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2006.11.28
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カテゴリ: 邦書

 創元推理文庫の江戸川乱歩全集第九巻。「湖畔亭事件」と「一寸法師」が収録されている。双方とも1926年に連載が始まった。本書には連載当時のイラストが満載。
 明智小五郎は「一寸法師」だけに登場する。


粗筋

「湖畔亭事件」

「私」には覗き癖があった。自分でこしらえた道具で風呂場などを覗くのだ。「私」は、数日間宿泊することになった湖畔亭で、風呂場の脱衣場を覗く。女性の背中が見えた。刃物を握る手が視界に入る。レンズ一面に血が拡がった。
「私」は驚いて隣の部屋に宿泊していた河野という男に相談する。河野は、「私」の覗きの部分を省いて湖畔亭の者に事件について知らせる。
 脱衣場を調べると、大量の血痕が見付かった。が、犯人は勿論、被害者の姿もない。事件は犯人探しだけでなく、被害者探しまでする必要があった。
 被害者らしき女性は直ちに判明する。湖畔亭で働いていた芸者長吉である。事件直後から行方不明になっているのだ。事件は死体探しと犯人探しへと傾く。
 湖畔亭には、三造という風呂焚きがいた。彼は事件前後の僅かな時間、風呂場を離れていて、怪しい者が出入りするのを見ていなかった。犯人は三造が目を外した僅かな時間を狙って風呂場に入り、女性を殺し、死体を運び出したことになってしまう。警察はさじを投げた。
 河野は三造に容疑を向ける。三造には、脱衣場の忘れ物を失敬するくせがあったのだ。そのことを指摘すると、三造は姿を消す。三造は墜落死体として発見された。
 事件直後、風呂場のかまどから火葬場のような悪臭がしていたが、それは三造が長吉の死体を焼却処分していたからだ、ということになった。これで事件は解決する。
「私」と河野は湖畔亭を去るが、その時点で「私」は河野の推理が間違っていたことに気付く。犯人は河野だと。また、被害者とされる長吉は、実は死んでいない。二人は幼馴染みで、河野は長吉と駆け落ちする為にこの芝居をしたのだ。
 風呂場で発見された血痕は大量のようだったが、実は二人の少量の血を広範囲に塗りたくっていかにも大量の出血があったように見せかけただけだった。河野は「私」の覗き癖を知っていて、覗きレンズの前で殺人の演技をしてみせたのである。
 偽の殺人容疑が向けられた三造が死んだ為、河野は三造に罪を被せることにした。事件後に火葬場のような悪臭がしたのは、革製品を焼却したからだった。
「私」は河野と長吉をそのまま逃す。

「一寸法師」

 小林は、ある夜奇妙な男を見る。背の低い奇形児、つまり「一寸法師」が、切断された人間の腕らしきものを抱えていたのだ。このところ人のバラバラ死体が見付かるという事件があった。小林はこれもその死体の一部ではと思い、後を追う。一寸法師は側の寺に消えた。小林は寺に入って一寸法師について訊くが、寺の住職に怒鳴られるだけだった。
 それから数日後、知人の山野夫人から相談を受ける。夫の山野大五郎には前妻との間にできた娘三千子がいた。その三千子が忽然と姿を消したというのだ。誰も出入りできない筈の家から。三千子はなぜ、そしてどうやって家を出たのか知りたいという。
 相談を受けた小林は、知人の明智小五郎を紹介する。明智は調査を開始した。山野家にはピアノがあった。そこに人が隠されていた形跡が残っていた。どうやら三千子をさらった犯人は、三千子をそこに一旦閉じ込めた後、隙を見て家から運び出したらしい。
 明智は、三千子の部屋から指紋を採取し、最近発見されたバラバラ死体と照合する。指紋は一致した。バラバラ死体が三千子のものであることが判明する。
 山野夫人は、ある男と不倫関係にあった。その男は一寸法師の変装だった。寺の住職も、一寸法師の変装だった。
 明智は一寸法師を追い詰め、逮捕する。が、三千子殺害の犯人ではない、という。死んだのは三千子の恋敵で、山野家の小間使いである小松だと。三千子は、一寸法師と組んで小松を始末したのである。三千子は、小松の指紋が自分の部屋に残るよう細工し、一寸法師に殺させた。三千子は小松になりすました。自分が小松でないことがばれないよう、仮病を使って小松の部屋に閉じこもった。これにより被害者と加害者が入れ替わり、実際には死んでいる小松が生きているように見せかけたのである。


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解説

いずれも古いタイプの推理小説。現在は警察の捜査技術や捜査体制が進化しているから、この手の犯罪をそのまま行うのは無理だろう。
 現在なら、警察は河野と長吉が幼馴染みであったことを簡単に掴むだろうし、血痕が一人ではなく二人のものであるのが直ぐ判明するだろうし、血痕が致死量でないことも判明する筈。死体を焼却処分した筈の場所を探し出して調べてみようと誰も考えなかったのか。
 警察が早期に三造に容疑を向けず、監視しないのも、現在の観点からはおかしい。
 三千子のものとされた死体も、現在なら血液検査やDNA鑑定によって三千子のではなく小松のだと直ぐ判明するだろう。無論、小松に扮している女が怪しいということになり、三千子はたちまち逮捕されていた筈。
 湖畔亭事件はそれなりに読めたが、一寸法師の方は蜘蛛男や妖虫などと同じパターンで、連続して読んでいると新鮮味を感じない(死体を隠さず人目の付く場所にさらす、奇形児が出てくる、死体を人形の中に隠す、など)。乱歩作品は続けて一気に読むべきではないようだ。
 奇形児を登場させ、犯人にしたり、知恵遅れ扱いするのは、現在では絶対できないだろう。
 乱歩は現代物ではなく、ホームズ同様の古典として読まないと駄目らしい。



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Last updated  2006.11.28 14:18:09
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