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本著にも登場するが、斎場から出てきた参列者が「悲しむ母親の頬をいきなり友人の女性がひっぱたき仰天した」と話した。当時、母親は「育児ネグレクトしていたくせに」などとネットで中傷されていた。
父親が「Iターン」で漁師を始めた島根県の小さな島で育った遼太君は明るい子だったが両親は離婚。母は実家のある川崎市へ移り生活保護などで5人を育てるも、やがて恋人を連れ込む。
同じ犯人による少し前の暴力事件で目も開かないほど遼太君の顔が膨れ上がった際、母は息子の写真を撮るだけだった。深夜に出ていく遼太君を気にしなかったという。裁判で意見陳述した母親は「(元夫の)顔を見たくない」と希望し衝立が立てられた。
本著には父親の「インタビュー」も。読めば彼に加担してしまうが鵜呑みにしてよいものか。他人の家庭の中は容易にはわからない。
「血縁者の中で話を聞けたのは父親だけ。母の話は公判でしか聞けていない」という著者も「偏りがあることを危惧する」と正直だ。母親は子供を連れて隠れるように他の地に移った。通常は加害者家庭の行動だろう。上村遼太君が呼び出されたLINE、ネット中傷、形骸化した保護司制度……掘り下げればきりがない悲しい事件から、本書は現代の「闇」を抉ってくれた。
評者:粟野 仁雄
(週刊文春 2018年2月15日号掲載)下剋上 2024年10月20日
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