朝鮮語の系統



 19世紀にはすでにヨーロッパにおいて、ウラル・アルタイ諸語、日本語朝鮮語の系統関係に関する論考は発表されていた。
 19世紀末になって、日本人の手による近代的言語学の方法による系統論的研究が始まった。


 小倉進平「朝鮮語の系統」、金沢庄三郎「日韓両国語同系論」が戦前の代表的研究である。

「 以上私の述べ来った所は、主として朝鮮語とウラル・アルタイ諸語との間に存ずる関係であって、南洋語其の他の言語に関してはほとんど言及する所が無かった。随って其の内容は一部の論証に偏し、朝鮮語の真の系統論と称することが出来ぬという非難が起こるかも知れぬ。併しながら朝鮮語とウラル・アルタイ諸語との間に存する各般の類似点が、其の非類似点に比して遥かに優越の地位にあることは、蓋し何人も之を否定することが出来ぬであらう。随って私は朝鮮語なるものは、系統上ウラル・アルタイ語族、殊にアルタイ諸語と最も深い関係にあるものなることを推断するも、些かの危険を冒して居ないことを信ずるものである。以上説明簡単にして充分に意を盡し得ず、叙述の体裁また繁簡宜しきを得ず、理解に苦しむ点も多かったらうと思うが、其等は他日の機会に於いて補正したい考えである。」

 小倉進平 「朝鮮語の系統」結語 岩波書店 昭和十年(1935年)
 一部現代風に改めた


「 韓国の言語は、我が大日本帝国の言語と同一系統に属せるものにして、我が国語の一分派たるに過ぎざること、恰も琉球方言の我が国語におけると同様の関係にあるものとす。類例を他に求めば、等しくチェートン語族に属せる独逸語と和蘭語、ローマン語族中の仏蘭西語と西班牙語との如き、両々語脈を同じうせるものと相似たり。」

 金沢庄三郎 「日韓両国語同系論」 三省堂 明治四十三年(1910年)

 戦後の研究としては、李基文の「国語史概説」(邦題「韓国語の歴史」)を忘れるわけにはいかない。


「 韓国語とアルタイ諸語の親族関係は疑う余地のないものであるが、それはかなり疎遠なものであると結論づけられる。ツングース、蒙古、トルコ三語群の密接な関係とは対照的である。これら三語群は、一つの共通祖語(アルタイ祖語)から分れ出たものと(恐らくはトルコ語群の先祖が先に分れ出、後に蒙古語群とツングース語群の先祖が分かれたものと)推定されるが、このアルタイ祖語と韓国語の先祖(夫余・韓祖語)が如何なる関係にあったかは、現在の段階では決定し難い。夫余・韓祖語がアルタイ祖語から早く分れ出た一派である可能性もあり、これらが姉妹関係にあって一つの共通祖語に訴求する可能性もあるのである。」

 (一部修正)
 李基文 「国語史概説」
 藤本幸夫訳 「韓国語の歴史」


参考文献

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