福と感謝しかない。永遠の存在になった物語は、自由を得る。だからこの後、たとえば番外編を1冊書かれて、まず20巻到達は如何だろう。そんな先の希望を抱いて待つ事も、読者は嬉しい。
Dec 22, 2024
キヨちゃんのおばあちゃんと、健太の家族が京都にやってきた、28巻。思いがけない知らせに、ソワソワして、何か特別な事がしたくて、でも、やっぱりおばあちゃんにはお見通しで、いつも通りを決めた三人。すーちゃんは今や押しも押されぬ存在なのを見せる事が出来て、健太はお店で認められている姿を見せる事が出来て、そしてキヨちゃんは市のお台所を見せる事が出来て、それぞれがちゃんと自分の場所で頑張っている事を知って貰えた。市のおかあさんと百子さんは、すっかり安定してますます良い関係。すーちゃんの深夜ラーメンデビューは、市のおかあさんの気持ち。すーちゃんがおばあちゃんと過ごせるようにお座敷を代わったのは、百子さんの気持ち。良い大人たちが心を寄せ思い遣る場所で、すーちゃんは頑張る事が出来ている。すーちゃんの両親は、娘の現在をきちんと見る日が来るんだろうか…
Dec 20, 2024
初日、第三部を拝見。「舞鶴雪月花」は、美しく、時に軽妙に、見終えると儚さが残る変化舞踊。勘九郎の、桜の精の出に涼やかなものを感じて、気持ちがすっと落ち着いた。過去に勘三郎丈の踊りを何度か観る機会があったが、その感覚と違うものがあって、何だか感慨深く思ってしまった。どうしても比較されるだろうし、故人を懐かしむ思いは私にもあるが、今、目の当たりに出来る勘九郎が、何より嬉しい。季節は変わり、秋の松虫。秋の風情と限りある命を、勘九郎の親松虫と踊る子松虫の長三郎の、愛らしくも、やはり中村屋らしい確かさに目を見張る。冬は雪達磨。黒々とした目鼻も凛々しい雪達磨の、なかなか粋で洒脱な面白さを、勘九郎が魅せる。雪達磨だから、オチはそうなる哀れさよ…そして、「天守物語」。私の今年の芝居納めは、10月の「ヤマトタケル」千穐楽のはずだった。まさかの抜擢だった。玉三郎丈、10年振りの富姫。私自身は、2006年と2009年に拝見している。昨年の七之助の富姫で、もうご自身ではお演りにならないのか…と感じてはいたが、もう一度と思われたきっかけが今年の「ヤマトタケル」だったとは。幕開きの、姫路城天守最上階の、何と華やかな事。女童が遊び侍女たちが興じる、人ではないものたちの軽やかな嬌声。一転荒れた空模様の中、天守夫人が帰城して、舞台上の全てが一変した。15年振りに拝見した富姫は、あの頃より臈長けておられるけれど、圧倒的に美しく、しなやかに強靭でもあって、一瞬にしてこの空間を支配した。「出迎えかい ご苦労だね」に始まる言葉のひとつひとつに、聞き惚れる。久しぶりに拝見した玉三郎丈に、目が釘付けになった。猪苗代の亀姫に七之助、何とまた艶やかな、ちょっと毒っ気が既に醸すようだ。やはり、この富姫にこの亀姫の並びは圧巻であり、感動である。ふたりの仲睦まじい様には、舌長姥ならずとも酒よりも心地良く酔わされる。亀姫を見送る富姫の、孤高漂う後ろ姿に心痛む思いを味わい、そして、いよいよその出を待つ緊張で劇場中がぴりりと張りつめた。暗闇の中、灯を手に若者が上がってきた。天守の最上階では人間こそが異形のもの、富姫に誰何されて畏まる言葉の硬さに、命懸けでここまで上がってきた覚悟が表れる。一旦は下層へ戻るも魑魅魍魎に灯を消され、やむを得ず再び上に戻った若者に、富姫は灯を点けてやる…ここで初めて、姫川図書之助は、富姫を見た。まっすぐに、ただただ目を開き、その圧倒的な美に釘付けになった。そこにはまだ恋など入り込む余地などない、ただただ凄まじい美に囚われた。そして富姫も、初めて姫川図書之助を見た。その言葉の涼しさを裏切らぬ、無垢で純粋な、ひたすらまっすぐな眼差しを浴びた。「帰したくなくなった もう帰すまいと思う」が、富姫の想いのまま胸に迫った。いくら積年の澤瀉屋贔屓とはいえ、團子が玉三郎丈の相手役として、それも「天守物語」を演るとは、夢にすら思った事はない。まだ二十歳なのである、ただただ伸びやかに育ってくれよと願うのが贔屓の思いだ。一報を聞いて、これは「ヤマトタケル」を遣り果せるご褒美だと思ったのだが、正にその「ヤマトタケル」の演技あってこその抜擢だった事を知って、感慨深い。かつて、三代目が舞台から消えた時、一門に手を差し伸べてくれたのが玉三郎丈だった。だからこの抜擢も、今だからこその賜物だったに違いない。團子の試練の場を、誰よりも厳しく受け持って下さったのだと思えてならない。團子の第一声で、既に声が変わった事を知る。ひたすらまっすぐに、ただただ懸命に、このひと月を全うするよう祈っている。流麗な泉鏡花を味わうには硬い事、それはこの舞台全体的にも言える事。まだ初日、これから回を重ね、こなれて変化して熟成していく。次の拝見が楽しみで、待ち遠しい。
Dec 6, 2024
小説/コミック12月10日『狐の婿取りー神様、発起するの巻ー』 松幸かほ 12月18日『ROMEO(5)』 わたなべあじあ 12月20日『恐竜はじめました(3)』 クラナガ 2025年4月7日『魔法使いの嫁(22)』 ヤマザキコレBD2025年4月16日『舞台「刀剣乱舞」蔵出し映像集ー心伝ー』 2025年『ミュージカル「刀剣乱舞」参騎出陣~八百八町膝栗毛~』
Dec 1, 2024
およそ2年ぶりの待望の15巻は、スミスと共に英国に渡ったタラスの物語、そして二人に関わった人々の後日譚。ボンベイから船で英国へ向かうスミスとタラス、そしてチュバル。慣れない環境に焦れるチュバルを見やる、船の猫の眼差し。まぎれもなく船の主を堂々と担っている。英国へ、スミスの実家へやってきての展開は案の定ではあるが、意外にスミスの父と兄が容認傾向。知人の協力で二人で住まう場所も出来、タラスが自分の現在の状況に喜びを感じている事に、読者としても安堵してしまう。スミスの実家で一人放置されているかのようなタラスの後ろ姿、新居で自分が出来る事をひとつひとつ見出していくタラスの意志、タラスに寄り添うように在るチュバル、ただひたすらタラスとチュバルの幸福を祈ってやまない。次巻が既に待ち遠しくなってしまうが、まずは作者さんのご健康あってこそ。楽しみに楽しみにお待ちしています。
Nov 23, 2024
持病の為、侭ならない事もあるけれど、ゆっくり焦らず、丁寧に真摯に、自分のペースで生きて行く物語の5巻。人間関係がじわっと広がって、自分の居る場所に安心感も持てて、主人公の生き方が安定してきて良かったなぁと思う。世間というのは、本当に身近な人とは違う、ただの外野に過ぎない。自分を理解してくれる周囲に恵まれる事が、安定した生活のベースだなぁと、しみじみ思ってしまう。自分自身も、足を悪くしていた時に諸々あったから、フルタイム働く事とか、勤勉である事の程度とか、思う事多々。年齢にかかわらず働き続ける事は素晴らしいし、働く事の意義も承知しつつ、いろいろ思い切って仕事を辞めて、ホッとしたのは本音。自分らしい生き方を、淡々と続けられたら、しあわせ…
Nov 20, 2024
仕事を辞めて、何だか不安定な心持ちでいた主人公に、まるで待ってました!と言わんばかりに声をかけてきた友人。早速連れ出された小樽を皮切りに、主人公の生活が動き出す…前作『ねこと私とドイッチュラント』がとっても素敵だった、現在はドイツにお住いの作者さんの新しい作品は、ご出身の北海道が舞台。小樽や札幌や、六花亭や千秋庵や、熊の木彫り丸々一匹の鮭、等々、こう書くと北海道の観光とグルメ漫画と思われそうだけど、新たな出会い、環境の変化、経験を積み重ねながら、一歩一歩自分の生き方を模索していく主人公の物語。第1巻は、まだまだ主人公についても、これからの展開についても、続きが待たれるところだけど、既に読者にとってもワクワクは始まっている。電車でふらりと行ける小樽、ガタピシいってるオンボロなシェアハウス、アクティブな友人に誘われる仕事、さりげなく経験を促されての決心と達成、段ボールの中から新たな旅の目的発見…と、続きが楽しみでならない。北海道には2回行って、あちらに友人もいるお陰で、知っている風景や知っている美味しいものが登場するのも、楽しかった。そうそう! 三角市場は見た事のない魚が並んでいたっけ、かま栄のお店でコーヒーに小さなかまぼこのオマケがついていた記憶、マルセイは「サンド」より「ケーキ」が好き、生ノースマン美味しかった…新たな旅は、どんなものを見せてくれるだろう♪ファンにとっても、前作の扱いに忸怩たる思いは消えない。今作が、どうか作者さんにとって実りあるものとなりますように!!!
