─ 灼熱 ─

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2005年09月19日
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(1) (2) から続いてるひとつの文章です。
(1)→(2)→(3)と順番に読んで下さい。



レビーの死後、レビーの遺書が読まれた。そこには、ホワイトヘッドとワインバーグが遺産の共同執行人に指名されていたという。2人は一緒に会社を経営することにした。担当分野を二分するかわりに、2人が共同シニア・パートナーとなったのである。いずれか1人が決定したことは2人の決定と考えるようにと、彼らは社内に通告した。

1984年の終わりにジョン・ホワイトヘッドは62歳で引退した。引退後、彼はレーガン政権に加わった。ホワイトヘッドが去った後、 スティーブ・フリードマン ロバート・ルービン が経営に重要な役割を果たすようになっていった。2人は共に66年に入社し、85年に債券部の共同責任者、87年には共同副会長兼共同COOに選ばれた。

財務長官として知られるルービンについては少し詳しく取り上げたい。ロシア系ユダヤ移民の子として生まれたルービンは、ハーバード大学とエール大学を出たあと、2年ほど弁護士として働き、28歳でゴールドマン・サックスに入社し、5年後の1971年には早くも準経営者のパートナーというポストを得た。入社14年後には経営委員会のメンバーとなっている。79年からニューヨーク先物取引所の理事を兼務し、83年にはウォール街の“番犬”SECの顧問となっている。87年にはゴールドマン・サックスの最高執行責任者となり、一方で89年から連邦準備制度理事会の国際資本市場顧問委員となった。ゴールドマン・サックスの共同会長に就任したのはその翌年で、ついにルービンはトップに立った。“究極のトレーダー”として知られるルービンの師匠は、おそらくレビーだろう。



同時期、アメリカでは、ロスチャイルド家のパメラと組んでクリントンを大統領に仕立て上げ、クリントン政権では経済担当の大統領補佐官となり、95年からはアメリカ経済を動かす財務長官に就任した。円ドル相場は1ドル80円台という超円高にされ、ルービンはウォール街の株価上昇を存分におうがし、99年に退任する。ホワイトハウスを退任したルービンは、その99年から全米最大の金融機関シティグループの共同会長に就任した。ご存知の通り、シティグループはエンロンを破綻に導いた薄外投資に重大な責任を持つ金融機関である。

ルービンはニューヨークで生まれマイアミで育った。1970年代以降、大統領選挙のつど、彼は民主党の選挙資金調達に大きな力を発揮してきた。1992年の民主党全国大会をニューヨークに誘致したのもルービンである。ルービンの妻ジュディは、元ニューヨーク市長デイビッド・ディンキンスのアドバイザーを務めている。ルービンの父は成功を収めた裕福な弁護士で、祖父はブルックリンで民主党のリーダーを務めた。

ゴールドマン・サックスのルービンのオフィスの壁には、歴代大統領の署名入りの写真が飾られていたという。


一方、ルービンのパートナー、スティーブ・フリードマンはレスラーである。フリードマンは学生時代に全米アマチュア・スポーツ協会のレスリング・チャンピオンだった。コロンビア・ロースクールを卒業した彼は、しばらく法律事務所で働き、その後、ゴールドマン・サックスに入社した。M&Aのスペシャリストであるフリードマンは、当時、M&Aはまだ主流ではなく、社内ではよそ者的な存在だったという。ゴールドマン・サックスは、M&Aの分野で、敵対的買収劇で乗っ取りの対象とされた会社を防衛するビジネスを作り出した。1970年代から80年代にかけて、このおそろしく儲かるビジネスでゴールドマン・サックスは、マーケットシェア50%以上を獲得し、その首位の座を今日まで守り続けている。

1970年代から80年代にかけては、M&A部門が会社を成功に導く原動力となった。モルガン・スタンレーが買収側に立ち、ゴールドマン・サックスが“ホワイトナイト”(白馬の騎士)を連れてくるなど防衛側に立つ戦いが次々と繰り広げられていったのである。これはモルガンとゴールドマンの“やらせ”もあるのではないかと私は想像するが、実際はどうであろうか。

企業買収防衛のビジネスがゴールドマン・サックスにとっていかに重要な意味を持ったかは、いくら強調しても強調しすぎることはないという。フリードマンが入社した66年にはM&A部門の売上は60万ドルだった。それが80年には9000万ドルに増加し、89年には3億5000万ドルとなり、97年には10億ドルを越えるビジネスになっていたからと説明されている。


ルービンも登場したのでこの辺でひとまず終わろうかと思ったんだけど、次回に持ち越すのは面倒なので、 最強外資「荒稼ぎの手口」 でも登場したゴールドマン・サックスの現会長 ヘンリー・ポールソン についてごく簡単に取り上げて終了します。


