言語普遍性の二大潮流


 一つが、チョムスキー発案である生成文法による、きわめて抽象的かつ合理的な方法に基づき、一つまたは少数の言語(主に英語)を対象にし、仮設を提示する。

 もう一つが、グリーンバーグやコムリーによる近代的類型論的方法である。これにおいては、できるだけ広範かつ多くの言語の実証的データにもとづき、出来る限り具体的な言語事実にとどめる。また、近年ではいわゆる認知・機能主義的アプローチに基づいて説明が与えられる傾向が強く、特に「認知類型論」や「機能類型論」の名を与えられることも多い。


 これらの二つのアプローチは、決して相容れないものではなく、適度な緊張関係を保ちつつ、相互補完関係にあるとみなすのが有益かつ妥当な程度であるといえよう。
 例えば、生成文法家の多くは「生成文法こそ真の類型論である」と述べるであろう。
 現実的に地球上の全ての言語を記述・分析することは不可能であるから、ある程度演繹的・合理的な方法をとらざるを得まいし、今日の多くの言語学理論が言語の普遍性、変異の中の規則性を想定していることを踏まえても、純粋に経験的・帰納的な手法は有効ではない。
 また一方でいかに抽象的・思弁的な理論であっても、全く空想のデータにもとづき、実際のデータを無視しているわけではない。

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