Nov 17, 2024
ある村に生まれた特殊な瞳を持つ人形師が、村の土を使って心を込めて作った人形には、魂が宿る。役目を担って生まれた人形は、時に自らが破壊する事にも臆さず、献身的に人に寄り添う。後宮に事件が続いた時、皇帝はその人形師を召すよう勅命を出した。人形師は、万物の霊気を感じ取る能力を持ち、人の霊気の明暗や良悪は人形師の精神や体調に影響を及ぼす。なので、人形師は他人が怖く、家族からも一人離れて暮らすくらいだから、帝のお召しにまずは逃げようと悪足掻きをしてみる…と、ドタバタと物語は動き出し、人形師の少女は否応なく帝都へやってきた。工房にひきこもりたい願いは叶わず、人形作りが始まり、人々との関わりも増えて、それは人形師自身を成長させていく。積年の恨みや憎しみや呪いによって、人の心が狂っていくのとは対照的に、ただただ純粋に使命を全うしていく人形の、美しく哀しい事。人形師は、己が生み出したものに対する責任を思い、命や魂について考える。それは、事件の中央に置かれていた者に対しても…中華系ファンタジーで、人形好きには更に楽しい物語だった。人形師が、いちいち他人にビビる様子が、ちょっと可哀そうやら可愛いやら。猫の人形が、口が悪くて食いしん坊で、活き活きと大活躍の良い相棒。寡黙で内面を見せない官吏が、なかなかのお世話焼きで、どうやら秘密持ち?まだまだ物語は広がりそうだし、生ける人形の魅力をもっと知りたい。続編、是非読みたいのだけれど…
Nov 7, 2024
コミカライズ6巻、餓鬼騒動の完結、シリーズ最終巻。あわいの地に突然現れた餓鬼によって生気を奪われ、幼い姿に戻ってしまった薄緋と寿々。餓鬼に対する加ノ原秀尚の思い、仔狐たちそれぞれの心。美味しい料理が満たすのは、空腹だけではなく…稲荷神たちに捕獲された餓鬼の魂を救おうと懸命になる秀尚を見て、餓鬼に対する恐れや憎しみ、寿々を救えなかった自責の念と、許すという事にひとり苦しむ、まだ幼い萌黄の心が辛い。原作を読んでいるから、物語は既に解っているのだけど、コミカライズされて「絵」の威力を改めて感じてしまった。頑なに寿々から離れようとしない姿や、葛藤を抑え餓鬼に差し伸べる手の震えや、心の動きを素直に表す耳の様子や、萌黄のひとつひとつのシーンに心打たれた。そして、幼くなってしまった薄緋様の、破壊力!美少女なのは言うまでもなく、見下ろされるのが不愉快と目線を合わせる為に大人稲荷に抱き上げられている様子の、何て女王様な事!普段は冷静沈着で顔色一つ変えない誰よりも大人な薄緋様が、あんなに表情豊かに感情をあらわにするなんて♪心から満たされた餓鬼は昇天して、その後、心惹かれるまま加ノ屋に出現して、やがて「画伯」となるのは原作での展開。その原作が、レーベルの停止によって続きが読めなくなってしまったのは本当に哀しく悔しい。その思いをコミカライズには、とても癒してもらった。それもこの巻で完結してしまって、淋しくてならない。心込めて料理を作る秀尚、愛らしい仔狐たち、個性豊かな稲荷神たち、そんな彼らの集う加ノ屋で繰り広げられる物語が、どうか再び動き出さないものだろうか…
Nov 5, 2024
1年間の隠遁生活が終わる15歳の誕生日を迎え、更にもう1年兄との暮らしを選ぶ、第5巻。相変わらずとっても賑やかだけど、この1年のオンの変化の大きい事。どれだけ得難い日々だったか、それは基にとっても同じ。だから、二人がこれからも一緒なのが、とても嬉しい。新たに巡る四季に、彼らが出会い経験する様々なものごとや、折々の丁寧な料理と、どんな1年を積み重ねていくのか楽しみ。今巻には、むぎの過去篇が収録されていて、ちびむぎのなんて可愛い事。むぎは、ただの犬じゃなかった…そうか…なら、むぎがおっさん声ってありか…「知らぬものは怖い」他者に知られていない存在自身がいう言葉と、そのものについて無知な存在がいう言葉と、知らせないものがいう言葉と、知ろうとしないものがいう言葉と、意味するものは様々。ところで、天狗の末裔たちが食に貪欲なのは、ご先祖様から連綿と伝わってきたものの一つなのね。TVドラマの2期もちょうど始まって、あの美しいオープニングから変わらない風景が広がって嬉しかった。原作とは違う展開を、原作者さんと一緒に楽しめるのも嬉しい。
Nov 3, 2024
小説/コミック11月8日『狐の婿取りー神様、案ずるの巻ー』 松幸かほ 11月12日『ホッコクゆらゆら紀行(1)』 ながらりょうこ 11月15日『しあわせは食べて寝て待て(5)』 水凪トリ 11月20日『乙嫁語り(15)』 森薫 『銀河ホテルの居候 光り続ける灯台のように』 ほしおさなえ 12月10日『狐の婿取りー神様、発起するの巻ー』 松幸かほ12月18日『ROMEO(5)』 わたなべあじあ12月20日『恐竜はじめました(3)』 クラナガ 2025年4月7日『魔法使いの嫁(22)』 ヤマザキコレBD11月20日『舞台「刀剣乱舞」心伝 つけたり奇譚の走馬灯』 2025年『ミュージカル「刀剣乱舞」参騎出陣~八百八町膝栗毛~』
Nov 1, 2024
2月に始まった『ヤマトタケル』の終着地、博多座に来る事が出来た。その外観から華やかに賑わっていて、芝居を観る期待や高揚を更に上げてくれる。入り口を入ると、正面に天井から「天翔ける心」の幕が下げられ、その左側には博多座公演のキャッチフレーズ「集結せよ」の大きなパネルが飾られていた。「集結せよ」とは、何て相応しい言葉だろう。この博多座で全てのキャストが揃い(寿猿丈の休演、錦之助丈の途中休演は残念だった)、贔屓も各地から続々と集って来た。上の階には数々の売店が並び、芝居見物の楽しさを益々盛り上げている。お弁当の種類も多様、和洋の甘味もいろいろ、グッズや土産物等々、劇場に滞在する時間丸ごと楽しませようとする意思に溢れている。20日の夜の部は、隼人のヤマトタケル、壱太郎の兄橘姫・弟橘姫。小碓命の出、何て初々しく品の良い皇子だろう。隼人のヤマトタケルに堪能しながら、同時に違和感(あえてこの言葉を使う)のようなものが自分の中にジワジワ沁みてくるような感覚があった。それは、隼人のヤマトタケルが出来上がったからであり、隼人だからこその『ヤマトタケル』を目の当たりにしているからだと解った。これまで三代目の初演に始まり、歴代の『ヤマトタケル』を観てきた。残念ながら若かりし頃の錦之助丈による『ヤマトタケル』は観ていないので、つまり澤瀉屋一門の『ヤマトタケル』しか私は観ていなかった。あまりにも三代目の生き様が色濃く表れた『ヤマトタケル』とは根本が違う、ヤマトタケルという青年を隼人によって初めて観たのだ。梅原猛氏と三代目が創った『ヤマトタケル』という物語に、新たな異なる命が吹き込まれた事を目の当たりにして、深い感動を覚えた。壱太郎の、兄姫の気品、弟姫の情熱、姉妹それぞれの色味が濃い。ことに、走り水の弟姫の、どこか狂気にも似た烈しい想いの迸りに、まるで神からの託宣を告げる巫女の陶酔のようなものを感じて、痺れてしまった。だから、團子と壱太郎の『ヤマトタケル』が観たかったと、悔いは大きい。日程を見て散々迷って、自分にはこの日程しかないと納得して決めて来たとはいえ、どうしても観たかった欲は消えず、更に大きくなってしまった。