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2007.10.11

情報収集・整理と解釈

カテゴリ：

発達障害と作業療法（実践編）

暦年齢が持つ意味は、評価の対処や発達障害の内容によってことなる。暦年齢は、比較・参照すべき発達指標を提示するので、機能の未熟性の判定には不可欠な情報となる。また、暦年齢は、発達検査でどの程度の項目から検査すればよいか、おおまかな指標を示してくれるので、知的・精神発達障害児では検査前に聞いておく必要がある。しかし、異常性がすでに顕著になっていたり、子どもが年長である場合には、歴年齢に比較基準としての意義はおのずと小さくなる。重症児施設などで、職員が子どもの年齢を正確に覚えていないような事がままあるが、これは、不熱心というより療育的な意義の乏しい情報は、忙しい日常の中で人々の意識から消えやすいことの証拠とみるほうがよい。

診断名
診断名が与えられると、そこから臨床像や主要な問題点が推測され、検査で重点を置くべき領域も特定されてくるという点で、評価でもっとも重要な情報のひとつといえる。しかし、発達障害の領域では、診断名がいつも確定されているとは限らず、○○の疑いというようなこともある。特に、知的・精神的機能障害の分野では、注意欠陥障害から自閉症、あるいは自閉症から精神発達障害などと言うように成長に伴って診断が変更されることもそれほどめずらしいことではない。特に小児精神神経の専門家に診てもらってきた子どもにそういう傾向があるが、それだけきめ細かな診察を受けてきたという証拠でもある。脳性麻痺などではまひのタイプまで記述されていると治療を考える上で助けとなるが、それが記述されていたとしても作業療法士自身によっても確認されるべき事項である。

生育歴
1）妊娠中や出産時の状況、2）発達、成長、健康状態、3）これまでかかった医療、福祉、教育機関なども、あらかじめ保護者に記述してもらって、面接では確認したり、補足するだけにすると情報収集が効率的になる。

1）妊娠中や出産時の状況は、現在の臨床像と重ね合わせて理解するとよい。
早期産児とPVL、仮死（APGARスコアー）と両麻痺、核黄疸とアテトーゼ、哺育噐と視覚障害などはその因果関係がよく指摘されるものである。

2）発達、成長、健康状態からの情報も、診断名と同様、作業療法診断にとってはいろいろな手がかりをもたらすもの。哺乳の状態、健康状態、覚醒状態、姿勢・運動発達、知的発達における発達課題の達成時期などの事項は、自由記述ではなく穴埋めか○×式の時記式にしたほうが、保護者にとって記述しやすくなる。

4）子どもの取り巻く人的環境
家庭療育をきめ細かく援助するためにも、家族構成をはじめ子どもを取り巻く人的環境を知っておくとよい。一般的には発達障害児の育児には、援助の手が多ければ多いほどよいものであるが、祖父母の同居が、母親にとってストレスの一因になっていることがある。夫婦のあり方も、障害児の育児には反映させる重要な要因といえる。一般的にいって育児に父親の協力が得られにくい場合は、母親にやみくもな熱心さが生まれやすく、その柔軟性を欠いた熱意が結果的に障害児のきょうだいに対するネグレクトを引き起こしかねない。親が、妹や弟など他に子どもを持とうとしない場合には『この子にすべての愛情を注ぎたい』といいつつも、実は親が障害児の育児に疲れ果てているというようなことも考えられる。プライバシーに関する微妙な話題で、聞くことが遠慮されるようなことがらは、初日の面談ではなく少し親しくなってから聞くようにすればいよい。

早期産児では、脳溝は浅く、脳軟膜からの終末動脈は脳質に近い白質で終わっている。また髄鞘形成が脳質周囲で活発であるが、この活発な部位が逆に障害が受けやすいところでもある。特に早期産児の中でも極低出生体重児では脳質内出血（IVH)が多く、これが脳室周囲白質軟化症（PVL）を引き起こす。傷害の部位（脳室周囲白質）には下肢への運動神経が分布しており、痙直型量麻痺になることが多い。

APGARスコアーとは、アメリカの麻酔科医アプガール、ヴァージニアによって作られた。仮死判定に使われる評価方法である。
A：Appearance（皮膚の色）、P：Pulse（心拍数）、G：Grimace（反射興奮性）、A：Activity（筋緊張）、R（Respiration（呼吸努力）の5領域で0～２点の3段階評価をし、得点が点以上を正常とし、4～7点を軽度仮死、3点以下を重度仮死とする。

未熟児などでは、肝臓での血中の間接ビリルビンの処理がうまくいかず、血中のビリルビン濃度が高まり、これが基底核などの神経細胞を傷害する。基底核が特異的に傷害されているので、アテトーゼ型のまひになる。かつては、アテトーゼ型麻痺の原因として核黄疸が多かったが、現在では交換輸血が行われ、運動障害を残すリスクは低くなった。

早期産児は、もともと、網膜血管が十分に発達していない。そこに高濃度の酸素が投与されると、網膜剥離をきたす危険性が高くなる。かつてはそいういう原因による未熟児網膜症が存在した。

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