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水木しげる生誕100年記念として制作された映画作品です。鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎(ゲ謎)は、目玉だけになる前の鬼太郎の父親の物語。行方不明となった妻の岩子を探してやってきた哭倉村(なぐらむら)での出来事が綴られています。職場の友人に勧められて見たんですが、水木しげるの大ファンの大将はコミックをどっさり集めていてこれもチェック済みとのこと。ホラー映画が嫌いな私には向かないんじゃないかと言っていました。登場する鬼太郎やネコ娘が、昔と比べて随分洗練された姿になっています。妖怪や幽霊は歳をとらないんでしょうね。現在は廃村となった哭倉村、物語は70年前、昭和31年へと遡ります。政財界を牛耳っていた龍賀一族の当主、龍賀時貞(りゅうが ときさだ)が亡くなります。水木は東京で血液銀行に勤めるサラリーマンで、一族の経営する製薬会社・龍賀製薬の担当者でした。昔は献血なんてなくて、血は売買するものだったんですね。後継者になると予想される龍賀製薬の社長とはコネがあったので、出世したい水木は一族が暮らす哭倉村へと向かいました。電車じゃなくて蒸気機関車です。クーラーもないし、車内禁煙でもない時代。まだ戦争の影を引きずっている人が多く、水木自身も玉砕特攻をかろうじて生き延びた辛い戦争体験を背負っています。穏やかな田園風景とは裏腹、哭倉村は閉鎖的な村でした。亡くなった当主の孫にあたる若く美しい娘・龍賀沙代(りゅうが さよ)が登場した時、金田一耕助シリーズの『犬神家の一族』を思い出しましたよ。後で知ったんですが、企画の段階で『八つ墓村』の話題が出てこの映画の方向性が決まったそうです。龍賀一族が勢揃いした場で発表された遺言は、長男の時麿(ときまろ)が当主となると言うものでした。水木が次期当主に期待していた社長は長女の婿養子で、一族の中での地位は低かったようです。時麿は引きこもりの病弱な男で、莫大な財産をどうこうできる気量に恵まれませんでしたので、兄弟姉妹からは非難轟々でした。翌朝、時麿の惨殺死体が発見されます。犯人として捕らえたのは、村にたまたま来ていた鬼太郎の父でした。すぐに処刑されそうになった彼を助けた水木は、監視役を命じられます。名前を言わないので、水木は便宜的にゲゲ郎というあだ名をつけました。凄惨な殺人事件はその後も続きます。水木は出世のために葬式に来ただけではなく、一族が莫大な財産を築いた血液製剤Mについて調べると言う会社からの密命も帯びていました。どうも覚醒剤の一種らしく、摂取すると24時間働けるので戦時中、多く使用されたようです。ゲゲ郎と水木の関係は、犯人と監視役から友人へと変わっていきました。行方不明の妻は身重らしいです。鬼太郎のお父さんは、奥さんの岩子さんをすごく愛してたんですね。こなきジジイと砂かけばばあとの間にも、むかしロマンスが生まれてたっけ。鬼滅にしろ呪術廻戦にしろ、最近のアニメは血みどろのR12が多いし、歴史ドラマでドロドロの人間関係には免疫ができていますので、ホラーは苦手ですけど大丈夫でした。大将ほど大好きってわけじゃありませんが、水木しげるさんの出身地にある水木しげるロードにも行ったことがありますし、妖怪話も嫌いじゃありません。色んな可愛い妖怪たちも出てきます。ねずみ男の子供時代?みたいなのも登場しますよ。公式サイトはこちらです。
2024/05/16
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自分の部屋がどこか別世界に通じていて、心から歓迎してくれる友達が待っている。そんな現実逃避できる場所があったらいいでしょうね。誰だって逃げ場は必要です。特に、いじめや家庭内に問題を抱える子どもたちにとっては。中学生の安西こころは、いじめが原因で不登校になり、フリースクールの北島先生が気にかけてくれますが引き籠もり生活を続けていました。ある日、部屋の鏡が光り出して吸い込まれ、絶海の孤城に迷い込みます。狼の面をつけた少女が、自分をオオカミさまと呼べといい、6人の中学生リオン、フウカ、スバル、マサムネ、ウレシノ、アキが彼女を待っていました。ここで達成すべきことは一つ。城に隠された鍵を見つけることです。それは願いの部屋を開ける鍵で、一つだけどんな願いでも叶えられますが一人だけに限られ、誰かが願いを叶えると全員の記憶が消えるといいます。この城に来られるのは1年間で、朝9時から午後5時までなら鏡を通じて出入り自由でした。もし午後5時を超えて城に1人でも残っていると、連帯責任でその日城にいたメンバーは狼に喰われるとになっています。鍵が見つからなければ、記憶はそのまま残るということでしょうね。七人は熱心に鍵を探すでもなく、来たいときに城に来て、次第に友達関係を築いていきました。あるきっかけで、全員が同じ中学の生徒だということが分かります。マサムネの提案で三学期の始業式の日に、みんなで学校で集まる約束をしました。全員が約束を守ったにも関わらず、誰も他のメンバーに会えず、パラレルワールドなのかという話になりますが、オオカミサマは違うと言います。果たしてこの城は何なのか、オオカミサマの正体は、そして願いの鍵は見つけられるのか。この話、子ども向けのファンタジーかと割と甘く見ていたんですが、実に深い、よく考えられた物語でした。最後の謎解きに至るまで、伏線がたくさん用意されているんです。城のあちこちにあるバツ印の意味、オルゴールの曲、みんなが学校で出会えなかった理由。北島先生の存在も、キーポイントです。『かがみの孤城』は、辻村深月による日本の小説で、2018年には本屋大賞も受賞しています。2022年公開の劇場アニメ版を見ました。海外でも上映され、数々の賞を受賞する名作です。金の国水の国を見た人におすすめという繋がりで見たんですが、思った以上に素敵な話でしたね。おすすめです。
2024/05/13
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ゴジラ生誕70周年記念作品だそうです。子供の頃はよく映画館に怪獣映画を見に行っていたので、今年、山崎監督がアカデミー賞視覚効果賞を受賞したこの作品にも興味がありました。カラー映像があることを知らずに白黒版ゴジラ-1.0/C(マイナスカラー)を見たんです。シンドラーのリストもそうでしたが、白黒効果で迫力が増した感じ。時代の雰囲気がすごくよく現れていて、映画の世界に没入できました。昔の怪獣映画は主役が子供でしたが、この映画はシリアスな大人向けの映画です。戦後間もない東京の、ようやく復興の芽が出始めた時期に、傷跡をさらに深く抉るように現れる大怪獣ゴジラ。ゴジラは超回復力が備わっていて、ダメージを受けてもすぐに再生するんですよ。核実験から生まれたという話をなんとなく覚えていましたが、この映画では南方の島に伝わる伝説として、すでに核より前から存在していたとされていました。敷島浩一は特攻から逃げた男です。零戦が故障したと言って大戸島の守備隊基地に着陸しますが、その夜、島の伝説・ゴジラに遭遇します。目の前で基地が破壊され、整備兵たちが襲われて行く中、恐怖で何もできなかった敷島。この夜のことは、心に深い傷となって残りました。東京に戻ると、家は焼け落ち両親は亡くなっていました。跡地に残った小屋でかろうじて雨露をしのぎ食料を調達して命を繋いでいた彼のところへ、同じように家族を失い誰かに託された赤ん坊を抱えた典子が転がり込んでくるんです。三人の変な共同生活が始まりました。子供たちを戦争で失った隣の澄子も、事情を知って子守りなどの手助けをしてくれます。敷島は米軍が海中に残した機雷を撤去する、金にはなるが危険な仕事を得ます。小さな木造の漁船を改造した新生丸で、艇長と博士と小僧の四人で作業を行なって、次第に生活も軌道に乗っていきました。ゴジラがなかなか出てこないんですよ。ところが日本から遠いところで大変なことが起こっていたんですね。ビキニ環礁で行われた核実験でゴジラが被爆、超回復力で核を帯びたまま巨大化します。そしてなぜか、日本に向かってくるんです。そこからの攻防は見応えがありますので、是非、なるべく大画面でご覧になって頂きたいと思います。視覚効果で世界一になっただけのことはあります。これまでの怪獣映画に比べると、すごくリアルに感じました。戦後間もない日本の風景も、非常によく再現されています。キャラ登場に合わせた音楽ってあるじゃないですか。ダースベイダーが出てきたらあのメロディーとか。この映画はなかなか耳に馴染むあのボレロが流れないので、ゴジラミュージックが流れた時は、『ついにキター!!』とテンションバク上がりでした。『ゴジラ-1.0』(ゴジラ マイナスワン)は、2023年公開の日本映画です。カラー版は/Cが付いていません。山崎貴監督によるVFXも脚本も見事です。タイトルのマイナスワンは、戦後でゼロになった日本へ、追い打ちをかけるように現れたゴジラがこの国を負(マイナス)に叩き落とすという意味があるそうです。製作費が通常のアメリカ映画に比べてかなりの低予算だったことも話題になっていました。ゴジラの超再生能力、鬼滅の鬼以上です。ゴジラって不死身でしたっけ?これまで何十作品も作られていたのは、そのせいだったんでしょうか。知りませんでした。カラー版も見てみたいですね。
2024/05/07
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貧しいワシントン大学ボート部の若者たちが、ヒトラーのいたベルリンオリンピックに挑み金メダルを獲得。アメリカ人の好きそうな映画だなあと思ったら、なんと実話だそうです。結果は分かってるし、展開もなんとなく想像できましたが、見ると感動します。大恐慌時代のアメリカ。ワシントン大学に通って工学を学ぶジョー・ランツはその日の食事にも事欠くほどの極貧生活を送っていました。母親を幼くしてなくし、14歳で父親にも捨てられて、ボロい車をねぐらとしてアルバイトをしながら学校に通っています。学友たちもみんなブルーカラーの家庭で育った者ばかり。新しいバイトを探していたジョーは、ある日、朗報を耳にします。『ボート部に入れば寮に住めて、金ももらえるらしい。』早速応募してみたものの希望者は溢れるほど多く、強烈に狭き門でした。選抜試験はひたすら肉体を酷使する日々で、脱落者が多く出る中、ジョーは生活のために必死に食らいついていきます。選ばれた8人の中に、ジョーも入っていました。全員ボートの素人ですが、肉体労働で鍛えてきた身体は素晴らしく、練習を重ねるうちにスタメンを凌ぐほどのタイムを出すようになります。オリンピック代表選考を兼ねた全米大学選手権では裕福な強豪校を抑えて優勝。1936年開催のベルリンオリンピックにアメリカ代表で出場することになります。ニュースは新聞やラジオで全米に知られることとなりますが、色々問題が起こるんですよ。ジョーの生き別れの父親が登場して、肝心な場面で動揺してメンバーと息が合わなくなったり。金の問題とか、政治的な問題とか、病気とか、世界一への道は楽じゃありませんね。ボーイズ・イン・ザ・ボート(原題:The Boys in the Boat)は、2023年のアメリカ映画です。ジョージ・クルーニーが監督したスポ根もの。ハングリー精神から生まれた底力、ラストスパートは手に汗握ります。感動この一本 スポーツ映画
2024/04/19
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映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作『指輪物語』を書いたJ・R・R・トールキンの若い頃の伝記映画を見ました。かなり昔の人なんだろうと思っていたんですが、亡くなったのは1973年ということで、思ったよりずっと最近の人なんですね。指輪物語は、大学教授がファンタジーに必要な要素を全部詰め込んで書いた作品と友人から聞いて、本を借りて読んだんですが、最初の方が全然面白くなくて、このまま最後までこの調子だったらどうしようと思った記憶があります。J・R・R・トールキンは12歳で孤児となります。モーガン神父が仲介して裕福な老婦人の家で弟と共に暮らすことになり、名門キング・エドワード校に入学しました。名家の子息しか入れないようなバーミンガムにある男子校です。在学中に、ロブ・キルター・ギルソン、ジェフリー・バッチ・スミス、クリストファー・ワイズマンという生涯の友に出会います。4人は学校のそばのバローズという店でお茶を飲みながら『芸術の力で世界を変えよう』と夢を語り合いました。店の名前にちなんで、T.C.B.S.(The Tea Club, Barrovian Society)という秘密結社を結成します。ロブは音楽で、ジェフリーは詩で、クリストファーは絵画で、そしてトールキンは…。トールキンが世話になっていた家に、3つ年上のエディス・ブラットがいました。彼女も孤児で、老婦人のお気に入りです。二人は心を通わせますが、モーガン神父に21歳になるまで交際を禁じられていたトールキンはその言いつけを守ります。エディスを喜ばせるために一緒にワーグナーのオペラに行くんですよ。席がなくて楽屋裏の道具置き場で聞こえてくる音楽を二人で楽しむんです。演目はニーベルングの指輪、指輪物語に通じる北欧神話が元になっているオペラです。私もワーグナーが大好きですので、ラインの黄金の前奏曲が聞こえてきた時は思わず身を乗り出しましたよ。4人は、オックスフォードとケンブリッジに2人ずつ分かれて進学しました。トールキンはジェフリーと共にオックスフォードで学び、言語学で頭角を表していきます。しかし第一次世界大戦が勃発。仲間たちと一緒に従軍しますが、状況は悲惨でした。トールキンは辛うじて生還しますが、親友たちは戦死します。意識を取り戻した時、病院で彼に付き添ってくれていたのはエディス・ブラットでした。『トールキン 旅のはじまり』(原題:Tolkien)は、2019年のアメリカ映画です。監督はドメ・カルコスキ、主演はニコラス・ホルト。幼い頃に母親が語ってくれた黄金を守るドラゴンの話、オペラの北欧神話、エルフ語の創作や戦争体験、『ロード・オブ・ザ・リング』の原点を見た気がしました。オススメです。指輪物語も、面白くないのは最初だけです。
2024/04/16
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元殺人犯と言うと、ちょっと近づき難いような危険なイメージを持ってしまいます。人生のほとんどを刑務所で過ごして中年を迎え、出所して環境に馴染んでいくのがどれだけ大変なことか。佐木隆三の長編小説『身分帳』を原作とした日本映画で、実在の人物をモデルにした作品だそうです。旭川刑務所で刑期を終え出所した三上正夫(役所広司)は、身元引受人となる東京の弁護士夫妻に会いに行きます。獄中では食べたことのない美味しい家庭料理を振る舞われ、これまで何度も繰り返してきた入出獄を今度こそ繰り返すまいと心に誓います。しかし三上は短気な男でした。ちょっとした理不尽にカッとなり、声を荒げ、手を出してしまいます。仕事にもなかなかありつけず、車の免許も失効していて再試験も難航します。そんな三上にテレビ出演の話が舞い込みました。元殺人犯が社会復帰し、生き別れた母親と再会するドキュメンタリー番組です。三上は母親を探してもらえるならと取材を受けることにしました。取材を担当する津乃田は、身分帳と書かれた三上のノートを受け取ります。彼の生い立ちや犯罪歴、受刑歴などが事細かに記されていて、それは津乃田の想像を超える壮絶な人生でした。カタギになるのは本当に辛いことでした。周囲からは特別な目を向けられ、教習所に通い続ける金もなく、生活保護を受けながらの職探し。安アパートに一緒に暮らす住人とのトラブル。ついに彼はそこから逃げ出し、古巣の兄弟分を頼ってしまいます。しかしそこにも警察の手が伸びて…。『すばらしき世界』は、2020年の日本映画です。監督は西川美和、第56回シカゴ国際映画祭の観客賞を受賞しています。主演の役所広司は、同映画祭のインターナショナルコンペティション部門でベストパフォーマンス賞を受賞しました。素晴らしい物語で、お勧めできるとてもいい映画なんですが、見終わった後どっと疲れます。主人公が背負っている人生の重さがのしかかってくるようでした。
2024/04/08
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暗記ものの試験勉強は、前日徹夜しないでちゃんと寝たほうが記憶が定着すると聞いたことがあります。心理学でレミニセンスというと、学習してから次第に失われていく記憶とは逆に、しばらく時間が経ってからの方が鮮明に思い出すことができる現象だそうです。寝てる間に記憶が整理されて取り出しやすくなるからなのでしょうか。今日ご紹介するレミニセンスは、記憶にまつわる近未来のSFものです。マイアミは海面が上昇してベニスのような海上都市になっていました。太陽が出ている間は気温が高すぎて暮らしにくいので、人々は昼夜が逆転した夜型の生活を送っています。無口な退役軍人のニック・バニスター(ヒュー・ジャックマン)は、装置を使って客の希望する記憶を3次元的に追体験させる法律スレスレのような仕事を生業としていました。夫と出会った頃の思い出を何度も繰り返す老婆や、歩いていた頃の日々に戻りたい戦争で足を失った男。楽しかった過去に戻りたい人たちが主な顧客です。ニックはその仕事をワッツという相棒と2人で行っていました。ある日、メイ(レベッカ・ファーガソン)という名の絶世の美女が店を訪ねてきます。無くした鍵の場所を思い出したいと、最近の記憶の追体験を依頼してきました。メイが店を出て行った後で、ニックは彼女が忘れたイヤリングを発見します。メイの働く店を探し、彼女がステージで歌う曲に運命的なものを感じたニックはたちまち恋に落ちてしまいます。仕事をワッツに任せてメイにのめり込んでいくニック。ニックのことが好きだったワッツは面白くありません。しかし恋はあっさり終わりました。ある日突然メイがいなくなってしまうんです。ニックは懸命に探しますが見つからず、彼女との思い出にすがってマシンに依存するようになりました。そんなニックの元に、検察官エイブリーが捜査協力を依頼してきます。昏睡状態の容疑者の記憶からある男の情報を得たいとのこと。麻薬組織に絡む捜査なんですが、なんと記憶の中にメイが登場するんです。メイって、本当は何者?ニックに近づいてきたのは偶然?『レミニセンス』(原題:Reminiscence)は、2021年のアメリカ映画です。リサ・ジョイの監督デビュー作で、脚本も務めています。記憶を掘り起こして追体験できる装置があったら、依存症になる人が続出しそうな気がします。辛い現実より楽しかった過去へ戻りたい、たとえ夢でも。すごいのは追体験が本人だけでなく他人にも立体的に見えてしまうことです。これがあったら犯罪者も嘘つけなくなりますね。
2024/03/29
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アガサ・クリスティの推理小説『オリエント急行の殺人』を原作とした映画のリメイク版です。1974年に制作された第一作目も見た記憶があり、原作も読んでいましたので犯人も結末も知ってて見るサスペンスってどんなもんかなと思いましたが、キャストが豪華で機関車の映像も綺麗だったので楽しめました。世界一の私立探偵エルキュール・ポアロはエルサレムで登場します。犯人の行動の先の先を読んで事件解決、彼の敏腕ぶりをまず軽く紹介です。エルキュール・ポアロ役はケネス・ブラナーで、この方が監督も務めています。ヒゲがやけに大きかったですね。寝るときは形を崩さないためなのか、ヒゲマスクしてました。ポアロが乗車してたオリエント急行の車内で、殺人事件が発生するんです。被害者はエドワード・ラチェットという大富豪で、前日にポワロに身辺警護を依頼してきた人でした。ポアロはラチェットの人柄に好感を持てずに依頼を断ったんです。ラチェット役はジョニー・デップでした。滅多刺しで殺されてしまうので出番少ないですが、印象深い役所でした。オリエント急行はイスタンブールからイギリスまで行くヨーロッパ横断鉄道で、豪華な客車や食堂車も完備されている蒸気機関車です。乗客はハンガリーの伯爵夫妻やロシアの公爵夫人、アメリカの未亡人、元軍人の医者、大学教授、宣教師や家庭教師などで、ポアロが聞き込み調査を実施したところ、乗客乗員の全員にアリバイがあることが判明します。大学教授はウィレム・デフォー、宣教師はペネロペ・クルス、未亡人はミシェル・ファイファー、公爵夫人はジュディ・デンチ、みんな主役を張れるような豪華俳優陣でした。列車は雪に阻まれて山間部に数日足止めされるんですが、その間にポアロの捜査が行われて真相が明らかになるという運びです。ポアロの最後の謎解きのシーンは、ダビンチの最後の晩餐の絵画を彷彿とさせます。『ナイルで殺人事件が発生しました。』と言って終わるので、次回作はナイル殺人事件かなと、アガサ・ファンを期待させる終わり方でした。『オリエント急行殺人事件』(原題: Murder on the Orient Express)は、2017年のアメリカ映画です。原作が書かれた1930年代の時代背景が美しく描かれていました。何より列車が雪山を縫って走っていく様が美しいので、電車好きの方は是非ご覧になってください。フランス国鉄SNCFが、2024年のパリ五輪に合わせてオリエント急行を復活させるそうです。楽しみですね。いつか乗ってみたい...。
2024/03/18
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今から15年ほど前、ギリシャの財政赤字がニュースになっていました。ギリシャ危機、そんなのあったっけなあという感じですね。当時のギリシャは、労働者の4人に一人が公務員で、年金も優遇されていたことなどが影響して財政破綻を起こしかけていました。IMFやEUが金融支援をする条件として、ギリシャに増税や年金・公務員改革などを求めたことで不況に陥ったんです。今日ご紹介する映画の背景には、多分このギリシャ危機があったんじゃないかと思いました。主人公は、アテネで高級紳士服店を父と共に営んできたニコスです。開業以来36年、お得意様も次第に高齢化して去り、不況下で一日店番をしていても客は全く来ません。銀行から店の差し押さえ通知が届き、父はショックを受けて倒れてしまいました。なんとか収入を得たいニコスは、内気な性格ながら一念発起。移動式の屋台でスーツを売ることを思いつきます。しかし値段の高いオーダーメイドのスーツは、道端でも全く売れませんでした。困り果てたニコスは、ある女性から声をかけられます。『ウェディングドレスは作れる?』紳士服が仕立てられる人ならドレスだって作れると思ったんでしょうね。でも女性服のことは全くわからないニコス、隣に住む母娘オルガとヴィクトリアに協力を仰ぐんです。普段着も作るようになり、婦人服の出張販売、そして一点もののオーダーメイドのウェディングドレスは評判になります。ニコスとオルガは、それぞれが生きがいを感じてお互いを尊重していました。このままハッピーエンドかと思ったんですが、そうは行きませんでしたね。『テーラー 人生の仕立て屋』(原題:Tailor)は、2020年のギリシャ・ドイツ・ベルギー合作映画です。監督はソニア・リザ・ケンターマン。刺激はないんですが、ギリシャの日常が見られて面白かったです。コロナで売り上げが減った飲食店の方々がキッチンカーで移動販売を始めたように、たくましく環境に適応して、人は生き抜いていくんだなと思いました。
2024/03/14
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『ワイルド・スピード』のシリーズ10作目となるこの作品.ファミリーが10年前にブラジルでこっぴどく打ち負かした麻薬王、エルナン・レイエスの息子ダンテが、ドミニクたちに復讐劇を仕掛けてきます。これまでも車ぶっ飛ばして色々やらかしてきましたから、世界中に敵がいるでしょうね。レイエスって誰だっけと思ったら、私が初めてこのシリーズを見たシリーズ5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』に登場してました。ローマで任務をこなしていた仲間が罠にハマったと知ったドミニクは、レティと共に急遽ローマに駆けつけるんですが、既にダンテは作戦決行中。なんと中性子爆弾がバチカン目掛けてゴロゴロ転がっていくんですよ。どうやって止めるの?しかもダンテは姿をくらまし、この騒動がドミニクたちの犯行にされてしまいました。一方ロサンゼルスにいる妹のミアと息子のリトルBも襲撃を受け、ドミニクの弟ジェイコブが命を張って救出します。このファミリーは全員がすごい運転技術を持ってるんですね。ダンテ対ドミニク。物語も一応ありますが、それよりかっこいい車と目を見張るカーアクションとセクシーなお姉さんたちがたくさん出てくるところが楽しめます。一番の見どころはダムの急斜面を車で走り降りるシーンでしょうか。『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(原題:Fast X)は、2023年公開のアメリカ映画です。監督はルイ・レテリエ。ドミニクのドライビング・テクニックは神技ですけど、それにしても毎回見どころ満載でハラハラさせられます。こういう映画、大好きアクション&サスペンス、非日常が見たいとき
2024/03/08
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実業家としての功績が認められ、表彰式が華々しく行われた夜、アール・ブルックスは妻と共に帰路につき、車の中から社交ダンス教室で踊るカップルに目を止めました。バックシートにいたマーシャルはアールを誘惑します。2年間も我慢したんだ、今日ぐらい羽目を外しても良いだろう?ブルックスは殺人中毒でした。この2年間は依存症の会にドラッグ中毒だと偽って入会し、なんとか衝動を抑えていたんです。ブルックスにしか見えない彼の別人格マーシャルが、この特別な日のご褒美として、彼を連続殺人鬼“サムプリメント・キラー”へと誘います。ターゲットは社交ダンス教室で見かけたカップル。銃をビニールでカバーし、なんの躊躇もなく殺人に及ぶと、いつものように被害者の血の指紋を残します。久しぶりに味わった震えるほどの快感でした。しかし彼は小さなミスを犯します。近所に住むスミスは覗き趣味があって、彼に決定的な写真を撮られてしまうんです。スミスにも殺人願望があって、証拠写真をネタに自分も次の殺人に同行させてほしいと言ってきます。サムプリメント・キラーの捜査を続けている女性刑事トレーシー・アトウッドは、再び動き出した連続殺人犯の捜査で近所の聞き込みをして、スミスが何かを知っていると感付きます。彼女はやり手の刑事ですが、家庭問題で裁判沙汰になっている上、以前捕まえた凶悪犯が脱獄して命を狙われています。ブルックスには出来の悪い娘がいて、大学を勝手に退学して家に戻ってきます。どうやら妻子ある男性の子を身籠もっているうえ、同級生殺害の重要参考人になっている様子。ブルックスは、娘にも自分と同じ殺人衝動があるのではと疑います。『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』(原題: Mr. Brooks)は、2007年のアメリカ映画です。 ブルース・A・エバンス監督・脚本、ケビン・コスナーが主演と製作を担当しています。ケビン・コスナーが若いんですよ。最近は何してるんでしょうね。ブルックスにつきまとって悪魔のように囁くマーシャルをウィリアム・ハートが不気味に好演していました。女刑事役はデミ・ムーアです。あんまり期待してなかったんですが、面白い映画でした。
2024/02/28
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もし翼を持たずに生まれてきたのなら、翼を生やすためにどんなことでもしなさい。ココ・シャネルの伝記的映画を見ました。孤児院から世界の有名ブランドの創設者へと羽ばたいた彼女の成功の秘訣は何だったのでしょうか。『私は生涯結婚しない。妻より愛人のほうが良いわ。』子供の頃、浮気でほとんど家にいなかった父、失意の中に死んだ母を見ていてそう思ったのでしょう。姉とともに孤児院に入れられ、日曜日に父親が面会に来てくれることを願いますが、それは一度もかないませんでした。孤児院を出ると、昼はお針子として、夜は騎兵将校の溜まり場となっていたキャバレーで歌手として働く日々。犬のココを見たのは誰?(Qui qu'a vu Coco ?)をよく歌っていたのでココというニクネームになります。本名はガブリエル・シャネル。ムーランの田舎で彼女が最初に目指したのは歌と踊り、舞台で成功することでした。客の一人だった将校のエティエンヌ・バルサンの紹介でリゾート地のオーディションに挑みますが失敗。彼はお金持ちの息子で、郊外の城に住み競走馬を育てていました。当時上流階級の女性は、まだ長い裾のドレスに装飾の多い大きな帽子と言う出で立ちで、馬に乗るときも横座りだったんですね。居候のような形で城に住み着いたココは、乗馬を学び、男性のような機能性の高い独自のファッションで異彩を放ちます。彼女のような、すっきりした帽子が欲しいという女性も現れました。毎日がパーティのような退廃的な暮らしの中で、バルサンの友人の一人ボーイ・カペルと出会います。美しくピアノを弾き、哲学を語る魅力的なハンサムでした。ボーイと恋に落ちたココでしたが、彼にはイギリスに裕福な許婚がいたんですね。ココの姉は近くに住む公爵の元で暮らしていましたが、彼の両親から結婚は反対されていました。結婚とは、愛と関係のない家同士の契約と言う考え方が普通だった時代です。ココはボーイの出資でパリに帽子の店を出し、バルサンのところで知り合った舞台女優が彼女の帽子を気に入ったことで有名になっていきます。110分の映画の中で、彼女がファッションデザイナーとして登場するのは最後の数分だけでした。彼女の成功のベースには、この二人の男性が大きく関わっていたということは分かります。『ココ・アヴァン・シャネル』(原題:Coco avant Chanel)は2009年のフランス映画です。ココ・シャネルを演じていたのは『アメリ』の オドレイ・トトゥでした。ボーイ・カぺルはアレッサンドロ・ニボラ、監督はアンヌ・フォンテーヌです。シャネルが亡くなったのは1971年だそうで、意外と最近の人なんだという気がしました。ここ100年ほどで女性のファッションは激変したんですね。面白い映画でした。おすすめです。
2024/02/17
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ロンドンで家政婦をしながら質素に暮らすミセス・ハリス。第2次世界大戦が終結してから10年以上、帰らぬ夫を待っています。夫の死を知るのが怖くて、軍から届いていた小さな包みをずっと未開封のまま持ち歩いていました。親友の勧めでついに軍からの包みを開けると、中には夫の指輪と戦死の知らせが入っていました。未亡人になったミセス・ハリスは、ある日、仕事先の高貴な家柄のご婦人の家で、見たこともない美しいドレスに出逢います。それは500ポンドもするクリスチャン ディオールのドレスでした。自分もパリにドレスを買いに行くことを決意すると、お金を貯めるために猛然と働き始めました。節約のために毎朝乗っていたバスもやめて歩くことに。運も味方してサッカーくじが当たったりもするんですが、逆にドッグレースにやっと貯めた100ポンドを注ぎ込んで全部スッたり。なんとかそれなりの現金を手にし、ついにパリへ旅立ちます。1950年代の飛行機って、機内でタバコ吸っても良かったみたいですね。電車じゃなくて、蒸気機関車が走ってましたよ。予定では日帰りのはずだったミセス・ハリス。飛行機が遅れ、泊まる所もなく駅で寝てました。そしていよいよパリのディオール本店へ。しかし当時のオート・クチュール(高級仕立て服)はどれも一点もので、客層は大金持ちのお得意様だけだったんです。何処の馬の骨とも分からないみすぼらしい身なりのイギリス人中年女性が相手にされるはずもありません。夢を諦めないハリスに、会計士アンドレやモデルのナターシャ、シャサーニュ公爵などが次々と手を差し伸べて助けてくれるんです。彼女の起こす閃風は、やがて高級ブランドの経営方針すら変えるきっかけとなります。『ミセス・ハリス、パリへ行く』(原題:Mrs Harris Goes to Paris)は、2022年のイギリス映画です。原作はアメリカの作家ポール・ギャリコの長編小説『ハリスおばさんパリへ行く』、アンソニー・ファビアン監督がレスリー・マンビル主演で映画化しました。いろんな小さな出来事に一喜一憂しながら、不可能とも思える夢を強引に実現してしまうオバサン・パワー。人生なかなか思い通りにはならないけれど、やってみなくちゃ分からないという前向きな気持ちにさせてくれる映画でした。
2024/02/16
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フランス革命前後の貴族と庶民の食文化が分かる面白い映画でした。フランスで初めてレストランを作った男という話なんですが、それまではレストランがなかったというのが驚きでしたね。公爵家に仕えるマンスロンは腕のいい料理人でした。当時のフランスの貴族社会では、地中に埋まった食材を口にする習慣がなかったようです。ニンジンやジャガイモなど地面に埋まっている食材は悪魔の産物で、食べるのは豚くらいという認識があったんでしょうか。マンスロンが丁寧に創作したデリシュという名のジャガイモとトリュフの重ね包み焼き。見るからに美味しそうでしたが、公爵のテーブルで美食を堪能していた貴族たちの反感を買います。自分の料理に誇りを持っていたマンスロンは謝罪しなかったので解雇され、失意の元に一人息子と実家に戻ります。美しく色づいた秋の田舎に建つ一軒家は、ごちゃついた宮殿よりずっと素敵なところでしたね。そこへ、弟子にしてほしいという女性ルイーズが訪ねてきます。女性の料理人も当時は珍しかったようですね。彼女の立ち振る舞いは働いたことのない女性のそれで、マンスロンは不審を抱きますが、彼女の料理に対する情熱は本物で次第に信頼関係ができていくんです。人に言えない過去があるような謎めいた美人です。ルイーズのアイデアで始まった一般人にも開かれたお食事どころ、レストラン。マンスロンも料理への意欲を取り戻し、お店はたちまち評判に。パリでは革命の嵐が吹き荒れる中、まだその影響がこの田舎には及んでいない様子でした。やがて傲慢な公爵の耳にも入り、店を訪れる事になります。デリシュ!(原題:Delicieux)は2020年のフランス・ベルギー合作映画です。マンスロンをグレゴリー・ガドゥボワ、ルイーズをイザベル・カレが演じ、エリック・ベナールが監督を務めました。次々出てくる料理がどれも美しくて、きっと食べても美味しいのだろうと思いますが、とっても目の保養になります。これでもかってくらい、バターをたくさん使ってましたね。ハッピーエンドの心温まる映画でした。おすすめです。デリシュを作ってみたい方、レシピはこちらです。
2024/02/14
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オットー・アンダーソンはいつも不機嫌でした。ゴミの分別をちゃんと出来ない近隣の連中にも、私道なのに勝手に駐車する宅配業者にも、腹が立って仕方がない。最愛の妻を半年前に亡くし、仕事も追い出されるように定年退職。もうこの世に未練はない。死んでやると思って、電気もガスも解約してしまいます。首吊り用のロープを買って、自殺を決行しようとしたちょうどその時、向かいの家に2人の子供を連れた若夫婦が引っ越してきました。運転が下手な旦那の様子を見かねて手伝ってやると、奥さんの手料理をもらいます。オットーも昔から頑固親父だったわけじゃないんですね。ソーニャと出会い、愛を育み、結婚して幸せな時を刻んできました。大好きだったソーニャのところに早く行きたかっただけなんです。オットーはこの後も何度か自殺を試みますが、必ず邪魔が入るんです。向かいの家族との交流を通じて、頑なだった心が次第に溶けていきます。思いがけずSNSで街のヒーローになったり。『オットーという男』(原題:A Man Called Otto)は、2022年のアメリカ映画です。フレドリック・バックマンの小説『幸せなひとりぼっち』を原作としたスウェーデン映画のハリウッドリメイクで、マーク・フォースター監督、トム・ハンクス主演で製作されました。《トム・ハンクス史上》最も泣ける映画という触れ込みでしたが、泣きませんでしたね。亡くなった奥さんがオットーのことをずっと見守ってる感じでした。町一番の嫌われ者でも彼が生きていることで助けられた人は、猫もそうでしたけど、何人もいたし、ちゃんと生きている意味はあるんですね。自分はこの世にもういらない人間だなんてことは多分ないんだろうと思います。とてもいい映画です。おすすめです。
2024/02/09
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アニメ版を見て相当ハマったので、いつか実写版も見たいと思っていました。期待以上に面白くて、もう一度アニメ版も見たくなり、今最初からまた見直しています。時代物やSFって違和感を覚える映画もありますけど、これは全然そういうのなかったです。アニメがそもそも日本語だったせいもあるかも知れませんが、紀元前の中国の登場人物が全部日本人でもすんなり入り込めました。時は春秋時代、七大国(斉・楚・秦・燕・韓・魏・趙)が覇権を争う中国戦乱のとき。二人の少年シンとヒョウが、自力で下僕の身分から抜け出し、天下の大将軍になるという夢を持って、農家の下働きの傍ら日々剣の鍛錬に励むところから物語は始まります。ある日、通りかかった大臣・昌文君(しょうぶんくん)がヒョウに目を止め、王宮に召し抱えるんです。セイ(後の始皇帝)が幼くして秦の皇帝となった時から、王宮内は覇権争いで荒れていました。後ろ盾となっていた右丞相・呂不韋(りょふい)が遠征に出ている間に、弟の成蟜(セイキョウ)と左丞相・竭氏(けつし)が組んでクーデターを起こし、セイは玉座を追われます。セイの影武者として仕官していたヒョウは命を狙われ、瀕死の重傷を負ってシンと暮らした下僕小屋に戻ってくるんです。びっくりするくらいアニメと同じでしたね。ヒョウとセイは瓜二つなので吉沢亮さんが両方演じていて雰囲気ぴったりでした。ヒョウは、ある使命をシンに託してこの世を去るんですが、事情を知らない熱血漢シンはヒョウの仇をとると吠えまくります。シンを演じた山﨑賢人さんも上手でした。何より驚いたのは刺客として差し向けられる人たちの特殊メイクの凄さです。強いのはもとより、容貌が普通じゃないんですが、それが見事に再現されてるんです。暗殺者の朱凶(しゅきょう)、吹き矢の達人ムタ、成蟜の手下・ランカイ。演じている役者さんたちも見事で、雰囲気そのままでした。フクロウのようなかぶり物で登場するテンは、軍の包囲網を突破する抜け道を示してセイとシンに協力します。テンは生き抜くためになんでもする山の民の孤児で、協力は単純に金目当て。強かでコミカルな役を橋本環奈さんが演じていて、これもぴったりハマってました。配役を知らずに見ていたので、セイと手を組むことになる山の王が仮面を脱いだ時、『おーーー!!』と思いました。シンが憧れた天下の大将軍・王騎(おうき)は非常に個性的な軍人で、なるほどこの人が演じているのかと感動すら覚えましたよ。『キングダム』は、2019年に公開の日本映画です。セイが弟から王座を奪還するところで終わりました。原作の原泰久による漫画1巻から5巻の実写化だそうです。これは面白いです。漫画やアニメを知らない方にも是非オススメ。アクション&サスペンス、非日常が見たいとき
2024/01/15
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パコ・デ・ルシアは7歳でギターを手にし、後に世界的なギタリストになります。フラメンコの聖地スペインのアンダルシア地方に1947年に生まれ、フラメンコの域を超えた超絶テクニックでファンを魅了しました。これは彼の60年に渡る音楽人生をまとめたドキュメンタリー映画です。スペインではキリスト教の聖人の名前を子供につける習慣があるらしく、同名のパコ(フランシスコの愛称)もたくさんいるので、母親の名前を後につけて呼ぶそうです。彼の母親はルシア、父親も兄たちもみんなギター弾きです。兄が父親にギターを習って苦戦しているのをそばで見ていたパコは、『あんなの簡単だ』と思って始めたと言っていました。12歳で、兄のペペ・デ・ルシアとのデュオで初レコーディング。既にプロのギター弾きになっていました。手に職があれば、学校なんて行かなくても生きていけそうです。グラナダに旅した時、ホテルのオプションツアーでジプシー洞窟で演奏されるフラメンコショーに行ったことがあるんです。洞窟に向かうマイクロバスで、アンダルシア出身と思われるおばちゃんツアー客10人くらいが一緒だったんですよ。誰かがフラメンコを歌い始めると、みんなで手拍子、合いの手、足踏み、手踊り。バスの中は遠足モード、フラメンコ習ってた合気道の友達と私、二人だけが完全に異邦人な感じでした。アンダルシア地方の人にとってはフラメンコは生活に密着していて、その伝統の域は絶対に超えてはならないモノらしいんです。パコはフラメンコに革命を起こすんですね。彼の演奏は、フラメンコギターの師匠からは『フラメンコじゃない!』と言われてましたけど、私の耳には全部フラメンコに聞こえましたね。違いがよく分からないんですよ、素人には。超絶速弾き、すごいな〜と思うだけ。スパニッシュギター弾きは、ピックや付け爪とか使わないで自分の爪でジャカジャカ弾くので、爪がすごく硬いんです。パコもステージの前は爪の手入れを念入りにやってましたね。ダンサーが靴の手入れをするような感じでしょうか。さらにパコは、ジャズやフュージョンへと活躍の場を広げます。私がバンドやってた頃、うちのギターも憧れてたアル・ディ・メオラ。それにジョン・マクラフリンとの3人でスーパー・ギター・トリオを結成して世界中をツアーし、音楽ファンを増やしていきました。パコは66歳で亡くなるんですが、晩年はマヨルカに住んでいたそうです。私たちが遠征で訪れた時、まだ存命だったんですよ。マヨルカ観光の途中、海辺でギターを弾いてた物凄く上手い人がいたんですね。パコの弟子かもよなんて言って動画を見直しました。真相は分かりません。公式サイトはこちら。おすすめです。
2023/12/16
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カルーソは、子供の頃から教会の聖歌隊でその美声を発揮していました。病の床にあった母に歌のお勤めを休むなと励まされ、聖歌隊で街を行進しながら母の姿が窓辺になかったことでその死を知ります。大人になったカルーソは、歌の道をあきらめ恋人の父親の仕事である粉屋を手伝うことになりました。しかし歌への情熱は抑えきれず、街にやってきたオペラの一団に見出され、オペラ歌手として新しい出発を果たします。1873年にナポリで生まれたエンリコ・カルーソは有名なオペラ歌手です。カルーソを演じたマリオ・ランツァが素晴らしい歌声で、『アイーダ』 『トスカ』『ラ・ボエーム』など多くの曲を披露してくれています。こちらは本物のカルーソーの歌声です。アメリカに渡りメトロポリタン・オペラにデビューして、スポンサーのベンジャミン氏に嫌われてしまうんですが、民衆もベンジャミンの娘のドロシーも彼の後押しをしてくれて大成功を収めます。ドロシーとは恋仲になって親の反対を押し切って結婚。子供も産まれて順風満帆かに思われましたが、喉を患って48歳の若さで生涯を閉じます。映画では全く触れられていませんでしたが、後で大将が調べたところによると、ドロシーと結婚する前にイタリア人の内縁の妻と三人の子供がいたそうです。それにすごいヘビースモーカーだったとか。カルーソを演じたマリオ・ランツァも38歳の若さで亡くなってしまったそうです。伝記映画『歌劇王カルーソ』(原題: The Great Caruso)は1951年に公開されたリチャード・ソープが監督によるアメリカ映画です。彼に捧げる歌『Caruso』を以前ご紹介しましたが、この映画は見たことがなくて、どんな人生を送ったのかこれで少し分かりました。こちらは年代を感じさせる壮大な予告編になります。
2023/11/14
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イアンは人に幻覚を見せる超能力を持っていました。スペインの海辺の田舎町で、アル中気味の父ビセンテとひっそりと暮らしています。超能力で目立つことを父親に固く禁じられていたので、店で万引きを働く時にちょこっと使う程度。しかし警察車両に追いかけられ、逃げ延びるために防犯カメラ映像に残る事件を起こしてしまいます。イアンは18歳の誕生日を迎えました。能力者を探している2つの組織があるんです。一つはエージェンシーという武装集団。イアンとビセンテはエージェンシー捕まってしまいますが、どうもビセンテは以前ここの一員だったようです。もう一つはアウェアネスという組織で、エージェンシーのアドリアナ博士によると、超能力者たちを使って政府を操る悪の集団で、それに対抗するためにエージェンシーがあるとのこと。拉致されているイアンのもとに、アウェアネスの美人戦士エステルが現れます。この辺でどっちが悪なのかよくわからなくなってくるんです。エステルは凄腕の格闘家で、エージェンシーの兵士たちをバッタバッタと倒してイアンと父親を施設から救出しました。東西冷戦時代に進められた超能力覚醒の製剤研究が、冷戦終結と共に終わりを告げ、生み出された超能力者たちが国家の脅威になるという理由で抹殺され始めていました。アウェアネスはそれに対抗する超能力者軍団です。エージェンシーは製剤研究を進めていた組織ですが、失われた製剤データを取り戻すため、実験対象者から抽出しようと目論んでいたようです。イアンは子孫を残せないはずの超能力覚醒者から奇跡的に生まれた子供で、彼の体内には高純度の製剤が濃縮されていました。イアンは幻覚を見せる能力の他に、人の脳内に潜入して記憶を読む第2の能力も覚醒します。さらに他人を意のままに動かす念動力のような第3の能力も覚醒。父ビセンテの記憶には、イアンが知らなかった大きな秘密が隠されていました。『アウェアネス -超能力覚醒-』は、2023年公開のダニエル・ベンマヨール監督によるスペイン映画です。スペインのSFってあまり馴染みがなかったんですが、最後の大どんでん返しは衝撃的で、すぐに理解できなかったのでその部分だけもう一度見ました。イアン役はカルロス・ショルツ、父ビセンテはペドロ・アロンソが演じています。2時間の映画にまとめるにはちょっと無理がある盛りだくさんな内容でした。人気が出ればドラマ化されるかもしれませんね。非日常を体感したいあなたへ
2023/10/26
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英文学はお好きでしょうか。エミリー・ブロンテの『嵐が丘』やゴールズワージーの『林檎の木』なんかは大好きで何度も読みました。『エマ』を書いたジェーン・オースティンは1800年頃に活躍した女流作家で、英国留学していた夏目漱石は『写実の泰斗なり。平凡にして活躍せる文字を草して技神に入る』と絶賛しています。『いつか晴れた日に』も彼女の『分別と多感』が原作で、今でも印象に残るいい映画でした。エマ・ウッドハウスは裕福な家に生まれ、美しく頭もいい21歳の女性です。イギリス南部ハイベリーの邸宅に父親と二人で優雅に暮らしていました。友人のハリエットには好きな男性がいたんですが、エマがプロポーズを断らせ、自分がふさわしい男性を探すと意気込みます。この人はと見込んだ男性が別の女性と結婚したり、自分が好きな男性にハリエットも恋したりとなかなかうまくいかないんです。とっても平和で上品なロマンティック・ラブ・コメディで、平凡な日常が続くので映画に刺激を求めている方向きではありません。舞踏会のシーンもあって、当時踊られていたであろうダンスも見られますよ。衣装とか調度品とか食器とかが素晴らしく美しいです。『EMMA エマ』(原題:Emma.)は2020年のイギリス映画。監督はオータム・デ・ワイルド、主演はアニャ・テイラー=ジョイです。この作品が映画化されるのはこれで5回目とか。2021年、アニヤ・テイラー=ジョイが第78回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)にノミネートされました。第93回アカデミー賞では、衣装デザイン賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞の2部門にノミネートされています。映画に刺激を求めない人におすすめの上品な作品です。
2023/09/05
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19世紀の登場した超絶技巧のバイオリニストは、現代のカリスマ的ロック・ギタリストのような存在だったのかもしれません。パガニーニを演じたデイヴィッド・ギャレットがセクシーでかっこよすぎです。コンサートはまるでロックのライブ会場の様相で、情熱的な演奏に女性たちは悲鳴をあげ、失神し、殺到します。イタリアの天才バイオリニスト、ニコロ・パガニーニは、シューベルトやリストなど当時の有名な音楽家に多大な影響を与えました。1830年に敏腕マネージャーのウルバーニに見出され、ヨーロッパ各地で公演を行い独創的な演奏で人々を魅了しました。富と名声を手にしたパガニーニは、酒や女や賭け事に溺れ、不健康な日々を送ります。イギリスの指揮者ワトソンは、国王を招いてのロンドン公演を企画しますが、パガニーニの気まぐれな行動に翻弄され、全財産を失う羽目に。やっとのことでロンドンに呼び寄せたものの、人々を陶酔させる彼の悪魔的な演奏に嫌悪感を持つ保守的な人々の抗議運動が、宿泊する予定のホテルの前で展開され、やむなくワトソンの自宅に宿泊することになるんです。ワトソンの娘シャーロットは、若く気高く清らかで、しかも美しい声の持ち主でした。パガニーニは彼女に自分の作曲したアリアを歌わせ、すっかり意気投合してしまうんですね。この淡い恋がうまくいかないだろうことは想像できました。シャーロットはパガニーニとの共演をきっかけにアメリカに渡ってプロの歌手になったようです。知らなかったんですが、パガニーニを演じたのは人気の高いプロ・バイオリニストだったんですね。ただの役者にしては、演奏が上手過ぎると思ってたんですよ。2014年には日本公演もされたそうです。『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』(独: Der Teufelsgeiger、英: The Devil's Violinist)は、2013年のドイツの映画です。監督はバーナード・ローズ。主演のデイヴィッド・ギャレットは現代のパガニーニとも言われる演奏家でモデルもされてるそうで、5億円のストラディバリウスを使って演奏を披露してくれます。こんなすごい映画をなんで見逃していたんだろうと思いました。ちょっとエロいシーンもある大人の映画ですが、音楽は素晴らしい。おすすめです。
2023/09/04
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大航海時代にイングランド人として初めて世界一周したサー・フランシス・ドレイクは、海賊であり、海軍提督でもありました。両親からその子孫だと聞いていた少年ネイサン・ドレイクは、兄のサムと孤児院で宝探しの大冒険を夢見ていました。10歳で兄と生き別れ、成長してバーテンダーとしてニューヨークで暮らすネイサン。そんな彼の前に、サムと一緒に宝探しをしていたというビクター・サリバンがやってきて、自分と組んでサムが探していたマゼランの黄金を見つけに行こうと誘われます。インディー・ジョーンズやトゥーム・レイダーと似たような系列の宝探し物なんですが、ネイサンを演じるトム・ホランドのとんでもないアクションが見物です。飛行機から落ちる荷物を伝って敵の攻撃を避けながらのサバイバルシーン。冒頭からガッツリ掴まれましたよ。サリバンの他にもクロエという仲間が出てくるんですが、仲間と言いつつトレジャーハンターというのはみんな強欲なんですよね。マゼランに出資したモンカーダ家の末裔サンティアゴ・モンカーダ(アントニオ・バンデラス)や、彼に雇われた女傭兵ジョー・ブラドッグ。みんなマゼランの黄金を自分だけものにしたがっているので、気を許すと命も奪われかねません。『アンチャーテッド』(原題:Uncharted)は、2022年のアメリカ映画です。監督はルーベン・フライシャーで、PlayStationのアンチャーテッド・シリーズというゲームの実写映画化だそうです。ゲームも面白そうですね。兄のサムは死んだと聞かされますが、どうも生きているような気配だし、続編がありそうな感じでした。おすすめです。
2023/08/23
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2022年8月6日に公開された『ONE PIECE FILM RED』(ワンピース フィルム レッド)は、6ヶ月に及ぶロングラン上映の大ヒット映画となりました。劇中歌も大ヒットして、去年の夏を席巻。Adoの歌う『新時代』を耳にしない日がないくらいでした。原作連載25周年という節目に、興行収入的にも大成功を収めたワンピース劇場版第15作目の作品です。ウタは世界中の人々を虜にする歌姫でした。別次元と称される類まれな歌声の持ち主です。素性を隠したまま歌を発信していた彼女が、音楽の島エレジアで初ライブを開催することになり、大勢のファンで島が埋め尽くされていました。その中に麦わら海賊団の姿もあります。船長のルフィーとウタは幼馴染で、以前は父親のシャンクス率いる赤紙海賊団の音楽家でした。ライブ開始の1曲目が『新時代』で、会場は一気に盛り上がります。心無い海賊がステージに乱入して妨害しようとするんですが、ウタは不思議な能力で瞬く間に制圧してしまうんです。彼女は悪魔の実『ウタウタの実』の能力者だったんですね。彼女の歌声を聞いた人全てを仮想空間に引きずり込むことができるんです。ライブは彼女の新時代計画でした。全ての人の意識をウタの楽しい世界に閉じ込め、苦しみも悲しみもない日々を送ってもらおうというもの。ナルトの無限月読とか、『鬼滅の刃』無限列車編もそういった類の話でしたね。ウタって悪者なんでしたっけ?大体こういった幻術は悪役が使うもので、それを破って一件落着ですよね。ウタにも、家族と思っていたシャンクスに捨てられた恨みがあったり、自分の能力が世界の人々を不幸にしてしまう可能性を知ったりして、色々考えたんでしょうね。世界政府や海軍も、ウタの能力を危険視して討伐に動き始めていたんです。シャンクスたちもウタの暴走を止めるべく島へやってきます。ONE PIECE FILM GOLDも面白かったですけど、この映画もよくできてました。ウタの歌は全部素敵でした。Adoさんの歌唱力、恐るべし。別次元と称される類まれな歌声を担当するのって勇気がいるでしょうね。アクション系ならワイヤーとかいろんなCGで実写化して何とか観客の目を誤魔化せそうな気はしますが、歌はナマモノですからホントにうまい人じゃないと演じられないと思うんです。話がそれますが、TBSテレビの『モニタリング』という番組で、小林幸子が『新時代』歌って、あんまり上手なんで掴まれたの覚えてます。このサントラはお宝ですね。
2023/07/25
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どの範囲までを家族(ファミリー)って呼ぶかは国や年代によっても違う気がします。スペイン語とイタリア語はかなり似ていて、どちらの言語でも家族のことをファミリアと言うそうです。ゴッドファーザーとかの映画から勝手に想像するだけですが、家族の繋がりの濃さといったらイタリアは世界トップクラスなんじゃないかという気がしています。日本も昔はお家制度が主流でしたから、徳川一族みたいな繋がりは今でも強そうですよね。人類皆兄弟という広い考え方もありますが、人ってなんかグループを作りたがる本能みたいなものがある気がするんです。原始時代からDNAに刻まれた自己防衛本能なんでしょうか。血の繋がりだけでなく、風習や言語や価値観などいろんなもので仲間か、そうでないかを決めたがります。今日ご紹介する映画の家族は、そういった垣根を意識しない、むしろ自己防衛本能に疎い人たちです。神谷誠治(役所広司)は、一人山里で暮らす陶器職人でした。彼には、一流企業に勤めて海外で働いている息子(吉沢亮)がいます。ある日、アルジェリアに赴任していた息子の学が、外人の婚約者ナディアを連れて帰ってくるんです。学は結婚したら会社を辞めて、父親のあとを継ぐと言いますが、陶芸で生計を立てる苦労を知っている誠治は反対するんですね。隣町には在日ブラジル人が多く住むコミュニティがありました。それを快く思わない日本人の若者グループが、いわれなき暴力行為を繰り返していたんです。ある日、ブラジル人の青年マルコスが、彼らに追われたときに誠治に助けられます。彼は焼き物の仕事に興味を持ち、次第に心を通わせるようになるんです。しかし、アルジェリアに戻った学とナディアが現地の反政府勢力に拉致され大変な事件に巻き込まれてしまいます。『ファミリア』(familia)は、2023年1月に公開された成島出監督の映画です。Shall we ダンス?で日本に社交ダンスブームを巻き起こしてくれた役所広司さんも、今年はカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞された世界的な名優になりましたね。役所さんが出てる映画というだけで、身を乗り出して見てしまいます。公式サイトはこちらです。
2023/07/14
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普通なら決して手放さない成功への鍵を、天才はあっさり捨ててしまうものなのでしょうか。子供の頃から類まれなヴァイオリンの才能を持っていた少年が、21歳を迎えて用意されたデビューコンサートの日、忽然と姿を消してしまいます。一体彼に何があったのか。真実が明かされたとき、人にとって最も大切なものは何かを考えさせられます。第二次世界大戦が勃発し、ロンドンに住む9歳のマーティンの家に一人の少年が父親に連れられてやってきます。ポーランド系ユダヤ人で同じ9歳のドヴィドルは、天才的なヴァイオリンの才能を持っていました。音楽関係の仕事をしていたマーティンの父親に、ドヴィドルを預けたいというのです。マーティンはドヴィドルとすぐに仲良くなりました。やがて始まったナチスのユダヤ人迫害に、家族を心配するドヴィドル。マーティンはドヴィドルの才能を称賛しつつ、嫉妬し、同情して兄弟のように共に成長していきます。マーティンの父親はドヴィドルを本当の息子のように可愛がって、高価なヴァイオリンを買い与え、財産を注ぎ込んで華々しいデビューコンサートを用意しました。しかし、素晴らしい客たちで埋め尽くされたコンサート会場にドヴィドルは現れなかったんです。事故か?事件か?リハーサルまでは会場にいたドヴィドルは突然失踪し、それきり行方知れずとなってしまいました。35年の月日が流れ、音楽関係の仕事をしていたマーティンが、ある手掛かりをきっかけにドヴィドルを探す旅に出るんです。彼の行方を辿るうちに次第に明かされていく真実。本当に切なくて、戦争は罪なものだと思いましたね。『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』(原題:The Song of Names)は、フランソワ・ジラール監督による2019年のイギリス・カナダ・ハンガリー・ドイツ合作映画です。マーティン役をティム・ロス、ドヴィドル役をクライヴ・オーウェンが演じていました。音楽映画ですので、音楽も素晴らしいです。演奏はレイ・チェン。第8回カナダ・スクリーン・アワード5部門(メイクアップ賞・作曲賞・歌曲賞・音響ミキシング賞・音声編集賞)を受賞しています。おすすめです。
2023/06/28
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弓矢は接近戦には向かないものと思っていました。でも3本も4本もいっぺんに射ることが出来てそれが全部当たるなら、マシンガンみたいな威力ですよね。ロビン・フッドと言えば弓矢の名手というイメージでしたが、命中した矢をすぐに引っこ抜いて違う敵に向かって放ったり、アクションの凄さに圧倒されました。レオナルド・ディカプリオが製作を手がけた新しいロビン像が見ものです。ケビン・コスナー主演のロビン・フッドは大好きな映画で何度かみましたが、もう昔の話であまり詳細は覚えていません。今日ご紹介するのはキングスマン: ゴールデン・サークルでとんでもないアクションを見せてくれたタロン・エガートンがロビンを演じています。バック・トゥ・ザ・フューチャーのマイケル・J・フォックスにちょっと似てる気がするんですが、皆さんはそう思いませんか?ロビン・フッドは、悪政に苦しむ貧しい庶民の味方、したたかでかっこよくて強くてミステリアスなイメージでした。今回のロビンはもっとリアルで庶民的なんです。中世イングランドの伝説的ヒーローの誕生秘話を描いた映画です。故郷に最愛の女性マリアンを残し、十字軍に仕方なく参戦した領主ロビン・ロクスリーは、戦地で最強の敵ジョンと出逢います。4年後、故郷に戻ったロビンは、領地が没収され、自分が2年前に死んだことになっていていることを知って愕然とするんです。しかもマリアンは別の男と良い仲になっています。縁あってロビンの元にやってきたジョンが、腑抜けになっているロビンに道を示すんです。人々から税金を搾り取り、教会と手を組んで国を操ろうとしている長官を倒し、貧しい人々を救おう。未熟なロビンに戦闘技術を叩き込むんです。特に弓矢を徹底的に。ジョンが鬼軍曹みたいでした。育成系のRPGのようで、私は好きでしたけどね。ロビン・ロクスリーがなんでロビン・フッドと呼ばれたのか。ロビンがいつも頭巾(フッド)で顔を隠して義賊活躍していたからなんですね。もの言えぬ庶民は、密かに正体知れずの彼を応援して壁にフードを飾ります。マリアンにはすぐにバレてましたが。ロビンのアクションもさることながら枢機卿と長官の極悪ぶりがいい味出してました。時代劇でも越後屋と悪代官が真っ黒でないと正義の味方が光らないですからね。敵だったジョンがなんでロビンに味方してくれたのかとか、おぼっちゃま育ちのロビンがどうして義賊の頭領になれたのかとか、うまいこと説明されていました。街の様子も美しく、戦闘もリアルで面白かったです。『フッド: ザ・ビギニング』(Robin Hood)は、2018年のアメリカ映画、オットー・バサースト監督作品です。世間の評価はイマイチだったようですが、個人的には面白かったです。好きなタイプの映画でした。
2023/06/23
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子供の頃は、何の疑問も持たずにウルトラマン・シリーズを見ていました。カイジュウがなぜ日本ばかりにやって来るのか、ウルトラマンはなぜ3分で帰る必要があるのか、そんなことはどーでもよかったんですね。何十年ぶりかに見たウルトラマンは、映像技術の進歩もあり、スーツのシワまで見えたりして若干興ざめな感じは舐めませんでした。カトクタイの存在意義もイマイチ納得がいかないし。まあでも怪獣文化を世界に発信した日本の功績は大きいと思いますので、そのルーツを辿る意味で、この映画は感慨深いものがありました。巨大怪獣を迎え撃つ日本政府は、防災庁にカイジュウ特設対策室(カトクタイ)を設け対策にあたることにします。相手は巨大怪獣なのではっきり言って打つ手なしなんですが、都合よく光の星から銀色に輝く助っ人がやって来るんですね。それがウルトラマンです。ベーターシステムという巨大化する宇宙技術を持っていて、怪獣のサイズに合わせて巨人化できるようです。子供を救おうとして死亡したカトクタイ・神永新二の身体に乗り移って、普段は神永、怪獣が来たら巨大化。正体や目的はわからないけど、人々のために戦ってくれる正義の味方みたいな存在となります。接触してきた宇宙生命体はウルトラマンだけじゃないんです。人類を滅ぼし地球を乗っ取ろうと企む宇宙人ザラブが不平等条約を締結しようとしたり、ベーターシステムを餌に優位な立場に立とうとする宇宙人メフィラスが人間を巨大化して見せたり。光の星から新たにやってきたゾーフィはもっと過激で、人類が生物兵器となる可能性を危惧して太陽系もろとも破壊しようとするんです。やって来る宇宙人がエイリアンとかプレデターみたいじゃないので全然怖くありません。地球がこんなに大変なことになっているのに騒いでるのは日本だけみたいだし、カトクタイも少数精鋭とはいえ6人しかいないんです。ベーターシステムの解明のために世界の叡智が結集はしてましたが、やっぱりウルトラマンは子供向けの怪獣映画なんだなという気がしました。『シン・ウルトラマン』は、2022年公開の樋口真嗣監督による日本映画です。1966年に放送されたテレビドラマを現在に置き換えた空想特撮映画で、企画・脚本は庵野秀明が担当しています。これを見て育った世代の人にとっては、懐かしさに心震える作品だと思います。映像も綺麗だし、迫力満点。ウルトラマンが真上に向かって跳ぶ時の姿勢が好きです。シン・ウルトラセブンも作ってくれないかしら。
2023/05/20
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インドの貧しい家庭で暮らすミーナ。まだ幼いながら大きな器を頭に乗せて、裸足のまま近くの川に水汲みに行っています。ある日、彼女に妹が産まれました。お産で母親が死に、口減らしのために産まれてすぐ殺されそうになっていた妹を産婆の手から必死に奪い返し、シータと名付けて自分が育てると泣きながら訴えます。しかし大人たちによって引き離された姉ミーナと妹シータ。二人が30年後に再会を果たす物語です。ミーナは裕福な家庭の使用人として働くことになります。95分映画なので中略という感じで、いきなり大人になったミーナは、インドでは知らない人がいないほどの有名女優となっていました。歌と踊りのボリウッド映画だけでなく、自伝的な映画も人気を博します。彼女はまだシータを探していました。無理やり妹と引き離されたムンバイの修道院で、彼女がスペインの家庭に養子として引き取られたことが分かります。そしてついにバルセロナへ、シータに会いに行きました。ところがシータは、引き取られた時まだ物心がついていなかったので、自分がインド人の養女だと知らされずに大きくなっていたんです。両親が秘密にしていたので、自分はパウラという名のスペイン人だと思っていました。彼女は生物学者で、研究所に訪ねてきた姉だという変なインド人女性の話をにわかには信じられません。同僚も、金目当ての詐欺じゃないかなんていう始末。ミーナが持ってきた資料を見て、どうも自分のルーツはインドにあるらしいとシータの気持ちが少しずつ切り替わって行きました。なぜ黙っていたのかと養父母を責める一方、インド人街のレンタルショップでミーナの映画を借りてみたり。何度もレンタルショップに通ううちに、そこで出会った店員プラカッシュとは次第に心を通わせるようになります。『サンダルウッドの記憶』(原題:Rastros de sandalo)は、リア・リポル監督による2014年製作のスペイン・インド・フランス合作映画です。スペインでは大ヒットロングランを記録し、モントリオール映画祭観客賞を受賞しました。インド映画特有のポリウッドもしっかり組み込まれていて、短いですが必要な部分がぎゅっと詰まった人間ドラマです。妹シータ役のアイナ・クロテットが、どうみてもインド人に見えないのがちょっと残念でしょうかね。父親が出て来ないので、姉妹と言っても異父姉妹なのかもしれません。とてもいい映画でした。おすすめです。ちなみにサンダルウッドは白檀(ビャクダン)のことです。
2023/05/03
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おとぎ話の白雪姫と原作の物語が大きく違うということは知っていました。2007年公開のシガニー・ウィーヴァー主演映画『スノーホワイト』は、小人も王子も出てこないダークな物語で、それが原作に忠実だと言われてちょっとがかりした覚えがあります。今日ご紹介する映画は、少しはファンタジー要素が盛り込まれていて、ディズニー映画と原作の中間といった感じになっていました。マグナス王の一人娘スノーホワイトは心の美しい少女でした。 王妃が亡くなったあと遠征に出た王は、得体の知れない黒い軍勢の捕虜となっていたラヴェンナを助けます。ラヴェンナは絶世の美女で、心を奪われた王は妃として迎えますが、その正体は邪悪な魔女でした。結婚初夜に王を暗殺し、魔の黒い軍勢を城に引き入れ王国を支配、スノーホワイトは幽閉されてしまいます。鏡よ鏡、この世でいちばん美しい者は誰?ラヴェンナが鏡の精に質問する有名なシーンはそのままです。いつもはラヴェンナと答える鏡が、スノーホワイトが自分より美しく育ったと告げるんですね。彼女の心臓を食べればラヴェンナの美と魔力は永遠とも。しかしスノーホワイトは、城から脱出して魔の森へ逃げこんでしまいます。森はファンタジーでしたね。確かに魔物がいっぱい住んでるんですが妖精たちもたくさんいる聖域で、スノーホワイトはイマイチ可愛くない小人さんたちともそこで出逢います。ティンカーベルのように金の粉を撒きながら飛んでいく小さな妖精たちとも触れ合ったり。この映画の原題はSnow White & the Huntsman(白雪姫と猟師)というので、猟師がなんか重要な役割を果たすんだろうなと思っていたら想像以上でした。妻を亡くしてやけっぱちになっている猟師のエリックが、ラヴェンナに『スノーホワイトを捕まえたら妻を魔法で生き返らせてやる』と言われて魔の森にやってくるんです。毒リンゴのエピソードとか色々あって、結局エリックはスノーホワイトの味方になります。スノーホワイトは、ハモンド公の息子ウィリアムと幼馴染でした。ラヴェンナが城を占拠した時にスノーホワイトを救えなかったことを悔いていて、ラヴェンナ討伐に喜んで兵を貸してくれます。スノーホワイトはまるでジャンヌ・ダルクでしたね。確か原作もそんなだったような…。『スノーホワイト』(原題: Snow White & the Huntsman)は、ルパート・サンダース監督による2012年公開のアメリカ映画です。スノーホワイト役はクリステン・スチュワート、ラヴェンナ役はシャーリーズ・セロンでした。3部作の1作目なんだそうですが、王子様がちょっとイメージ違う人だし、小人さんの何人かは戦いで死んでしまうので、やっぱりディズニーの白雪姫が平和的で好きかなと思いました。
2023/04/30
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2019年にアポロ11号が月に着陸して50周年を迎えました。これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である。That's one small step for a man, one giant leap for mankind.人類史上初めて月面に足を踏み出したニール・アームストロング船長の有名な言葉です。今日ご紹介するのは、『ファーストマン: ニール・アームストロングの人生』を原作とした伝記映画です。ニール・アームストロングはエドワーズ空軍基地のテストパイロットでした。ロケットエンジンを搭載したX-15の飛行実験で高度63kmまで到達した後、大気の層に弾かれてあわや帰還不能かと言うアクシデントが描かれています。彼には三人の子供がいましたが、真ん中の娘カレンが病気で幼い命を落とします。どんな時も表情を変えない冷静沈着な彼が、部屋にこもり声を殺して泣く姿は印象的でした。そしてニールはNASAの宇宙飛行士に応募します。1960年代、アメリカの宇宙開発はソ連に大きく遅れをとっていました。世界初の有人宇宙飛行も、人類初の船外活動も先を越されます。NASAの宇宙飛行士となったニールは、ヒューストン宇宙センターで訓練を始めました。訓練は過酷でしたが実際の飛行はもっと過酷で、親しくなった仲間たちが月に到達することなく次々と命を落としていくんです。ミッションの指令が来ると、家族はもう2度と会えないかもしれないと言う覚悟が強いられました。家族ぐるみで親交のあったエド、ガス、ロジャーの3人が、アポロ内部での火災で逃げ場もなく丸焦げになった事故は衝撃的で、世論にも大きな影響を与えます。莫大な予算と人命を賭けたソ連との宇宙競争に一体どんな意味があるのかと。そしてついにニールに順番が回ってきます。船長に任命され、アポロ11号が月面着陸に向けて打ち上げられます。成功するのは分かっているのにハラハラしました。他のドキュメンタリー番組でも、月面着陸がどんなにギリギリセーフだったかは見て知っていましたが、この映画の映像はリアルでしたね。本当に手に汗握る感じで、家族の不安もビシビシ伝わってきました。『ファースト・マン』(原題: First Man)は、デイミアン・チャゼル監督による2018年のアメリカ映画です。ライアン・ゴズリングがニール・アームストロングとして登場した時、ラ・ラ・ランドのイメージが残っていたのでもっと陽気な感じに演じるのかと思いましたが、真逆でしたね。すごい硬派でした。宇宙といえばこの人、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めています。おとぎ話ではないリアルな、ある意味ダークな宇宙開発ものでした。オススメです。今日未明に、日本のベンチャー企業が世界初の民間による月面着陸に挑みましたが、残念ながら通信が途絶えたと言うニュースが流れていました。無人機ですから人命被害はありませんが、着陸する前に燃料切れになって月面に激突したそうです。それだけ月に着陸すると言うのは難しいことなんですね。次のチャレンジに期待します。
2023/04/26