21日、團子のヤマトタケル、米吉の兄橘姫・弟橘姫。2月初日のこのふたりを観たからこそ、今回の私にとっての楽日はこの日しかない。その出から、團子の舞台姿が以前より大きく見えた。演技、台詞、表情、声、動き、どれも着実に成長していて、回を重ね演じる毎にどれほどのものを吸収してきたのかと思う。あの初日に、必死に演じるあまり髪がぐちゃぐちゃに乱れてしまったあの力みは、最早無い。確かに、團子だからこそのヤマトタケルが生まれてきている。米吉の橘の姉妹は、相手をしなやかに温かく包み込み育んでいるように思える。私にとって夢だった(半ば諦めてもいた)米吉の橘の姉妹を、実現させてくれた事へ改めて感謝しながら見蕩れていた。隼人のヤマトタケルと、團子のヤマトタケルの台詞の違いが、更に増したように思う。それぞれのヤマトタケルが出来上がった博多座での『ヤマトタケル』は、その味わいに随分と違いが出て双方を観る事が出来て幸せだった。また、新橋演舞場の時と演出自体が変わっている点がいくつかあった。たとえば2幕の倭姫と弟姫が花道からの出となったり、3幕の伊吹山の鬼たちの出方だったり、上演ごとにブラッシュアップし続け、進化し続けるこの芝居らしい。主役に変化があれば、その周囲も当然変化している。すっかりベテランとなった澤瀉の面々の安定感、特に青虎の頼もしかった事。我らが猿弥ちゃんに続き、嬉しい役者になっていくのだろう。長年のみやず姫からその母親役になった笑也の、僅かな登場が勿体ないとも思うが、毎回ちょっとした入れ事をして観客を楽しませてくれた。團子のヤマトタケル最終日は、その入れ事を一切しなかった。基本の形をきっちり演じて、ひとつの区切りとしたのかもしれない。福之助、歌之助兄弟の存在感が、更に増していた。福之助のタケヒコの、凛々しく毅然とした姿が魅力的だからこそ、その瞳からこぼれる涙の衝撃は大きい。病に倒れたヤマトタケルに対する、タケヒコとヘタルベの悲痛さが増して、打ち消そうにも消せない絶望に胸が苦しくなった。錦之助丈の休演は無念だったが、ダブルキャストで歌之助が居てくれた事は心強く、その若々しい熊襲弟タケルが弾けるように飛び出してくる姿に胸躍った。團子のカーテンコールを見守る、門之助丈の笑みの何て優しかった事。幕開きの皇后の美しく立派な事、いつも惚れ惚れと見上げていたのだけれど、このカーテンコールだけは誰よりも優しい笑顔で、感動で胸がいっぱいになった。22日に、大千穐楽の幕が無事下りた。多くの出演者がSNSに終演の余韻を残し、素晴らしいカンパニーであったかを伝えた。2月に始まった長い旅は大きな成果と更なる夢を掴み、そして既にそれぞれが新たな始まりを迎えている。どこまで追っていけるだろうか…更に更に観続けていきたい思いが大きくなるばかりだ。
Oct 30, 2024
もう随分と長く芝居を観てきたのだけれど、遠征というものをした事がなかった。小企業のサラリーマンだったし、家の事情やら諸々あったし、そもそも興行に恵まれた東京に居るし、根っから出不精でもあるし、行ってみたい気持ちは無くはなかったけど、遠征は諦めていた…のだけれど。2月(~3月)新橋演舞場に始まったスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』は、5月御園座、6月大阪松竹座と続き、10月の博多座で大千穐楽を迎える。團子ちゃんの初日を観て以来、今回の旅の行方を見届けたくて堪らなくなった。博多座は、三代目が「スーパー歌舞伎座」と呼んで好んでいた劇場でもある。仕事を辞めて呑気な身となったし、体調にも問題のない今なら、行ける。万が一キャンセルする事も覚悟した上で、早々に飛行機とホテルを予約した。10月20日(日)。こういう風景を眺めるのは、何年振りの事だろう…すっかり旅をしなくなっていた上に、世の中はデジタルでペーパーレスで、経験も勘も何も無い天性の粗忽で方向音痴なアナログ老人、出来る事は早めの行動のみ。フライトの2時間近く前に羽田に着いて、あちらこちら眺めて社会科見学気分も味わった後、早々にチェックインして、コーヒー飲みながら飛行機を眺めていた。我が本丸、始まって以来の遠出。羽田から883kmと、近侍が教えてくれた。福岡空港に着いて、まず友人に心ばかりのものを発送。ショップエリアを眺めているうち、ちょっと楽しくなってしまって、アレやコレや詰め合わせてみたけど…博多直送って事で許して。かれこれ45年ほど前、高校の修学旅行で降り立ったのが福岡空港で、でも即、バスに詰め込まれて大宰府に向かったから、福岡市街は全く知らない。タクシーの車窓から、ついキョロキョロ。羨ましいくらい空港と市街地が近くて、川端中洲のホテルに20分するかしないで着いた。ホテルで一休みして着替えてから、博多座へ向かった。思った以上に近い。開演にまだ時間があったけれど、既に賑わっていた。外観の華やかな飾り付けからして劇場側の熱意が感じられて、これまで噂に聞いていた博多座の興行に対する姿勢を目の当たりにした思い。夜の部の、中村隼人のヤマトタケルを堪能した。10月21日(月)、良いお天気。早めに出て、川沿いに散歩しながら櫛田神社へご挨拶に。気分よく歩き過ぎたようで、どうも違うような気がして調べたところ、通り過ぎていたらしい。博多通りに沿って歩いていたら、鳥居で気付けていたのかも…まだ9時早々だったので、人も少なくゆっくりお参りが出来た。境内にお神輿が何基か並んでいて、ただ上に飾る鳳凰は外されていた。後で調べてみたところ、24日におくんちの神輿行列が行われるそうで、その準備だったのかもしれない。境内に飾られた山笠の、何て大きく立派な事。TVで飾り山笠の様子を見る事はあっても、このスケール感は実際に目にしてこそ。本殿の後ろ側に境内社があって、その中に白鳥神社があった。今日の團子ちゃんの楽の無事をお祈りする。川端商店街のアーケードを通って、博多座へ向かう。10時前だからどの店も当然閉まっていて、営業時間に通ったら楽しかっただろう。通りに近いカフェで一休み。開場時間になって、博多座へ入る。今日の前楽と明日の大千穐楽は、1回公演。市川團子のヤマトタケルに浸る。夜、ブログを通じてお知り合いになったお友達に、宿泊していたホテルでお目に掛かる。これが実際には初対面だったのだけれど、すぐこの方だと判った。ラウンジでお喋りをさせて頂き、楽しくて楽しくて、時間はあっという間に経って、気が付くと3時間が過ぎていた。お仕事終わりにお時間を頂いて、しかも月曜日、お名残り惜しくてならなかったけれど、ロビーの出口のところでお見送り。どうか再会が叶いますように。10月22日(火)、雨。本当なら、今日の大千穐楽も観たかったけれど、家の事情的にも難しく、さんざん迷って悩んで遠征の日程を決めたのだった。昼頃の飛行機で福岡を離れる。早くに空港へきて、朝ごはんをする為にレストランエリアへ。到着した日はちょうどお昼時で、何処も混雑していて諦めたのだけど、その時に見かけたお店が朝から開いていて入ってみた。「天下三槍うどん」…長さ30cmはありそうなごぼう天が3本。どれが日本号さんで、どれが蜻蛉切さんで、どれが御手杵さんなんだろう…と、内心ニヤニヤしながら美味しく頂いた。ショップエリアへ行って、お土産選び。お子さんのいる友人宛にアレコレ見ているうち、また楽しくなっちゃって、ちょっと悪ノリだったかも…妹へは、糸島市産の野菜を使ったドレッシングや調味料を買ってみた。「とよみつひめパフェ」というのに惹かれて、フルーツパーラーで一休み。福岡特選イチジクだそうで、穏やかな味わい。雨の空港を眺めながら、ちょっと現実離れした3日間を締め括った。雨雲のせいで遅れたり揺れたりしたけれど、無事に羽田着。バスも順調に首都高を走って、3時過ぎに帰宅した。
Oct 28, 2024
名も知らぬ人の旅先からの手紙を随筆に綴る作家と、その書生と、猫様と、不思議であやしくゆかしい物語。待望の2巻は、桜の古木や、勉強に励む狸や、銘茶の香りや、味わい深い六篇の物語。もっと時の流れや人の有り様がゆったりとおおらかだった頃に、存在出来たものたちに思いを馳せながら、でも案外、今もひっそりと在り続けているのかもしれないと、想像するのが楽しい。そして、やっぱり、猫の櫨染さん。時に全て解っているような顔をして、時に超越したような存在感を醸して、でも、なーんも考えてない、すっとぼけたハラペコの、ただの猫のようだったり、一コマ一コマに魅力がある。猫って、どうして、こう物語になるのだろう…最も不思議で妖しいのは、旅をし続けて手紙を書き続けている、知らない誰か。このひとは、何処へ行き着くのだろうか…何時かは帰るのだろうか…読者はそれを知る日が来るのだろうか…と、続きが更に待ち遠しい。
Oct 18, 2024
クリスマス休暇中、エリアスの住居に関わる話を挟んで、赤い竜についての様々な展開が始まる21巻。魔法使いと弟子が連れているモノ、ゾーイの先祖返り、双子が連れてきたコ、ザワザワ、ザワザワ、物語が蠢いている。英国の赤い竜と、チセの赤い竜は、どう関わりがあるのか、関わってしまうのか、長い物語になりそうな「獣殺し篇」。休暇が終わりカレッジに戻ると、さらに複雑な事になりそうな…「描きたいことがありすぎて」「話の枝葉を伸ばすの好きすぎ」なのは、ファンは良く解っているし楽しみでもある。同時に、骨太にぐぐっと物語を展開して欲しいのも本音。登場するキャラクターが増えて、複雑に絡み合っていくのは必定、何とか頑張って追っかけていかねば。
Oct 15, 2024
1年に満たない結婚生活とはいえ大切な記憶を残してくれた夫を亡くし、大切な先輩を誹謗中傷され爆発しかかった事から仕事を無くし、実家の古びた文具店の店番をする事となった主人公。一時的な借りの住まいと思っていたのに、思いがけず甥と同居する事になり、稀に訪れる客との触れ合いがあったり、そして新たに同居猫がやってきたり。主人公の人生が変わり始める…主人公の失望しかかった気分から、どこか空虚で冷え気味の空気感が、徐々に体温が上がってくるような読書感。登場人物が増える毎に、それにつれて主人公の印象も鮮明になっていく。読み終えて、ここからが物語が始まっていくのだと判る。まずは、同居が始まった猫が、どんな猫なのか語られるのはこれからだ。大抵、猫の方が一枚も二枚も上手なものだから、猫に振り回されるだろう主人公のアタフタやら、それに勝る気付きや情や癒しや、猫切っ掛けで既に増えつつある人々との触れ合いや、たった猫一匹からでも、物語のふくらみを想像してしまう。尚の事、文具店がどういう存在なのか、知りたくてならない。これまでに、ささやかでも様々な事柄が積み重ねられてきただろう。何故、祖父も母も、訪れる客が少なくなっていた文具店の存続を望んだのだろう。だから、この先の物語を、是非読みたい。どうか続編が出版されますように。
Oct 7, 2024
小説/コミック10月8日『魔法使いの嫁(21)』 ヤマザキコレ 10月10日『あらあらかしこ(2)』 波津彬子 10月15日『後宮の人形師 ひきこもりの少女、呪術から国を救う』 猫田パナ 10月22日『天狗の台所(5)』 田中相 10月31日『こぎつね、わらわら 稲荷神のまかない飯 いただきますっ!(6)』 西実さく 11月8日『狐の婿取りー神様、案ずるの巻ー』 松幸かほ 11月12日『ホッコクゆらゆら紀行(1)』 ながらりょうこ 11月15日『しあわせは食べて寝て待て(5)』 水凪トリ 11月20日『乙嫁語り(15)』 森薫 『銀河ホテルの居候 光り続ける灯台のように』 ほしおさなえ 12月10日『狐の婿取り 』 松幸かほ12月20日『恐竜はじめました(3)』 クラナガ 2025年4月7日『魔法使いの嫁(22)』 ヤマザキコレBD11月20日『舞台「刀剣乱舞」心伝 つけたり奇譚の走馬灯』 2025年『ミュージカル「刀剣乱舞」参騎出陣~八百八町膝栗毛~』
Oct 1, 2024
ミッション系の女子高に通う主人公は、ゆるく和文化に触れる「和文化同好会」に所属(会員2名)。頼まれて「源氏物語」の代読を始めたものの、「あはれ」の意味するところに苦戦中。戸惑いながら、様々な経験をかさね、細やかな感情のひとつひとつに気付いていく…主人公が暮らす花見小路の北側は、今や観光地の趣重視な南側と違い、現実的な歓楽街。そんな環境もあってか、虚構にフワフワするタイプではなく、淡々と現実的。決して斜に構えず、素直に物事を判断して、己の心で気付きを得ていく。「迷ったら おもろそうなほう選ぶ」事にしている。高齢者には、残念ながら今どきのJKというのは解らない。だから、自然と高校生が主人公の作品は避けてしまうのだけど、表紙の雰囲気と紹介文で手に取ってみて、アタリだった。実際、「あはれ」の意味するところを上手く説明するのは難しい。もしかしたら、読み手の数だけ「あはれ」の意味は変わってくるような気がする。つまり、自分の心にどう響いてきたかが、重要なのではないか。そんなふうに思ってきたから、この主人公が自分自身で経験した事から、自分なりにひとつひとつ気付いていく姿が、とても好もしい。新たに出会う人々との関わり、自分とは違う場で生きる人の気持ち、自分の知らなかった物事を気付き、心が深く広く成長していく。ご近所のクラブの雇われ店長の男が、さて、どういう人物なのか。「ヒカル」は本名なのか、源氏名なのか。果たして、主人公にとって、善き人なのか。男の本心が、この後、露わになっていくのか。続きの展開を待つしかない。次巻は、来年初春との事。待ち遠しい。
Sep 30, 2024
眼鏡さん姉さんの襟替と、新たな仕込みさん二人、変化の27巻。先笄に結い上げた眼鏡さん姉さんの、なんて綺麗な事。眼鏡さん姉さんなら鉄漿でニッ♪と、読者に向かって笑ってくれる描写があるかと、ちょっと期待してしまったんだけど…やっぱりNG?表紙の、髪を短くした姉さんへ向ける眼差しが、何とも優しい駒えみちゃん。すっかり成長して、良いお姉さんに。新しくやってきた仕込みさん二人は、とっても元気。「市」がますます賑やかになる。健太がまた一段と逞しくなっていて、目標を見据えて前進中。良い師匠と先輩に恵まれ、良い環境で生きている。周囲が変化していく中、安定のキヨちゃんとすーちゃん。日々努力の人すーちゃんは、ますます磨きがかかり、押しも押されぬ売れっ技。キヨちゃんは着実に一歩一歩、周囲に日々の安心を提供中。さて次巻は、いよいよ京都におばあちゃんがやって来る!
