ヤミ、闇、病み

ヤミ、闇、病み

エンゲージリング第7話



昨日は何もせずじっと大人しくしていたからか、だいぶ良くなった気がする。

でもまだ快調とは言えない。

今日は休みたい。

それを彩華に伝えるために私は下へと降りた。


「そうですか・・・。では学校の方へはそう連絡しておきますね」

食欲が出てきたので普通の朝食を食べる。

やっぱりまだ味が薄く感じたけど昨日よりは美味しいと思える。

そんな事を思いながら私は朝食を食べていた。


私は食べ終わり立ちあがった。

「昼食は食べやすいようにおうどんにしようと思うのですがいかがでしょうか?」

「うん、それでいい」

彩華が作るものは何でもおいしい。

それに食べやすいようにと気を使ってくれているのだから断るのは心が痛む。

「わかりました。ではお時間になったらお部屋までお運びします」

「お願い」

彩華がずっと見ているようで、そうされると心が見透かされてしまいそうで私は逃げるように部屋を出た。




部屋に戻って、私はなんとなくテレビをつけた。

クリスマス特集をやっていたみたいで、リポーターがクリスマスツリーの前でリポートし
ていた。

「そっか、もうすぐクリスマスなんだ・・・」

後一カ月もしないうちにクリスマスになる。

そう言えば大通りもクリスマスの準備が始まる頃だったはず・・・。

この間までクリスマスは孝介くんと二人きりで過ごしたいと思っていたのがすごく昔に思える。

そう思うと、たまらなく苦しかった。

BGMにはクリスマスっぽい音楽。

それは・・・昔孝介くんと聞いた曲だった。

私は思わず耳を塞いだ。

何故だか聞くのがとても辛かった。

テレビを消して、私は布団にくるまって丸くなった。

“嫌われたくない”

でもどうすればいいの?

ワカラナイ、ワカラナイ、ワカラナイ・・・。

昨日考えないと決めたはずなのにどうしても考えてしまう。

「はぁ・・・」

また逆戻りしちゃった。

彩華に話せれば少しは楽になれるかもしれない。

そう思っていると・・・。

トントン

「お嬢様、開けてもよろしいですか?」

ちょうど彩華がやってきた。

「はい、どうぞ」

ドアを開けた彩華の右手にはお盆が、その上でうどんが湯気を立てていた。

「今召し上がりますか?それとも後で?」

「今食べる」

彩華には後で聞いてもらえばいい、それに温かいうちに食べた方がおいしい。

そう思い私は先に食べる事にした。

「かしこまりました。熱いのでお気を付けください」

そう言って彩華はベットの横のテーブルの上に置いてくれた。

普段使うことはほとんどないのだけど、こうゆう時に役に立つ。

彩華のアドバイスでこうしたのだけれど、もしかしたらここまで考えてそう言ってくれたのかもしれない。

「では、食べ終わった頃にまた来ますので・・」

軽く頭を下げ、彩華は行ってしまった。

私は一人、うどんを啜り始めた。


「食器を受け取りに来ました」

私が食べ終わって3分もしないうちに彩華はやってきた。

あまりのちょうど良さに私は思わず驚く。

何でいつも彩華は図ったように現れるのだろう・・・。

少し怖かった。

でもそんなことはどうでもよくて、今はどうすれば彩華に話を聞いてもらえるか。

話を聞いて欲しいのだけれど、どう話し始めればいいか分からない。

どうしようかなぁ・・・。

「何か、話したい事でもあるのですか?」

「え?」

どう切り出すかを考えていると彩華がそう言った。

本当に人の心が読めるのではないだろうか?

