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今日は朝一番で胃カメラの検査の日。
昨夜から絶食。朝起きた瞬間から、胃が「そろそろ何か…」と静かに存在を主張していた。
それでも、お弁当作りだけはいつも通りに進む。
炊きたてのご飯の湯気、焼き上がる卵の香り。食べられない自分だけが、少しだけ世界から外れているような朝だった。
味見は絶対にしない。
何度も自分に言い聞かせながら、菜箸を口に運びかけては「あっ」と止める。
危ない、危ない。
長年の習慣というのは、こういう日に限って牙をむく。
そして問題の瞬間は、お弁当がほぼ完成したあとにやってきた。
庭にプチトマトを取りに出る。
真っ赤なもの、少し傷のあるものを選びながら収穫。
そして「これは入れないでおこう」と思った傷のあるトマトを
気づけば、何の迷いもなく口に入れていた。
パクッ。
……え。
一瞬で頭が真っ白になる。
「あ、食べちゃった……」
今日、胃カメラの検査なのに。
よりによって一番やってはいけないタイミングで。
慌てて病院に連絡すると、しばらく確認のあと、看護師さんから静かに告げられた。
「トマトは赤いので、胃の中の炎症の色と区別がつきにくくなります。それに皮もすぐには消化されないので……」
少し間があって、
「このまま絶食を続けて、午後14時に検査を予約し直して来てください」
受話器を持ったまま、しばらく固まった。
たった一つのプチトマトで、午前の検査は延期。
自分のうっかりが、こんなに大きく跳ね返ってくるとは思わなかった。
お腹が空いていたから、とか、もったいなかったから、とか、そんな言い訳は全部意味をなさない。
ただ一言。
「やってしまった」
それしか出てこなかった。
時計はまだ午前の早い時間を指している。
結局この後数時間は何も食べられず、ただ静かに過ごすしかない。
たった一粒のトマトが、今日の朝をまるごと別の方向へ連れていってしまった。
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