Sep 14, 2024
浅草公会堂で、尾上右近丈の自主公演『第八回 研の會』を拝見。演目は、「摂州合邦辻」と「連獅子」。この猛暑にも勝る、熱い熱い意志に満ちた舞台だった。「摂州合邦辻」は、腰元奉公をしていた大名家で、正室亡き後に主君の目に留まり継室となった女の物語。主君には脇腹の長子と正室腹の次子がおり、次子が後継ぎとなった為、次子は長子から命を狙われる。それを知った女は、継子ふたりを助ける為に、己の命を懸ける。あらすじを読むと、お家騒動の物語。物語を作った側の意図は、継母の継子に対する邪恋だったのか?現代の感覚からすると何とも理解し難い物語なのだが、演者の解釈と演技で観る側が如何様にも受け取れる。元は武士だが出家した合邦道心の庵を、夜の闇に忍んで女が訪ねてくる。女は合邦の娘で、不義をしでかした娘を父親はまず拒もうとするが、母親はまず娘の無事を確かめその本心を知りたいと思う。女は、次子に対する恋心をあからさまに語り始める…と、なる瞬間、演じる右近の全身から玉手御前という「女」が、ぶわっと立ち昇るように感じた。そこには懸命な意思があって、やはり恋は有ったのかもしれない。でも、女の最期に浮かべた笑みを見た時、それは己の成し遂げるべき事をやり遂げた成就を感じて、この女はまだ二十歳前後の若さだった事を改めて思った。若い女の懸命な、純粋な意思が、独り暴走させた原動力だったかもしれない。それは愚かにも思えるし、聖なるものにも思える。右近の、渾身の玉手御前を観てそんな事を感じた。合邦道心の猿弥の、老いた化粧の様子に三代目の雰囲気があって、嬉しくなった。奴入平の青虎の、きびきびとした姿にも、それは確かにあって、師匠の存在というのは永遠なのだなぁと思った。浅香姫の鶴松が現れた時、自然と綺麗と見蕩れ、純真で美しい姫だった。この人の真摯な様子は時に控えめ過ぎると思った事もあったのだけれど、着実に一歩一歩大切に進んでいるのだなぁと感じた。「連獅子」は、これまで様々な「親子」を観てきた。ただ、不思議と実の親子で観た事は少なく、個人的にはそこに拘りはなかったのだが、事前のインタビューを拝読して、演じる側にはやはり少なからぬ思いがある事を教えて頂いた。今回、右近が仔獅子に尾上眞秀を熱望した心が、舞台のそこかしこに感じられた。凛として高みに己を据える親獅子の、仔獅子に向ける表情の多彩だった事。若々しい親獅子の喜びを感じて、こちらの胸も高まり感動に満ちた。眞秀くんも、はつらつと挑んだ。この人の「目」の良さに、5年前の「実盛物語」で魅了されたのだったが、ますます活き活きと輝き、すらりと伸びた姿も美しい。仔獅子となって出て、そして花道を下がる場面は、危険な事もあり慎重に下がるやり方もあったが、眞秀くんはなかなかなスピードで果敢に下がった。若々しい親子の、未来へ向ける咆哮のような毛振りに、観る側は懸命な拍手で寿ぐ。自主公演は、演者にとっても観客にとっても、未来を見据える格別な舞台。誰よりも熱く意志に満ち満ちて在ろうとし続ける尾上右近の、何て凛々しい事か。終演の挨拶で、晴れ晴れと発せられた「歌舞伎、愛してるぜ!」は、ここに集った観客にとって何よりの芝居土産だった。
Sep 8, 2024
小説/コミック9月11日『舞子さんちのまかないさん(27)』 小山愛子 9月13日『猫沢文具店の借りぐらし』 谷崎泉 9月17日『脳内チキンバースト!』 児島かつら 9月20日『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』 ほしおさなえ 10月8日『魔法使いの嫁(21)』 ヤマザキコレ 10月15日『後宮の人形師 ひきこもりの少女、呪術から国を救う』 猫田パナ 10月31日『こぎつね、わらわら 稲荷神のまかない飯 いただきますっ!(6)』 西実さく 11月15日『しあわせは食べて寝て待て(5)』 水凪トリ BD9月25日『ミュージカル「刀剣乱舞」千子村正 蜻蛉切 双騎出陣ー万の華うつす鏡ー』 11月20日『舞台「刀剣乱舞」心伝 つけたり奇譚の走馬灯』 2025年『ミュージカル「刀剣乱舞」参騎出陣~八百八町膝栗毛~』
Sep 1, 2024
陶芸作家の旦那さんとファッション雑誌編集長の奥さんの、長距離生活。若いとはいえ、着実に注文が入る陶芸作家の旦那さんは、自然豊かなご近所との関わりも温かい地方で、なかなか丁寧な生活をしている。都会で多忙な日々を過ごす奥さんは、TV出演や他紙からの取材も受ける有名な編集長。ふたりの生活距離は200km、週末になると車を飛ばして奥さんが帰ってくる。旦那さんは料理も丁寧で、一人の食卓もさりげなく手をかける。ご近所との集まりに、手作りのパウンドケーキを持参する心遣い。奥さんは、時に休日も呼び出されるほどの超多忙な毎日で、仕事に社員に心を砕き、反面ついつい部屋も散らかり気味。お互いに、それぞれの生活を尊重して、200kmの距離にも不服はなく、週末に優しく寄り添い、ふたりの暮らしを楽しむ。ほっこりとして、料理が美味しそうで、可愛い物語。この後、それぞれの仕事にもう少し踏み込んだ話が描かれるのか、または、ますます美味しそうな料理描写に熱が込められるのか、どういう展開になっていくのか、楽しみ。ふたりの馴れ初めのお話は、是非読みたい♪
Aug 24, 2024
元々、苦手な夏、年を重ねる毎、益々しんどい。日々の暑さに、ウンザリ。本もコミックスも、新刊届いてるんだけど…夏芝居も、映画も、外出が億劫で…今日、明日は夏コミ…今年は不参加。どうか、天候も地震も悪さをしませんように。
Aug 11, 2024
小説/コミック8月7日『いつだって喫茶ドードーでひとやすみ。』 標野凪 8月8日『琴子は着物の夢を見る』 ほしおさなえ 9月11日『舞子さんちのまかないさん(27)』 小山愛子 9月13日『猫沢文具店の借りぐらし』 谷崎泉 9月17日『脳内チキンバースト!』 児島かつら 9月20日『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』 ほしおさなえ 10月15日『後宮の人形師 ひきこもりの少女、呪術から国を救う』 猫田パナ 10月31日『こぎつね、わらわら 稲荷神のまかない飯 いただきますっ!(6)』 西実さく BD8月28日『シネマ歌舞伎 刀剣乱舞 月刀剣縁桐』 9月25日『ミュージカル「刀剣乱舞」千子村正 蜻蛉切 双騎出陣ー万の華うつす鏡ー』 11月20日『舞台「刀剣乱舞」心伝 つけたり奇譚の走馬灯』
Aug 1, 2024
夜の部「裏表太閤記」を拝見。43年前に昼夜通しで上演されたものを、半分の時間で出来るよう作り直された。三代目の初演版の形がどれくらい残っているのか判らないが、お客を楽しませようという意志と熱が確かにあった。高麗屋三代が揃い、花形が個性を発揮して、三代目の新盆をしてくれたのだなぁと思った。物語は太閤記の、豊臣秀吉の出世物語という「表」に対して、明智光秀や備中高松城水攻めなど「裏」を際立たせている。まず松永弾正の爆死、「馬盥」の織田信長の横暴と明智光秀の忍従、本能寺、織田信忠の最期と続き、備中高松城の軍師家族の忠義を描く。本能寺の、彦三郎の信長が憎々しく、松也の光秀の苦しみが伝わる。謀反の場から一転して愛宕山は酒宴も盛り、織田信忠の巳之助の品の良い事。取り巻くお腰元衆に、芝のぶ、笑野、猿紫と並んだのが嬉しく、また久しぶりに右若の姿を観る事が出来たのも嬉しい。お通の右近が登場すると華やかさが増し、美しく凛とした姿に目を見張る。落城寸前の高松城での、命を懸けて和睦を結ぶ軍師とその家族の悲劇は、通し狂言の中幕にこういう場面をたっぷり演じて見せた三代目のやり方を懐かしく思い出す。染五郎が、ずいぶんとお祖父様に似てきたなぁと、夏が来る度見続けてきたその成長ぶりにしみじみしてしまう。中国大返しが海路となり、荒れ狂う海を鎮める為のお通の入水は、新たに作られた場面だそうで、ここはやはり三代目への思いが込められている。今回、何故「裏表太閤記」の上演が決まったのだろうか。