ヤミ、闇、病み

ヤミ、闇、病み

エンゲージリング 第6話



昨日は泣き疲れて眠ってしまった。

起きなきゃと思って体を起こそうとしたけど体が動かなかった。

体が重い、それに熱があるような気がする。

頭がぼうっとして頭が回らない。

「風邪、かな?」

薬を飲むにも医者に行くにもとりあえず彩華に言わなくてはと思い、

私はふらふらと、少しよろめきながら部屋を出た。


「おはよう」

いつもの様に朝食の準備を済ませ、テーブルの近くに立っている彩華に声をかける。

「おはようございます、お嬢様」

そう言いながら彩華は椅子を引く。

私はその席に座り朝食を食べ始めた。

やっぱり熱があるのか味がいつもより薄く感じる。

「それでは学校の方に電話してまいりますので少しお待ちください」

「え?」

「熱があるのでしょう?それでは学校に行けませんからね。

ついでですから御医者様の方にもかけておきます」

そう言って彩華は部屋を出ていった。

自分から言おうとしていたのに気付かれてしまった。

その優しさが嬉しくもあり、辛くもある。

こんなにも尽くされているというのに私は何一つしてあげる事が出来ない・・・。

罪悪感が湧いてきて、自分の無力さを痛感した。

私は一人では何もできない、その事が分かった気がする。


朝食を取った後、掛かりつけのお医者さんに家まで来てもらい診て貰った。

そのお医者さんの話によると精神的疲れ、ショックから来たものだとか・・・。

ゆっくり休めばすぐ治ると言われた。

そう言われた時、私は昨日の事を思い出した。

けど思い出したくなくてすぐに私はそれをかき消した。


診察が終わり、私はベットに横になった。

何もすることが無く眠ろうとしたけど出来なかった。

昨日の事を忘れようとしても思い出してしまう。

孝介くんが「めんどくさいんだよ」という声が何度も頭の中でリピートされる。

振り払おうとしてもそれは出来ず、耳を塞いでもそれは聞こえてくる。

どうすれば忘れられるか、どうすればなかった事に出来るかずっと考えても答えは出てこない。

ううん、答えなんて出るわけもなかった。

孝介くんは私の世界の中心で、すべてだった。

その中心がなくなれば私の世界が壊れるのはむしろ当然。

こんなに苦しくなるのも仕方のない事だった。

でも、私にはどうしてもわからない。

どうして孝介くんは急に変わってしまったのだろうか?

今までも「めんどくさい」と言った事は何度かあった。

でもそう言いつつ必ず参加して盛り上げてくれた。

今回は違う、明らかに「めんどくさい」と言った孝介くんの声には本気だった。

つまり、孝介くんが「めんどくさい」と言ったのは本心で

孝介くんは誕生日に来てくれたないということで・・・。

私の思考はここで止まった。

考える事が出来なかった。

これ以上考えるのが耐えられないと本能的に感じたのかもしれない。

ただ泣いていた。

気がつかないうちに、ボロボロと。

私は涙を止めようとせず、拭く事さえしないでただ流れるままに涙を流した。

何も考えないで泣いて分かった事はたった一つ、私は孝介くんが好きということだけだった。

もうどうしようもないくらい好きで、それだけに失うのは辛い。

たぶん孝介くん以外に好きになれる人などいないに違いない。

そう思えるくらい、私は孝介くんの事が好き。

でもその孝介くんが離れてしまう。

私はどうすればいいのだろう・・・

コンコン

「お嬢様、お友達がいらっしゃってますが、お通ししますか?」

どれだけ考えていたか分からないけど、彩華がそう問いかけてきた。

誰にも会いたくない気分だけどそういうわけにも行かない。

私は「通して」とだけ言って体を起こした。

朝よりは大分楽になったけど、まだ体のだるさが抜けていない。

少しくらくらする。

「みやび、元気?」

ドアを少しだけ開けて、阿左美が顔を覗かせてきた。

後ろにはまゆみがいた。

この二人なら・・と思って私は二人に手招きする。

安心したように二人は中に入ってきて、ベットの端に座った。

「体、大丈夫?先生は熱だって言ってたけど・・・」

心配そうにまゆみがそう言った。

「うん、大分楽になったからもう大丈夫だよ」

私は笑顔を取り繕う。

二人は私が孝介くんの事が好きだと知らないはずだから、落ち込んだ顔など見せられない。

「そっか・・ならいいんだ。そうだ!!」

阿左美は何かを思い出したようにバックを開き、中から何かを取り出した。

「はい、先生から頼まれたプリント」

手渡されたプリントを見ると学級通信や宿題のプリントなどがあった。

「ありがとう」

私はそう言ってプリントを枕元にまとめて置く。

二人が帰った後に机の上に置けばいい。

「それとね?柊くんの事なんだけど・・・」

私の胸がズキっと痛む。

今日会っていないからどうなっているか分からない。

聞くのが怖い・・・。

「昨日から工藤くんが何度も問い詰めてるんだけど、理由も何も言おうとしないんだって。

ずっと「めんどくさい」とか「どうでもいい」とかを繰り返してて・・・。

それで今も工藤くんが説得してるから。

それと工藤くんから「孝介は必ず行かせるから待ってろ」だって」

竜也くんがここまでしてくれるとは思わなかった。

ああ見えて優しい事も、周りを見ている事も知っていたけどこんなに優しかったなんて・・・。

それにきっと、私が孝介くんが好きな事に気がついてるに違いない。

たぶん私の言動とか態度とかで分かってしまったのだと思う。

どうなるか分からないけど、今は竜也くんを信じて待つしかない。

「それじゃ、私たちはもう帰るね。体調悪化させたら悪いし・・・」

「うん、お見舞いに来てくれてありがとね」

「ううん、いいんだよ。だって私たち友達でしょ?」

そう言いながら手を振って二人は部屋を出ていった。

また部屋静かになって私一人だけの世界となった。

孝介くんは理由を言おうとしない・・・。

それが私の中で引っかかっていた。言えないような理由なのかな?それとも・・・。

考える事を止めにした。ここで考えていったって何も変わりはしない。

今は竜也くんにすべてを任せるしかない。

そう思ったとたん急に眠気が襲って来て気がついたら私は眠っていた。


起きたら夜の1時をまわった所だった。

知らないうちに物凄く眠ってしまっていた。

机の上を見ると何かが乗っていた。

何だろうと思いベットから降りて机によると雑炊だった。

彩華が置いておいてくれたのだろう。

ラップをはがしてゆっくりと口へ運ぶ。

もう冷めていて暖かさのかけらもなかったけど、凄く美味しく感じた。

おいしくてどんどん口に運んで行ったらいつの間にか全部食べきっていた。

私は空の皿を机の端に置き、日記帳を取り出して電気をつけた。

あまり書きたい気分ではなかったけど書かないと落ち着かなかった。


11月25日 木曜日

今日は熱が出て学校を休んでしまった。

阿左美とまゆみがお見舞いに来てくれたけど孝介くんは来てくれなかった。

それにホントに私の誕生日に来てくれないみたい。

あれは夢だと思いたかったけど、そういう風にはならないよね?

竜也くんの説得が上手く行って欲しいと願うしか私には出来ない・・・。

もし神様がいるのならどうかもう一度だけ私にチャンスを下さい。




ここまで書いて、私は日記帳をしまった。

きっと明日は孝介くんと仲直り出来ていると信じて私はベットに入った。

少なくとも話は出来るようになっていたい。

それぐらいは叶ってもいいよね?


夜が明けると外は目も開けないくらいの晴天だった。















後書き

どうもおはこんばんちは

孝介です

ということでどうだったでしょうか?第六話

今回は特に進展なし、でも物語上重要になる予定の話でもあります

果たして孝介はなぜ行かない理由を話さないのか

そして達也の説得は上手くいくのか

そういうのを楽しみにしながら次回を待っていただきたい

次はどうなるのか、それはまだ誰も知らない・・・     ホンニンモネ

では第七話後書きでお会いしましょう

第7話


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