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ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の女性初の首席指揮者リディア・ター。冒頭に彼女の素晴らしい経歴が紹介されるので実話かと思ってしまいましたが、まだベルリン・フィルに女性の首席指揮者はいなかったようです。あるスキャンダルによって地位も名誉も全て失っていく天才音楽家をケイト・ブランシェットが演じます。ベルリンに向かう飛行機の中で見たのでタイムリーでした。ベルリン・フィルの拠点となっているコンサートホール、2023年4月1日に見てきました。エープリルフールだけど本当の話ですよ。リディア・ターは、作曲家としても指揮者としても高く評価されていました。マーラーの交響曲第5番の演奏を彼女の指揮で録音することになっています。リディアは大学でも講義をしていて、若く才能のある生徒を見つけると、立場にモノを言わせて手を出していたようです。ドイツでは2017年に同性婚が合法と認められていて、彼女にはシャロンと言う妻がいました。シャロンはリディアの嗜好を知っていましたが、よくできた妻のように見て見ぬふりをしていたんですね。ある日、リディアがかつて指導した若手指揮者が自殺して、パワハラ疑惑をかけられることになります。スキャンダルによって輝かしいキャリアは地におち、首席指揮者の地位は奪われ、マーラーの録音もキャンセル。行き場を失ったリディアは、職を求めてドイツを離れることになります。『TAR/ター』(原題:Tar)はトッド・フィールド監督による2022年のアメリカ映画です。第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で、ブランシェットは2度目の最優秀女優賞を受賞。第80回ゴールデングローブ賞でも主演女優賞(ドラマ部門)を受賞し、第95回アカデミー賞では受賞は逃しましたが、作品、監督、脚本、主演女優ほか計6部門がノミネートされました。予告編は不気味ですがホラーではありません。じわっと重い、印象に残る映画です。実話だと思ったほど、リディア・ターの存在がリアルでした。2023年5月12日(金)に全国ロードショー開始です。公式サイトはこちらです。
2023/04/25
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東京から京都へ向かう新幹線の中で事件は起こります。それも一つではなく、畳み掛けるようにいくつも。いろんな組織の殺し屋が、いろんな目的を持って乗り合わせるんです。新幹線は高速で移動する密室ですから、相当スリリングな展開が期待されます。木村の目的は復讐でした。幼い息子が屋上から突き落とされて意識不明になっています。ターゲットのプリンスを追って新幹線に乗ります。レディバグ(ブラッド・ピット)も同じ新幹線に乗っていました。仲介屋のマリアビートルから、あるブリーフケースを回収する依頼を受けています。そろそろ引退を考えていますが、自他共に認める世界⼀運の悪い殺し屋でした。誘拐されたホワイト・デスの息子を中国マフィアから救出した殺し屋コンビ、タンジェリンとレモンも乗っていました。息子と身代金の入ったブリーフケースは京都で引き渡す予定です。ホワイト・デスというのがロシアの犯罪組織の大ボスで、木村の父親エルダー(真田広之)の宿敵なんですね。エルダーもこの新幹線に途中から乗り込んできます。木村が狙っているプリンスというのは、イギリス人女子高生なんですが、頭キレキレの殺し屋で、彼女も同じブリーフケースを狙ってこの新幹線に乗っていました。レディバグはこういった複雑な事情を知らずにブリーフケースを盗み出します。京都に着く前に途中下車しようとしますが、彼に恨みを持つウルフという殺し屋が乗り込んで来てしまうんです。時速数百キロでぶっ飛ばす弾丸列車(ブレット・トレイン)が、とんでもないことになっていきます。『ブレット・トレイン』(原題:Bullet Train)は、デヴィッド・リーチ監督による2022年のアメリカ映画です。原作は伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』。新幹線の割には日本人の乗客が少なく、列車のつくりも実物と全然違いますが、車内販売はそれっぽい雰囲気出してました。真田広之が日本刀振ってるのが一番しっくりきましたね。それ以外は、あり得ないでしょみたいなドタバタで笑えそうで笑えません。アクション映画好きはこういうのが好きかも。大将は気に入ったようです。
2023/04/23
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若草物語は昔好きでよく読みました。知っている幾つかのエピソードが思い出として登場します。でもこの映画は、物語として知っている若草物語の続編のような話でした。19世紀半ばのニューヨーク。女性の立場はまだ低く、いい結婚が最高の幸福とされていた時代です。ジョーは家庭教師の傍ら、短編小説を書いては出版社に持ち込んでいました。自立した作家として生きていきたかったんです。故郷のマサチューセッツ州コンコードでは、長女メグが質素な生活に耐えながら双子の赤ちゃんを育てています。夫は隣人の富豪ローレンス邸に家庭教師として雇われていたジョン。愛する人との結婚が最高の幸せと思っていました。病弱でおとなしい性格の三女ベスは、ローレンス邸に通いピアノを弾かせてもらっていました。困っている人たちにてをさしのべることが、彼女にとっての幸せだったんです。末っ子エイミーは、マーチ伯母さんとヨーロッパに花嫁修行に行っています。経済的な安定と、それをもたらす結婚が彼女の理想でした。ローレンス家の跡取り息子ローリーは、ジョーにプロポーズしてふられ、ヨーロッパへ失恋旅行中。伯母さんの手引きで裕福な実業家フレッド・ヴォーンと婚約間近なエイミーと会っていました。ニューヨークで一人暮らしのジョーは、妹ベスの病気が悪化したことを知り故郷へ帰ります。過去のいろいろなエピソードが登場します。そういえばこの四姉妹の父親は南北戦争に従軍しているんでしたね。舞踏会や観劇、スケートや猩紅熱、クリスマスの思い出など本で読んだことのあるお話です。ベスに勧められてジョーは自分達姉妹の物語を書き始めます。タイトルは『若草物語』(Little Women)。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(原題:Little Women)は、グレタ・ガーウィグ監督による2019年のアメリカ映画です。主演はシアーシャ・ローナン、原作は勿論オルコットの小説『若草物語』です。第92回アカデミー賞では作品賞など6部門でノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞しました。メグ役のエマ・ワトソン(ハリー・ポッターのハーマイオニ)がダントツ可愛かったです。マーチ伯母さん役のメリル・ストリープが存在感ありました。ゆったりと家族で観られる映画です。
2023/04/21
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1970年代、みんながディスコでフィーバーしていた時代。グルーは、ヴィシャス・シックスと呼ばれる悪党軍団に憧れる少年でした。ミニオンたちは、グルーの手下になろうと必死にアピールして認められ、彼をミニボスと呼んで慕っています。ヴィシャス・シックスのリーダーだった伝説の悪党ワイルド・ナックルズが追放され、欠員を埋める面接にグルーが臨むんです。まだ10歳くらいでしたが悪知恵は人一番のグルーですから、悪党軍団を出し抜いて怒りを買い、誘拐されてしまいます。ミニボス救助のために、ミニオンズはカンフーの達人のマスター・チャウの弟子となってカンフーをマスターすることになりました。日本語吹き替え版で見たんですが、グルーの声が笑福亭鶴瓶さんだったのでイマイチ子供らしさに欠けましたね。時々出てくる日本語のミニオン語が笑えます。『ミニオンズ フィーバー』(Minions: The Rise of Gru)は、2022年のアメリカ映画です。2015年に公開された『ミニオンズ』 の続編で、監督はカイル・バルダ、共同監督はブラッド・アブルソンとジョナサン・デル・ヴァルでした。長編スピンオフとしては1作目の方が面白かった気がしました。ブルーレイ買ったし。
2023/04/07
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『冨嶽三十六景』で有名な葛飾北斎の一生を描いた映画を見ました。娘のお栄を主人公としたアニメは見たことがあります。父親の北斎に関してはよく知らなかったので、いろんな発見がありました。この体制で一日中描くのは疲れそうですね。北斎が生まれたのは1760年です。幕府は10代家治、ちょうど田沼意次が権力を振るった時代です。鬼平犯科帳とかね。歌舞伎絵などを手広く扱っていた版元は江戸幕府に目をつけられて、店に踏み込まれた上、商品を燃やされるなど厳しい取り締まりを受けていました。映画は4章に分かれていました。砂浜に絵を描いていた子供時代から、青年時代の売れない絵師だった頃が第1章の始まりです。浮世絵師・勝川春章の門下となりますが、身勝手な振る舞いが師匠の反感をかって破門になってしまうんです。江戸の下町長屋、日々の米にも困窮するほどの貧乏暮らし。しかしある日、版元で目利きの大旦那・蔦屋重三郎がうちで描いてみないかと訪ねてくるんです。あまのじゃくな北斎を、わざと売れっ子の喜多川歌麿や東洲斎写楽に会わせてライバル心を煽りました。歌麿は吉原に入り浸って美人画を描き続け、写楽はまだ子供ながら独創的な視点で歌舞伎絵を描きます。北斎は自分にしか描けない絵はなんなのか、大自然と命懸けで向き合って独特な波の表現を見つけるんです。70歳を超え、弟子たちに囲まれた日々の中、ある日脳卒中に見舞われます。肝心の右手が動かなくなって、いよいよ絵描きとして終わりかと思われましたが、不自由な体のまま旅に出るんですよ。弟子の一人でも付き添ったらいいのにと思ってしまいましたが、一人でよろよろ歩いていくんですね。そして見た美しい富士山を『冨嶽三十六景』としてまとめます。この精神力の強さ、描くことに対する執着は本当にすごいです。北斎は戯作の挿絵もよく描いていました。武士でありながら禁じらた戯作を作り続けていた柳亭種彦とは特に気があって、一緒に創作活動に励んでいたんです。しかしそれが幕府に発覚し、種彦は非業の死を遂げます。難を逃れた北斎はお栄と共に弟子の一人だった、信濃国の高井鴻山を頼り、そこでまた自慢の腕を奮い始めます。北斎は江戸時代にしては長生きだったんですね。酒もタバコも好まなかったようで、好きな絵を好きなだけ描いて90歳まで生きたとか。それでも死に際に、あと10年生きられたらもっといい絵が描けたと言ったそうです。『HOKUSAI』(ほくさい)は、2021年に公開された日本映画です。監督は橋本一、葛飾北斎の少年期は城桧吏、青年・壮年期を柳楽優弥、老年期を田中泯が演じました。最後に青年の北斎と老人の北斎が二人並んで海の絵を描くんですが、素晴らしい演出で、まるで波の音が聞こえるような気がしましたよ。面白い映画でした。おすすめです。
2023/03/23
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モリー・ブルームは、ソルトレイクシティ五輪のモーグルでメダルが期待される選手でした。代表選考会での怪我で選手生命を絶たれますが、頭脳明晰だった彼女は法律家を目指すことにします。これまで父親の圧倒的なスパルタ・トレーニングに耐えてきた彼女は、心機一転暖かいロサンゼルスに移り住み、ロー・スクールに通う前に1年間休養を取ることにするんです。そこから始まる人生の大転換。これはモリーが2014年に出版した自叙伝に基づいて制作された実話です。モリーはハリウッドのクラブで働き始めました。そこで知り合った不動産業の男にアシスタントとして雇われ信用を得ると、彼が闇で運営しているポーカークラブを手伝うようになります。客は映画スターなどのセレブばかり。大金が動き、高額のチップに生活も潤ってきたモリーは、持ち前の美貌と頭脳でカモになる客を調達したりクラブ運営のノウハウを学んでいくんです。やがてモリーは上客を引き抜き、自分のクラブを立ち上げて運営するようになります。意見の行き違いでロサンゼルスで店を畳むことになっても、ニューヨークで再起しギャンブル好きのセレブの間でモリーのクラブは有名になっていきました。しかしかつてクラブに来ていた客が詐欺で逮捕され、彼の供述によってモリーもFBIに目を付けられてしまいます。政財界の大物や有名スポーツ選手、ロシアのマフィアなど様々な著名人たちを顧客に持っていたモリーは、取り調べで情報提供を求められますが頑なに拒否。ギャングに押し入られたり、薬漬けになったり散々な生活でしたが、一本芯は通っているのでなんとなく安心して見ていられました。子供の頃からスポーツで鍛えられていたせいか、メンタルが強いんですよ。普通なら挫けそうになる状況でも、負けないんですね。美しくて強い女性、かっこいいです。『モリーズ・ゲーム』(Molly's Game)は、2017年のアメリカ映画です。監督・脚本はアーロン・ソーキン、主演はジェシカ・チャステイン。ソーキンは第90回アカデミー賞で脚色賞にノミネートされました。面白かったです。
2023/03/03
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人気ミステリー作家ハーラン・スロンビーが、85歳の誕生パーティーの翌朝に死体で発見されました。手にしたナイフで喉を切っての自殺と警察は判断しますが、動機が分からないので事情を聞くためにパーティに参加していた家族に一人ずつ話を聞いていきます。警察と一緒に話を聞いていたのは私立探偵ブノワ・ブラン。捜査に参加してほしいという手紙と共に大金が送られてきて、依頼人不明のまま立ち会うことになりました。名探偵ブノワ・ブラン役が、007でお馴染みのダニエル・クレイグだったのでイギリス映画だと思っていたんですが、舞台はニューヨーク郊外だったんですね。大きな屋敷には所狭しとミステリアスな調度品が置かれていて、かなり裕福だった事がわかります。ナイフのコレクターだったのか、ゲーム・オブ・スローンズの王座のようなたくさんのナイフを放射状に配置したインテリアが印象的でした。長女リンダは不動産業で成功し、夫リチャードとの間に金遣いの荒い問題児ランサムがいます。長男は既に亡く、未亡人のジョニは大学生の娘メグの学費をハーランに援助してもらっていました。次男ウォルターは父親の出版社を任されています。家族以外で事情を聞かれていたのはハーランの看護師だったマルタ。嘘をつくと吐いてしまうという正直者で、ハーランには心から信頼されていました。母親が中南米からの違法入国者なんですが、その秘密を知っているのはハーランとメグだけ。ブランの頼みで捜査に協力することになりました。癖の強い登場人物たちの裏の顔がブランによって次第に明らかにされ、遺産相続に絡む厄介な事態に発展します。2時間ものの映画なんですが、1時間くらいで真相が明らかになってしまいこの先どうするのかと逆にハラハラしてしまいました。裏の裏があるんですよ。見てのお楽しみ。『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(原題:Knives Out)は、2019年のアメリカ映画で、ライアン・ジョンソン監督が脚本も手がけた作品です。最後の最後にとんでもない事が起こりますが、最高に面白かったです。ミステリー好きの皆さんに是非おすすめです。
2023/02/17
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記憶喪失の男ジェイソン・ボーンのスパイ映画3部作『ボーン』シリーズ。自分は一体どこの誰なのか、多言語をあやつれたり、なぜか反射的に体が動いてすごい身のこなしが出来てしまったり、知恵も回ってますます自分自身が謎でした。手がかりは皮膚に埋め込んであったスイス銀行の貸金庫の番号のみ。貸金庫から出てきたのは複数の偽造パスポート、大量の札束、そして拳銃。パスポートの一つに記されていた名前は、ジェイソン・ボーンでした。全部見たつもりでいましたが、第1作『ボーン・アイデンティティー』(2002年)、第2作『ボーン・スプレマシー』(2004年)を見た後、第3作『ボーン・アルティメイタム』(2007年)を見ずに第4作『ボーン・レガシー』 (2012年)に走っていたことに最近気づいたんです。3作目のご紹介も兼ねて、シリーズの最初から物語を追っていきたいと思います。漁船に救助された記憶喪失の男は、自分探しを始めます。ボーンは、なぜかCIAに追われていました。銀行を訪れたことで生存が発覚し、エージェントたちがボーンを葬ろうとするんですが、何をやらせても彼の方が一枚上手なんです。偶然居合わせたマリーに、パリまで車で送ってくれたら1万ドル出すと言って難を逃れますが...。逃亡劇から2年、ボーンとマリーはインドで静かに暮らしていました。しかしのCIAの襲撃を受けて、マリーを殺されてしまうんです。ボーンは復讐に燃えます。断片的に記憶も取り戻してきました。復讐を果たしてから半年が過ぎ、ボーンはトレッドストーン計画の決着をつけようと動き出始めました。トレッドストーン計画についての記事を書いた新聞記者サイモンと接触するためイギリスにやってきたボーンですが、CIAの狙撃手によってサイモンは消されてしまいます。ボーンは、ある目的のためにCIAが実験的に作り出した凄腕の暗殺者だったようです。計画失敗の証拠隠滅のためにずっと命を狙われていましたが、ついにボーンはその元凶に迫り真実に辿り着くんです。ボーンシリーズはアメリカ映画で、第1作目はダグ・リーマン、第2作と第3作はポール・グリーングラスが監督しています。原作はロバート・ラドラムの暗殺者シリーズ。マット・デイモンがボーン役を演じています。面白い映画です。すごくオススメです。第5作もあるらしい。非日常を体感したいあなたへ
2023/01/18
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四角四面のお役所仕事に対して不満を抱いたことがある方、その中で地獄に仏のような優しい職員に出会ったことがある方、いろんなシーンで『自分だけじゃないんだな』と思える映画だと思いました。これは貧しい中にも心を通わせ、正しく起きようと努力する人々の物語です。イギリスのある町で妻の介護を続けながら大工をしていたダニエル・ブレイク59歳。妻が亡くなり子供もない彼は、仕事中に心臓発作を起こして40年間続けてきた仕事を辞めざるを得なくなります。病気による支援手当を受けようとしますが、受給の資格なしという通知が届き、不服を申し立てようにも電話も繋がらないし、役所に行ってもパソコンが使えない人には申し込みさえできないんです。一人だけ役所にアンという親身になってくれる女性がいるんですが、他の職員から非難されて彼のために余計に時間を使うことができませんでした。ダニエルは役所で、同じように融通の利かない扱いを受けていたシングルマザーのケイティに出会います。ダニエルは家の修理や子供達の世話など親身になって彼女たちを助けようとしますが、どちらも金銭的に余裕のない生活を送っていました。病気による支援手当がダメなら失業手当をもらおうと役所にかけあいますが、そのためには求職活動をしている証拠が必要だと言われ、履歴書の書き方講座を受けるようにと言われます。病気のために働くこともできず、支援金ももらえず、失業給付金ももらえない状況で生活に困ったダニエルは、役所の対応に業を煮やしついに過激な行動に出るんです。『わたしは、ダニエル・ブレイク』(原題:I, Daniel Blake)は、2016年のイギリス・フランス映画です。ケン・ローチ監督が、80歳にして2度目のカンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを受賞したヒューマンドラマ。第69回ロカルノ国際映画祭で観客賞ほか、多くの映画祭で作品賞を受賞しています。映画では困っている善良なる市民を助けない役所仕事を非難していますが、どうにもならない現実にもどかしさを感じました。とてもいい映画です。おすすめです。いい映画を見たい人はこちらから
2023/01/15
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人生の終わりをどう迎えるか。大きなテーマですね。自分のキャリアをどう築いていくか。これも大きなテーマです。ビジネスに成功し裕福な暮らしを送る老婦人と、これからどう生きていったらいいか悩む若い女性記者の出会いが素晴らしい友情を育んでいきます。逆境に屈せず一代で財を築いたハリエット・ローラーは、全てを自分の思い通りにコントロールする気質の、いわゆる扱いにくい老人でした。裕福な一人暮らしにも飽きて、そろそろ死のうかと薬を大量に飲んで緊急搬送されるといった、自分の命さえもコントロールしようとするんですね。ある日、ふと目にした新聞の訃報記事。生前その人がどんなにいい人だったかを綴っていました。自分の死亡記事もいいものにしたいと思いつき、地方新聞社の若い女性記者アン・シャーマンを雇います。新聞社に多大な貢献をしてくれている得意先の広告代理店創設者ですから断ることもできず、上司からの命令に渋々取材を始めたアン。しかし、親族も、元会社の同僚も、美容師ですら彼女を良くいう人はひとりもいません。アンと話すうちにハリエットは、自分の人生を今から変えるしかないと考えるようになります。訃報の記事には4大要素が必要だと気付いたハリエット。1 家族に愛されていたこと2 仕事の仲間に尊敬されていたこと3 誰かの人生に影響を与え、変えたこと4 ワイルドカード:誰もが驚くようなことをすることなんとラジオ局に大量のレコードを持ち込み、DJとして働くことにするんです。両親に問題があって施設に預けられている少女ブレンダの後ろ盾になったり、疎遠だった家族と再会の機会を作り心を通わせたり。訃報記事のネタづくりに協力していたアンも、彼女の生き方に影響を受けるようになります。ハリエットはアンに言いました。『失敗しなさい。失敗から学ぶことは多いわ。失敗があなたを強くするのよ。』アンも自分は一生このまま誰かの死亡記事を書いて終わるのかと悩んでいたんです。彼女にも作家になると言う夢がありましたが、失敗するのを恐れて踏み出せずにいたんですね。『あなたの旅立ち、綴ります』(原題:The Last Word)は2017年のアメリカ映画です。監督はマーク・ペリントン、主演はシャーリー・マクレーンとアマンダ・セイフライド。老婦人ハリエットの名言がそこここに光って、とてもいい映画でした。おすすめです。
2023/01/13
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深く心が傷つくと、触れられるのを恐れて人を避けるようになりますね。何かに没頭することで、考えないように無理に頑張ったり。時が癒してくれるとよく言われますが、一体それは何年かかるでしょうか。誰かに話すことで、ほんの少し心が安らぐこともあるかもしれません。チャーリーは愛する妻と3人の可愛い盛りの娘がいました。ニューヨークで歯科医をしていた彼に、突然の悲劇が降り掛かります。9.11テロでビルに突っ込んだ飛行機に、妻子全員が乗っていたんです。あまりにも大きな喪失感にチャーリーはやる気を失い、心を閉ざしたまま自宅で『ワンダと巨像』ゲームに没頭し、キッチンのリフォームを何度も繰り返す日々を送っていました。ある日、大学時代のルームメイトだったアランが街でチャーリーを見かけます。噂でチャーリーの悲劇を聞いていたアランは、彼に声をかけ一緒にコーヒーを飲んで大学時代の話をしました。歯科医として成功し、裕福な家庭を築いているアランも、誰にも言えない悩みを抱えていて、アランにとってチャーリーの存在はたった一人の『話せる』友達でした。何度か会ううちにチャーリーも次第に心を開いていきますが、話が家族に及ぶと敵意をあらわにして拒否反応を示します。アランはなんとかチャーリーを救いたいと知り合いの精神科医を紹介します。しかし深く傷ついた心はそう簡単には癒すことはできません。亡くなった妻の両親も、アパートの管理人も、専属の税理士も、周囲がどんなに心を砕いても、チャーリーの心には痛みでしかないんです。そしてとうとう情緒不安定となって事件を起こしてしまいます。『再会の街で』(原題:Reign Over Me)は、マイク・バインダー脚本・監督の2007年のアメリカ映画です。ハッピーエンドという感じではありませんが、傷ついた人たちの心が少しずつ上向きに変わっていく終わり方でした。いい映画です。おすすめです。
2023/01/10
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『アメリカズ・ゴット・タレント』をご存知でしょうか。100 万ドルの賞金を目指して競い合うアメリカで人気の才能発掘番組で、2022年放送の第17シーズンは、サイモン・コーウェル、ハイディ・クルム、ソフィア・ベルガラ、ハウィー・マンデルの4人が審査員でした。サイモンはこの手の番組のイギリス版『ブリテンズ・ゴット・タレント』でも審査員を担っていて、第1回優勝者は映画にもなったポール・ポッツ。歌だけでなくダンスやマジック、あらゆるジャンルの我こそはという人たちが登場するおもしろい番組です。で、去年放送された番組になんとエルビスが出演したんです。曲は『ハウンドドッグ』と『悲しき悪魔』の2曲。現代によみがえったエルビス。そっくりさんにしてはあまりにそっくりすぎて不気味でした。エルビスだけでなく、審査員のハイディやソフィアまでコーラスとして登場し、なんとサイモンまで。この映像は本当にびっくりしました。サイモンもあんぐり。トム・クルーズのディープフェイク動画で話題になったAIテクノロジー企業『メタフィジック(Metaphysic)』が手がけた映像技術らしいです。ビジュアルだけでなく、話し方も歌声もそっくりなんですよ。もうスターはライブツアーしなくてもステージに立ってるように見せられますし、すでにこの世にないあらゆる人々を生きているように映像化できるということですよね。こちらはエルビスがデビュー当時、アメリカの人気番組『エド・サリバン・ショー』に出演した時の映像です。本家本元の『ハウンドドッグ』。猟犬(Hound Dog)のくせにウサギも捕まえられずに吠えてるだけのお前なんて友達じゃねえと歌ってます。映画『エルヴィス』でも紹介されてましたが、彼が指を動かすだけで大騒ぎだったんですね。今日はエルビスの88歳の誕生日です。彼も復活映像に天国でビックリしたかもしれません。
2023/01/08
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輪廻転生というのが本当にあるのか分かりませんが、前世のことを覚えている子供がいるという話もあったりするので漠然とそうなのかなあと思っています。今日ご紹介するのは、前世を覚えている犬のお話です。犬は犬として何度でも生まれ変わるんでしょうかね。主人公の犬は5回生まれ変わっていました。熱中症で死にかけていたレトリバー、イーサンという子供に命を救われて一緒に暮らすことになります。ベイリーと名付けられてイーサンの親友になりました。彼の特技はくるくる回って自分の尻尾をかむこと、潰れたアメフトボールをイーサンの背を踏み台にして高く飛んでキャッチすることです。イーサンはハイスクールのアメフト部でクォータバックを務め、奨学金でミシガン大学への進学も決まっていました。イーサンが取り持つ仲でハンナという恋人もできます。しかしチームメイトのひがみで家に花火を投げ込まれ、イーサンの自宅は全焼、脚を怪我したイーサンは選手生命を絶たれて自暴自棄になってしまいます。何回か転生を繰り返したベイリーは再びイーサンに出会うんです。姿かたちは違っても自分はむかし親友だったベイリー。しかし一人で農場に暮らす50代くらいになったイーサンに、生まれ変わりだと分かってもらえません。犬の演技ってすごいですね。トレーナーさんがすごいんでしょうね。思わず物語に引き込まれてしまいました。『僕のワンダフル・ライフ』(原題:A Dog's Purpose)は、2017年のアメリカ映画です。原作はW・ブルース・キャメロンの小説『野良犬トビーの愛すべき転生』、ラッセ・ハルストレム監督作品です。亡くなっても、また別の形で戻ってきてくれたら家族は嬉しいだろうなあと思いました。
2023/01/03
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ローマの半分を焼き尽くした大火災の首謀者として、キリスト教徒パウロは獄に繋がれ処刑を待つ日々を送っていました。皇帝ネロの残虐さは激しさを増し、キリスト教徒への迫害がエスカレートしていきます。仲間だったルカは、獄中で鞭打たれボロボロになった老人パウロのもとを訪ね、彼の貴重な言葉を書き残していきました。『新約聖書』の著者の1人である使徒パウロ。 クリスマス・イブですから、すこしだけでもキリスト教のことを知ろうと思って観た映画です。紀元67年。暴君として名高いローマ皇帝ネロの命令によって、キリスト教徒は街の松明として火あぶりにされていました。大火災の真犯人はネロではないかと市民たちも疑っていましたが、罪を一身に背負ったパウロは暴力の暴力による対抗を避け投獄されます。ローマのキリスト教徒が隠れて生きるコミュニティでは、戦争によって親を失った子供たちや生活にあえぐローマ人を救済し、つつましく助け合いながら祈りの日々を送っていました。アキラとプロスカがコユニティの中心でしたが、パウロが投獄されたことでこの先どうして良いのか不安に思っています。医者だったギリシャ人のルカは、毎晩のようにパウロを訪ね、彼の生い立ちや言葉を書き記して世に残そうとしていました。パウロはもともとタルソのサウロと呼ばれた裕福なユダヤ人で、ローマ市民権も持っていました。当時は新興宗教だったキリスト教を憎み、教徒を迫害する一人だったのです。しかしある日、かれに主の天啓が降るんですね。そして改宗し、神の言葉を伝えながら30年にわたって1万6千キロを旅し普及活動に励みました。マウリティウスはローマの神々を信仰する獄舎の長官です。彼には病気の娘がいて、ローマの医者からはサジを投げられていました。皇帝の命令なのでパウロを処刑せざるを得ないんですが、獄中にいる間に次第にパウロの言葉に心動かされるようになるんです。ルカの医者としての手腕にも。聖書にルカの書というのがあると知っている程度で読んだことはないんですが、ちょっと読んでみたくなりました。パウロは処刑の前日、マウリティウスにこんなことを言っていました。君は海を旅したことはあるか。目の前に大海原が広がっている。水面に手を伸ばし、海水をすくったとしても、あっというまに水は指の間からこぼれ落ちていく。人の命も同じだ。生まれてから死ぬまで、あっという間に過ぎる。だが天国ではそうではない。そこでは永遠に生きられる。人の命は流れ落ちる水にすぎない。だが主に従うものは、広大な海の一部になれる。『パウロ 愛と赦(いや)しの物語』(原題:Paul, Apostle of Christ)は、2018年のアメリカ映画です。監督はアンドリュー・ハイアット、ルカ役はジム・カヴィーゼル、パウロ役はジェームズ・フォークナー、マウリティウス役をオリヴィエ・マルティネスが演じています。ちょっと暗いですけど、いい話でした。
2022/12/24
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サッカーW杯カタール大会もいよいよ準決勝と決勝を残すのみとなりました。カタールには野良猫が多いそうで、イングランド代表が大会中に仲良くなった野良猫のデイブをイギリスに連れて帰ることにしたというニュースが流れていましたね。イギリス人は動物好きなんだそうです。動物愛護団体の力もかなり強いという話。今日ご紹介するのは、野良猫との出会いでどん底から救われた若者の実話です。ストリート・ミュージシャンとして生計を立てていたホームレスの青年ジェームズ。薬物依存から抜け出すための更生プログラムを続けてはいますが、友達のバズに勧められると生活の苦しさから逃避するためか再び手を出してしまう始末。親にも見放され、食べて行く金もなく、ゴミ箱をあさるどん底の生活を送っていました。離婚して別の家庭を築いていた父親に街で出会い、わずかばかりのお金を手渡されます。ソーシャルワーカーのヴァルは、彼の歌に更生の可能性を見出したのか、住居をあてがいました。久しぶりの屋根のある家、お湯の出る蛇口、バスタブ、暖かいベッド。彼にも少し運が向いてきたのでしょうか。そこへ窓の隙間から茶トラの猫が入り込んできました。飼い主もいない野良猫でしたがジェームズにすぐに懐き、隣人のベティがボブと名付けます。父親からもらったなけなしの金でボブを動物病院に連れて行って怪我を診てもらったり、わずかな食料を分け合ううちにジェームズとボブの間には離れがたい絆ができたようでした。ボブとストリートライブを始めると、人々の注目の的となり収入も上がってきました。しかしささいなきっかけで路上ライブは禁止され、上手く行きかけていたベティも引っ越してしまい、父親との溝も埋まらず、ボブまで行方不明になって再び麻薬に手を出しそうになるんです。でも幸運の茶トラは彼を見捨てていませんでした。ボブと一緒に演奏する姿はSNSで全世界に拡散され、ボブも家に戻ってきて、彼の自伝を出版してみないかという話まで舞い込んできます。『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(原題:A Street Cat Named Bob)は、2016年のイギリス映画。 ロジャー・スポティスウッド監督作品です。最初はどうなることかと思いましたが、本当にいい話でした。ときどきカメラが猫目線になるので、思わず猫の気持ちになったりします。オススメです。
2022/12/17
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頭部結合双生児の分離手術を成功させた実在の医師ベン・カーソンの実話です。ベンは子どもの頃、劣等生だったんです。通信簿もFばっかり。ベンと彼の兄の二人をたくましく育て上げたのはシングルマザーだった母ソーニャの功績だと思います。ソーニャも自分の生い立ちに関する心の闇を抱えながらも、子供達を常に励ましていました。みんなができることは絶対あなたにもできる。それ以上にできるはず。九九を覚えること、本を読むこと、テレビは1週間に2番組だけ。ベンは次第に成績が上がり、クイズ番組の答えも回答者より早く言えるようになります。イエール大学で医学を学んだベンは、ジョンズ・ホプキンズ病院で難しい手術もこなす高名な小児神経外科医となっていきます。外科医は知識だけでなく、手先の器用さとか反射神経とか、冷静な判断力とかいろんな才能が求められますね。90分ほどの短い映画なんですが、息詰まる手術シーンのせいかとても長く感じました。ベンの兄もエンジニアになり、二人に勉強の大切さを教え立派に育て上げた母ソーニャですが、実は彼女は13歳で施設を飛び出し字が読めなかったんです。とてもいい話でした。『奇跡の手』(原題:GIFTED HANDS: THE BEN CARSON STORY)は、2009年のアメリカ映画です。監督はトーマス・カーター。日本語版のDVDは発売されてないようなんですが、ひかりTVでは字幕付きが配信されてました。おすすめです。
2022/12/04
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高い任務遂行能力を持つ美しき暗殺者エヴァ。完璧な容姿と知性を持ちながら過去にアルコール依存症となり、脱却するために兵士になって、除隊後この道に入りました。組織からの指令に従ってクールに仕事をこなしつつも、ターゲットがなぜ死ぬ必要があるのかということに常に興味を持っています。この映画の宣伝文句を見た時、ANNA/アナのことを思い出しました。ある任務で誤った情報を伝えられていたため、命からがら脱出するという事件が起こります。彼女は組織の誰かが自分を陥れるために仕組んだものと考えていました。父親のような存在だった上司のデュークが組織トップのサイモンに殺され、彼女にも危険が迫ってきます。ボストンに住む妹の彼氏マイケルは、エヴァの元カレでした。入院している母親も含め、エヴァの仕事については全く知らされていません。サイモンはボストンを訪ねていたエヴァを組織の危険人物と見て殺しにやってきます。殺しのプロ同士の対決ですから、それはもう大変な戦いでした。女性ながら男性に全く引けを取らないエヴァの強さが見応えありです。『AVA/エヴァ』(Ava)は、2020年のアメリカ映画です。監督はテイト・テイラー、エヴァはジェシカ・チャステインが演じています。サイモン役はコリン・ファレル、デュークはジョン・マルコヴィッチ、母親をジーナ・デイヴィスが演じていて、なかなかの大物揃いです。いかにも続きがありそうな終わり方でしたが、果たして続編は製作されるでしょうか。ド派手なアクションに浸れ!
2022/10/28
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30年前、突然人々の前から姿を消した伝説の男が帰ってきました。盲目の超能力者サイモン・シルバー。超能力を否定するものに災いをもたらすと噂され、実際に彼に懐疑的だった記者が突然死したことをきっかけに引退を表明していました。あまりにも意外な大どんでん返しに、呆気にとられた面白い映画です。物理学者のマーガレットは大学で教鞭をとる傍ら、超常現象に見せかけたペテンを暴く仕事をしています。各地から依頼を受け、助手のとトムと共に東奔西走の日々。霊と交信する霊媒師、病気を言い当てる超能力者、それぞれいわゆる手品のようなウラがあるんですね。マーガレットはこれまであらゆる現象を調査・解析してきましたが、全ては科学的に説明ができて、本物の奇跡は見たことがありません。そして復帰したサイモンと対決することになります。こういったサスペンスはネタバレすると面白くないので、ご興味のある方は是非ご覧になってみてください。『レッド・ライト』(Red Lights)は、2012年のアメリカ・スペイン合作映画です。監督はロドリゴ・コルテス、サイモン役のロバート・デ・ニーロが素晴らしい演技を見せてくれます。マーガレット役はシガニー・ウィーバー、トム役をキリアン・マーフィが演じ、想像以上の緊張感を与えてくれます。オススメです。アクション&サスペンス、非日常が見たいとき
2022/10/24
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これまでプレスリーの伝記映画はいくつか観てきましたが、この作品は彼のマネージャーを長年務めていたトム・パーカー大佐にライトを当てた面白い映画でした。メンフィスの小さなレコード制作会社サン・レコードからデビューしたエルビスを一躍スターダムにのし上げたのはトム・パーカー大佐の手腕によるものです。しかし近年になって大佐の知られざる過去が次々と明らかになってきました。歌って踊る若いアイドルたち、今では当たり前ですが、1956年当時のアメリカ、エルビスがデビューした頃は全く違っていました。白人と黒人の住み分けがはっきりした社会で、黒人たちが教会やパブで楽しむ音楽やダンスに白人が興じることはなかったんです。エルビスは家が貧しく住環境が黒人居住エリアに近かったので、幼い頃からその感覚を普通に身につけていたんですね。ロックンロールを熱唱しながら身体をくねらせる彼に、若い女性は熱狂し、大人たちは眉を潜めました。黒人音楽のセンスを持った白人シンガーのエルビス。そんな彼に目をつけたトム・パーカー大佐は、それまで生業としていたカントリーバンドのマネージャーをやめてエルビスを大手レコード会社と契約させ、テレビ出演、映画制作と大スターへの道をお膳立てするんです。しかしなぜか海外公演はさせず、ラスベガスのホテルと契約を結んで華やかなショーを続けさせました。世界中の人が初めて彼のライブを見たのは、ハワイからの衛星中継『エルビス・オン・ステージ』ではないでしょうか。小学生だった私もこのライブをテレビで見て、アポロの月面着陸と同じくらい衝撃を受けました。学校で友達に熱く語ったんですが、エルビスは親と同世代ですのでズレがあり、誰もこの中継を見てる子はいなかったんですよね。ファンになった私は、数年後に彼が亡くなったとき、一日中ラジオを聴きながら部屋にこもって泣いてましたよ。新婚旅行でエルビスの家グレースランドに行ったこと、一緒に映画を見ていた大将と懐かしく思い出しました。トム・パーカー大佐が興行収入の50%をピンハネしていたとか、ギャンブル依存症でツケをチャラにするためにラスベガスでの公演を続けさせたとか、この映画ではビックリするほど悪者に描かれています。専属の医師に注射を打たせて過労で倒れるまで無理にステージを続けさせ、最終的に死に追いやったとも。無国籍のオランダ移民のためパスポートを持てず、エルビスの意思に反して海外公演はしないように仕向けていたとか、実は大佐というのは嘘で、トム・パーカーも本名ではないそうです。『エルヴィス』(原題:Elvis)は、2022年のバズ・ラーマン監督によるアメリカ映画です。奥さんのプリシラを演じたオリヴィア・デヨングが可愛かったですね。トム・パーカー大佐を演じたトム・ハンクスは、さすがでした。エルビス36才の時の復帰ライブや若い頃の白黒映像もテレビの特集番組で何度も見たことがあるので、プレスリー役のオースティン・バトラーが非常によく研究して上手く演じているなあと感心しました。ファンとしては劇場で観たかった映画でしたが、自宅でも十分に楽しめました。お勧めです。<エルビスに関する記事>ラブ・ミー・テンダーThat's All Right Mama監獄ロックブルーハワイLOVE MEブルームーンハートブレイク・ホテルブルー・スウェード・シューズOne NightBlue Christmasmoonlight swim好きにならずにいられないG.I.ブルースNo moreWooden Heart (ムシデン)<エルビスの名前が出てくる記事>アンドレ・スクフカのレッスンDance in 浅草 2005マイウェイツァラトゥストラはかく語りきGW広島&山口クイズ・ショウ鹿嶋市長杯I love him very much.
2022/10/07
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メリル・ストリープという女優さんは本当に何をやらせてもうまく演じるんだなと感心しました。この映画では売れないロック・シンガー役です。さすがアカデミー賞を3度も受賞するだけあります。歌もギターも上手いんですよ。ミュージシャンになる夢を捨てきれずに夫と3人の子供を残して家を出たリンダ。あれから数十年経ち、今ではロス郊外の小さなライブハウスでバンド「リッキー&ザ・フラッシュ」のボーカル&ギターを務め、有名曲のコピーを演奏して日銭を稼いでいます。それだけでは生活が成り立たないので、スーパーでレジ打ちのパートもしているんですが、もう破産寸前です。ある日、元夫のピートから電話があります。娘のジュリーが夫と離婚して不安定な精神状態になっているから、実の母親として励ましてほしいと頼まれます。ジュリーにとってリンダは、自分たちを捨てた無責任な母親でしかないので、行ったところで励ますどころか反感を買うばかり。他の二人の息子たちも今では立派な大人になっていて、久しぶりに家族で囲むテーブルは妙に気まずい空気が漂います。クライマックスは息子の結婚式でした。バンド仲間のグレッグがギターを質に入れて資金を作り、バンドみんなで披露宴に乗り込むんです。弦楽四重奏かなんかで上品なムードに包まれていた雰囲気が一変。リンダは得意の歌で会場を盛り上げます。『幸せをつかむ歌』(原題:Ricki and the Flash)は、2015年のアメリカ映画です。監督は『羊たちの沈黙』で、アカデミー賞受賞したジョナサン・デミ、脚本もアカデミー賞脚本賞受賞歴のあるディアブロ・コディが務めるという、すごい布陣でした。娘のジュリーを演じたメイミー・ガマーはメリル・ストリープの実の娘だそうです。道理で横顔がそっくりで、よく似た人を見つけてきたもんだと思っていたんですよ。さらにリンダの恋人兼リードギターのグレッグ役は、やけにギターがうまいと思っていたら80年代のスーパーアイドル、リック・スプリングフィールドでした。今でもかっこよかったです。私も昔ミュージシャンになる夢を持っていましたが、この映画を見て、もしそうしていたらこんな風に破産寸前になっていたのかなと思いました。若い頃はいいですけど、ヒットが出ないまま年取ると大変ですよ。うちのバンドは震災後自然消滅してしまって、今では懐かしい思い出です。
2022/10/06
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