ふとそんな事を思った。

「そんな顔をしていましたから」

彩華は優しい笑顔を浮かべながらベットの端に座った。

「うん、実は・・・「孝介さんの事ですか?」

「う、うん・・・」

こうもずばずば当てられると気味が悪い。

でも、言い出しにくかったから察してくれるのが凄く嬉しかった。

「実はね・・・」

そうして私は少しずつ話し始めた。

急に孝介くんが誕生日会に来ないと言った事、竜也くんが説得してくれている事、

自分が嫌われたんじゃないかっていう不安・・・。

ずっと考えてた事、不安で仕方ない事を全て彩華に話した。

その間彩華は一言も話さず黙って私の話を聞いてくれた。

私は言いたかった事を全部言って黙り込んだ。

今度は彩華が話す番だ。

「・・・ックス」

彩華は急に小さく笑った。

「大丈夫ですよお嬢様、孝介さんは誕生日会に来てくれます」

どこからその自信が来るのか不思議なくらい彩華は自信に充ち溢れていた。

「でも・・・でも・・・」

彩華はあの時の孝介くんを見ていないから彩華はそんな事が言えるのかもしれない。

だけど私は本気の目を見て、本気の声を聞いてしまった。

だから彩華の言葉が、ただの慰めにしか思えなかった。

「大丈夫です。私がお嬢様に嘘をついたことがありましたか?」

クスクスと笑いながら彩華は言った。

確かに彩華が私に嘘をついた事など一度もない。

けど今回だけはどうしても彩華が信じられなかった。


ピンポ~ン

「“ちょうど”来たようですね。では迎えに行ってきます」

そう言って彩華は下へと降りていった。

何が“ちょうど”だったのだろう。

私には謎だった。

しばらくすると階段を上がる足音が聞こえてきた。

そして私の部屋の前で足音がとまった。

すぐに入ってくると思ったけどなかなか入って来ない。

彩華は何をしているのだろう。

何か躊躇っているのだろうか?

そう思っているとドアが開いた。

彩華が入ってくると思っていた私はびっくりして声も出なかった。

だって入ってきたのが孝介くんだったから。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

孝介くんは息を切らしていた。走ってきたのかもしれない。

「どうしたの?」

私は孝介くんに駆け寄ろうとした。

けど、途中でよろけて倒れそうになった。

「おい、大丈夫か?」

孝介くんが私を支えてくれた。

昨日今日とほとんど歩いていないせいか歩くのが難しい。

「聞いて欲しい話があるんだ・・」

私がベットに戻ってから、孝介くんは気まずそうに話し始めた。

「俺、間違ってたよ。竜也に言われて気がついた。

遅いって言われても仕方ないと思うけど、行かないって言っちまったけど。

俺・・・明日絶対行くから」

信じられなかった。

絶対来ないと諦めていたのに孝介くんが来てくれる?

「ホント・・・に?」

信じられなくて私は思わず聞き返してしまった。

嘘じゃない、夢じゃないと信じたかった。

「ああ、ホントだ」

そう言って、孝介くんは軽く笑った。

私は嬉しくて声が出なかった。

孝介くんは困ったように顔をそむけ鼻を掻いている。

「それじゃ俺はそろそろ帰る。明日までにはちゃんと治せよ」

「うん・・・」

もう少しだけそばにいて・・・とは言えなかった。

でも明日孝介くんが来てくれる・・・。それだけで私には十分すぎるほどだった。

窓から外を見て孝介くんが走っていくのを見る。

振り向かないかな?

と思ったけど、孝介くんは振り向くことなく自分の家へと帰ってしまった。

ドアの開く音がして振り返ると彩華がいた。

「言った通りになったでしょう?」

確かにそうなった。

「うん、ありがとう。彩華」

「私は何もしていませんよ。そう思ったから言っただけです」

あの自信はどこから来ていたのだろう・・・。

聞いてみたかった。

「どうしてそう思ったの?」

「なんてことはありません。女の勘です」

クスクス笑いながら彩華はそう言った。

「明日は孝介さんがいらっしゃるのですから、早く治さないといけませんね」

彩華は私に毛布をかけた。

でもなんだかもう治ってしまった気がする。

だるさも眩暈もなくなっていた。

少し眠い・・・。ちょっとだけ寝ようかな?

そう思いながら目をつぶるとすぐに私は眠っていた。


目を覚ますと12時を過ぎていた。

また机の上に何か置いてあるかとも思ったけど何も置いてなかった。

お腹もすいてないし、別にいいけど・・・。

私は体を起こして机に向かった。もうふらつく事もない。

そして私は引き出しから日記帳を取り出して新しいページに書き始めた。


11月26日 金曜日

今日孝介くんが来て「明日絶対来る」って言ってくれたの。

ホントに良かった・・・。

来てくれて嬉しいよ~。

明日はちゃんとおしゃれするからね。

明日は晴れるといいなぁ~。

孝介くん、来てくれないとやだよ?


日記帳を引き出しに戻してベットの中に潜り込んだ。

今夜も眠れそうにない。

昨日一昨日は辛すぎてだったけど、今夜は嬉しすぎて・・・。

眠れなくて私は何度も寝がえりを打っていた。















後書き

どうも孝介です

ということで第7話いかがだったでしょうか?

僕的にはやっとここまで来た・・・という感じです

どうやって達也は孝介を説得したか・・・それはまた別のお話

まぁ一応出来てはいるんですけどね、頭の中で。

これについては書かない方がいいかなぁと思いカットしました

毎度のことながら女の子目線は難しい・・・

こんなんでいいのだろうかと自問自答

これでいいと信じたい

さあ次回は最終回

ついにみやびの誕生日になります

まぁここまできたら、ハッピーエンドしかない・・・よね?

では最終回後書きでお会いしましょう


最終話

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: