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2006.11.27
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カテゴリ: 邦書

 田中芳樹が大人気作家の地位を気付くきっかけとなったスペースオペラの外伝第三巻。


粗筋

ラインハルトが18歳で准将だった頃の出来事を述べている。この頃ラインハルトはグリンメルスハウゼン中将という老貴族の指揮の元で、ヴァンフリート宙域の会戦に参戦していた。
 帝国軍にとって、グリンメルスハウゼン中将は将官の平均年齢を上げているだけの厄介者だったが、皇帝に近いとあって粗末な扱いもできず、帝国軍首脳は彼を持て余していた。軍首脳は、グリンメルスハウゼンの艦隊に対し、ヴァンフリート宙域の惑星へ着陸して拠点を築けと命じる。老中将は部下のラインハルトに基地の構築を命じた。ラインハルトは惑星上に基地を築くことに成功した。
 ただ、その惑星は、既に同盟軍が基地を築いていた。帝国軍の基地と同盟軍の基地は数百キロしか離れていなかった。互いの位置を知った両軍は惑星上で戦闘状態に陥る。ラインハルトはその戦闘で昇進のきっかけとなる功績を上げた。グリンメルスハウゼンもこの戦闘で大将に昇進するが、病に倒れる。
 一方、同盟軍ではシェーンコップが亡命貴族から成る白兵戦部隊「薔薇の騎士」連隊の隊長に就任した。シェーンコップは、ヴァンフリート惑星での戦闘で前々隊長リューネブルクと再会する。リューネブルクは帝国に再度亡命していたのだ。二人は一戦を交えるが、勝敗が決まる前に戦闘そのものが終わってしまう。
 帝国と同盟は、それから間もなく第六イゼルローン要塞攻防戦に突入する。ラインハルトはこの戦闘でも功績を上げ、昇進のきっかけを再度掴む。この戦闘にはヤン・ウェンリーも同盟軍の参謀として参加していたが、大した功績を残すことなく戦闘終結を向かえる。ただ、シェーンコップはリューネブルクと一対一の戦闘により彼を倒した。
 ラインハルトは、無能なのにどこか憎めないグリンメルスハウゼン中将を苦手としていたが、中将はラインハルトをそれなりに評価していた。グリンメルスハウゼンは、死後に自分の日記をラインハルトに託す。その日記には、グリンメルスハウゼンが長い生涯で目撃してきた貴族社会の裏事情が記録されていた。グリンメルスハウゼンは、ラインハルトがこれを利用してもよいということで渡すのだが、ラインハルトは封印することにする。自分は脅迫など卑怯な手で権力を握るつもりはない、と。


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解説

本伝の前を記録した小説。ケスラーや、ヒルダや、ロイエンタールとミッターマイヤーなど、後の本伝で主役となるキャラが勢揃い。ファン向けに書かれたものといえる。
 戦闘も本伝から読み通しているとどれも同じに見えて特色がなく、ただラインハルトが功績を上げて昇進するだけ。
 この時代は功績を一度上げただけで昇進できるのか。それでは階級がいくらあっても足りなくなる気がするが……。
 ラインハルトは相変わらず生意気だが、何にも動じない老貴族軍人グリンメルスハウゼンに言いようにされる場面は面白い。ラインハルトに好かれる訳でも嫌われる訳でもなく、単に「苦手だ」と言われるのはこの老人だけだろう。死んでしまうには惜しいキャラだった。生き続けていたらどうなっていただろうかと思ってしまう。
 相変わらず分からないのはこの時代の技術水準。宇宙航行技術を確立しているのに、医療技術は現在とさほど変わらないように感じる。現在は70代でも老け込む理由にはならない。にも拘わらず、本作では76歳どまりのグリンメルスハウゼンがよぼよぼの老人扱いされている。この時代は西暦で言えば3000年を超えているから、人間の寿命は100歳を軽く超えているのが当たり前であっても不思議ではない感じがするのだが。
 本伝でも、ラインハルトの宿敵となるべく皇帝フリードリッヒは70歳前後で死亡しているし、ラインハルト自身も25歳という若さで死んでいる。医療技術は現在から2500年の間にあまり進歩しなかったのか。
 本作ではリューネブルクというラインハルトの敵に成りうるキャラが登場するが、彼も結局シェーンコップによって倒され、また一人強敵が消えてしまう。
 ラインハルトの前では、いかなる強敵も他勢力によって倒れ、結局立ちはだかるのはラインハルトにとって「敵」と呼ぶに値しないほど無能な連中だけ。運がいい奴である。
 本作の最後で、ラインハルトはキルヒアイスに対し自分は無駄な戦いはしない、無駄な血を流すことはしない、と誓うが、ラインハルトは皇帝になってから無駄な戦いをして無駄な血を流している。ラインハルトはこの誓いを後に振り返ってみてどう思ったのだろうか。
 ラインハルトはグリンメルスハウゼンの文書を封印する。貴族に対する脅迫材料に使うような卑怯な真似はしない、と。
 卑怯な戦法を嫌うラインハルトが、本伝二巻でヴェスターランドでの核攻撃を許し、それを政治的に利用するという卑怯な手に出るのだから笑わせる。逆にこの文書を脅迫材料にしていたらもっと早く、そして血を流すことなく貴族らを倒せたと思うのだが。
 それともラインハルトは戦場で敵を倒さないと倒した気にならないのだろうか。
「戦術とは戦略によって事前にお膳立てされた状況に過ぎず、いかなる戦術的な勝利も戦略的な敗北は補えない。戦略が完璧であれば、場合によっては銃火を交えることなく敵を倒せる」
 この事実を熟知している筈の天才戦略家ラインハルトにしては、お粗末。



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Last updated  2006.11.27 13:27:22
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