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カテゴリ: 實戦刀譚

軍刀修理実施中に於ける観察考究の概略


 毀損の箇所及び程度


 外装の毀損最も多かりしは柄の部位にして、柄の破損、柄糸の磨滅、
目釘穴を中心とする諸故障はその数全部の修理の七割に達し、
柄のいかに大切なるかを切実に感ぜしめたり。
しかもこの事実の新制式外装にことに多かりしは、
はなはだ遺憾とするところで、ただ徒〔いたずら〕に外装上の美に囚われ、
戦闘に対処する実質的方向を閑却せるは、畢竟〔ひっきょう〕、
治に居て乱を忘れたる外装業者の堕落なると同時に
一面佩用者が営利に汲々たる御用商人に一任して、
注意と吟味とを怠りし自責またけっして軽からず。
将来のため留意すべき点なりを思料せらる。
柄の折損は、新古共に『中心〔なかご〕』短きため
その先のあたりより折れたるもの、
新制式にして柄頭金具の下部に柄巻き止めの穴を穿〔うが〕ちたるものに限り、
その穴の辺より折れたるものにひとつの例外なかりしは、
以て後車の鑑戒とするに充分なり。
 新制式軍刀の柄木折損、柄糸磨滅及び目釘穴附近の諸故障と、
古様式のそれとは、数においては、
新制式四一・五%、旧制式一〇・〇%、古様式四八・五%、を示せるが、
前述修理数の比率、新制式四〇・八%、古様式五〇・四%、とを比較考察せば、
現代製新制式の故障が、近古製古様式のそれより若干多きを知るべし。
 目釘穴を中心とせる諸故障中の主なるものは、目釘穴の磨滅、目釘の折損、
目釘と中心穴と柄穴の太さの不一致による鍔元の緩みにして、
その他鯉口、発条、鞘の故障も相当にあり。

 刀身の鍔元または中央その他より折れたるものには一振りにも接せず、
湾曲せるもの、刃こぼれは相当にあり。
概して古刀には湾曲多くして刃こぼれは少なく、新刀新々刀に比して、
現代刀は、例えば鋳物の欠けたるがごとき刃こぼれの跡を見せ、
在銘物よりも無銘物の刃こぼれ多かりしがごとし。
 刀身湾曲は、ほとんど直角に近き物(砲車にはさまれて鞘ごと曲がりたるもの)
ありたるも、幸いに些〔いささ〕かの横疵をつくることなく修理し得たり。

 修理中の見聞によれば、軍刀の選定にあたり、
作者の名声を主としたるもの、
自己の武技、力量その他を深く考察に入れ、
それと適合したる堅牢刀を主としたるもの、のニ方面に接したり。
いたずらに作者の名声に憧憬して、
古刀の大磨り上げ研ぎ減りを用意せるものよりも、
むしろ新刀第三流鍛冶の上作中より、
寸尺、身幅、反り具合、重ね、中心等を考査吟味したるを上策となす。
 世に“鈍刀”なる語あれども、鍛錬して適当に行なわれ、
鋼材の組み合わせもまた法に叶〔かな〕い、
焼き入れの確実なる日本刀は、新古現代を問わず切れ味よろしくして、
かの青龍刀及び日本刀を模造したる支那刀に比較すれば
「眞正日本刀に鈍刀なし」と確言して憚〔はばか〕らざるなり。






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Last updated  2013年09月15日 00時23分58秒


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