ポールソンは熱心な共和党員である。ハーバードでMBAを取得したのち、70年代にはニクソン政権で働いたことがある。74年1月、彼はゴールドマン・サックスのシカゴ支店に入社した。8年後、パートナーに選ばれ、90年には投資銀行部門の共同責任者に任命され、経営委員会のメンバーにもなった。99年1月、ポールソンはゴールドマン・サックスの単独CEOとなった。

1999年5月4日、ゴールドマン・サックスの株式上場日である。前日の3日には、株式公開価格は1株あたり53ドルと決められた。4日のニューヨーク証券取引所での初値は53ドルを遥かに上回る76ドルをつけた。この日、ゴールドマン・サックスはパートナー制の終焉を迎えたのである。公開によってパートナーたちは巨万の富を手にした。公開時の株式時価総額を221人のパートナーで割ると、それは1人あたり約68億円に達したのである。トップの数人にいたっては240億円もの資産を手にしたという。1万3000人の従業員にも平均で4600万円分の株がくまなく割り当てられるという大盤振る舞いであった。





ヘンリー・M・ポールソン(ゴールドマン・サックス会長兼CEO)
http://www.nikkei.co.jp/hensei/ngmf2000/speakers/05.html

ゴールドマン・サックス
http://www.gs.com/japan/our_firm/ceo_coo.html

ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント
http://www.toushin.com/firms/k0000360.htm



★ 参考書籍
『ゴールドマン・サックス──世界最強の投資銀行』


本書は、ゴールドマン・サックスの元為替トレーダーでヴァイス・プレジデントの著者が、膨大な資料に基づき、ゴールドマン・サックスの130年にわたる歴史を、初めて一般に紹介したものである。(訳者あとがき)


ブックレビュー社
130年の歴史をリアルに表現。ルービン前財務長官を輩出した独自の企業文化が見えてくる
本書を手にした時に感じた興味は次の2点だった。(1)金融市場からの評価がきわめて高かったルービン前財務長官はゴールドマン・サックスの出身である。財務長官を輩出する企業文化とはどのようなものなのか?(2)ガルブレイスの名著「大恐慌」は,ゴールドマン・サックスを1920年代のウォール街のユーフォリアを具現化した代表的な企業として取り上げている。同時に,株価のクラッシュとともに同社が大きく傷ついていく様子も描いている。

だが,現代においてゴールドマン・サックスは誰もが認める世界屈指の名門インベストメント・バンクである。このいちじるしいギャップは何なのか? ゴールドマン・サックスは,その経営形態が非公開のパートナーシップ制であったがゆえに,これまで神秘のベールに包まれていた感がある。しかし,本書の著者はゴールドマンサックスにバイスプレジデントとして実際に勤務していた元為替トレーダーであり,同社の130年の歴史を丹念かつリアルに表現している。本書の英語の副題は「The Culture of Success」。現在の成功に至る独自の企業文化の系譜が描かれ,冒頭の評者の興味に十分に答えてくれた。

1929年の大暴落だけでなく,ペンセントラル倒産事件,共同経営者によるインサイダー取引疑惑など同社はこれまで幾度も深刻な経営問題に遭遇してきているが,そのたびに「顧客第一主義」の理念を再確認しながら新たなリスクを果敢にとって乗り切ってきている。その過程はスリリングでさえある。

なお,インベストメント・バンクの内幕本としては,80年代のソロモン・ブラザーズを描写した「ライアーズ・ポーカー」(マイケル・ルイス,角川書店)が有名である。これと比較しながら本書を読むと(マイケル・ルイスに比べ本書の著者の視線は素直過ぎるきらいもあるが)ゴールドマン・サックスの企業文化の特徴がより際立ってくると思われる。 (東短リサーチ上席研究員 加藤 出)
(Copyrightc2000 ブックレビュー社.All rights reserved.)

内容(「BOOK」データベースより)
「世界最強の投資銀行」と呼ばれ、金融市場で絶大な力をふるうウォール街の名門投資銀行、ゴールドマン・サックス。だが、そのビジネスの実態は、非公開のパートナーシップ経営という秘密のベールに包まれ、今日までほとんど知られることはなかった。本書は、自らヴァイス・プレジデントとして同社に勤務した著者が、創業以来130年にわたる波瀾万丈の企業ドラマを再現するとともに、その驚異的な成功の秘訣を明らかにするものである。日本版金融ビッグバンの始動、自己責任による資産運用の時代を迎え、いま日本で最も注目される国際的投資銀行の歴史と実力を初めて明かす注目の書。

内容(「MARC」データベースより)
ちっぽけな同族経営の銀行は、いかにして有能な人材を集め、ウォール街で最強の地位を確立したのか。独創的なビジネス文化で知られ、日本とも深いつながりをもつ投資銀行をめぐる真実のドラマ。



★ 06年6月29日、追記。(4)をアップしました。

ゴールドマン・サックス(4)
http://plaza.rakuten.co.jp/HEAT666/diary/200606290000/







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最終更新日  2005年09月19日 01時54分22秒
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