三代目が手掛けた数々の復活狂言や新作を、この後も埋もれさせる事なく、様々な形で活かす為の試みであって欲しい。二幕の切、目出度く光秀を討ち取る場面が、大滝での本水の立ち回り。この猛暑に、幸四郎、松也、染五郎が水飛沫を跳ね上げる。どうやら幸四郎が一番楽しそうで、松也が転び掛けたのが心配やら。で、三幕がいきなり西遊記の世界で、孫悟空がひと暴れ。秀吉の「猿」から転じた御趣向の場面、幸四郎の踊りが洒脱。天帝に猿弥、その大妃に門之助、と、「ヤマトタケル」を観てきた者にはちょっと嬉しい。天帝の眷属たちにお弟子さんたちが配役されていて、それもまた嬉しい。今回、たとえば森蘭丸の京純をはじめ、様々な役や場面でのお弟子さん方の存在が印象深い。三代目の部屋子の末っ子、青虎が様々な場面に登場し、まさかの宙乗りまでし、演出捕でもある事が、本当に感慨深い。笑也、笑三郎、猿弥、青虎は、三代目の意志をこの後に繋げ渡していく役目を担う。孫悟空は秀吉の見た夢…で、天下人となった太閤が天下泰平を記念して三番叟を舞う。右近と染五郎が花道から現れキレの良い舞いを見せ、更に松也と巳之助が端正に舞う。そして幸四郎が加わり、五人揃って圧巻の舞い振りを魅せる、その心地良さ。こんなに晴れ晴れと気持ち良い幕切れは、そうそうない。ふわふわと幸福な心持ちで、三番叟を反芻する。五人の舞い振りに、目は巳之助を追う…殊更に何かするのではなく、でも確かに際立っていて、目は追わずにおれない。そして上手側では右近が、ぴしっと、ぱしっと、きらっと決めていて、やっぱり好きだ。五人の中に加わって、若々しい染五郎の、清々しさ…いつか、團子ちゃんと二人三番叟とか…夢だなぁ……
Jul 24, 2024
小説/コミック8月7日『いつだって喫茶ドードーでひとやすみ。』 標野凪 8月8日『琴子は着物の夢を見る』 ほしおさなえ 9月17日『脳内チキンバースト!』 児島かつらBD8月28日『シネマ歌舞伎 刀剣乱舞 月刀剣縁桐』 9月25日『ミュージカル「刀剣乱舞」千子村正 蜻蛉切 双騎出陣ー万の華うつす鏡ー』 11月20日『舞台「刀剣乱舞」心伝 つけたり奇譚の走馬灯』
Jul 1, 2024
人の心の空虚に入り込むのか、人の業や欲や孤独が引き寄せるのか、この世の至る所に在りながら、殆どの人には見えず知らずのウツログサと、それを祓う為だけに在る男のいる物語。ウツログサは、その殆どが害のない…植物の妖怪のような…ものであるが、時に人や物に憑りつき、ただ在るだけだったり、寄り添ったり、喜ばせたり、浸食したり、吞み込んだりするらしい。ウツログサがその宿主にとって危険となった時、その地域担当の祓い師が現れたり、あるいは祓い師の在る場所に辿り着くらしい。ウツログサを祓うかどうかは、宿主の意思に委ねられる。ほしおさなえさんの新シリーズは、そんな不思議な物語。でも、ご自身が仰っている通り「ある意味ほかのシリーズものよりリアルかもしれません」という、自分の生活している片隅にも潜んでいるような気がしてしまう読後感だった。祓い師の笹目については、序章で触れられているだけで、本編の5つの物語はそれぞれの宿主たちが語り手となる。宿主たちのそれぞれの人生に、ふと憑りついてしまったウツログサは、それぞれの宿主に相応しい結末をもたらす事になる。それが「虚ろ」となる結末であっても、宿主の本能が無意識に選んだのかもしれず、あるいはウツログサに導かれたのかもしれず、その不思議は底知れない。さて、御多分に漏れず、私自身まずこの新シリーズのタイトルを知った時、「蟲師」っぽい?と思った。手にした表紙を見て、更に「蟲師」っぽい…と思った。この新シリーズを極簡単に説明するには、やはり「蟲師」っぽいと言ってしまう。だから、「蟲師」がお好きな方には、是非お薦めしたい。「蟲師」の物語世界は「鎖国を続けている日本」で、風景や暮らし方などが前時代的な描かれ方をしている。「祓い師笹目」は、高度経済成長期を経てバブル崩壊もしてコロナ禍も経験した、つまり我々の現代が舞台となっている。だから、シリーズが展開されていけば、更なる深淵を覗くかもしれないし、醜い業を突き付けられるかもしれないし、幸福なお伽噺にくるまれるかもしれない。そんな様々な想像が出来て、愉しみでならない。続きが読めますように。
Jun 24, 2024
小説/コミック6月5日『祓い師笹目とウツログサ』 ほしおさなえ 7月3日『眠れぬ夜のご褒美』 標野凪、冬森灯、他BD8月28日『シネマ歌舞伎 刀剣乱舞 月刀剣縁桐』 9月25日『ミュージカル「刀剣乱舞」千子村正 蜻蛉切 双騎出陣ー万の華うつす鏡ー』
Jun 1, 2024
京都の奥の、まるで隠れ里のような愛宕家へ呼ばれた兄弟。天狗の家が代々繋いできたものと、家族としての情と、無くなりかけているものと、残したい思いと。先走る拒絶感を乗り越えていく、柔軟な若さが瑞々しい4巻。有意が帰ろうとしなかった「家」の「当主」である「兄」という、ある程度想像がつく展開をして見せながら、実はそれぞれが言葉足らずであり、それぞれに思いやる兄と弟という様子を知る事が出来て、ほっとする。アメリカ育ちの現代っ子であるオンは、当然の事ながら反発をしまくるけれど、オンの「知りたい」意思は自分自身で見て体験する事をやめない。家を守ろうと努めるあまり、厳格で旧式な様子を見せる愛宕家当主だけれど、その内面は素直で素朴。弟と和解出来て、来年の約束も出来て、実は今回一番幸せな人。祭の夜、オンは初々しく舞い、基は炎を纏い穢れを祓う。天狗の末裔としてまたひとつ成長したオンに、一年の区切りが近付いてくる。さて、オンはどのような選択をするのか、次巻が楽しみ。
May 24, 2024
連句と出会った事から、人との繋がり、世界の広がり、更なる縁へ…と、主人公自身が変化していく物語の5巻目。前巻で参加した連句の大会での出会いが、更に広がっていく。若い集まりの連句に参加した事から、主人公は波風立たせずに生きてきた自分自身を顧みる事になる。若い集りが作る同人誌に誘われ、エッセイを寄稿する事になり、彼らがサークル参加した「文芸マーケット」に一般参加して、様々な刺激を受ける。「文芸マーケット」は、つまり「文芸フリマ」。実際に参加した事はないが、若い頃に出会っていたら一般参加していろいろな同人誌を買い込んでいただろうなぁと思う。コミケを始め様々なイベントに参加してきたから、作中での句集を作りイベントで販売する事のいろいろが想像出来る。苦労も侭ならない事も少なくはないけれど、一冊創り上げる喜びを知ると、それが継続の力になる。作中で、連句会の若手が中心となって進んでいく同人誌創りが、会にとっても一人一人にとっても楽しいものとなる事を願っている。「あたらしい人はあたらしい風を運んでくる」と、「変わっていくことが連句」と語られるが、これまでの4巻で、人々が集い、展開と変化をしながら繋がり、一つの作品となる連句は、独りでは生まれない事を教えられた。この5巻で、ひとつの出会いが新たな繫がりへと展開して、何かが芽吹き始めている。今後の物語が楽しみで待ち遠しい。
May 22, 2024
めがねさん姉さんと駒えみが表紙の26巻は、皆それぞれの今と将来を見つめるお話。年が明けて、「春のをどり」へ向けてお稽古が一層厳しくなっていく。そんな中、さりげない日常を過ごし、自分を掴み直すひとときの大切さを噛みしめる。それぞれが年を重ね、それぞれが成長と変化を見せる、一歩一歩前に向かって進んでいく幼馴染の三人。そして、めがねさん姉さんの、岐路。改めて自分自身を見つめ考え迷い、ごはんのお替りも出来なくなってしまうけど、可愛い生意気な妹、駒えみの悪態は、めがねさん姉さんが独りではない事を教える。駒千代さん姉さん、何て良い味わいのお姐さん。こういうベテランのお姐さんのお座敷を遊べるお客こそ、本物。めがねさん姉さんの決心がついて、晴れ晴れとした朝の駒えみリクエストのパンプディングの美味しさは格別。思い切り頬張るめがねさん姉さんを見る駒えみの表情に、こちらの胸も熱くなる。そして次巻は、いよいよ始まる「春のをどり」と、新たな展開の様子…
May 14, 2024
5巻は、原作の「はらぺこ飯」の始まり。加ノ屋の耐震工事の間、あわいの地で本宮の厨担当に料理を教える事になった秀尚。萌芽の館の子狐ちゃんたちは大喜び♪ところが、空間の裂け目から何者かが襲い掛かってきて、薄緋さまと子狐のすーちゃんが囚われてしまった!何と言っても今巻のスペシャルは、ちいさな薄緋さま♪襲ってきた餓鬼に生気を奪われ、すーちゃんを助ける為に消費が激しく、幼い姿になってしまったものの、隙をついてあわいの地へ帰還したのは、さすが日頃から冷静に状況を見ている薄緋さまだからこそ。ちいさい薄緋さま、とっても可愛い~♪いつもは表情が乏しいくらいにクールな薄緋さまだから、ちょっとした表情や仕草の破壊力ってば!原作を読んでいるから、餓鬼の存在を判っていはいたけれど、絵になった姿には、衝撃もあるし哀しさも感じるし…後半を読める日が待ち遠しい。それにつけても、原作の続きが読みたくて堪らない。赤ちゃんに戻ってしまったすーちゃんが、ようやく大きく育ってきたし、子狐たちの可愛い姿が、もっともっと読めて嬉しくなっただろうに…秀尚の作る美味しい料理が、たくさんたくさん読めてお腹が空いただろうに…加ノ屋に集う稲荷たちが、様々な魅力を発揮してわくわくしただろうに…そして、そして……
May 9, 2024
小説/コミック5月10日『舞子さんちのまかないさん(26)』 小山愛子 5月11日『言葉の園のお菓子番 未来への手紙』 ほしおさなえ 5月22日『天狗の台所(4)』 田中相 6月5日『祓い師笹目とウツログサ』 ほしおさなえ BD9月25日『ミュージカル「刀剣乱舞」千子村正 蜻蛉切 双騎出陣ー万の華うつす鏡ー』
May 1, 2024
前巻で、大学進学と将来の目標を定めた茜だったが、今巻は、既に大学4年生で、10ヶ月の英国留学から帰宅する場面から始まる。この物語が「家」の物語である事を、改めて印象付ける。空白の10ヶ月は、多少のギクシャクを生じさせたものの、それはお互いの「今」を意識させる事にもなった。10ヶ月の経験は、茜の視野を広げ心を深め、芯の強さを確かなものにしつつある。最早、保護されるだけの存在ではなくなっている。それは、妹のすみれにも言える事で、この姉妹のしなやかな成長ぶりが清々しい。姉妹の成長に伴うように、ようやく青年たちの心も定まってきた様子。一人は決断して、彼らの「家」を育むべく歩み始めた。それは同時に、展開が早まっている事も感じさせ、急がずゆっくりで良いんだよ…とは、年寄り読者の感慨。さて、どう「家」は変化していくのか、今後も楽しみ。
Apr 23, 2024
20巻は、「獣狩り篇」のはじまり。長かった「カレッジ篇」が終わって、チセも少しはゆっくり出来るかと思いきや、作者さんがあとがきで仰るように、あちらこちらに物語の仕込みがされていて、読者側も気が抜けない。お客様がいっぱいで、シルキーが嬉しそうなのは何より。本当はもう暫く、こんなカンジを気楽に読んでいたいのにな…な気分ではあるけど、物語はぞわぞわと侵食してくる。次巻は10月。断片集は、アニメの円盤に特典封入されていた短編を、まとめたもの。改めて一冊にしてくれてありがたい。ドラマCDは、「入学前夜」…というより、「魔法使いがやってくる前夜」の、ソワソワとザワザワな15分弱。アニメを見ていたから、声だけでも誰か判ったのにはホッとしたけど、ジャケットなり封入なりでキャストやスタッフの記述は欲しい。アイルランドの物語の2巻。1巻から1年以上経ってるので、すっかり物語を忘れてた…1巻から通して読んで、いよいよ動き出した感。あちらの20巻に登場した御仁が、こちらにも登場。これから更に面白くなっていく期待感満載なのだけど、次巻は案の定1年後。待ち遠しい事!
Apr 17, 2024
小説/コミック4月9日『桜の木が見守るキャフェ』 標野凪 4月12日『魔法使いの嫁(20)』 ヤマザキコレ 『魔法使いの嫁 断片集(1)』 ヤマザキコレ 『ゴースト アンド ウィッチ(2)』 ヤマザキコレ 4月30日『こぎつね、わらわら 稲荷神のまかない飯 いただきますっ!』 西実さく 5月10日『舞子さんちのまかないさん(26)』 小山愛子 5月11日『言葉の園のお菓子番 未来への手紙』 ほしおさなえ 6月5日『祓い師笹目とウツログサ』 ほしおさなえ BD9月25日『ミュージカル「刀剣乱舞」千子村正 蜻蛉切 双騎出陣ー万の華うつす鏡ー』
Apr 1, 2024
わんこと暮らした事があるものにとって、らくださんの作品は共感しかないのだけど、この作品は一緒に旅が出来る楽しさを味わわせてくれた。実際に、らくださん夫妻と愛犬ライくんは、キャンピングカーで日常的に出掛け、様々な場所へ旅をしているから、経験に基づいた描写や、いろいろな工夫など、読んでいて興味深く楽しかった。あちらこちらへの旅の様子や、わんこと出掛ける事の楽しさや気付きや、もっともっと読んでみたかったなぁ
Mar 31, 2024
3月20日、『ヤマトタケル』新橋演舞場公演は千穐楽となった。2月4日の初日から、それはそれは幸福だった2ヶ月が終わってしまった。先週とはもう違う顔を魅せる團子に、また驚かされる。目覚ましい変化に目を見張り続け、その都度心揺さぶられたこの日々は、一観客にとっても特別な、「今」しか得られない経験だった。今回初参加の成駒屋のご兄弟にとっても、このロングランが良い御経験となるよう願ってやまない。タケヒコという役は、この物語で最も魅力的と言って良い。何といっても、中村歌六丈のタケヒコは素晴らしく、毎回見蕩れたものだった。配役発表があった時、福之助のタケヒコが観られる事に期待しかなかったが、実際、あの印象的な出の場面から、素敵なタケヒコだった。姿の良さ、声の良さ、そしてあの涙…何と心暖かなタケヒコだったろう。このところ、魅力的な「悪い顔」を見せてくれていた歌之助だったから、熊襲弟タケルは打ってつけだと、やはり期待しかなかった。今回、錦之助丈が驚愕の若々しさで魅せつけた弟タケルだったが、歌之助の弟タケルのヤンチャな暴れん坊ぶりもまた嬉しいものだった。そして、ヘタルベの愛らしい事。あの最後の、全力で駆ける姿に、どれほどの観客が心掴まれた事か。あのシーンの舞台写真、もちろん大喜びで購入した。今回、初参加が多く若返った座組だったから、これまで経験を積み重ねた面々の、存在感の大きさもまた際立った。倭姫は、初演の澤村宗十郎丈の、あのふんわりと温かくスケールの大きな姿が目に焼き付いている。その役を若くして受け継いだ笑三郎が、とうとう実年齢的にも加味するものがあり、この倭姫在ってこそという、物語の為にも大切な存在になっている。今回、二幕が予言と呪いの色味を濃くしており、改めて感じるものが多かった。熊襲兄タケルのおおらかさと、足元をすくわれる末路。伊吹山の山神の尊厳と、古の遺物である現実。猿弥は彼らを存分に印象付け、この物語の意味を深める。殊に山神の、姥神に呼び掛ける様に心根の慈愛を感じ、その最期が哀しくてならなかった。猿弥の身体能力の高さが発揮される、タケルとの立ち回りは圧巻だった。全身でぶつかっていく團子にとっても、嬉しいものではなかったろうか。蝦夷のヤイレポを演じた猿四郎は、殺陣師としてなくてはならぬ存在。三代目はやりたかったものの、結局タケヒコ一人に任せた焼津の大旗を、今回初めてタケルも振るった。当初、もっと大きな旗を殺陣師は望んだ…とか?鉄と米の意味をタケルに叩き付ける、青虎の凛とした声。颯爽とした佇まいといい、登場場面は少ないものの、存在を焼き付ける。猿弥と並び演出補も担い、上演に至るまでの重責、そして幕が開いた後に続いた代役の調整など、心休まる時がなかったのではないか。これまで、三代目の部屋子の末っ子的な面を、表では見せてきたように思うけれど、演出家としても手腕を発揮しつつあり、存在感がますます増している。お父様であるご先代から引き継いだ皇后と姥神の門之助は、1,000回を超えた上演の皆勤賞の一人。幕開きの皇后の堂々たる美しさに目を奪われ、伊吹山の姥神の愛嬌も魅力的だった。外部からご参加の嘉島典俊さんは、三役を担われた。その巧みさ故に初参加とは思えない馴染み方で、また助けて頂いた。今回新たな演出となった、三幕の幕外での大臣と朝臣のやり取りは、これまでの高圧的な大臣の一人芝居より良かったと思う。出演者お一人お一人に印象深い場面があり、書き連ねたい思いがまだまだある。ご自身はみやず姫を演じた笑野は、ワカタケルとしてご子息が初お目見えとなった。ダブルキャストでみやず姫を演じた三四助は、打てば響く愛らしい姫だった。熊襲の兵士たち女たちの宴の楽しさ、伊吹山の鬼たちの憎めなさ、まだまだ尽きない。そして、今回は役につかず裏に徹した猿紫も、忘れてはならない。この舞台を支えたお一人お一人に、感謝しかない。最後に、大きく翼を広げ飛び立つタケルをその真下から見上げた時、その羽の衣擦れの音が聞こえた。とうとう天高く羽ばたいて行ってしまうのだな…と、心が震えたが、でも、その行方は終わりではなく、始まりなのだ。どうか無事に、晴れ晴れと翔び続けるよう祈ってやまない。万雷の拍手に再び幕が上がり、カーテンコールに慣れない團子の様子に素顔が垣間見れ、一瞬にして劇場中が和んだ。鳴り止まぬ観客の要望で、更に幕が上がり、そこには米吉がただ一人在った。純白の神々しいまでの美しさで、促すように指差したその先、花道から團子が現れた。まっすぐに七三まで来て一礼して、舞台中央に来て米吉に一礼。まだ二十歳の、主役を担い舞台中央で奮闘した若者の、率直な姿だった。そして、米吉から歩み寄るようにして、ヤマトタケルと兄橘姫が寄り添った。離れ離れだったふたりが、ようやく再会出来た祝福の中、幕は下りた。
Mar 21, 2024
初演以来、通算上演回数が1,000回を超えた。三代目に始まり、代々の役者が引き継ぎ繋げたこの芝居を、今、七人目である團子が演じている。999回目と、1004回目を、拝見。初日以来に観た團子は、その出から顔が違っていて、目を見張った。5日後に観た際は、また更に変化していて、二十歳の可能性の無限な事を思った。観る毎に、演じる毎に、顔も形も綺麗になっていくし、その芝居もどんどん変わる。見逃したくない思いに駆られてしまった。もちろん、課題は多々様々にある。それを一番解っているのは本人であり、周囲は承知して見守り手を差し伸べる。一門の結束はまた、團子だけの為ではない。長くこの御一門を観てきた一観客にとっても思う事は多く、更に観続けねばと決意する。主役の芝居が変化すれば、それを受ける側の芝居もまた変わる。橘の姉妹を演ずる中村米吉の芝居が、更に細やかに、情の変化を魅せる。初演のやり方に戻り、姉妹を早替りで演る米吉の、演じ分けが見事。「今」を担う弟姫と、「未来」を担う兄姫の、それぞれの在りように感動する。個人的に、これまで観てきた走水での弟姫に、ちょっぴり引っかかるものを感じていた。良し悪しではなく、好き嫌いでもなく、でも、何か極僅かに感じてしまうものがあった。米吉の、命懸けの恋をする弟姫を観て、ようやく理解出来たように思う。いつの頃からだったか、米吉の弟姫を観たいと、夢見てきた。それは同時に、ありえない夢でもあった…それまでの状況では。ところが叶ってしまって、自分の奥底で願っていた橘の姉妹を、そんな想像など及ばない以上の兄姫と弟姫を観る事が出来て、正に夢のようだ。今回初演のやり方を様々に感じ、物語の根の素朴さが浮かび上がったような気がする。たとえば、大碓命と小碓命、帝と倭姫、橘の姉妹、熊襲の兄弟、蝦夷の兄弟。たとえば、ヤマトタケルと、兄姫と、弟姫と、みやず姫と。それぞれの関係や、情や想いの在り方などを思いつつ観た。また、中村福之助、歌之助ご兄弟だからこそ、おそらく加えられただろう1場面から、ヤマトタケルと、タケヒコと、ヘタルベの関係について、改めて感じるものがあった。ヤマトタケルとは、何と寂しいものかと思う。初演の、三代目の宙乗りには、志半ばで逝かねばならぬほろ苦いものがあった。再演を重ねるごとに、そこに様々な意志が馳せられていった。先日観た隼人の宙乗りは、切なく慈しみに満ちていた。999回目に観た團子の宙乗りは、微笑みがあり、どこか明るかった。その若さには、絶望は無いのかもしれない。熊襲の兄弟、蝦夷の兄弟への言葉に、ここから先へ馳せる思いを感じた。1,004回目に観た時には、更に変化があり、積み重ねつつあるものを感じた。まだまだ可能性の翼を広げて翔んでいく姿を、追って行きたくて堪らない。
Mar 15, 2024
小説/コミック3月18日『京都岡崎、月白さんとこ 茜さすきみと、「ただいま」の空』 相川真 3月27日『ぼくもいっしょ!(3)』 らくだ 4月9日『桜の木が見守るキャフェ』 標野凪 4月30日『こぎつね、わらわら 稲荷神のまかない飯 いただきますっ!』 西実さく BD3月20日『舞台「刀剣乱舞」 山姥切国広 単独行ー日本刀史ー』 9月25日『ミュージカル「刀剣乱舞」千子村正 蜻蛉切 双騎出陣ー万の華うつす鏡ー』
Mar 1, 2024
2月25日昼の部、中村隼人のヤマトタケル最終日を拝見。この日で隼人のヤマトタケルを観るのは、三度目。回を重ねるごとに、大きく、細やかに、強く、情の篭った芝居を魅せてくれ、殊に千穐楽は更に美しく、哀しく、切なさを纏っていた。一幕ごとに積み重ねたヤマトタケルの生き様が、ラストの台詞を感慨深くする。想いや慈しみや万感込めて言い放たれた台詞の、何と優しい事か。そして大きく翼を広げて舞い上がり、あまねく眼差しを投げかけ、旅立った。隼人と中村錦之助丈が繰り広げるヤマトタケルと熊襲弟タケルの闘いを、横内謙介氏は「親子の獅子の情熱的な格闘」と書かれた。錦之助丈の弟タケルの、回を重ねるごと若々しく、何と溌溂としている事か。あの初演時そのままのようで、懐かしくも新鮮にも感じた。錦之助丈は、この後3月千穐楽までご出演下さる。有難い。本来ならば、隼人の今回のヤマトタケル役は無かったのではないか。3月南座の花形歌舞伎が、隼人にとって重要な舞台であるのだから。幻となったステージアラウンドのキャスティングがあったから、完全に無かった話でもないのかもしれないけれど、また澤瀉は助けてもらったのだ。このひと月、ヤマトタケルの姿を團子に見せてくれた事、本当に有り難い。2月26日、返り初日。ここから團子の更なるロングランが始まる。でも、團子は独りではない。思うまま翼を広げて欲しいと願う。
Feb 26, 2024
これまで二人だった表紙が、四人になった5巻。自分は自分でいいという事、自分が選べるんだという事を、心に抱き留める。それぞれの想いが二人の想いとなった、野本さんと春日さん。同居も始まり、野本さんの気持ちを尊重しながら、これからは「ふたりで」と提案する春日さん。ゆっくりと二人の幸せを積み重ねていくのだなぁ…南雲さんは、受け入れられ、受け止められ、更なる一歩。自分が理解される事を知って、ますます自由になりますように。矢子さん、素敵だなぁ…周囲の心を解放して、背中を押せて、自らの事も省みられる柔軟さ。ここに至るまで矢子さんも、様々な経験を乗り越えてきたのだろう。改めて1巻から5巻まで通して読んで、これはこの4人だけの物語でなくて、数多の人の物語でもあって、皆が幸せでありますように…と思う。ドラマの方も丁寧に作られていて、毎日の楽しみ。
Feb 21, 2024
誘われて、3月3日まで展示中の三日月宗近に会いに行く。展示室に入ると、意外なほど端近に展示されていて、ちょっと吃驚(列形成の為かも?)。連休中とはいえ、早めの入館だったせいか人も少なめだったので、気持ち的にも急く事なく拝見。つくづく、美しい事を実感。考古展示室が楽しくて、縄文から弥生時代の出土品に、ワクワク。ちょうど『ヤマトタケル』を観た後だったせいもあって、銅鐸や銅矛、鉄剣や矢じりなど、見入ってしまった。おそらく10数年ぶりのトーハクは、いろいろ整備されていて、全体的にすっきりとして鑑賞しやすくなった印象。今回は常設展示の1階部分だけゆっくり観て、気持ち的にも体力的にも十分堪能。とっても楽しかった。
Feb 12, 2024
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