ふゆのひなこのブログ

ふゆのひなこのブログ

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

ふゆのひなこ

ふゆのひなこ

カレンダー

お気に入りブログ

まだ登録されていません

コメント新着

コメントに書き込みはありません。

フリーページ

2020年06月13日
XML
おはようございます、ひなこです。

舞台はイギリスで、登場人物もイギリス人です。

廊下の向かいの小柄なユダヤ人の女の子には、沢山の夜の訪問者がいる。
きっと彼女は売春婦なのだろう。
この数時間の間に、階段を上ってやって来る音を耳にして、何度もタイプを打つ手を止めた。
しかし、彼らは私のドアを通り過ぎ、彼女のドアの前で立ち止まった。

私の40歳の誕生日が、つい3時間前にやって来た。
最初のうち、私はある特定の焦りを示し、床の上をせかせか歩いたり、時々カーテンから覗き込んで路地を見下ろしたりした。

数分の間、私はこれらの道具について熟考した。厳密にどのようにしてこれらを使うのかという難題に興味をそそられて。
そのような道具の展示場はほとんど使い道がないことが明らかになったので、私はそれらを、幾分乱雑に机の上の一方に押しのけた。
私はJを待っていた。
そして同時に、私が怯えていたことを告白すべきなのだろう。

つい最近、木の彫刻を作っていた時に、私は右手の小指を痛めた。今、その指でタイプのキーを打つ必要がある度に、私は刺すような痛みに悩まされている。
私のすぐ目の前の壁は、チョークのような白色で、壁いっぱいに、私の左側にある幾つかの本棚が奇妙な影を落としている。

私の部屋はとても洒落ている。私の家具の多くは、主に趣味の良い北欧の店で買ったものだ。
その中でも特に、私は部屋の中心を占めているガラス製のコーヒーテーブルを好んでいる。
その上には、注意深く選択したアイテムを置いている。焼き粘土で出来ているハンドメイドの灰皿、入り組んだ紐付きコルクのティーマットのセット、スペインで購入した精巧に作られたコルク用栓抜き。
今は私の近くにある、机の上のドーム型の文鎮は、普段ならテーブルの上に置くアイテムだ。
これらのアイテムの位置を変えないように、私は注意を払っているので、私の武器ギャラリーに加えるために文鎮を移動させた事は、全くもって不本意であった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2020年06月13日 08時20分04秒
[サー・カズオ・イシグロ作品の翻訳] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: